第一部
この文書は、個別障害者教育法(IDEA)の施行状況に関する連邦議会への第19回報告書の要約です。第一・二部は渡部が、第三・四部は岩井が、序文は曽根がそれぞれ翻訳しました。編集と監修は成田が担当しました。
第一部
第一部は、5つのモジュールで構成されている。ここでは、障害生徒やその家族へのサービスの普及に影響していると考えられる社会的、教育的要因について記されている。
過去15年間にわたり、義務教育の改革は6つの主要な政策領域に集中して行われてきた。すなわち、学力水準や教育アセスメント、教育の責任、管理法、教師、教育行政などであった。その間、障害児教育においても、障害生徒を通常学級の中でインクルージョンしていくという方向に変化していくとともに、生徒(特に文化あるいは言語の異なるマイノリティの子どもたち)に対する障害の特定が適切に行われるようになり、同時に義務教育終了後でも、成人まで障害児教育サービスを受けることができるようになった。
最近、州学校主管管理者協議会は政策調査委員会と協力して通常の教育および障害児教育改革の効果を検討するための全国的調査を行った。その調査結果から、全米の38州とコロンビア特別地区において一つ以上の領域教科で習熟標準学力を準備していることがわかった。また、34の州とコロンビア特別市区では、個別教育計画に基づく領域教科の習熟標準学力を適用する予定であることがわかった。
教員免許状については、障害児教育と通常教育の両方をより統合した免許に切り替わる傾向がみられる。その傾向は、障害児教育においてあまり発達上の障害種を特定しないという方向に向かっていることにも現れている。通常教育の教員免許取得については、22の州で小学校教諭に対して障害生徒に関するいくつかの単位取得を要件にあげている。また、21の州で助教諭に対して同じような要件を課している。そして、11の州で障害生徒と関わる仕事の経験を有することが免許取得の要件にあげられている。(目次に戻る)
過去25年間、全体的な貧困率はおおよそ12%と比較的一定であるが、児童の貧困率は15%から18%と増加傾向にあり、より低い年齢層の児童ほど貧困率が増加する可能性が高いという結果になった。1990年-1995年の間の平均的貧困率を見ると、2歳までの乳児の貧困率は25.7%、3歳-5歳が24.3%、6歳-7歳が19.9%であった。
このような貧困の問題は教育にも影響を与えている。低所得家庭の子どもは、学校の欠席率が高い。低学力者の様相もまた、低所得家庭の子どもと関連している。その差は、特に高所得者の家庭の子どもと比較すれば、中途退学の割合により顕著に見られる。
また、貧困の問題は、出生児の低体重に伴うリスクの増加にも関連している。低出生体重児は、学習障害や、多動性障害、心理的障害、精神的障害、神経発達障害、視覚障害、聴覚障害などの危険性を高める。そのため、貧困でなおかつ低出生体重の場合、障害児教育サービスを受ける可能性が高くなることが予想される。
障害児教育費用に関する情報の出典には、以前行われた障害児教育費用に関する全国的研究のデータや、個別障害者教育法の618条によって州から収集されたデータも含まれている。最新の障害児教育費用については、障害児教育財政センター(CSEF) によって行われた最近の州調査や全国の生徒一人あたりの教育費、障害児教育への連邦政府の支出総額などに基づいている。
過去のデータは障害児教育費用が、通常の教育費用に比べるとその率に上昇がみられることを示している。しかし、その上昇分の多くは、個別障害者教育法の実施に伴うものであったり、5歳までの早期障害児教育サービスの拡充によるものであると考えられる。障害児教育費用の上昇に関する現在の要因としては、以下の点があげられる。
(1) 障害児教育の対象となる生徒の在籍年数が増えたため。
(2) 資金を供給する機関や、障害児教育サービスの種類が変わったため。
(3) 財産税と同じような考え方で、通常の教育にかかる支出に関しては一定の制限がある一方、障害児教育にかかる支出については制限をしなかったため。
(4)経済的あるいは医学的に危険な状態の生徒や乳幼児の増加がみられたため。
障害児教育財政センターの調査に応じて、24の州から回答があった。そのうち13の州では、障害児教育プログラムにかかる費用を確信をもって算定することができたと報告した。9つの州ではある程度確信をもって、あるいはそのデータに確信をもって費用算定することができたと報告した。残りの2つの州では確信をもたないまま費用算定したと報告した。また、障害児教育プログラムにかかる費用を確信をもって算定することができたと答えた13の州では、障害児教育対象生徒一人にかかる費用の上限は5,435ドルになると報告した。(目次に戻る)
違法ドラッグ、特にマリファナの使用が1992年から中学校で増加している。また中学校生徒や大人の飲酒率については、1990年代に入りあまり変わっていないかあるいはいくらか減少傾向にある反面、喫煙率は増加している。
青少年の暴力は、過去10年の間に地域社会の中で劇的に増加した。そして、その傾向は特に学校内で顕著に現れている。暴力の増加や薬物使用の問題について理解していこうという動きの中で、これらの問題がひいては障害生徒にも影響を与えるという点が徐々に理解されるようになってきた。
少数民族の生徒と障害児教育サービスを受ける生徒に関する問題については、障害児教育局と、公民権局の双方とも大きな関心を寄せるようになった。1992年の公民権局が準用しているデータや現在の同局の動向からは、障害児教育における少数民族の生徒と少数民族でない生徒との比率格差が全国的に広がっていることがうかがわれる。さらにその問題は一定の地域で継続して起こっていると考えられる。一例として、アフリカ系アメリカンの生徒は、精神遅滞や情緒障害、学習障害などの障害児教育プログラムを受ける頻度が全体平均に比べると高いことなどがあげられる。
障害児教育局と公民権局は、このような公民権問題の解決にむけて積極的に様々な資料や教材を地域住民に提供している。その中で、地域住民と一緒になって問題を解決しようと模索している。障害児教育局が独自に予算を立てて行った調査や専門的指導などの支援活動により、障害児教育における少数民族生徒の問題を解決するための方策も少しずつ見えてきた。公民権局もまた、障害児教育における少数民族生徒の問題を優先的に解決しなければならないとしている。そのため、具体的には生徒の教育措置に関する活動に力を入れたり、教育プログラムの情報を誰でも得ることができるように配慮したりしてきた。(目次に戻る)
第二部は4つのモジュールで構成されている。ここでは、個別障害者教育法や、州が連邦政府からの補助金を受けながら行っている障害児教育サービスの対象となる生徒の特徴について記されている。
個別障害者教育法のパートHに基づいて教育サービスを受ける障害幼児と嬰児
パートHにかかる予算は、1987年会計年度の5000万ドルから1996年会計年度の3億1600万ドルへと増加した。すべての州と米国内のへき地では、障害の判定基準に沿って教育サービスを行っている。また、1995年には13の州と1つのへき地において、将来障害を伴う可能性の高い幼児と嬰児に対する教育サービスが開始された。
早期教育サービスを受ける幼児と嬰児の数は、1992年の145,129名から1995年の177,673名と増加している。また、1995年に早期教育サービスを受けた子どもの約17%が1歳未満であったのに対し、約50%は2歳-3歳の幼児であった。1992年-95年の間、この2歳-3歳の年齢層の比率には増加がみられた。
個別障害者教育法パートBに基づいて就学前教育サービスを受けた子どもたち
合衆国1996年会計年度に議会は、360,409,000ドルの予算化を図った。この額は前年度の360,265,000ドルに比べわずかに多い額である。しかし、サービスを受ける子どもの数は、1994年12月1日時点の522,710名に対して1995年12月1日時点の548,441名と、4.9%の増加がみられる。
多くの州では、通常の教育改革を実施していく中で、3歳-5歳の障害幼児のための教育プログラムの導入を積極的に図ってきた。その中でも18の州においては、第619条の「プロフィール」に従い、同条で謳われるプログラムの改正が図られた。
1995年の12月1日の時点では、3歳-5歳の障害幼児の50%が通常クラスの中で教育サービスを受けている。この比率は前年度に比べると2%の増加である。次に多い措置としては、リソースルームを備えた別クラスで教育サービスを受けているパターンである。しかし、このような通常学級と分かれた施設の使用は、減少傾向を示している。(目次に戻る)
パートBに基づく予算措置は、1977年時点の251,770,000ドルから1997年時点の2,323,837,000ドルと確実に増加している。生徒一人あたりの交付金額も、1977年時点の71ドルから1995年時点の418ドルと大幅な上昇が見られる。1996年度の場合は、1996年-97年の間に交付された額が教育サービスを受ける生徒の数の増加に追いつかなかったため、生徒一人あたりの交付金額は413ドルに下がった。しかし、1997年会計年度に3,107,522,000ドルを交付することで、1997年-98年の学校年度においては生徒一人あたりの交付金額が大幅に増加することが見込まれる。
1995年-96年の間に個別障害者教育法のパートBに基づいて教育サービスを受けた人数は、総計5,619,099名である。この教育サービスの対象は3歳-21歳の子どもと青少年である。この数は前年度に比べると、188,876名(または3.5%)の増加を示している。また、6歳-17歳の学校に在学する障害生徒のパーセンテージは1994年-95年の10.4%から、1995年-96年の10.6%の増加にとどまっている。
教育サービス対象者の内訳をみると6歳-11歳が2,581,061名(45.9%)、12歳-17歳は2,237,124 名(39.8%)、3歳-5歳は548,441名(9.8%)、18歳-21歳は252,473名(4.5%)である。このようにみると3歳-5歳のグループと18歳-21歳のグループの比率は合わせても15%に満たないのであるが、上述のような全体の増加分を考慮すれば、確実にその比率は高まっているといえる。
教育サービス対象者の障害種別に比較すれば、学習障害が2,597,231名(51.2%)、言語障害が1,025,941名(20.2%)、精神遅滞が585,308名(11.5%)、情緒障害が438,217名(8.6%)であった。また、それぞれの障害種別の増加率を1994年-95年と1995年-96年のデータ比較からみると、外傷性脳障害が30.1%、自閉症が27.2%、その他の障害が24.5%の増加を示している。この結果を、多くの州では、3年ごとに実施される障害の判定の際に外傷性脳障害と自閉症への分類変更が多くみられたためとしている。その他の障害が増加した理由としては、主に注意欠陥/多動性障害の生徒の増加によると考えられる。(目次に戻る)
アメリカ精神医学会では、学校在学の生徒の3-5%が注意欠陥/多動性障害であると算定している。この注意欠陥/多動性障害の生徒に共通する臨床上の特徴として、不注意、他動性、衝動性の三つの問題があげられる。加えて、学習障害や情緒障害が示すのと同じような問題を抱えることもある。
注意欠陥/多動性障害の判定にあたっては、単一の検査を行えばよいというものではない。正確な判定のためには、本人の生育歴や家庭状況についての情報を得たり、行動を査定するためのテストやアンケートを用いたり、いろいろな場面での行動を直接観察したりする必要がある。注意やそれに関連する障害についての専門家グループでは、その障害を適正に判定するために2重の評価法を推奨している。この2重の評価法では、臨床上と教育上の2つの視点から評価が行われる。まず、臨床的評価は本人の行動がこの障害の判定基準に沿うかどうかを見きわめるために行われる。そして、教育的評価は教室内における行動が学級集団全体にどの程度否定的に働いているかを判定するために行われる。
注意欠陥/多動性障害の生徒は、障害児教育サービスやそれに関連したサービスをうけることができる。これは、個別障害者教育法や1973年修正法案リハビリテーション法504条に基づく措置である。これらのサービスを受けるためには、上記の法令に基づく判定基準を満たさなければならない。また、注意欠陥/多動性障害のためにこれらのサービスを必要とした場合は、個別障害者教育法パートBにあげられている「その他の障害」に基づいたサービスを受ける資格がある。
注意欠陥/多動性障害の状況を緩和するために、様々な治療教育法が内科医や心理学者、教師、親によって試みられている。その効果や限界も、それぞれの治療教育法によりいろいろである。注意欠陥/多動性障害の治療教育法は、刺激や興奮をコントロールするための薬物治療と教育プログラムの二つに大きく分けることができる。(目次に戻る)
学校教育プログラムとサービス:第三部は、障害を持つ児童及び青少年とその親に対して、学校が提供し得る教育プログラムとサービスを検討する7つのモデュールより成る。
生徒が教育サービスを受ける状況は、その児童の持つ二一ズによって様々に異なる。例えば、1994-95年度、発話・言語能力に障害を持つ生徒の87%が、日中の80%あるいはそれ以上の時問にわたって通常学級で学んだが、それに比べて精神遅滞のある生徒の場合、同様の教育サービスを受けたのは9.7%という結果となっている。また、6-11歳の生徒の方が、12-17歳あるいは18-21歳の生徒よりも、通常学級へクラス分けされることが多いようである。6-21歳の通常学級で学ぶ障害生徒のパーセンテージは徐々に増加しており、1990-91年度は32.8%であったのが、1994-95年度には44.5%に上っている。
少数の生徒、主に重度で深刻な障害を持つ生徒にとっては、施設で学ぶことが適切な措置であると考えられる。1994-95学校年度の間、6-21歳の障害生徒35,150人が公立あるいは私立の施設において教育措置を受けている。こうした生徒は障害生徒全体の0.7%を占めており、過去5年問このパーセンテージはほぼ一定である。施設で学ぶこうした生徒のうち、その多くに重度の情緒障害があり(39.9%)、他にも聴覚障害(18.6%)、精神遅滞(10%)、学習障害(9.3%)、あるいはそれらの重複障害(9.1%)が挙げられている。
1995年には、50州中45州が、生徒の教育成果を評定するために全州規模の調査を実施した。また他にも3州において、全州規模の調査が進行中であった。州内教育評定に障害生徒をも対象として含めるか否かについては、それを左右する調査の実施方法及び判断が変化しつつある。1992年には28州が調査対象に障害生徒を含める際のガイドラインを示したが、1993年には34州が、1994年及び1995年には45州が同様のガイドラインを示した。しかしながら、州内の調査対象となった障害生徒について、その数の概算が可能なのは、その州の州職員のみであることは資科が示す通りである。
全州規模の調査に障害生徒を含めるか否かの裁定において、ほとんど全ての州が個別教育計画(IEP)チームの助力を仰いでいる。多くの州で、障害生徒の調査参加の決定に伴い、カリキュラム面での評価調整(即ち、調査と生徒の学習内容とをいかにうまく結び付けるか)が検討されている。また、障害生徒の教育措置について検討している州が僅かながらあり、同様に、調査結果として表れた数値が評定の有効性あるいは信頼性を左右するものとなるか検討中の州も2、3ある。
全州規模の調査に当たり、障害生徒の調査参加を可能とする便宜的措置を示したガイドラインを有する州の数は、1992年の21州から1995年の39州へと増加している。最も頻繁に行われて来た便宜的措置は、調査の実施状況の変更、スケジュールの変更、説明方法の変更、そして回答方法の変更である。以上4項目の便宜的措置を用いた調査が増加しつつあるが、とりわけ顕著に増加が認められた措置は、調査時間の延長と、障害生徒に見合った説明文の利用である。
正規の州内調査に参加出来ない生徒に対して代替調査を企画したか、あるいは企画中である州は、僅か3州であった。ケンタッキー州は、教育成果の信頼性(アカウンタビリティ)を総合的に数値として算出するために、代替調査を実施している。メリーランド州では代替調査の実施テストを行っており、テキサス州では代替調査のシステム作りが進展中である。 (目次に戻る)
過去25年の間に、障害のある児童とその教育に携わる専門家との係わりに関する考え方は、児童中心の取り組みから、その家族により焦点を合わせたものへと変化してきた。
親と教育者とのパートナーシップに関する指針は、パートHの施行規則の至る所に盛り込まれている。幾つかの研究によって既に明らかにされている通り、家族中心型の教育実践へと変化しつつあるものの、教育者の中には、児童との係わりにおいて高い能力を有しながら、親との係わりにおいてはある程度の能力しか発揮出来ないと自認している者もいる。
一般的に、初等及び中等教育を受けている障害児の親は、0-5歳児の親と比較して子供の教育に関する援助が乏しく、その情報入手も困難である。しかしながら、教育者の側では、親との連絡手段に多様性を持たせようとしており、その中にはインターネットと電子会議といったテクノロジーの選択も含まれている。
障害児教育における制度上の移行措置は2回あり、それらは個別障害者教育法のパートHからパートBへと3歳時に移行する際と、学校から職場へと移行する際である。この2回にわたる移行措置は言わば、親と教育者にとって協力体制の構築を可能とする公的な機会である。学校から職場への移行において親が関与することは、重大な影響をもたらすものと言えよう。つまり親は、子供が持つ将来の見通しや生活設計、そして自立に関して子供が懐く展望を大きく左右する存在なのである。
州は教育に関するトラブル及び問題を調停、解決すべく、調停またはそれに代わり得る争議調停手段を取り始めて来ている。1994年に39の州が障害児教育調停制度を実施し、残る11州中2州において、調停に関する正式な法的手続き作りが進展中であった。また、正式な調停制度のない州の多くも、何らかの調停手段を講じている。
障害児教育・リハビリテーションサービス局(OSERS)は、家族と学校問のトラブルを解決するために、調停及びその他の訴訟にまでは至らない手段を長らく支持してきた。
全米の州及び学校区の教育機関は、調停に基づく幾つかの方法を取っており、それらは調停者1名によるもの、2名によるもの、調停者グループによるものである。州によっては州教育事務所(SEA)の職員を調停者とする場合があり、また、外部団体に所属する者あるいは弁護士の経験を有する者や、障害児教育、通常教育の双方あるいは一方の教師経験を有する者を選ぶ場合もある。
州及び学校区の教育機関の多くは、親と教育者のパートナーシップ・プロジェクトを既に実行しており、これは、親と学校職員とのコミュニケーションをさらに図り、両者における摩擦及び対立を最小限に抑えることを試みるものである。また、学校及び学区の多くは、生徒と彼らを取り巻く大人のために、対立関係解消プログラムを実行している。(目次に戻る)
障害児教育局(0SEP)は、障害生徒とその家族に対する教育サービスの向上と、それに伴う教育成果と明らかに強く結びついている、個別障害者教育法(IDEA)における要件の準用を最優先事項として捉えている。0SEPは、各州内の生徒に対する教育サービスと、それによる教育成果に最も強く影響を与えるべく、各州における査察及び専門的立場からの支援活動を図っている。
1995-96年の学校年度において、0SEPは、IDEAのパートHの下、「嬰児と幼児へのプログラム」における要件の準用に対する査察を幾つかの州で開始した。0SEPの査察方法は、関係諸機関がパートHに対して懐いている注目の度合を反映するものであり、嬰児と幼児及びその家族に対する教育成果の向上を左右する要件の査察過程に焦点を当てたものである。この要件とは、対象となる子供の早期発見と社会啓発活動、教育サービス提供のあり方、及び3歳児におけるサービスの移行などである。
パートBの査察に関する13の報告書が1996年の会計年度には作成され、次の4つの領域について問題提起がなされた。即ち、生徒の学習指導及び職業教育への参加状況、学校から職場あるいはその他の自立活動への移行状況、法的保護の状況、そして州教育事務所(SEA)による総合的な管理責任の遂行状況などである。 指導方法及び指導計画の向上
過去10年にわたって、学習障害並びにそれに関連した学習上の問題を抱える生徒に対するカリキュラムは変化してきた。補習型の指導(主にドリル学習や基本的な学習スキル練習)に的を絞る代わりに、今や問題解決能力を養う指導が広く用いられている。
問題解決のスキルを教える際、学習者自らに推論させる代わりに、分かりやすい指導、つまり先ず何をするべきか、言うべきか、書くべきかについて分かりやすく指示を与えることに力点を置いた指導は、現在用いられている方法の一つである。事例の関連性について、分かりやすいやりとりを活発に行い、当を得た例題を系統立ててフルに活用するといった学習環境に身を置けば、生徒は次第に独力でその結びつきを般化させていくことが出来るのである。
認知心理学上の方法論から指導すると、生徒は一連の段階を経て、重要なものとそれ程重要でないものとを判断出来るようになる。これは、作文表現、読解力、数学間題の解法、そして科学的推論などを含めた学問の様々な領域に当てはめることが出来よう。生徒は、先ず何をなすべきかを教わり、それを実行していく過程においてフィードバックを次々と得ながら学んでいくのである。
生徒に興味を懐かせるような指導とは、型通りではない学習環境の様々な長所を引き出すものであり、例えば実習は、生徒と教師がある問題の検討に長時問にわたって取り組むことを可能にするのである。こうした方法によって生徒は、情報や知識を実社会での問題解決にどのように活かすことが出来るかを実感し、その結果、学習意欲が高まり、情報を各状況ごとに当てはめる能力を高めることも出来るのである。 (目次に戻る)
過去10年の間、障害生徒のニーズに応えるテクノロジーの活用は、著しく発展してきた。特に、重度の認知上及び身体上の障害を持つ生徒のニーズに応えるテクノロジーを、研究者達は開発し続けてきた。この領域における研究プロジェクトへの主要な財源を、障害児教育局(0SEP)は継続的に援助している。
重度の障害を持つ生徒は近年、特別製の鉛筆、、そして金属食器類といった「ローテク」による解決手段と、音声認識システム、単語予知システム、そして仮想現実空問技術といった「ハイテク」の進歩によって、自立の度合いを更に高めつつある。
学習障害、その他の認知上の障害、及び行動障害のある生徒は、一連のマイコン用に開発された特別製ソフトウェア利用の基本的なスキルを身につけつつある。また、テクノロジーは、全てのユーザーに対してコンピュータが応じられるよう、その性能を高めて来た。例えぱ、「ハイパーカード」は、ユーザーが太字表記のテキストをクリックすることで、他の情報、画像、あるいは音声とアクセス出来るもので、当初は障害生徒のために開発された方式である。そして今や、インターネットのユーザー全員に利用されている。 (目次に戻る)
教育成果:第四部は、嬰児と幼児及びその家族に現れつつある何らかの教育結果を現在評定中の研究に焦点を当てるものと、IDEAから援助を受けている生徒の卒業率を測定するものとの2つのモデュールより成る。
PHLSは、障害を持つ子どもがどのように社会生活を営んでいるか、彼らの家族が子どもの年齢に応じてどのように対応していくか、及びどのように各種サービスがそれらを援助していくかについて、長期にわたってデータを収集している。米国の20州各々につき3から5郡の中から選んだ3,300人の子供を全米の代表例とするサンプリング法が、その間採用されている。
子どもが持つ特性、つまり障害の種類、発達の諸領域(認知、コミュニケーション、運動、及び自立)における機能のレベル、子どもへのサービスの受給状況などが調査検討される。
子どもの家族に現れた教育結果を評定するために、PHLSはまた、直接かつ機能的な方法により、各家族のデータも収集することとなる。現在のところ、教育結果に関する重要な4領域は次のようなものと目されている。即ち、このような領域である。
障害生徒は、障害を持たない生徒への標準的な卒業証書と同一のものを授与されることで、あるいは付帯事項付卒業証書、修了証書、または彼らの教育プログラム修了を証明する資格認定書を授与されることで、高等学校卒業が認められる。
障害生徒の卒業率を算出する方法は数多くある。その1つは、17-21歳の障害生徒の総数を基に、卒業証書あるいは修了証書を手にして卒業する17-21歳の障害生徒のパーセンテージを算出するものである。この方法によって、1993-94年度から1994-95年度にわたって卒業証書あるいは修了証書を授与されて卒業した障害生徒のパーセンテージは、僅かながら27.9%から28.4%に増加した。
高等学校での学業修了率を算出する第2の方法は、卒業証書あるいは修了証書によって卒業する17-21歳の障害生徒数を、卒業証書を持って卒業する障害生徒数、修了証書を持って卒業する障害生徒数、21歳に達した障害生徒数、あるいは中途退学した障害生徒数によって割るものである。この方法で、高等学校を去った障害生徒の中で、学習プログラムを正規に修了した者の割合が得られる。1994-95年における修了率は71.8%であった。
1990年から1995年にかけて、障害児教育局0SEPが資金援助した3つの中途退学防止プロジェクトは、障害生徒が学校で学ぶ際の手助けとなる方策として、効果の高いことが認められた。これらに含まれるのは、生徒の行動を観察すること、生徒との絆を築くこと、協力関係を深めること、問題解決の方法を教えること、そして粘り強さの模範を示すことである。(目次に戻る)
これまで刊行されてきた議会年次報告書を読んだ人は,すぐに気がつくであろうが,第19回議会年次報告は、今までの年次報告書に比べて構成が大きく変わっている。障害児教育局(0SEP)は,短いモジュールの情報や過去の報告書の長い章を消去したりして,年次報告を再構成した。しかしながら議会年次報告の読者は,公表されてきた州や国のデータを必要としており、また付録の報告書をいろいろ利用してきた。そのような理由で、付録の統計資料はこれまでのフォマットを踏襲している。
この構成の変化の他に,第19回議会年次報告の読者は、今までの議会年次報告と間で重要な違いを見つけるであろう。障害のある生徒の教育結果に影響を与える様々なファクターを理解するフレームワークを提供する概念的なモデルは,この報告書を構成するうえで用いられている。学校のプログラムとサービス,生徒の特性,教育を提供する経緯と環境の3つの要因をセットしたので,障害児の教育成果は予測され,図1のようなモデルに示すことができる。この報告書は,それぞれの構成要素で組織されている。それぞれの章を通じて,教師や行政官や親や政策立案にあたる者は、有益な情報が得られることを期待すると確信する。図2のアウトラインは,それぞれの章で指摘される課題や問題点を列記している。
第一部の目的は,経緯と環境の要因が障害児のサービスの提供で重要なインパクトを持つことを強調し,社会に関する教育という動因力を列挙することである。教育に影響を及ぼす経緯と環境とは次のようなことである。
以上のようなモデルをみると,経緯と環境という要因は,生徒の特性に直接関連している。例えば,貧困,暴力,薬物使用は,障害児教育に深く関わり,障害の発生率に関係している。経緯と環境の要因は,学校教育プログラムとサービスに影響を与えている。この関連性の一例は,障害生徒の教育措置に与える教育改革運動である。学校プログラムに影響を与えると考えられる経緯と環境という要因の他の例では,薬物の乱用と貧困による学校における明確なストレスである。これらの要因は生徒の特性に影響を与えている。例えば,低所得の生徒は,慢性的な健康問題を持っているようである。同様に,低所得の生徒は,中間や高所得の生徒より,中途退 学する割合が高い。学校職員はしばしば,それらの問題の重要なものとして時間をかけて取り組んでいる。このストレスは,1つの要因であるが,全米の多くのところで、普通教育と障害児教育の改革に影響を与えている。(目次に戻る)
第二部では,生徒の特性,生徒の人口に焦点を当てて,提供されている。学校教育とサービスは連邦政府や州の法律のような経緯と環境の要因に影響を受けず,障害のある生徒の特性にも影響を与える。早期介入サービスを受ける障害嬰児や幼児に焦点を当てたモジュールは,IDEAのパートBによるサービスを受ける児童,就学前プログラム,IDEAのパートBのサービスを受ける生徒である。学校はいろいろなニーズに応じたプログラムをデザインしなければならない。注意欠陥や多動性障害の生徒の増加は,こうした生徒のニーズに応じた新しい措置が提供されたからである。
第三部では,措置や教育サービス,学校プログラムが関係するモジュールが含まれている。それらの問題は州全体にわたっての調査で障害生徒のインクルージョンの関係が記入されている。第1番目には,生徒の措置のデータが説明されている。第2番目には,障害のある生徒の一体化教育に関する州全体の評価が述べられている。第3番目のモジュールは,障害のある生徒の家族と,専門家の望ましい関係の記述である。このモジュールは望ましい専門的な養育が重要であると強調している。しかしながら,第4番目のモジュールとして,望ましい関係は常に起こるとは限らないとしている。このモジュールは,不服申し立てに対する解決のいろいろな方法を焦点を合わせている。不服申し立てに対する解決方法は、全国的に用いられている。IDEAの施行に関する州の査察の障害児教育局の努力は,第5番目のモジュールを述べている。成果の上がっている教育措置やテクノロジーの紹介は、このセクションに含まれている。
最後に,このモデルの成果は障害生徒への教育の結果である。これらの結果は全ての教育措置の要素に影響を及ぼしている。障害嬰児と幼児の教育サービスの提供の種類は,例えば,発達段階,障害生徒の中途退学率,卒業必要条件に影響を与える。2つのモジュール,パートHの縦断的な研究,中等教育の修了はこのセクションに含まれている。
過去20年間,IDEAは障害生徒に生活に対し,積極的なインパクトをもたらしてきた。意義深い発展があり,教育の機会はかつては利用できなかったものが,今日では障害生徒の教育に役に立っている。しかしながら,なお重要な課題は残っている。いろいろな進歩にもかかわらず,障害生徒に対する教育成果の達成は、まだまだ満足のいくものではない。さらにサービスを必要としている人口や新しい社会問題が、教育システムそのものに影響を与え,教育は大きな変化をもたらしている。障害生徒の教育成果の改善は,さらに新しい学習指導のアプローチを要求し,IDEAの完全な実行が要求されている。
さまざまな情報資源がこの報告書に用いられている。先の1997年修正個別障害者教育法の引用や法令の要求にも注目してほしい。いくつかのモジュールは、障害児教育局の研究センターによって特定され,個別的に記述されている。他のモジュールは、障害児教育局と公民権局の職員によって調査されている。最後にいくつかのモジュールはWestatによって取り上げられた。また全てのモジュールは連邦教育省の多様な段階で再検討されたことを記す
。(目次に戻る)
以上