Repor to Congress


アメリカ合衆国

個別障害者教育法(IDEA)第18回議会報告書

Eighteenth Annual Report to Congress on the Implementation of The Individuals with Disabilities Education Act, 1996. U.S. Department of Education, Washington DC.

1997年10月1日更新

翻訳/編集者 志村 洋 国立特殊教育総合研究所  編集者 成田 滋 兵庫教育大学

shimura@nise.go.jp    naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp

アメリカ合衆国個別障害者教育法(IDEA)第19回議会報告書

アメリカ合衆国個別障害者教育法(IDEA)第17回議会報告書

目次


年次報告の概要

第1章:援助を受けている障害のある学齢児・生徒、修了の形態、並びに障害児教育およびその関連援助に携わる職員

第2章:障害のある就学前児童及び乳幼児のニーズに対する対応

第3章:障害のある児童・生徒の居住地及び地元の学校への完全参加の前進

第4章:都市中心部における障害のある児童・生徒のニーズの充足

第5章:全障害児の教育に向けての州及び地方への支援


年次報告の概要

この文書は、個別障害者教育法(IDEA)の施行状況に関する連邦議会への第18回報告書である。この立法の趣旨は、以下のようになっている。

(1) 州に対して障害のある乳児及び幼児、並びにその家族に対する早期療育援助の育成を図るために援助、併せて障害のある児童及び生徒の無償で適切な公教育を保障するための援助を提供するすること。

(2) 0歳から21歳までの障害のある児童及び生徒権利が保護されることを保障すること。

(3) 障害のあるすべての子供に早期療育援助と教育を提供するために州及び地方自治体を支援すること。

(4) 障害のある子供に対する早期療養援助や教育の実施状況とその効果性を評定し、かつ保障すること。

本報告は、同法の施行にもとづく諸活動の具体的内容並びに同法の精神が及ぼす実効性と効果性の評定について述べたものである。

第1章:援助を受けている障害のある学齢児・生徒、修了の形態、並びに障害児教育およびその関連援助に携わる職員

障害児教育課(OSEP)に提出さた州の年次統計報告に基づく全国統計とその分析結果を掲載した。さらに、障害児教育に関する連邦予算の動向についての展望の概要も載せた。

◆ 1994年米国学校改善法(IASA)は、1965年初等中等教育法(ESEA)が改訂されたもので、それによて初等中等教育法からその第1章規定の障害児事業が削除され、障害があると認定されたすべての児童・生徒のための交付金はこのIDEAに含められた。この修正に伴って援助される児童・生徒の数の報告の仕方が変更になった。

◆ IDEAパートBで承認された1995年の交付金額は8%増額され、1994年の2,149,686,000ドル(236,465,460,000円:110円換算、以下同じ)から1995年には2,322,915,000ドル(255,520,650,000円)になった。これには、初中教育法第1章規定の障害児事業で承認された82,878,000ドル(9,116,580,000 円)が含まれる。しかしながら、総額の増加は、単にこのふたつの事業計画の統合によるものだけではない。児童・生徒ひとり当たりの配当額は、1994年の413ドル(45,430円)から1995年には418ドル(45,980円)に増えた。

◆ 1994ー95教育年度において、IDEAパートBの援助を受けた3ー21歳までの児童及び生徒の数は、5,439,626人であった。この数は前年度比で3.2%の増加である。

◆ 1994ー95教育年度において、3-5歳の子供の数が最も増加し(6.7%)、次いで12-17歳の生徒の数が増加した(3.6%)。18-21歳の生徒の数は1.2%まで減少した。また6-11歳の児童の歯数は、中庸の増加で2.5%にとどまった。

◆ 6-21歳の障害のある児童・生徒のうち、学習障害を伴う児童・生徒割合は、年度第2年目も51.1%と同じ水準を維持した。残りの生徒のうち41.1%の生徒の障害構成は、発話・言語障害(20.8%)、精神遅滞(11.6%)、及び重度情緒障害(8.7%)であった。過去5年間を展望すると、1990-91年度から1994-95年度にかけて、IDEAパートBのもとで援助を受けた児童・生徒の数は、12.7%に増加した。最も増加したのは、健康障害の児童・生徒の数であった。この障害種の増加のほとんどは、注意欠陥障害と診断された児童・生徒の数の増加によるものである。

◆ 過去5年間に、14歳以上の修了証書ないし卒業証書を手にした障害のある生 徒の数は、安定している。1993-94年度の14-21歳の障害児教育の生徒で卒業証書を授与されて卒業した者が多いのは、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、及び外傷性脳障害のある生徒たちであった。精神遅滞及び盲聾の生徒の多くは、修了証書か付帯事項付き卒業証書によって学業を終えた。

PASS(Performance assessment for Self-Sufficiency: 障害のある生徒の教育機関修了に伴って求められることが予想される援助を調べるために策定された「修了関連援助必要度評定」)の第2回実地調査のデータが、2、200名以上の修了生を出した8つの州から得られた。第2回実地調査の結果も、第1回の実地調査と同様の結果であった。すなわち、最も一般的な基本的ニーズはケース管理(総標本数の80%)で、教育の選択(同51%)と後期中等教育の支援に関する援助(49%)がそれに次いで多かった。

障害のある児童・生徒の援助に携わる職員の数は、援助を必要とするそうした児童・生徒の数の増加と連動してきた。1993-94年度では6-21歳の児童・生徒の援助に当てるために雇用された教員の数は、6.5%増えて、331、392人に達し、また求人の必要がある教員数(無資格者雇用ないし空席)は4.4%減って、24、697人になった。雇用数が最大の障害児教育教員の種別は2つあって、顕在性学習障害専任及び非重度障害専任であった。

第2章:障害のある就学前児童及び乳幼児のニーズに対する対応

本章は、就学前児童補助金事業(パートB619節)並びに障害のある乳児及び幼児に対する早期療育援助(パートH)の最新実施状況を示すものである。州の報告資料及び障害児教育課交付金による0歳から5歳までの障害のある子供に対する活動計画が記載されている。

◆ 1995会計年度において、議会は就学前児童補助金事業費として360,265,000ドル(39,629,150,000円)を承認したが、これは1994会計年度の同補助金事業費339,257,000ドル(37,318,270,000円)の6.2%増となっている。しかしながら3ー5歳の援助を受けている子供の数は、1995年度には前年の491,685人から6.7%増えて、524,458人になっている。この数には、1994会計年度の初中教育法第1章規定の障害児事業の援助を受けていた16,000人以上の子供が含まれる。

◆ 1993-94教育年度には、3ー5歳の障害のある子供の援助のために22,000人以上のFTE障害児教育教員が採用されたが、これは1992ー93教育年度に比べてほぼ19%の増となっている。交付金による採用定員の2%強が充足されていない。また、それ以外の8.5%の定員枠を資格未取得教員で補っている。有資格教員のほぼ85%が前年度からの雇用更新であり、資格未取得教員の66%以上が1992ー93教育年度からの雇用更新であった。

◆ 1993ー94教育年度には、就学前児童の48%が通常の学級で、31%が固定式特殊学級で、9%が障害児教育諸学校で援助を受け、そして残りの2.3%が収容施設への入所や訪問指導事業の対象となった。

◆ 第619節プロフィールで規定されたような子供やその家族の円滑で効果的な移行を促進させる援助として、25の州と遠隔地域は、子供が3歳の誕生日を迎える前までに第619節に規定する交付金を活用できるという政策を打ち出したか、打ち出す準備を行った。また、23の州と遠隔地域はパートHに規定する交付金を3歳の誕生日以降に活用することを承認する政策を打ち出している。それぞれのパートHによる教育事務所間相互協力協議会(ICCs)を通して相互協力も達成された。14の州と遠隔地域は、0歳ー5歳の子供に限定したICCsをもっている。さらに多くの州は、州教育事務所(SEAs)が、援助の重複をなくしかつ限りのある資源を最大限に活用するための教育事務所間の合意を取り付けたと報告している。

◆ 1995会計年度には、総額315,632,000ドル(34,719,520,000円)がパートH事業費に当てられたが、これには1995会計年度以前の初中教育法第1章規定の障害児事業のもとで援助を受けていた、個別障害者教育法の適用外の子供たちの補償費としての34,000,000ドル(3,740,000,000円)が含まれている。おの総額は、1994会計年度の253,152,000ドル(27,846,720,000円)をほぼ25%上回るものである。

◆ 1994年12月1日現在で、早期療育援助を受けている乳児及び幼児の総数は、165,253人(0ー2歳の乳幼児総人口の1.4%)まで増加した。この総数には、初中教育法第1章規定の障害児事業の適用資格があって個別家族援助計画(IFSP)の援助を受けていた乳幼児、並びにその他の事業計画における早期療育援助を受けていた乳幼児とが含まれている。

◆ すべての乳児及び幼児の大多数は、3つの援助形態のひとつで援助のほとんどを受け続けている。すなわち、その援助形態は、在宅での援助(47%)、早期療養学級での援助(30%)、及び通所施設での援助(16%)である。援 助適用資格のある乳児及び幼児の援助で最も一般的に実施されている5つの援助は、次の通りである。すなわち、(1)特別学習指導、(2)家族訓練、カウンセリング、および訪問指導、(3)発話・言語治療、(4)理学療法、および(5)作業療法である。

◆ 障害のある乳児及び幼児並びにその家族に対する早期療育援助の実施に伴って雇用された、ないしは必要とされると報告された職員の15の職種のうち、職員数が最大の3つの職種は、障害児教育教員、訓練助手、発話・言語治療士である。

◆ 多くの州は早期療育援助の州内実施組織の拡大に取り組んだ。その取り組みには地方のICCsの設立も含まれる(41州)。また州は種々の方策を考えて、有資格職員の増員に努めた。

◆ 障害児教育課(OSEP)は、革新的な活動計画を継続的に支援している。1995会計年度において、障害のある子供の早期教育事業は125件の活動計画を支援した。それらには、公開授業計画41件、遠隔地援助計画47件、現職研修計画27件、研究機関援助計画4件、州内データ・システム計画5件、および全国技術援助センター計画1件が含まれる。

第3章:障害のある児童・生徒の居住地及び地元の学校への完全参加の前進

本章では、同法の実施がもたらした障害のある児童・生徒の完全参加の前進に光を立てる。ここに記載するデータには、障害のある児童・生徒の学校教育修了後をとり上げたいくつかの資料と6ー21歳の児童・生徒の教育措置に関する州報告が含まれている。OSEPの州内システム改造費補助金を受けた5つの州に対する現地視察報告の要約も含まれる。

◆ 1993ー94教育年度には、初等・中等教育諸学校の児童・生徒のほぼ12%が障害児教育援助を受けた(1975年に障害児教育事業が起こされて以来44%の増加)。そしてその児童・生徒のうちの95%は通常の学校施設で援助された。概観すれば、障害のある人たちの教育レベルは向上し、単科大学新入生で障害があると報告されたの学生の割合は、1978年の2.6%から1991年の8.8%へと3倍になった。また、IDEAの施行以来年々、障害のある人々の雇用率も向上している。

◆ 障害児教育対象児童・生徒の移行に関する全国縦断研究(NLTS)の結果によれば、通常の教育と中等教育の職業教育に参加する時間は、学校教育の積極的な成果と関連している。たとえば、通常の教育を全うした中等教育課程の生徒たちは、雇用、生活自立、及び社会参加の率が高かった。

◆ 良質な教育と当を得た支援とが、達成感に満ちた学校経験に資する本質的な要素である。また、障害児教育だけという政策がすべての児童・生徒に利益をもたらすことはない。すべての児童・生徒のニーズに合致するように仕組まれた幅広い援助の選択肢を用意することが、最も効果的な教育のあり方であり続けるであろう。

◆ 6ー21歳の障害のある児童・生徒のデータによれば、過去の数年間の間に通常の学級で学習をしているそうした児童・生徒の割合は高まってきた。一方リソース・ルームで学習しているそうした児童・生徒の割合は低下してきた。また、ほかの教育措置を講じられたそうした児童・生徒の割合は、変っていない。

◆ それぞれの州の報告によれば、6ー11歳の障害のある児童は通常の学級で学習している割合が大きい。しかし12ー17歳及び18ー21歳の生徒では、その割合は減少する。このパターンは、顕在性学習障害を除くすべての障害種に共通である。通常の学級で学習している18ー21歳の学習障害のある生徒の割合は、12ー17歳の学習障害のある生徒に比べて高い。

◆ 教育措置のパターンは障害によて異なる。発語・言語障害のある児童・生徒の大多数は、通常の学級で援助を受けている。学習障害、肢体不自由、重度情緒障害、及び外傷性脳障害のある児童・生徒は、一般的には通常の学校に措置されるが、通常の学級やリソース・ルーム、あるいは固定式特殊学級に分散している。固定式特殊学級への措置は、精神遅滞、自閉症、および重複障害のある児童・生徒に最も多い。しかしながら、リソース・ルームへの措置もまた、精神遅滞や重複障害のある児童・生徒に共通してとられる援助になっている。

◆ 1987年から1990年にかけて、重度障害のある児童・生徒についての物理的、社会的、及び教科学習的な統合を進めるために、16の州が5年間の州内システム改造費補助金を受けた。それによって重度障害のある児童・生徒に対する効果的な援助の提供、それらの子供の両親の対応能力の向上、並びに両親、児童・生徒、及び援助提供者との間の協調関係の促進に当たる州及び地方教育事務所の対処能力が高まった。

◆ 州内システム改造費補助金を受けた5つの州、すなわち、コロラド州、ミシガン州、ペンシルバニア州、バーモント州、及びワシントン州の現地視察が行われた。いくつかの基底要因、すなわち州財政当局の支援、責任者間の連携、改造に不可欠な前提条件の存在、及び地方文化といった要因が、達成された改造の範囲及びその様式に影響していた。

◆ 改造に対する州教育事務所の支援は、州内システム改造の理解を深める決定的要因であった。一体化事業計画立案に向けた州の支援を示す指標となるのは次のような事項であった。すなわち、システム改造活動計画と州教育事務所との間の強力な結びつき、前向きな州の政策、システム改造に結びつく州独自の改革の取り組みの存在、分離学校ないし地域センター、あるいはその 両者の閉鎖と児童・生徒を地元の学校に戻す州の取り組み、および連邦政府のシステム改造費補助金を補う州財源の確保である。

◆ 視察したどの州も相対的にみれば、同じような活動計画を実施していた。しかしながら、それぞれの州がシステム改造の方向に特色の違いを打ち出していた。それぞれの州は、最善の実施に向けた援助の枠組みを開発し、あるいは修正した。また、一体化事業計画の策定を促進させるために指定された学校ないし学校区に対し情報技術の支援をし、現職研修やそのほかの伝達方法を通してシステム改造の取り組みに関心を向けさせ、かつ援助前訓練を改革した。

◆ システム改造の性格も、州毎に違っていた。コロラド州とバーモント州は、とくに障害のある児童・生徒の一体化を促進するように州の政策を変更して成功を収めた。ペンシルバニア州は、それまでの地域障害児教育支援施設の直接援助機関としての役割を変えて、情報技術の提供、及び、地域障害児教育事業から生徒を居住地の同事業へと切り替えるための機関という役割を与えた。ワシントン州とペンシルバニア州とは、とくに連邦交付金をてこにして情報技術支援の普及に成功した。バーモント、ペンシルバニア、およびミシガンの各州は、補助金の交付期間中に、かなりの数にのぼる児童・生徒をより一体化が進んだ教育形態に移行させたと報告した。そしてバーモント州は、通常の教育援助を強化することによって、障害児教育を受ける児童・生徒数を減少させた。これらの5州は、もれなく州の住民の一体化に対する意識を高めた。

◆ ほとんどないしすべての州が取り組んだ課題は、次のようなものであった。すなわち、システム改造を指定地区から始めてそれをその他の地方に広げること、中等教育課程においてシステム改造を制度化すること、一体化教育の形態で学習している情緒障害の児童・生徒のニーズを充足すること、及び訓練助手の役割規定を適正化すること、が課題であった。

第4章:都市中心部における障害のある児童・生徒のニーズの充足

本章では、都市中心部における障害児教育事業の特色ある先進的取り組みを探る。本章は、全米の都市中心部における障害児教育情報を収集して構成したものである。

◆ 都市中心部も非都市中心部もともに、障害児教育の援助を受ける児童・生徒の割合は類似しており、それぞれ10.4%と10.8%であった。両者の地域性の間には、障害についてのばらつきはほとんど存在しなかった。

◆ 都市中心部に居住する児童・生徒の30%は貧困であり、非都市中心部のそれは18%であった。全国縦断研究(NLTS)の中等教育課程の生徒に関するデータは、都市郊外ないし郡部に居住する障害のある生徒の家庭と比べて、都市中心部のそうした家庭は貧困であることを示唆している。

◆ 都市中心部の学校区は、非都市中心部の学校区に比べて、英語能力の乏しい生徒を在籍させている割合が高い。またデータは、都市中心部の学校区で障害児教育の援助を受けている生徒の5%は英語能力の乏しく、一方非都市中心部ではそれが1%あることを示している。

◆ 都市中心部の公立学校は、非都市中心部の公立学校に比べてほぼ2倍のアフリカ系米国人及びヒスパニックスの生徒を在籍させている。障害児教育を受けているアフリカ系米国人生徒の割合は、総生徒人口に占める彼らの人口比に比べて高い。ヒスパニックスの生徒については、いくつかの州及びいくつかの障害種において、その人口合計に占める彼らの人口比を超えており、人口比に対応していない。一般的に、障害児教育に占めるアジア系米国人の生徒の割合は、総人口に対する彼らの人口比よりも低い。

◆ 多くのアフリカ系米国人及びヒスパニックスの生徒が都市中心部の学校に集中し、障害児教育に占める彼らの比率も過剰であると報告されているとはいえ、地域性の異なる両者の地域には、障害児教育の援助を受ける生徒数の割合について明らかな違いはなかった。NLTSのデータの解析では、障害児教育におけるアフリカ系米国人生徒の不釣り合いな出現率は、相対的に低い収入と貧困に起因する障害の両者との間に関数関係をもつ。収入で説明できる障害種は、発話・言語障害、視覚障害、並びに精神遅滞である。

◆ 個別障害者教育法並びに同施行規則は、障害児教育評定の手続きは差別のない方法で実施するよう定めている。しかしながら都市中心部の学校ないし学校区では、障害児教育適用児童・生徒の認定や評定が、貧困、人種/民族、及び乏しい英語力に対する取り組みが原因で混乱させられている。障害児教育における少数民族の児童・生徒の不釣り合いな出現率には、障害のある児童・生徒を認定する時に用いる知能テストが中心的な関わりをもっている。

◆ 最近の研究によれば、英語能力の乏しい児童・生徒については、生徒の成績が障害のためなのか、中核民族の言語や文化の理解ができないためなのかを区別するのがきわめて困難であることを示している。この困難さが、児童・生徒の障害の正確な評定を著しく妨げている。

◆ 市民権庁のデータによれば、都市中心部に居住する障害のある児童・生徒は、制約の多い環境にすんでいる。NLTSのデータも、都市中心部に住む障害のある中等教育課程の生徒は、都市郊外のそうした生徒よりも通常の学級で過ごす時間が少ないことを確認した。

◆ NLTSのデータでは、都市中心部に居住する障害のある中等教育課程の生徒は、郡部ないしは都市郊外に居住するそうした生徒に比べて、教科学習を通常の学級で行う割合がわずかに高いことが示された。

◆ 障害児教育教員は、とくに都市中心部において不足している。また学校も多岐にわたる職種の労働力を勧誘するのに成功していないし、過去20年以上にわたって大学卒業後教職に就いたアフリカ系米国人の割合は、白人に比べて低下の一途をたどっている。

◆ 障害のある子供の親に関して報告した2つの国内調査データは、それぞれ異なった結果を示した。最近の人口調査データでは、5ー17歳の子供のいる家族について、家族に障害児がいると答えた白人系米国人の家族(5.6%)は、アフリカ系米国人の家族(4.6%)やヒスパニックス系米国人の家族(2.7%)よりも割合が高い。また、全米家族最終学歴調査データでは、3歳から第2学年までの子供の家族が含まれているが、白人系とアフリカ系の米国人の人口構成比は、それぞれ12.4%と12.1%であり、ヒスパニックスのそれは14.4%であった。両者の調査データを組み合わせると、障害児がいると答える率は、所得水準が上がるにつれて減少し、また人種・民族別の人口構成比は高所得者層では同じになる。

◆ NLTSのデータでは、都市部全域の青年は都市郊外や郡部の青年よりも高校の卒業者が少なく、中途退学者が多い傾向にある。都市郊外に住む障害のある青年で、2年課程以上の中等教育諸学校を終え、調査前年までに何らかの後期中等教育課程に進んだと回答した者の割合(17%)は、都市部全域のそうした青年(14%)や郡部のそうした青年(12%)よりもわずかに高かった。

◆ 都市部全域に居住する障害のある職業青年は、都市郊外や郡部に住む職業青年よりも若干収入が多い。都市部全域、都市郊外、及び郡部のきわめて多くの青年が手工業従業員や食堂従業員に雇用されている。

第5章:全障害児の教育に向けての州及び地方への支援

本章では、障害のあるすべての児童及び生徒の教育に当たる州並びに地方の教育機関を支援するための障害児教育課(OSEP)の取り組みについて述べる。またOSEPの点検システムの改良についても言及する。

◆ OSEPは、州、高等教育機関、障害のある児童・生徒とその家族、擁護団体、その他と手を携えて、子供の実り多い教育成果を保障するための業務を遂行している。OSEPはまた、連邦議会とともに法の命ずる事項の実行を保障するための活動とその監査責任の重大さを十分に認識している。

◆ OSEPは、成果と総合的な助言・指導との強い関連性を維持するために、次のような精神をもって事に臨むことを決定した。すなわち、(1)個別教育計画(IEP)により決定された適切な支援を準備して、すべても教育事業・援助に関わること、(2)障害のある児童・生徒の移行に必要な援助を彼らが16歳に達する前に明示すること、及び(3)最も制約の少ない教育環境(RLE)を実現することである。

◆ 過去3年間に、OSEPは集中的に点検システムの改善と強化に努めてきた。その結果、研究との連帯、組織の革新、および情報技術支援において、組織的な変革を促し、障害のある児童・生徒のこれまで以上の教育成果や法の実施の推進につながった。

◆ OSEPは、研究、普及活動、公開講座、システム変更、およびその他情報技術支援活動を通して、州及び地方教育機関が教授法や学習活動を改善するための支援を行った。

◆ OSEPは、強力な成果還元システムが保障されているかどうかをみるうえで、監査過程における利用者情報の入手努力、学習者の成果が継続的に向上するために最も必要な条件の整備、障害認定とその更新の迅速性、および障害のある児童・生徒の援助活用とその成果の向上につながる学習活動の必要条件や学習計画の更新の柔軟性に着目した。

◆ 1994ー95教育年度において、OSEPは14の州とプエルトリコ、及びギャロデット大学予科課程の総合的な現地監査を行った。OSEPは、1995ー96教育年度には11の州に対する総合的な現地監査を継続中である。

◆ 1995教育年度には、OSEPは、21種類の監査報告書を作成した。それらでは次の領域について報告された。すなわち、教科学習や職業教育への児童・生徒の参加状況、障害のある児童・生徒及びその父兄の法的保護の状況、及び州教育事務所(SEA)の総合的助言・指導の責任性に関する検討の状況である。