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    結果と考察                            


    結果の箇所は、実験的な研究の場合は集計した素データと統計処理したデータの
    要約を記します。まずは、実験上の新しい結果や発見などを短く記述します。そ
    れを裏付けるデータもつけ加えます。結果がどのような意味を有するのか、それ
    がどのような影響をもたらすのかなどの知見はここでは述べる必要はありません。

    図表
    図や表は、説明テキストに勝る場合が往々にしてあります。一目瞭然で読者に分か
    りやすくなるからです。くどい説明よりはずっとましです。統計の表では、読者が
    追試できるデータ、すなわち、サンプル数、平均値、分散(標準偏差)、を必ず入れ
    ます。一つの表と図の大きさは、そのページの1/3を限度とします。図表だけでそ
    のページを独占するのは見苦しくなります。代表的でかつ最小限必要な図表だけに
    とどめます。その他の図表は巻末に付録として載せます。

    図表は、それだけでは読者に説得するには十分ではありませんので、必ず説明の
    テキストを加えます。テキストはどの表か図に対応するのかを明確にします。
    なお、表のタイトルは表の上部に、図のタイトルは図の下部に付けるのが普通です
    。この場合、TableとかFigureの英語表記を使っても構いません。

    表の例1

                     Table 1  被験者のテスト結果
       ----------------------------------------------------------------
                     tes1            test2
       ----------------------------------------------------------------
       群   人数  平均  SD   平均   SD
       ----------------------------------------------------------------
       重度  24  139.1    34.2      36.2        4.1
       中度  36  143.1    26.4      58.8      13.3
       ----------------------------------------------------------------

    その解説
    以上のような記述統計の場合の表では、人数、平均、SDを必ずいれます。この3つが
    ありますと、統計の検定の追試ができます。例えば、t検定は上のデータから実施する
    ことができます。

    統計処理
    記述統計の表記では、平均値、中央値、最頻値、分散(標準偏差)、歪度、尖度、範囲、
    度数分布、パーセンタイルなどを記します。推測統計を使った結果の表記では、tテス
    トやFテストにせよ、関連した情報はすべて網羅するようにします。すなわち、t(F)の
    値、自由度、有意水準、片側(両側)検定などです。推測統計の表記は,ほかの読者が
    追試できるための資料となります。結果の説明の前に、検定の有意水準(αレベル)と
    して5%を使うことを宣言します。

    一度5%水準を宣言したら、検定結果をみて5%と1%水準を任意に使い分けてはい
    けません。5%水準で統一します。

    統計処理の記述 その一
    分散分析の結果、被験者群の主効果(F(1,76)=18.51, P<.01)と訓練条件の主効果
    (F(1,76)=5.37, P<.05)がともに有意であった。このことは、健常児群よりも中度
    精神薄弱児群の誤反応数が多く、非訓練条件よりも言語的手がかり訓練条件の誤反
    応数が多いことを示している。さらに、非訓練者群と訓練条件の交互作用も有意で
    あった(F(1,76)=5.68, P<.05)。このことは、次のことに基づいている。すなわち、
    健常児群は両訓練条件間に有意差がないが(F(1,76)=.002, n.s.)、中度精神薄弱児
    群では有意差がみられ(F(1,76)=11.06, P<.01)、非訓練条件に比べ言語的手がかり
    訓練条件での誤反応数が多いことである。また、非訓練条件においては両被験者群
    間に有意差がみられないが(F(1, 76)=l.84, n.s.)、言語的手がかり訓練条件では
    中度精神薄弱児群は健常児群に比べ誤反応数が有意に多い(F(l, 76)=22.36, P<.01)
    ということである。

    解説
    統計処理の結果を文章表現すると以上のようになるという例です。
    (F(1,76)=18.51, P<.01)ですが、(1,76)は自由度であるdf=1/76ということと
    同じです。Fの値が18.51ですから帰無仮説は棄却されます。P<.01は1%の有意
    水準であることを示します。この場合は、Fの値によらず5%水準で統一すべきと
    ころです。(F(1,76)=.002, n.s.)とは、Fの値が小さく、訓練の差が見られなかっ
    ので帰無仮説は棄却されなかったようです。n.s.とは"not significant"の略で、
    有意ではないという意味です。以上の表記を参考にしてください。

    統計処理の記述 その二
    各クイプの利き手の被験者の理解得点、表出得点の平均をあらわしたのが Table 5
    である。右利き型以外の各タイプの被験者数が少いので、利き手のタイプを右利き
    型とそれ以外の非右利き型に二分して比較する。理解得点について利き手タイプ
    (2)*MA群(2)の分散分析を行った所、MA群の効果のみ有意であり(F=5.78, 
    df=1/46、P<.05)、タイプの主効果と交互作用は有意ではなかった。MA群の差に
    ついて比較した所、右利き型についてのみMA3歳群の方が測定不能群より有意に高
    得点であった(t=2.07, df=39, P<.025)。表出得点についても同様な結果が得られ、
    MA群の主効果のみ有意であった(F=12.23, df=1/46, P<.01)。

    解説
    (F=5.78, df=1/46、P<.05)という処理結果の表記法もあるという例です。例一
    と変わりがありませんが、自由度dfの表記が少々違っているだけです。このような
    表記でもよいのです。(t=2.07, df=39, P<.025)は2群間の平均値の検定の結果
    を示します。P<.025という表記は、両側検定を示すようですが、本来ならば、
    P<.05とすべきところです。



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