Syllabus

1996年度 障害児教育情報処理講座

兵庫教育大学



  English Syllabus
担当: 成田 滋(教授)

○目的: 障害児の社会的自立や余暇活動に役立つテクノロジーの活用と周辺機器の使い方を習得する。
さらに教育情報の統計的な処理、情報受信や発信を含めた教育情報の活用をインターネットを使って習得する。

○単位数: 2   ○方法: 講義・実習  ○開講日: 毎週木曜日4-5時限
1996年4月18日より開始 

講義の詳しい日程:講座の形式:  講義半分、実習半分とする。

○成績評価の仕方  テスト2回(30点)、課題レポート(A4で10枚)(50点)、出席(20点)の合計
           なお海外研修(10点)、学会一発表(10点)も課題レポートの点に含める。

○その他: 随時外部より講師を招いて実習する。

○招聘予定講師:
大杉成喜教諭 (滋賀大学教育学部附属養護学校)
中島康明教諭 (大阪教育大学附属養護学校)
多田幸浩教諭 (大阪市立聾学校)
生島早苗氏(アクセスインターナショナル)
   その他  

              障害者情報サービス



以下の文書は講義と実習の情報(レファレンス)です。
講義の目次
  はじめに
  I. 障害者とコンピュータの利用     1 障害とは     2 障害者とアクセシビリティ    3 障害とヒューマンインターフェイス
  II. 障害者とMacintosh    1 障害者が必要とする周辺機器の強化    2 障害者と生産的な生活の増大    3 視覚障害      視覚障害とインターフェイス    4 聴覚障害      聴覚障害とインターフェイス    5 動作性障害      動作性障害とインターフェイス
  III. 情報機器「やさしさ」ガイドライン
  IV. ”さりげなく、やさしい”テクノロジ
  V. おわりに
  VI. 参考資料とリーディングアサインメント
  みなさんからのご意見・提案

はじめに

 情報に関連するテクノロジは、情報処理や提供ツールとして急激に普及し、広く社会一般や個人で使
われてきています。視覚、聴覚、移動などに障害のあるユーザーも例外でなく、さまざまな利用上の支
援、たとえばソフトウエアやハードウエアなどに関する情報の入手によって恩恵を受けれるようになっ
てきています。
 現在、障害者個人で購入できるすぐれた機器が開発されています。このような情報へのアクセスと活
用を支援する機器の開発は、その効果的な利用よりもはるかに先をいっています。こうした事態は、系
統的な関連情報収集システムの不足や、障害者のニーズに対応する製品に関する評価システムの欠如に
由来していると考えられます。我が国ではMacintoshに関しても同様のことが指摘できます。講義では、
こうした状況を改善することを意図し、開発とその活用のギャップを埋めながら、障害者のいろいろな
情報処理や活用に対応するために意図されています。その基本的な考え方は、次のようになっています。
すなわち、“コンピュータは、障害の有無を問わず、すべての人々にマスメディアや情報に接触できる
基本的な人権を尊重しその権利を行使できる機会を提供します。”この講義では、主としてMacintosh
を使って次のような環境が障害者にもたらされることを明確にするものです。 
 1) 障害の有無を問わず、いろいろな情報や情報活用手段に接し、それを利用できること
 2) 障害の有無を問わず、情報の操作のために周辺機器などを使って作業を行ない、所期の成果を上げ
  れること
 3) 障害の有無を問わず、通信機能にアクセスし、それを利用できること

 本講義では、学生諸君はもちろん、障害者の社会的な自立や有益な余暇活動を支援する立場にある人々
を対象として行われます。例えば、情報へのアクセスを全体的に考えねばらない人に、機器やソフトウ
エア購入の計画を作成するにあたっての有益な情報が網羅しています。個々の障害者ユーザーとの相談
や助言にあたって、活用しうる身体機能のパフォーマンスを高めるための鍵となる情報を網羅します。
今や障害の情報活用については、多くの解決方法があって、それにより社会への参与ができることをこ
うした情報から理解できます。本講義から、「主としてMacintoshを取り巻くさまざまなテクノロジが、
障害者の情報への活用を可能にする触媒的役割を果たす」ということを知っていただければ幸いです。

I. 障害者とコンピュータの利用

1  障害とは

 人は誰もが個性的存在でありたいと考えています。障害者も同じ欲求を持っています。ここで忘れて
ならないのは、誰一人として障害の無い者はいないということです。障害の違いといえば、それは障害
の程度でしかありません。障害、それはだんだん耳が遠くなる、暗い部屋の中での文字の読みにくくな
る、電車に乗るとき階段がつらくなる、外国旅行のとき言葉に不自由する等々、数えきれないほどあり
ます。
 ひるがえって、障害とはなにかを考えてみましょう。障害には三つのレベルがあります。第一は、
「機能形態障害」といわれるものです。すなわち、脳性麻痺などなんらかの原因が働いて疾患にかかり、
身体のいろいろな部分が働か無くなり、好ましくない身体上の変化があらわれることをいいます。第二
は、「能力障害」といわれるものです。機能や形態障害の結果として引き起こされる障害のことで、活
動を遂行する能力の制限ないし欠如のことです。第三は、「社会的不利」、あるいはハンディキャップ
です。機能形態障害や能力障害のゆえに就学、就労、文化レクリエーション活動などの機会が障害によっ
て奪われたりする状態をさします。
 ここで読者に一つの質問を出すことにします。今月になって車椅子に乗っている人を巷で何人見かけ
たでしょうか。おそらく大抵の人はほとんど見かけなかったと答えるにちがありません。車椅子で気軽
に出掛ける環境が整っていないからです。一人前に仕事が出来る能力があっても、車椅子での移動がで
きなければ通勤による就労はあきらめざるをえません。交通手段や建物が車椅子の人や目の不自由な人々
の移動をたすける設計でなければ仕事をするのは無理です。ヘレン・ケラーがいっています。「最も耐
えがたい重荷は、目が見えないことではない。目の見える人の目の見えない人に対する態度である。」
と。人の態度、すなわち社会的偏見とは、道具や建物や道路、公園などに配慮とか思いやりをこめなかっ
た設計者の無知や無感性そのものなのです。このようにハンディキャップとは人の態度に由来する社会
的な所産であることが多いのです。

"Apple Special Education"(1986)より
  2 障害者とアクセシビリティ  "The Art of Human-Computer Interface Design"という書物の中で著者が主張することには、人々 はコンピュータと好んで付き合っているいるのではないというのです。ユーザーというお得意さまは、 仕事や余暇がそれによって思うようにできればよいのです。そのためにはテレビをみたり電話をかける ようにコンピュータをもっと簡単に設定して使えればよいのです。しかし、コンピュータを使うことに よって楽に仕事をしたり効率を上げるためには、コンピュータにいろいろなことを教えなければなりま せん。いかにしてお得意さまであるユーザーの手を煩わせないで、お得意さまのやりたいことをさせる かが鍵です。ユーザーがあまり苦労しないで情報に接触できる基本的人権やそれを保障する配慮や環境 のことをアクセシビリティと呼んでおきます。  このアクセシビリティという概念は、1987年頃よりアメリカから我が国に紹介され始めました。我が 国では、その用語が急速に普及した観がありましたが、なかなか定着しないという現実があります。も しかしたら定着しないうちにすたれる心配すらあります。というのは、いつものことながらコンセプト だけがもてはやされ、それを実現しようとする姿勢がメーカーにあるのか、ないのかわからないという 憂うべき状況があるからです。やれ指針だ、ガイドラインだという掛け声でいくつかの作文が出来上がっ てはいます。しかし、誰がそれを実行に移すのでしょうか。勝手な憶測でありますが、他の競争相手が 本気になってガイドラインにそった製品を出すのかどうか、相手の出方をお互いに探りあっているので はないかとさえ思われてきます。アメリカのように立法化し、措置を講じて指針に権威を持たせないと 駄目なのかもしれません。メーカーのエゴがまかり通り、ユーザーへの配慮が感じられません。これは 一種の社会的なハンディキャップをもたらしているのではいないでしょうか。  だが、ようやくここにきて「Graphic User Interface」とか「ウインドウズ」といったファイルの選 択など、ユーザーの手をあまり煩わせない環境が注目されています。ウインドウズ」を見ると、 Macintoshのユーザーなら「いまさらなんだ」といいたくなりますが。さまざまなファイルやディレク トリを文書やフォルダのアイコンで表示し、マウス操作でいとも簡単にファイルの複写や移動を行なう のは当たり前だと思っていたからです。それにつけても、はじめて128KのMacintoshを買ったときなが めたファインダの感動が懐かしく思い出されます。ファインダは確かにすごいと思いました。しかし、 大人の中にもマウスやプルダウンメニュの使い方を習得するのに苦労するのもいます。知人の子供で1 歳5か月のがマウスやをうまく操るのもいます。時間が経つにつれマウスでプルダウンメニュを操作す るのがだんだん億却になり、ショートカットを使うことも多くなります。  マウスとファインダは本当に使い良いかというと必ずしもそうでもありません。こんなときは声を出 して「編集」、「カット」、「ペースト」とやれれば楽なのです。いまだ完全にはこうした操作はでき ませんが実用化は近いのです。特定の入力モードというのは、特定の人々にとって役に立ったり、役に 立たなかったりするものだということを知っておく必要があります。また、こうしたモードは、必ずし も便利なものではないと感じるようになるのも不思議です。以上のような心理を念頭に入れながら障害 者とコンピュータ、Macintoshとインターフェイスの実情を考えていくことにします。 3 障害とヒューマンインターフェイス  前述したように一般に障害者の持つ欲求とか願望とかのニーズは他の人々のニーズと本質的に異なる ものではありません。その欲求とは、一言でいえば自分を最大限発揮する(empowerment)ということ になるでしょう。これは仕事、余暇あらゆる活動にかかわる自己存在の価値と意味を追及しようとする 意欲です。このような個人の価値追及の行為は、必ずしも、自らの力だけで全部実現できるわけではあ りません。さまざまな障壁がたちはだかるからです。現存する能力が限られていたり、回復した能力が 自己の欲求を達成するのに不十分であったりします。それでもなにかを追及しょうとするとき、今発揮 できる能力、たとえば上肢が動くとして、それを使うことによってなにをしたいか、なにができるかを 決めることができます。これをニーズアセスメントと呼んでおきます。この作業は障害のあるユーザー にとって生活や就労のうえで最も適切な環境とはなにかを決めるために重要であります。この適切なツー ルとか環境のことが広くいわれる”ヒューマンインターフェイス”ということです。  ヒューマンインターフェイスという用語からは、通常テクノロジを連想するかもしれませんが、人の 自己実現を可能にするか、あるいは困難にするかもしれないという意味できわめて認知的、心理的レベ ルのコンセプトといえます。従って、ツールとか触媒という意味でのインターフェイスの設計は、一人 の技術者の手で出来上がるものではなく、学際的な作業から生まれる産物のはずです。実際、幼児や年 寄り、さらには猿やチンパンジーが機器をどのように使うかという観察や実験によってインターフェイ スの設計がなされる例も多々あります。このようなわけで障害者の能力を発揮させるインターフェイス の整ったコンピュータの必要性が叫ばれています。ユーザーフレンドリなコンピュータは、快適で勤労 意欲を高揚させ、作業能率の向上につながります。一方、インターフェイスの貧弱なコンピュータは 、不必要な疲労と不快感を増長させます。ユーザーが障害者である場合は、とりわけ個々の障害者が置 かれている情報活用の環境を配慮しなければなりません。 /pre>
"Apple Special Education"(1986)より

II. 障害者とMacintosh

 1  障害者が必要とする周辺機器の強化

 現在のMacintoshは付加的機能といった拡張性を有しているため、その利用をいっそう高める可能性
をもっています。この付加的機能とは、フルカラーボードであり、通信機能であり、入力装置としての
マウスであり、内蔵されたデスクトップ管理やアイコンなどのことです。一言でいえばインターフェイ
スというユーザー本位の拡張機能ということになります。具体的には、こうした機能のいくつかは障害
のあるユーザーにとってきわめて有用なものとなっています。例えば、音声合成・認識装置、拡大画面
ソフト、画面読み上げ、キー操作制御などです。障害のあるユーザーは、このような付加的機能を使っ
て情報資料にアクセスができるようになります。こうした機能によって、かつては障害のゆえに人の助
けを借りなければできなかった作業が自力でできるようになってきています。
 インターフェイスを選択する過程で重要なことは次のようなことです。すなわち、いろいろなテクノ
ロジ、例えば音声合成・認識などを使うコンピュータの活用を進める際の経験は、将来、機器応用のた
めのアセスメントを行う上で、すべてのユーザーにとって潜在的な恩恵をもたらす契機となることです。
音声出力を例にとると、この技術は主として視覚障害者に使われることが多いと考えられますが、今後
は健常者にもいっそう使われるようになると思われます。情報が電子化されますと、障害者に限らず、
多くの人が自宅や遠く離れた所で仕事をしていても、コンピュータを使ってメールなどを通して作業が
できます。

 2  障害者と生産的な生活の増大

 仕事とインターフェイスの例
 その1:文書作成と音声の活用
文書の編集という卑近な例からこの過程を考えてみましょう。まず関連する情報の検索から始め、最後
はレイアウトを行って文書の作成を終えるとします。こうした編集をするために必要な一連の操作を行
なうことは、本来、誰にでも要求され経験することです。例えば、盲の人々が文書を検索しようとする
際の基本的な制約としては、コンピュータ上で文書作成の作業をするとき画面上の文書が見えないとい
うことでです。このとき、テキスト情報などの視覚提示に代わって音声出力や点字出力ができれば、こ
うした制約から解放されるのです。音声出力がコンピュータに付加されているならば、視覚が不自由で
あるか否かに拘わらず多くの人が音声出力の恩恵を受けれるわけです。音声はかえって耳障りになるこ
ともあるでしょう。そのときは音声を切っておけばよいのです。
 その2:仕事と電子化
いろいろなテクノロジ、例えば音声合成・認識などを駆使したコンピュータ利用の経験もすべてのユー
ザーにとって潜在的な恩恵をもたらす契機となります。ユーザーは遠く離れた所で勤務していても、コ
ンピュータを使って電子化された職場からメールなどを通して仕事ができます。いわゆるテレワークで
す。さらに、新聞や雑誌などの印刷文字(墨字)情報の検索や入手をしたいときなども音声合成・認識
を利用できるでしょう。もっともこのシステムは時間との勝負である用件や、近くにアクセスポイント
などがない場合には向かないかもしれません。
  その3:仕事と”賢い”システム
情報通信のさまざまな方法がもたらす恩恵はいろいろ考えられます。特に、”手作業”や“目作業”で
忙しい人達が仕事をよりしやすくできるならそれにこしたことはありません。大多数のユーザーはキー
ボードやモニタ上だけで仕事や学習を行うシステムを利用しているという点で一つの制約を受けている
といえます。しかし、賢い機能を持つコンピュータを使って学習する者は、そのシステムに組込まれた
音声合成で問題の箇所を聞きながら両手を動かすことができます。ユーザーはコンピュータへ音声で応
答しながらコンピュータからの音声に耳を傾け、どの部分を修正したり繰り返して学んだらよいかがわ
かるのです。もっともこうした環境によっては、”ワーコホリック”(働き過ぎ)を助長するかもしれ
ませんが。

 3  視覚障害

 全盲や弱視の人々は、視覚障害者と呼ばれます。触覚を利用した情報処理の主たるメデイアは点字で
す。これによって文章を書いたり、読んだり、伝達することができます。今までは点字の知っている人
が点字タイプライターで文書を作成していましたが、最近ずぶの素人でもカナ文字やアルファベットで
入力し、それをたちどころに点字に置き換えることができるようになりました。もちろん、その逆もで
きます。図形などは立体コピー機やサーモフォームを使って凸版化したものを触って認知できます。
 通常、あまり不自由なく文字などを読める人のことを俗に晴眼者といいます。この呼称は響きとして
あまりよいとはいえませんが、晴眼者の中で流布する一つの共通した誤解は、盲人には点字が最も有効
なコミュニケーションの手段であるという考え方であります。普通、中途で失明したユーザーは、点字
よりも音声を通して情報にアクセスしょうとする傾向があるといわれます。もっとも全盲の人で点字を
流暢に使える人は10%といわれ、その意味で点字は必ずしも一般的なメデイアとはいい難いのです。こ
れは点字を指先で読む技能の習得がやさしくはないからです。点字を目の見える者とのコミュニケーショ
ン手段とするのも困難があります。現在の技術水準では、視覚や触覚のかわりに聴覚を活用するのが最
も現実的な方法とされています。音声による出力は聴覚障害者を除けば便利な手段であります。
 印刷文字の光学的な読み取りは長年の課題でしたが、かなりの精度で実用化が進んでいます。光学式
読み取りに付随する問題の一つは同音異議語の読み上げ、音訓の識別などです。これも辞書の充実や熟
語を識別する方法の創案により実用に耐えられるようになりつつあります。文字情報の電子化とは、と
りもなおさずコンピュータで作業を行なえる形式にすることです。このように視覚障害者が多くの職場
で対等に仕事をするためには、文字情報などが電子化されることが肝要です。そうした状況が広がれば、
同時に視覚障害者の職域も広がることになります。

視覚障害とインターフェイス

 視覚障害を補う機器は、コンピュータや拡大器をはじめたくさん開発されています。そうした機器は、
聴覚や触覚を使って視覚という機能を代行する学習、仕事、余暇活動を助けるものです。視覚障害者の
困難はひとえに文字の読み取り困難ということですから、視覚障害者の中で特に弱視者にとって文字の
変更や拡大、プリント文の拡大などの機能はきわめて重要となります。その意味でマルチフォントはも
ちろん、アウトラインフォントやWYSIWYGという独創性を継承するMacintoshの果たす役割は大きいと
いえます。視覚障害にかかわる具体的なインターフェイスについて以下で紹介することにします。
a . 点字入力
この方法は、通常のコンピュータから日本語、ローマ字による入力を行ない、それを点字に置換するも
のです。点字は1バイトコードの体系を有するのでキーボードからカナ文字で入れます。その際は、あ
らかじめFontMoverでKATANAKAというフォントをシステムに入れておきます。カナ文字文書ができた
らを点字に置き換える箇所を反転し、フォントメニューから点字(Braille)を選ぶとカナ文字文書が点
字に置き代わります。ただし、正しい点字の出力を得るためには、カナ打鍵の際に濁音、拗音、促音な
ど点字特有の入れ方を知っておかねばなりません。点字文書をカナ文字文書にするにはその逆の操作を
行ないます。こうして出来上がった文書は点字、又は標準プリンタへ接続して出力します。なお、
KATANAKAおよび点字フォントを開発したのは、元国立特殊教育総合研究所にいた小田浩一氏で、点字
置換のための導入器を開発したのは湘南MacUserGroupの高山佳久氏です。
b. 触覚出力表示
この方法は、モニタ上に表示された内容の一部をそのままを触振動出力に変えることです。機器として
はオプタコンという製品があります。
c. 点字プリンタ/
何種類かの点字プリンタが出回っています。同じページに印刷文字と点字を両方印刷できるプリンタも
あります。それにより盲人も晴眼者も一緒に読むことができます。点字によるハードコピーは点字で打
ち出される前に英語の二級点字で変換されるのもあります。
d. 音声合成
音声出力機能によって文書画面の理解を支援できます。例えば、HyperCardには漢字、ひかがな、カタ
カナの読み上げを行なうMacinTalkをベースとしたMacKunという外部コマンドがあります。
HyperCard上のフィールド文章を読み上げるのに使われます。この場合、あらかじめ辞書はシステムフォ
ルダに、MacKunは読み上げに使うStackにリソースとして入れておきます。なおMacKunを開発したの
はNTTの佐藤基氏です。画面読み上げソフトとして、同じく改良されたMacinTalkをベースにし、ファ
インダやアプリケーションソフトの画面に現れる英語を音声合成で出力することができるOutSpokenと
いうアプリケーションがあります。
e. 輝度変更、コントラストの調整
モニター上の文章や図形の見えにくさを改良するのが 輝度変更です。眼の透明な部分が曇っている病気
の場合、その部分で光が乱反射し文字と背景の濃淡がはっきりしなくなるといわれます。国立特殊教育
総合研究所の中野泰志氏によれば、このような弱視者ユーザーの場合、白地に黒文字の表示のほうがずっ
と読みやすくなることがあるということです。英語システムに付属する画面表示拡大のユーティリティ
であるCloseViewには、文字と背景を白黒に反転させるモードがついています。          
f. 大型モニター(19−25インチ)
通常のモニターでは、弱視の人々にとっては表示文字が小さすぎる場合が多いようです。複数の人々が
同時に画面を見るときでも大型モニターはどうしても必要となります。127ポイントまで拡大できるア
ウトラインフォントはギザギザがないのでこれを使うと、実に鮮明な画面になります。
g. 画面拡大鏡
プラスチック製のレンズで大概ののモニターに取付けることができます。
h. 拡大文字表示
ソフトウェアかハードウェアによってどのアプリケーションプログラムの文字も2倍から16倍に拡大し
ます。子供などの見え方に応じた教材教具を工夫するためにも、拡大は基本的な機能といえます。前述
したCloseViewの基本機能は拡大他にも用途に応じてinLarge とかSteppingOutなどの製品があります。


  CloseView SteppingOut
j . プロジェクター 画面を投影器やOHPを通して拡大し、壁やスクリーンに映しだします。白黒の両方が出回っています。 カラーのものは少々値段は張りますが、今後利用が盛んに使われるものと考えられます。 4 聴覚障害 難聴や聾は、聴覚障害と呼ばれます。聴覚障害者にとってコンピュータはどのような意味を持つのでしょ うか。コンピュータの操作は基本的にはキーボードからの入力を中心とする視覚的な作業であります。 他の入力方法として音声入力などがありますが、いまだ主たるモードとなってはいません。従って聴覚 障害のユーザーにとっては、キーボードの操作によって情報を処理する際に、聴覚障害ということが重 大な支障とはなりません。聴覚障害には、ドライブの回転する音からドライブの状態を知ることは困難 でしょうが、幸い光表示による信号がドライブの状況を伝えてくれます。また時計の絵文字(アイコン) が処理の続行を教えてくれます。アプリケーション・プログラムによっては、選択領域以外のキーを押 すことでビープ音が生ずるものもあります。しかし、こうした音響的情報は多くの場合、不必要なもの と考えられます。というのも画面上での変化がないということがビープ音と同じ警告のメッセージを伝 えているからです。どうしても音響によるメッセージが必要なユーザーなら好きな音に変えたらよいで しょう。アプリケーションは、今後ますます音響や音声による応答と組み合わせられていくでしょうが それと同等の視覚的応答(プロンプト)も同様にして画面上に提示されることが期待されます。 聴覚障害とインターフェイス a . 視覚的確認 コンピュータに関係する仕事でビープ音とか音声によって伝えられる情報は、音情報による恩恵に浴さ ない聴覚障害のユーザーのために音声と同時に視覚的にも表示されます。ファイル操作の実行を示す時 計やアニメ的なポインターなどはそれであります。また、ハードディスクの作動は点滅によってわかり ます。アプリケーションなどファイルの複写や削除の際に出てくる確認のメッセージなども視覚的確認 であります。必要であれば警報音に呼応した注意の喚起を光点滅信号などで提供できればさらによいと 思われます。 b. 電子メールと音声メール 電子メールは基本的には視覚によるプロセスであるため、聴覚障害者にとっては最も適当なコミュニケー ションの手段と考えられます。音声メールは、話すことができるTDDといわれる聴覚障害者のためのの テレコミュニケーション装置などもとともにユーザーにとっては有効なオプションとなるでしょう。音 声メッセージは中継オペレータの助力なしで送ることができます。音声メールのメッセージは電話によ るメッセージの取り扱い同様に、職場で一緒に働く者や家族などによって聴覚障害者に伝達することが できます。 c. ファックス これはハードコピー文書や手書き文書をファクシミリやファックスカード付きのコンピュータで転送し、 電話によるメッセージの伝達を行うものです。手紙や画像情報を通常の電話回線を使い、机の上から電 子的に送受できます。 5 動作性障害 手足の不自由な人々にとっては情報の電子化処理は、これまでの印刷文書の処理に比べ、より効率的に 行うことができます。電子化処理は動作性、特に移動に障害がある人々には自力で仕事ができる唯一の 情報処理方法かもしれない場合もあります。しかし、こうした人々のコンピュータ利用の問題は、キー ボードやマウスの操作に支障がある場合が多いことであります。入力には大きく分けて3つの方法があ ります。第一は直接選択方法です。これは特定のキーを押すことによってある機能を選択することです。 現存する身体の機能を使うことができるようにさまざまな入力(打鍵)機器があります。第二は走査方 法です。選択したい文字やイメージがスキャンによって一致したとき選ぶやり方です。第三はコード方 法です。モールス信号によって文字や数字を入力します。スイッチから短い信号と長い信号を組み合わ せてローマ字を入れ漢字などに変換します。少ないキーで多様な文字を入力できますが、モールスコー ドの組み合わせを覚えねばなりません。 以上のようなインターフェイスは、人の最適な坐位(ポジショ ニング)と統合されてはじめてインターフェイスとしての役割を果たすことができます。坐位等の問題 により移動がうまくできないユーザーが安定性を保つために、いくつかの方法が利用できます。例えば、 (1) アームレスト付きの車椅子、(2) 最適な作業に必要な高さと角度にセットできる安定したキーボード などです。コンピュータを取り巻く環境として、狭い通路を通過する際の障害などを点検し、車椅子が 通れなかったり、作業台が高すぎたり低すぎたりして疲れの原因とならないようにしたり、手が届かな いなどのないように配慮すべきであります。
"Apple Special Education"(1986)より
動作性障害とインターフェイス 動作性障害の程度は、機能形態障害の程度によって一義的に決まるとはいえません。すなわち現存する 機能を最大限に発揮することと、適切な補助具の使用とによって作業能力の制約を少なくすることがで きます。そうした環境にあってインターフェイスを装着するコンピュータは次のような作業を可能にし てくれます。 a. キーボードの機能の向上 マクロ、単語登録と予測などは、文書作業におけるキー操作の回数を減らし、作業能率を向上させるこ とができます。 b. 電子化処理 この処理は紙ファイルの収納化、手書きのメモ、あるいは本のページめくりなどの作業から解放してく れます。 c. 電子メール 電子メールは移動、口話、またはその両方に障害を有する人々にとって有効なコミュニケーション手段 となります。 d. “紙なし職場“ 移動上の障害のある人々にとっては、電子化された情報の処理は“紙なし職場“で行なえるようなもの です。意外とこうした人々の環境が、レスペーパー(less paper)からペーパーレス職場の実現に寄与す るのかもしれません。 e. キーボード改良 代替入力装置などは動作性障害者にとって不可欠な周辺機器です。キーキャップの変更、特定キーの組 み合わせなどによってキーボードのレイアウトを変えます。  動作性障害者のためのコンピュータ利用に関する課題の解決法にはいくつかあります。以下でその例 を紹介します。現在、ソフトウェア、もしくはハードウェアで機能を強化された製品の種類は増え、ユー ザーの選択範囲は広くなっています。 1. キーボード強化プログラム これは標準のキーボードの使用が困難な人のためのものです。現在、多くの低価格のキーボード強化プ ログラムがあり、以下のような機能のうちの一つ、もしくはそれ以上のことが可能となっています。 a. キーの組み合わせ同時入力を逐次入力方式にする機能 コントロールキーやシフトキーを押しながら文字を入力する場合が多々あります。それを逐次入力に置 き換えます。英語システム上で動作するScreenTyperというSoft keyboardのようなユーティリティも この方式をとっています。
いろいろな入力装置
b. キーのオートリピート機能を停止もしくは調節する機能 この機能は、キーリピートエリミネータとも呼ばれます。今書いているこの原稿もリピート機能を停止 させて使っています。同じ文字の連続打鍵や連続削除には少々不便ですが、ついキーを誤って押し続け ることによる不要な入力がなくなります。Control Panelの中のKeyboardというユーティリテイにその 機能があります。 c. マクロ機能 いくつかの組み合わせキー入力を保存してマクロ機能とし、単一のキー入力によって操作を簡素化でき ます。片手打ちをする人にはこうしたキー入力の単純化は歓迎です。ソフトとしてはQuickKeyがあり、 逐次入力方式によるキーストロークの簡便化ができます。注意すべき点として、コマンドキーとの組み 合わせで行なうグローバルなキーストロークは避けることです。 d. マウス代替 マウスの使用ができない場合のために、キーボード上でのマウス機能と同等なものを具備するものです。 例えば、EasyAccessなどのユーティリティです。このソフトはSticky keyとも呼ばれ、テンキーを使っ てのカーソル移動やクリックなどを行います。ただ、使い慣れるのに少々訓練を要します。 2. キーガード類 キーの位置に指が一本入る穴を持つ滑らかな表面のテンプレートです。キーガードは標準のキーボード の上に置かれ、ユーザーの手の動きを安定化し、無用な多重キーストロークを防ぐとともに、文字入力 の正確さを保つことができます。 3. スティック類 これは手でキーボードを使用できない人のためのものです。LipStick、HeadStickなどが利用できます。 4. 超音波/光 HeadMasterは超音波と頭の動きでカーソルを操作し、呼気流でクリック、ダブルクリックを行ない入力 します。FreeWheelは光キーボードともいうべきもので、光線でキーを一定時間照射すると入力されま す。 5. 各種スイッチ、センサー 上肢の微細運動が困難な場合、わずかな動作でOn-Offや少ない選択肢から必要なものを選ぶのに適して います。 6. 音声認識 これはキーボードを使う代わりに、ウインドメニュやカーソルの制御などを音声で指示を行うためのも のです。日本語化されたVoiceNavigatorが注目されています。ファインダの操作やハイパーカードの実 行などに威力を発揮します。今後、いろいろな使途が広がる魅力ある領域です。 (図5 挿入)            7. コンセプトキーボード/タッチパネル モニター上の作業で選択肢が少ないもの、あるいは具体物を選ぶときに便利な入力装置です。タッチパ ネルは、教育現場で子供がコンピュータ上で学習するのに適しており、MacinTouchは利用範囲が大きい といえます。
コンセプトキーボード
8. スキャンニング ハイパーカードを使うとき、ページめくりやボタンの位置を走査してくます。ボタンを同定し、そこに 書かれたスクリプトを実行するためにマウスを押せればよい。ボタンの走査速度は、ボタンを押せる能 力に応じて1秒から4秒の間隔に設定できます。GateWayというスタックがそれです。 (図6 挿入) 9. その他の代替入力装置 マウスはもとより、ジョイスティックやトラックボールなど価格によっていろいろ選択できます。最近 は、ペン入力のタブレットが注目されています。図形を書いたりするのはもちろん、文字認識技術の向 上によってテキストの入力も正確になっています。 (図6 挿入) 10. 大量貯蔵装置 もちろん入力の装置ではありませんが、フロッピディスクの取り扱いに関連した困難を最小にするもの として障害者のコンピュータ利用には無くてはならない装置です。光磁気ディスクも近年盛んに使われ ています。これらの貯蔵媒体は、動作性に障害のある人々が苦労するフロッピディスクの整理や挿入作 業を解消してくれます。


III. 情報機器「やさしさ」ガイドライン

 1  情報処理機器アクセシビリティ指針とMacintosh 
 コンピュータに代表される情報処理機器を対象として、高齢者、身体障害者にも操作しやすい情報処
理機器はいかにあるべきかについてのガイドラインがでています。これは、1990年6月に社団法人日本
電子工業振興会の協力を得て、通産省機械情報産業局の障害者等対応情報機器開発普及推進委員会がま
とめたものです。Macintoshとアクセシビリティという課題は、Macintoshとその周辺機器やソフトウ
エアが障害者の利用を促すうえで、Macintoshがどの程度そうした人々のニーズに応えているかという
ことです。周辺機器などのメーカーはいわゆるサードパーティと呼ばれ、Macintosh上で動作する付属
機器やソフトを自主的に企画開発販売している会社のことです。Macintoshは他のコンピュータと同様
にこしたサードパーティの製品と相互に依存しあって、障害者に優しいコンピュータという評判を社会
的に受けているいるのです。 
 以下ではMacintoshはこうした"優しさ"という側面からみたガイドラインにどの程度対応しているの
かをまとめてみます。

 PART  I 入力基本仕様(キーボード)
 入力という操作は、情報にアクセスし活用する際の中心的な作業です。その基本はキーボードの操作
にあります。多くの肢体不自由者でも標準のキーボードを使うことができます。そうした人々は、1本
または2本の指での打鍵、頭部ポインタや口もしくは手によるスティックの使用、片手での操作とか運
動制御の幅の狭さなどといった制約のもとで使用しています。四肢欠損、脳卒中、脊髄損傷、脳性まひ、
進行性筋疾患などの障害がある人々がそうです。
 頭、手、あるいは足を使って少しでもポイントができる人であれば、標準キーボードに対するアダプ
ター、例えば、キーガード、代替キーボード、もしくはライトペンや光学的なポインタなどのオプショ
ンを考えてみるべきでしょう。こうした技術は、一つのスイッチで標準的なアプリケーションソフトウェ
アを使うことが可能となっています。
 全てのスイッチ類は機能的には類似しているので、ユーザーは自作、市販のものの中から任意のもの
を選択できます。身体のどの部位のどのような動きでも作動するスイッチもあります。チューブにぷっ
と息をいれたり逆に吸いこんだりすること、眉毛をひそめること、瞬きすること、金属板に接触するこ
とで、それらは作動します。入手可能なスイッチのタイプが豊富なので、運動が制限され、コントロー
ルできない人々にとってもコンピュータを操作することが可能となります。
 スキャニングとポインティングは、文書作成に適した入力方法です。スキャニングでは、文字やシン
ボルはスクリーン上に一連の並びとして表示されます。筋緊張の変化、凝視、瞬き、スイッチを押した
り離したりすることによって、入力したい文字を選び出すことができます。この技法は、身体機能が極
端に限定されている人や、すぐに疲労してしまうような運動障害のある人々にとって有益な方法です。
 Macintoshには次のような入力のための機能がビルトインされていたり、サードパーティや個人のユー
ザーが開発した製品でサポートされています。

1.  順次入力機能 
 同時に2つのキーを押すことができないときに必要な機能です。CapsLockのキーを押して大文字と小
文字を切り替えること、カタカナ入力を行なうことができます。コマンドキーと他のキーを同時に押さ
ねばならないことがあります。そのためにキーラッチという製品があります。
2.  反復入力(キーリピート)条件設定機能
 あるキーを押し続けると反復入力機能が働いて、同じ文字などが不必要に連続して打たれます。指の
微妙なコントロールが困難なときこうしたことになります。Macintoshはシステムにこうした動作を防
ぐような機能があります。キーリピートエリミィネータとうもので、まずシステムフォルダのコントロー
ルパネルにあるキーボードというユーティリティを開き、反復入力をOffにします。このユーティリティ
には、一つの文字のから次の文字の入力までの間隔を設定できる機能もついています。
3.  キー入力確定条件設定機能
 キーボードというユーティリティには、一つの文字のから次の文字の入力までの間隔を設定できる機
能がついています。これにより、キーを2度3度と打健したときもそのキー入力を無効にすることがで
きます。
4.  マウス代行機能
 EasyAccess というユーティリティはマウスの操作が困難な場合にテンキーの操作でポインターの操
作ができます。また矢印キーを押すことによってデスクトップ上のフォルダを選ぶこともできます。
 Macintoshは、いとも簡単にジョイステックやトラックボールなどをADBポートにつなぐことができ
ます。多くの場合、リスタートの必要はありません。複数の入力装置を同時に使え、切り替える必要は
ありません。入力装置としては、スキャンやモールスコードで入力する"Ke:nx" 、超音波と呼気流でカー
ソルの操作や入力の実行をする"HeadMaster"などが知られています。その他、タッチパネルは画面を指
やペンで押すことにより必要な作業ができます。VoiceNavigatorという音声認識装置を使い、メニュー
コマンドやポインターの移動、簡単な文書作成と編集ができます。大型キーボードやミニチュアキーボー
ドもあって車椅子の上に装着できます。こうしたボードはコンセプトキーボードともいわれ、ユーザー
の上肢の可動域に応じて領域を割り当てることができます。
5.  トグルキー状態表示機能
 目などが不自由なため画面表示だけでは、機器の内部の状態がわからないことがあります。文字の変
換が確定していないとき、次の文字入力の際に警告音を発することや、大文字の入力状態から小文字の
入力状態に変わるとき、音響的な情報を提供することなどです。こうした機能は、大抵のアプリケーショ
ンに備わっているのが普通です。 
6.  キーボード接続インターフェイス公開
 キーボード接続インターフェイスが公開されてきたので、標準のキーボードやマウスに代わる入力装
置がADBポートにつけられます。多くのキーボードやマウスのエミュレータが開発され、動作性に困難
のある人の使用に対応しています。日本電気計器検定所の笹野潔氏が開発したファミコンの入力装置の
インターフェイスなどはその代表的なものです。
7.  キーガードの提供
 指の動きが安定しないために、意思に反して不要なキーを押す場合があります。これを防ぐのが合成
樹脂などでできたキーガードです。キーボードの各キーに対応する穴があけられ、そこに指やステック
を入れて打健します。また、キーボードに唾液が落ちるのを防ぐ透明のカバーもいくつか出回っていま
す。
8.  キー位置の触覚識別手段の提供
 Macintoshの標準や拡張キーボードのホームポジッションで中指の位置(D&K)には突起がついていま
す。テンキーの真ん中の5の数字キーにもあります。また電源投入のキーの右上にも突起があるのでそ
の位置がわかりやすくなっています。
9.  スイッチ装着用のアーム
 体で機能する部位を使ってスイッチを押すためには、その部位の近くにスイッチを固定する必要があ
ります。そのためにいろいろなアームが用意されています。これも是非必要な道具です。

PART  II   出力基本仕様(ディスプレイ)
 大きなモニターをつなぐと、はっきりと画面全体のイメージがつかめれます。Macintoshには異なる
タイプのモニターを簡単に接続できるようになっています。各種の液晶プロジェクターを利用して、大
勢の人や弱視の人が鮮明な画面を楽しむことができます。ただ、大きなサイズのモニターでは表示され
るものは小さい画面に比べて解像度の具合などで読みにくくなることもあります。
1.  画面の拡大表示機能
 ソフトウエア的に画面の表示を拡大するレンズの役割をするソフトウエアがいくつかあります。こう
したソフトウエアは、一度Macintoshのメモリー上に読み込まれますと画面のテキストやグラフィック
スが拡大されます。大概のばあい拡大率は2倍から16倍となります。英語のシステムには標準で
、CloseVIewというユーティリティが入っています。コントロールパネルからそのアイコンを選び設定
をOnにして拡大率を選びます。レンズなので拡大するとイメージがぎざぎざになります。同じような機
能を持ったものでZoomLensというのもありますが、これは画面の一部を拡大するものです。また、カー
ソルを拡大するものにBigCursorというのもあります。いずれもフリーウエアです。
 テキストだけですとアウトラインフォントを使えば画面を拡大をする必要がなくなります。127ポイ
ントまで自由に拡大できるからです。
 拡大プロジェクターなどの周辺機器は、値段が張りますが液晶パネルを含めて種類が豊富になってい
ます。学校予算で十分購入できるものです。大型モニターは大抵の学校にありますから、弱視の学級な
どではそれをどしどし活用すべきです。
(図)
2.  画面の表示文字の音声化機能
 全盲や弱視の人にとって画面の表示が見えなかったり見えにくいことは、情報活用にとって大きな障
害です。ですから画面に表示したテキストが音声合成で読み上げてくれる音声出力機能が必要です。
Macintoshの日本語システム上ではこうした機能は残念ながらありません。英語の読み上げはあります。
OutSpokenという市販のソフトウエアです。これは、キーストロークごとに入力したアルファベットを
MacinTalkの合成音で読み上げてくれます。このモードでは、カーソルの位置をテンキーで操作します。
5のキーでは選択モード、7のキーはメニューバーへのカーソルの移動、8、2、4、6はそれぞれ上
下左右のカーソル移動のキーとなります。文字の読み上げですが、ShiftキーとEnterキーでカーソルの
ある行を読み上げます。
(図)
 音声出力機能は、特定のアプリケーションなどに使われています。例えば、HyperCardには漢字、ひ
かがな、カタカナの読み上げを行なうMacinTalkをベースとしたMacKunという外部コマンドがあって。
HyperCard上のフィールド文章を読み上げるのに使われます。あらかじめ辞書はシステムフォルダに、
MacKunは読み上げに使うStackにリソースとして入れておきます。
3.  表示中の画面情報出力機能
 画面とは別に点字プリンタや音声などで表示情報を知る手段が必要な場合があります。各種の点字プ
リンタがあります。グラフィックスではサーモフォームで打ちだし、立体コピーにかけて凹凸をつける
方法があります。
4.  出力情報の多重表現機能
 耳の不自由な人々にとっては、機器の誤動作や不完全な実行の場合、警報音だけでは不十分です。
Macintoshは、コントロールパネルからいろいろな音をリソースとして追加、削除できます。たとえば、
難聴者に聞こえるデシベルの音を選びそれをビープ音のかわりに使うのです。その他、ファイルの削除
など重要な作業の場合はメッセージボックスが表示され、視覚的に作業の確認を求めてきます。
5.  表示色変更機能
 Macintoshは、画面設計で細かい配慮がなされています。大小の絵文字(アイコン)やMS-DOSのよ
うなリスト表示の選択ができます。使いたいアプリケーションのアイコンだけをデスクトップに表示し
ておくと小さな子どもでもダブルクリックだけで開くことができます。
 さらに、ポインターの表示速度やカラーの変更、デスクトップのパタンや色の変更なども自由です。
なお、前述したCloseViewというユーティリティでは画面の白黒反転ができます。ときには、背景を黒
にして白で文字を抜くほうが良く見えることもあります。その逆の場合のほうが良い人もたくさんいま
すので、こうした切り替え機能が必要なのです。

PART  III 文書基本仕様(マニュアル文書)
 今日出回っている多くのマニュアルは、分厚くしかも内容が難解であるという悪評があります。テキ
スト中心の場合は、画面にどのように表示されるのかわからないことも多々ありあります。とりわけ問
題だと思われることは、マニュアルの表記が一貫性に欠けることでしょう。コンピュータメーカーの指
導性が不十分なために、サードパーティがそれぞれのスタイルで勝手に作ってしまい、結果として統一
性に欠けるという弊害が出ています。アップル社は、アプリケーションの仕様も含めてマニュアルの作
成にも表記の一貫性を求めています。
1.  電子化文書の提供
 印刷媒体(墨字)中心のマニュアルの欠点を補うために、テープ化したりアニメーションソフトでわ
かりやすく解説したものが出回っています。マニュアルは本来電子化すべきものです。そうすることに
よって説明を音声で聞いたり、点字で打ちだしたり、アプリケーションを使いながら画面で読むことが
できるからです。オンラインヘルプというのがそれです。さらに、マニュアルの電子化は、パッケージ
自体が小さくなり印刷費用も節約でき定価を下げることができます。結果として紙資源の節約にもなり
ます。
 文書編集中にAppleMenuやCDから辞書を参照するのは日常化しています。これも電子化の産物です。
(図ーMicroSoftExcel)

PART  IV サポート
1.  代替入力装置について
 前述しましたが、Macintoshにはさまざまな入力装置がサードパーティから発売されています。特に
動作性に困難のあるユーザーには障害に対応した装置を選択することが重要となります。モールス、ス
キャン、触覚、トラックボールなどの入力装置を試してほしいものです。
(図)
2.  記録媒体の取り扱いについて
 Macintoshは、もはやフロッピディスクでシステムを動かすことは困難です。システム自体が大きい
こともその理由です。フロッピディスクの取り扱いは小さな子どもや障害児、さらに動作性に障害があ
る人には難しいことがあります。ディスクの記録面に触れたりすることや折り曲げてしまうことも珍し
くありません。Macintoshは3.5インチのディスクを使うのでその心配はさしてありません。
 ディスクの挿入と取り出しは難しい作業です。その作業を容易にするために、ディスク挿入の際にス
ライドしながら押し込む台があります。別の装置としてディスク15枚まで装着し画面から選択すると自
動的に挿入しファイルを開くことができるものもあります。幸いなことにMacintoshは、最初のバージョ
ン以来、ディスクの自動排出機能が備わっています。さらにMacintoshはハードディスクを使うことが
常識となっています。たくさんのディスクから使用するディスクを探したり整理する必要はありません。
教育の現場では、ハードディスクなどの大量貯蔵媒体はどうしても必要な機器であるという認識を定着
させるべきです。
(図)
3.  電源スイッチやリセットスイッチへの配慮
 電源やリセットスイッチなどは、本来CPU本体につけるのではなく、ユーザーの手の届くところにつ
けるべきです。Macintoshの電源スイッチはキーボードの右上についています。電源のOffはメニューバー
からマウスで行なうような設計になっています。こうした動作は、音声での入力やモールスコードやス
キャンなどでも行うことができます。
(図)
4.  問い合わせ窓口の明確化ーー相談と支援
 障害者ユーザーは、いろいろな周辺機器に関する情報を提供してくれる窓口を必要としています。我
が国はこうしたサービスやサポート体制が非常に遅れています。このようなサポートを整えるには次の
ようなことに留意すべきでしょう。すなわち、個々のユーザーが職場や地域や家庭などでなにをするこ
とが期待されているのか、あるいはなにをしたいかのかを調べることが重要です。インターフェイスの
設計や選択とは、まずこのような利用者のニーズがあってはじめて成立するものといえます。その次に
コンピュータの細かい仕様については、個人がコンピュータをどのようなことに利用するかによって決
められます。「はじめにユーザーありき」であって、テクノロジとは本来、二義的なものであります。
その意味で障害とその補償に対応するさまざまな相談ができるセンターとかコンサルタント設置が望ま
れています
 障害のあるユーザーのために最適なシステムを構成するには、どのような手続きが考えられるでしょ
うか。相談とかコンサルテーションの席上では、障害のあるユーザーがしばしば必要とするいろいろな
ツールの説明がなされます。さらに視覚、聴覚、移動などの障害に付随する制約が検討されます。また
個々のユーザーが職務として行えねばならない課題や、その職務の遂行に伴う諸問題が明かにされます。
さらにできればディーラを交えて、その製品に関するデータ、例えば目的、機能などの資料が検討され
ばもっとよいです。さまざまなツールの使い方が習得できるようになるため、あらかじめ周辺機能や周
辺機器を実際に試してみることも大事です。
 以下は、適切なヒューマンインターフェイス環境を整えるために障害者ユーザーとコンサルタントの
双方にとって役立つ事柄です。
(1) 使用を考慮している製品をコンサルタント自身が試しているでしょうか。
(2) 既存のハードウェアとソフトウェアで正常に動作することを確かめるために、特定のシステム構成に
ついて検討したでしょうか。
(4) 拡張ボード用にスロットの必要な数とタイプは揃っているでしょうか。
(5) モニターやCPUはフルカラーをサポートしているでしょうか。
(6) オンライン・チュートリアルとかオンライン・ヘルプなどを持っているでしょうか。
(7) 技術的なサポートが受けられる代理店やディーラーやセンターが近くにあるでしょうか。
(8) 製品の説明が障害者のユーザーが使える形で、例えば、点字、字幕付き訓練テープなどで利用できるでしょうか。

IV. ”さりげなく、やさしい”テクノロジ


 人間工学の原理に基づくテクノロジの社会への応用は、多くの人に恩恵をもたらす共通なものではな
いかと考えらます。インターフェイスとはその名のとおり、人と人、人とものとの関係(インター)を
指すはずです。しかし、個々のヒューマンインターフェイスというテクノロジが、あまねく人々に同じ
ような恩恵をもたらすかどうかはわかりんせん。というのは、設計というのは「あちらをたてればこち
らがたたない」というジレンマに陥る性質のものだからです。妥協の産物といえるところがヒューマン
インターフェイスの一つの特徴ではないでしょうか。
 さらに、ヒューマンインターフェイスは必ずしも良好な解決方法にならないというところがあります。
個々のユーザーのニーズは単一ではないからです。もう一つの特徴は、ヒューマンインターフェイスの
実現には、市場における競争、小型化、開発・製造経費や価格を巻き込む商業的な要素が絡むことです。
企業の側からすれば、ヒューマンインターフェイスの実現とは、ユーザーや消費者がそれに要する経費
をどれだけ負担する用意があるかにかかると反論するかもしれません。
 企業の社会的貢献ということが叫ばれている今日、ヒューマンインターフェイスに関する技術者の企
業内外での自主研究やボランテイア活動が認められる土壌が欲しいものです。企業の枠を越えながら技
術の交流によって、やさしい技術が教育や労働や福祉の分野において使いやすいコンピュータに反映さ
れることが待ち望まれます。”技術を親切に”という主張があります”さりげなく、やさしい”、配慮
が定着するときヒューマンインターフェイスはもはや死語になるかもしれません。そのときはインター
フェイスが「有能な黒子」となるときでしょう。そう願いたいものです。黒子に気づかずに人々が仕事
に精を出すことができるのは、そう遠い将来のことでないかもしれません。
 最後に、90年代は障害者を含む人々のコンピュータに対する態度が変わってくると予測しておきます。
人々は、今までよりもっと自己のすべきことを見極めて、それを実現してくれそうな機器を選ぶように
なるでしょう。そして自分のメッセージを少しでも広げることを考えるようになるでしょう。そのよう
な態度によって自分のコンセプトーー存在感を伝えることのできる実感を体験すると思われます。

おわりに


 ここ数年、今までヒューマンインターフェイスに無頓着と思われるコンピュータを使ってきたユーザー
の中に、ようやく本当に自分の哲学と仕事の質を理解し、自分の方向性を全面的に支援してくれるよう
なコンピュータをみつける人々が急速に増えてきました。障害者も例外ではありません。自閉児といわ
れる子供も何層にもネストしたフォルダをダブルクリックによって、いとも簡単に開いて遊んでいる報
告があります。確かに「Human Interface Guidelines:The Apple Desktop Interface」には「比喩
の使用」とか「操作の直観性」、「一貫性」など基本的な10の原則が解説はされてはいます。アラン・
ケイが次のようなことを言っているのは興味深いことです。「Macintoshは批判に値するインターフェ
イスを有している。」彼の発言の意図は、批判しようがないインターフェイスらしき機能がコンピュー
タに多いということかもしれません。あるいは、Macintoshのインターフェイスに決して満足してはい
けないということかもしれません。アラン・ケイならずとも多くのユーザーには、なるほどとうなずけ
るような指摘であります。

みなさんからのご意見・提案

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