2003年3月会報 No.146
contents


「MES 自作教材集 CD-ROM2002」自作教材の募集と制作のお知らせ
 ・お知らせの内容


チャレンジキッズ研究会2003のご案内

 向春の候、皆様にはますますご健勝のことと存じます。さて、本会では昨年度の3月末に研究会を開催し、多くの方にご参加を賜りました。全国の様々な取り組みを分科会形式で議論し、各領域で深く議論していただけたとメール等を頂戴しておりますが、もっといろいろな話を幅広く聞きたかったとのご意見も賜りました。そこで今年は、参加者全員が多くの話に耳を傾け、わいわいにぎやかにアットホームな雰囲気のもと語り合えるような会としたいと考えております。

また,共催のMESで95年より制作してこられたMES自作教材集CD-ROM2003も,研究会初日にリリース予定です。 つきましては、今年も多くの皆様のご参加を賜りたいと存じます。年度末のお忙しい折ではございますが、よろしくお願いいたします。

チャレンジキッズ研究会 会長  木島温夫(滋賀大学教育学部附属養護学校長)

<テ ー マ>
特別支援教育とICT(Information and Communication Technology)活用

<日   時>
  2003年3月29日(土)13:00〜30日(日)11:00

<場   所>
滋賀大学教育学部附属養護学校 (http://fyw.sue.shiga-u.ac.jp/
   滋賀県大津市際川3丁目9-1
TEL:077-522-6569  FAX:077-526-2279

<主   催>
  チャレンジキッズ研究会

<共   催>
  MES(障害者とコンピュータ利用教育研究会)
  CCN 和歌山「和歌山障害児とコンピュータ・ネットワーク利用研究会」
大阪養護教育コンピュータ研究会(大コン)
  マジカル・トイボックス

<プログラム>(予定・発表者ABC順)
第1部 13:00〜17:00ごろ
・「小学校障害児学級の総合学習」〜なかよしみつけたよ新聞社〜
滋賀県米原町立醒井小学校  阿部弘さん
・知的障害者の地域生活支援のためのネットワーク活用
遠隔会議利用予定:山形大⇔滋賀大
山形大学教育学部附属養護学校荒井裕之さん
・障害児学級でのコミュニケーション支援の実践より〜デジカメ写真とPICと
滋賀県野洲町立野洲小学校  細谷亜紀子さん
・障害児・者用メール・ブラウザーソフトの紹介
富士通(株)伊藤智之さん
・MES自作教材集CDROM2003の紹介 MES事務局より
・「ねずみくんのクリック」などの紹介 MES関東より 
・地域の療育,保育園・幼稚園・小学校・中学校・養護学校・自治体をつなぐ
甲西町発達支援システムとイントラネット
甲西町発達支援センター 西谷淳さん
・「みんなつながっていこう!」
〜地域における障害児を取り巻くネットワークづくり〜
和歌山大学教育学部附属養護学校  小栗 信さん CCN和歌山の皆さん
・自閉症児のコミュニケーション能力を育む 〜AAC支援を通して〜
和歌山大学教育学部附属養護学校  岡潔さん
・チャレンジいよかん〜養護学校と小・中学校の地域連携
愛媛大学教育学部附属養護学校 高市幸造さん チャレンジいよかんの皆さん
・居住地校交流について
大阪府高槻市立養護学校  田村真一さん
・子供たちの学びを記録し,共有・再利用する取り組み〜ポートフォリオの活用
兵庫教育大学大学院 浦嘉太郎さん(大阪府堺市立金岡南中学校)

第2部 夕食後20時ごろをめどに,発表者と第1部に続いての質疑応答を行っていただけます。
第3部 30日9時ごろから,まとめの会を行います。

<その他>
・ 当日の飛び入り発表も大歓迎いたします。(ナイトセッションも可です。)
・ 第1部のみの参加も大歓迎です。申し込みの際に記入しておいてください。
・ 宿泊は,滋賀大学教育学部附属養護学校生活訓練棟「にじの家」で行います。食事代や布団代は,実費をいただきます。
 ・ 参加申し込み,お問い合わせは,電子メールかファックスでお願いします。
hiroota@sue.shiga-u.ac.jp  fax 077−526−2279
チャレンジキッズ研究会 担当太田までお願いします。
太田容次 hiroota@sue.shiga-u.ac.jp


新刊書の紹介

My Learning Plan in Kyoto
子供の「生きる力」と保護者への生涯にわたる支援
「個別の指導計画」作成マニュアル

<概要より>
私たち京都市は、平成12年度より、文部科学省より研究開発学校の指定を受け、研究に取り組んできた。児童生徒一人一人の障害や発達の状態に応じた教育内容や支援、及び個に即した新しい教育の創造を求める教育課程と養護学校のあり方、さらに、その運用のための学校組織のあり方などについて、研究を行った。これらの新たな教育の創造を目指す研究実践にあたり、共通理解した点は、「自己の生きる力」を考える教育を目指すことをであると捉えた。今回の教育改革の視点である「個」からの出発、言い換えると、「場」の教育から「個」の教育への我々の意識転換である。さらに我々は、「個」の教育の展開を目指すため「個別の指導計画」の導入を行った。私たち京都市が使用する「個別の指導計画」(カギ括弧つき)は、障害のある本人自身の主体性に沿った考えで構築されている。これまでの国の定める学習指導要領、学校、他の機関等で用いられている概念と基本的に異なっている。
CONTENTS--内容
「個別の指導計画」について
「個別の指導計画」書式
「個別の指導計画」サンプル集
<発行>
京都市養護学校
  2003年2月20日発行 定価 2000円
<問い合わせ>
京都市立西養護学校長 朝野 浩 nishi-y@edu.city.kyoto.jp


■「Friends of "X"〜Macプログラマーのソフトウェア展〜」

 吉田昭彦@神奈川県県土整備総務室です。3月6〜8日の間、東京都渋谷区「Suger Water GALLERY BAR」にて開催される「Friends of "X"〜Macプログラマーのソフトウェア展〜」(http://www.siesta.co.jp/fox/ )で、プログラマーの高橋政明さんが、ユニバーサルアクセスにまだ搭載されていない機能を提供するユーティリティ、ユニバーサルポイント(仮称)を出展するとのことです。

「Friends of "X"〜Macプログラマーのソフトウェア展〜」
( http://www.siesta.co.jp/fox/ )
○日時:3月6〜8日 毎夜21時
○場所:Suger Water GALLERY BAR
 東京都渋谷区桜丘15-5 03-3461-2188
○出展者 高橋政明
http://www.kaigian.co.jp/

○出展作品
 ユニバーサルポイント(仮称) (近々リリース予定の自社開発商品です)
○出展作品の説明
 システム環境設定のユニバーサルアクセスにまだ搭載されていない機能を提供するユーティリティです。
○主な機能
・マウスポインタ(矢印カーソルなど)を拡大します
・マウスポインタ位置を強調します
・マウスポインタ直下の「もの」のタイトルやヘルプ内容を拡大表示します
・マウスポインタに関係するちょっとしたホットキー機能を提供します。10.2以降必須、Classicアプリケーションと同時使用できません。実態はシステム環境設定(.prefPane)です。
○私の主張
 Mac OS Xにはユニバーサルアクセスがありますが、まだ機能不足です。そこで『MacOS Xの新機能を使うとこんなことができる』をユーティリティにしました。UIElementを利用するAssistiveなソフトウェアです。9まではできなかったことが、Xでは無理なくお行儀良く実装できそうです...


  ホームページ上の写真や文章の「自由利用マーク」制定

 文化庁はこのほど、学校教育での利用など一定条件を満たせば、ホームページ(HP)上の写真や文章を著作者に連絡を取らずに無料使用できることを表す「自由利用マーク」を制定しました。教材などに有効活用してもらうのが目的です。
 同庁が使用するほか、他の官庁や学校などにも利用を提唱する。マークは
 (1)変更・加工なしならコピーやプリントアウト、無料配布可を意味する「コピーOK」マーク
 (2)障害者のための非営利目的利用可を意味する「障害者OK」マーク
 (3)学校教育のための非営利目的利用可を意味する「学校教育OK」マークの3種類です
。  今月上旬から同庁のホームページ上に専門のサイトが開設されており、著作者がマークをダウンロードし利用できるようになっています。
【文化庁・自由利用マーク】
http:/www.bunka.go.jp/jiyuriyo


今年度の修士論文から

「教師と保護者の期待に応える養護学校のセンター的役割に関する分析と提案」
  兵庫教育大学大学院教科・領域教育専攻総合学習系コース
  藤本久美子 fujimoto907-406@river.sannet.ne.jp

1. 問題の所在と研究目的
 我が国では、1970年代に入り、ノーマライゼーション(中園・清水, 1972)の考え方が注目され始め、教育においても、分離から統合へのインクルージョンの考え方(中野, 1997; ミットラー, 2002)が浸透してきた。「21世紀の特殊教育の在り方について」の文部科学省協力者会議の最終報告(文部科学省, 2001)では、従来の「特殊教育」から「特別なニーズ教育」への転換を打ち出している。その中で、盲・聾・養護学校は、地域の特殊教育のセンターとしての役割を果たすことが求められている。  本研究は、障害のある子どもに関わっている教師や保護者は、地域で生活する中でどのような問題を抱えているか、どのようなニーズを持っているのか等について調査を行い、今後望まれる養護学校の在り方について提案することを目的とする。
2.調査の概要
 本研究における調査では、同じ質問を結果をフィードバックしながら数回繰り返すことで、多くの意見を収束させるデルファイ法を採用した。実際の調査においては,最初に、普通学校で障害のある子どもに携わっている教師や保護者に対して、アンケート調査を行い、次に、アンケート調査の結果を示して、インタビュー調査を行った。
<調査対象>・市内小・中学校の特殊学級の担任、及び問題のある子どものいる普通学級の担任
・障害児を持つ保護者
<調査項目>・教師…5項目(「相談」「支援」「情報」「施設・設備」「研修」)
・保護者…6項目(「障害の告知」
「相談」「支援」「情報」「保護者の団体」「施設・設備」「要望」)
3.調査結果と考察
アンケートとインタビューの結果から、普通学校の教師へのサービスについては、次のようなサービスが望まれていることが明らかになった。
(1)身近な相談窓口の設置
(2)子どもの実態を正しく知るための支援
(3)個々のニーズに応じた指導のための支援
(4)教師サポートのための人材派遣
(5)参加しやすい研修の機会の提供
(6)訓練できる環境の提供
(7)情報の提供
(8)保護者の考え方や意識に対するアプローチ
(9)特殊学級担当者会の開催
(10)子どもの発達に合わせた継続的な支援システム
(11)相談員の専門性
(12)専門機関との連携
保護者については、以下のサービスが望まれていることが明らかになった。
(1)専門機関に関する情報提供
(2)身近な相談窓口の設置
(3)専門機関の適切な対応
(4)継続した相談体制づくり
(5)医療、教育、福祉の連携
(6)適切な就学指導をおこなう体制づくり
(7)生活の質を高めるためのサービス
(8)地域社会への理解啓発

 以上のことから総合的に考察すると、教師は、担当している子どもの指導について、悩みを抱えていることが多く、子どもの実態評価や指導方法、指導内容についての支援を求めていることが判明した。さらに、教師自身の力量を高めるための研修の機会の提供を強く求めていることが分かった。このように、教師は、教師自身のサポートのためのニーズが極めて高いことが判明した。

 保護者については、子どもの障害の改善・克服に向けてのサポートや地域で普通に暮らしていくためのサポート、生涯を通じた一貫した支援体制の整備等、子どものライフステージを見通したサポート体制を望んでいることが明らかになった。

4.養護学校に求められるセンター的役割と今後の課題
 以上のような調査結果と考察に基づき、特別な教育的ニーズに対応する養護学校の役割と、個人のライフステージを見通した教育方針に立った専門性と多様な機能を持った養護学校のセンター化を提案したい。ここでは、現在の養護学校を、生涯にわたって個人を支援するセンターとして位置付け、その名称を「総合発達支援センター」とする。センターの中には、次の4部門及び各部を設置する。

(1) 教育部門…学校教育部、教育相談部、教育支援部、教材開発部、巡回指導部
(2) 職業進路部門…進路相談部、進路情報部、進路開拓部、職業訓練部
(3) 医療部門…看護婦、作業療法士、言語療法士、理学療法士
(4) 福祉部門…ケースマネージャー、ケアマネージャー、コーディネーター、社会福祉士等
(5) その他…職業訓練学校を併設、生涯学習支援室を設置

 以上のような養護学校の将来像を提案したが、養護学校の現状は、教師や保護者のニーズを満たす十分なサービスができる状況が整っていない。十分なサービスを提供するためには、養護学校内の組織編成の見直しと専門性を有する職員の配置、さらに、養護学校内の職員の意識改革等が必要であると考える。また、養護学校からの支援・サービスの内容を、より専門的な質の高いものにするためには、養護学校の職員の専門性を高めるための研修が必要である。上位の教育機関より、養護学校への研修の機会が提供されることが望まれる。

 さらに、行政面からの援助、施策が必要である。今後、専門的な資格を持つ人材が、益々必要とされるため、専門的な資格、免許に関する手続きの見直しを図り、専門性のある人材を増やすための政策を考えることも必要ではないかと考える。  学校は、児童生徒及び保護者に対する専門的な教育のサービス機関であるという認識に立ち、一人一人のニーズに応じた教育を、医療、福祉との連携のもとに情報交換を行いながら、子どものライフステージを見通した一貫したサービスを提供することが求められている。養護学校は、このような学校の理想像に少しでも近づくために、養護学校内の職員の意識改革と共に、現在、可能と思われるサービスから、徐々にサービス拡大への努力を行うことが必要とされている。

<引用文献>
中園康夫・清水貞夫(1972). ノーマリゼーションの原理. 学苑出版.
中野膳達(1997). 国際連合と障害者問題−重要関連決議文書集. エンパワメント研究所.
ピーター・ミットラー(2002). インクルージョン教育への道. 東京大学出版会.
文部科学省(2001). 21世紀の特殊教育の在り方について〜一人一人のニーズに応じた特別な支援の在り方について〜. (最終報告) 文部科学省調査研究協力者会議.
(主任指導教官 成田 滋)

関連リンク
 ・障害者とコンピュータ利用教育研究会 ・パソコンバンクのページ
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