Santa Clara郡学校区教育委員会

教育心理的サービスに関する報告書(IEP)


'97米国教育視察研修報告 その二

'97米国教育視察研修報告 その一

兵庫教育大学学校教育研究センター 教授 成田 滋

編集 曽根秀樹

翻訳

栢木隆太郎 VZZ06370@niftyserve.or.jp
中島康明 MHG03143@niftyserve.or.jp
筱 更治 shino@edu.hyogo-u.ac.jp
曽根秀樹 sohideki@edu.hyogo-u.ac.jp
吉利 宗久 yoshitos@naruto-u.ac.jp

掲載 July 11, 1997




IEP関連サイト

天狼&ディル in Madison 〜自閉症児を連れてアメリカへ〜
Individualized Education Program:A Road Map To Success -- Celebrate the Journey
Question and Answer Guide on the New Special Education Individualized Educational Plan (IEP) and Related Chapter 766 Regulations
Disability Shareware for the Macintosh


目次

●はじめに
●IEP-4から6 様式 A-1
●IEP-7 様式 B
●IEP-8 様式 B
●IEP-9 様式 B
●ITP-10 個別進路指導計画 要約シート
●ITP-11
●ITP-12
●ITP-13 様式 B
●IEP-14 様式 C
●行動介入指導案(IEP)
●通学途上の行動についての指導案(IEP)


(守秘書類)
●はじめに

生徒氏名:A
生年月日:1978年11月21日
年令:17才
学校:Santa Clara高校
プログラム:ノンカテゴリカル (障害別によらない)
教師: A. S.
報告日: 1995年11月27日
チームメンバー: A.S. 教師
         J. L-S. 学校心理士
         B. S. 言語治療士
         E.G. 矯正体育スペシャリスト

【報告の事由】法の定めによる3年毎の評価

【問題に関する背景情報】
 Aは現在Santa Clara高校でノンカテゴリカルプログラムを受けていて,1週間に1回の割合で言語療法士と矯正体育スペシャリストから計画的な指導サービスを受けています。Santa Clara高校へ進学する前は,Busher中学校でノンカテゴリカルプログラムを受けていました。Aは,発達遅滞,てんかん性異常波,性染色体異常という診断を受けています。彼女の健康は良好で,学習活動における「聞え」と「見え」は良好と思われます。彼女は,母親とSanta Clara市内に住んでいます。

前回の評価:1992年11月
歴年令:14才
Vineland適応行動尺度による評価:
 コミュニケーション年令:4才4か月
 聞き取り年令:3才11か月
 表出年令:4才
 書字年令:5才
 日常生活スキル年令:4才6か月
 パーソナル年令:4才5か月
 家事年令:4才5か月
 地域社会年令:4才5か月
 社会性年令:4才9か月
 対人交渉年令:5才3か月
 遊戯−余暇年令:3才10か月
 課題対処年令:4才7か月
 Leiter精神年令:5才10か月
 IQ:42

【観察と現在の評価】
 Aは背が高く,薄茶色の巻毛をした色白の大柄なティーンエイジャーです。彼女は,周囲の環境や人に対して非常に過敏です。彼女は,教室ではコンピュータでの課題を楽しんでいることや行動原理に基づいた強化の随伴性が構造化されたものには対しては,積極的に反応していることが観察されています。

実施されたテスト
実施者
 Leiter国際動作性尺度: J. L-S.
 Vineland適応行動尺度−学級版: J. L-S.
 Beery視覚−運動統合発達テスト: J. L-S.
 保護者の面接,教師の観察: A. S.
 Sequenced Inventory コミュニケーション発達(SICD):
   B. S. LA.A. E. G.


 この評定は,記録の再調査,観察,面接そして直接に検査を実施されて作成されました。なお,Vinelandテストの結果は,以下の通りでした。

コミュニケーション年令:3才5か月
日常生活スキル年令:4才4か月
聞き取り年令:2才6か月
パーソナル年令:3才5か月
表出年令:2才8か月
家事年令:3才9か月
書字年令:5才11か月
地域社会年令:5才3か月
社会性年令:4才2か月
運動スキル年令:4才7か月
対人交渉年令:3才4か月
粗大運動:5才9か月
遊戯−余暇年令:6才1か月
微細運動:4才0か月
課題対処年令:3才11か月


1. 認知
 Aは,視覚知覚と極微細運動による非言語性認知テストであるLeiterを受けました。その結果ですが,Aは,前回のLeiterの評価で示した精神年令の5才8か月,IQの43と同様の結果でした。また,レベルIVでは全ての項目を通過しました。レベルVでは3/4の項目を,レベルVIでは1/4の項目を通過しました。しかし,レベルVIとVIIでは,全ての項目を通過しませんでした。彼女は,自分の力で数字をマッチングさせ,言葉で分類し,基本的な操作をし,色,形,数字の組み合わせによるマッチングをしました。それに続くレベルの高い課題では,最初は正しく反応しましたが,項目の中間や終りの方では下位項目で誤反応を示しました。Aは,まれに視覚的に注視することによる援助を求めました。検査者が検査項目を素早く提示した場合,概ね良好な反応を示しました。

2. 微細運動/知覚−運動
 Aは,鉛筆で線と幾何図形を模写する能力をテストする視覚−運動統合テストのBeeryが実施されました。彼女は,水平線に対する垂直線を模写することを除いて,垂直線と円の模写をしました。Beeryの結果,3才2か月相当でした。Aは,震えたような線ではなく平らな線を書きました。さらぶ自分の簡単なイニシャル”○”をかろうじて書きます。先の尖った,色付のフェルトペンを使うとより上手に書きます。彼女は,小さなビ−ズをゆっくりではあるが正確に分類し,ゴム輪やペーパークリップを使ってカードや書類をファイリングします。Aは,Macintoshコンピュータで,3−6才のユーザーを対象とした教育的ゲームを上手に使います。彼女のキーボードには,1/4インチ大の適応シンボルが添付されていて,黒っぽくなっています。もっとも教師は,それがなくても彼女が十分に使えると考えています。

3. 粗大運動
 Aは,大股で歩きますが,うまく体をコントロールして移動でき,長距離を歩いたり,たまにジョギングをします。指示されれば,大きな運動場用のボールを投げたり,ゆっくりトスされたボールを受けることができます。また,静止したボールを力強く的に向けて蹴ることができます。彼女は,2秒間片足立ちできます。筋力や忍耐力を強化する運動プログラムに参加していて,ユニバーサルマシンで重量上げをし,階段登り機を連続2分間行い,立ったり座ったりの動作を7回します。

4. 自助行為
 Aは,自分で上着をつけたり,背中用ザック,腰用ザック,小袋を扱うことができます。それらを持っていることを楽しみながら,自信を持って取り扱えることができます。上着や腰用のザックを学校に忘れることや小袋を失ってしまうことがあるので,時々それらの物を忘れないようにするための催促が必要です。Aは,一人で食事と片付けができますが,朝食および昼食の後,口のまわりを清潔にする援助が必要です。Aは,着衣や着替えは一人でできますが,水着の場合のみ困難です。彼女は,Velcroのウォーキングシューズを一人で正しく装着できます。Aは,時々トイレのドアを開け放しで出ていくことを除けば,排泄と手洗いは自立しています。

5. 社会的/個人的
 Aは,スタッフや生徒との関係では,楽しく過ごしています。何かを要求したり援助を求めたりしなければ,自分で何とかしようと徘徊します。目的の人を探し,そのことを適切な言葉で表現できます。Aは,自分ができる活動,特に興味の強いゲームでは,どんな生徒とでも一緒にゲームができ,皆とうまくやっていけます。彼女は,2年前に比べ攻撃的な感情の爆発が少なくなり,自己を制御できます。元気であるときは,愉快な楽しい生徒です。

【コミュニケーション】

1. 受容
 Aは,SICDで受容言語年令が3才8か月の範囲にあります。彼女は,48か月レベルにおいてもいくつかの正反応を示しました。Aは,他者から言われることを,真剣に聞こうとし,あるいは,彼女が注意をそらさないでいれば,それを理解できます。彼女は,うまく話し言葉をとらえて,1〜2つの指示を理解し,それに従うことができます。Aは,複数の指示や3つの行動を含んだ指示に従うことは困難です。

2. 表出
 Aの言語年令は,4才レベルまで正反応を示し,36か月の発達の範囲にあります。彼女はしばしば誤って発音し,ほとんどの場合,正しい発音になおりません。しかしながら,彼女はいくつかの音を,正しい言葉により近いものにできます。Aは,3つの数と3つの単語の復唱ができますが,それ以上は困難です。彼女は,何かをするに高い動機づけがある場合,よく知っている状況や自分の好きなことであれば5〜6語文を使うことができます。彼女は,物の機能を尋ねる質問(例えば,何の本)とか,what,when,whoを含んだほとんどの質問に答えられます。難しいのは,複数形の使用,if-whatの質問への答え,'how many'を理解することなどです。
 Aは,時々大変早口で,甲高い,いななくような声で話します。もう一度ゆっくりと話すことを求められれば,大抵の場合,よりわかりやすいように話します。相手に十分理解しやすいように話すよう求められるのは,彼女にとっては,非常に高いフラストレーションとなります。機嫌が良い場合(All is well)には,彼女は上手に話し,まわりのほとんどの人が彼女の言っていることを理解できます。

3. 地域社会
 Aは,いろいろな地域社会資源を積極的に活用しています。彼女は,商店,店舗,郵便局,図書館,公園,博物館,特別催しなどいろいろな場所へ2〜3名の生徒と1名のスタッフメンバーの小グループと行動します。彼女は,公共交通機関を利用でき,座席を選んでだり,小冊子を読んだり,スタッフや級友と会話をしたりでき,自分が降りるべきバスの停留所を見つけ,そして,その場所で降ります。彼女は,買い物が大好きですが,浪費することはありません。彼女は,少しの助言でアクティビティーブックかテーマブック,飲み物かスナック菓子を選択し購入します。彼女は,図書館カードを持って,月に2回は図書館を利用します。Aは,時々長姉と一緒に映画館へ行きます。授業の一環で,ある映画プロダクションへ行ったこともあります。

4. 教室での行動
 教室にはA用の机がありますが,机上が様々な活動と課題で散乱しています。彼女が興味のある活動を選択している場合,30分間は援助なしで活動できます。また,カウンティング,分類,ファイリングの課題訓練を強化を随伴されながら30分間は自分の机で課題をすることができます。機嫌が良くないときは,彼女の行動は低下し,スタッフの援助を受けることが難しくなります。

【要約と提案】
 Aは,認知機能が5才から6才程度の中度発達遅滞とてんかん性異常波のある17才の少女です。彼女の相対的に優れている点は,地域社会と余暇時間の活動に現われており,相対的に弱い点は,受容言語と表出言語です。ほとんどの領域において,前回の評価と同様のレベルを示していますが,彼女の日常行動と教室の成績は,過去3年間を上回る大幅な改善がみられました。
 Aは,Santa Clara高校での現在のプログラムを継続し,地域社会や学校を基本にした環境で自助行為,地域社会,コミュニケーション,認知,運動スキルに焦点化した指導の強化を継続することを提案します。彼女は,現在の話し言葉/言語が,地域社会環境で適切となるようなスキルをめざし続けることを提案します。さらに,学校や交通機関の利用についての行動マネジメント計画がさらに更新されて,継続されることを提案します。

(翻訳者: 栢木隆太郎 VZZ06370@niftyserve.or.jp 編集者 成田 滋 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp)

●IEP-4 様式 A-1
障害児教育のための個別教育計画

学習到達度と長期計画  Santa Clara郡学校区

計画:初年度 ○年次計画 3年次計画 その他

生徒氏名:A
生年月日:1978年 11月21日
年令:18才
学年:学年無し
3年次評価日付:1998年 11月1日
居住地区:Santa Clara郡
IEPの実施期間:1996年11月26日--1997年11月26日まで

現在のプログラム:特殊学級
現在の学校:Sanata Clara高校
ケースマネージャーの氏名、職名、電話番号:A.S. 教師、985-xxxx
主要言語:英語
限られた英語能力(Limited English Proficient-LEP):○はい いいえ
LEPの場合の生徒のニーズの考慮:○はい いいえ

●カリキュラム領域:
もし適用できるなら以下の各領域について記すこと:
 健康と発達;視覚;聴覚;運動能力;
 言語/コミュニケーション;
 一般的能力;
 学習到達度;
 学級での様子;
 学習技能;
 身辺自立;
 探索と移動;進路/興味のある仕事/能力;
 社会性、情緒の安定;
 学習スタイル

●現在の学習到達度 (事前調査結果例や発達段階とともに記述的要約):

○社会性/情緒
 A はどちらかというと一人でまたは小集団で働くのを好む。 集団が大きかったり、騒々しかったりすると彼女は、指導者の注意を引くためにわざとゆっくり仕事をしたりする。もし支持に従ったり適切に行動しようという意欲があれば、彼女はたいへんよくがんばる。A はその日何を期待されているかを知りたがる。また知ることができたときには行動をよくコントロールすることができる。Aは同じ学級の仲間や健常生徒とテーブルゲームで遊ぶ。

○地域社会
 Aは図書館、店、郵便局、商店街、美術館等地域社会のいろいろなところへ行くのを好きである。彼女は本、ファーストフード、軽食やドリンク店等1-2ドル程度を使える所が好きである。彼女は小集団で行動するときは、よく歩くことができる。 道路に近づくとAはたいてい左右確認をする。 ただ、左右の確認に必要な眼球をはっきりと開くことは必ずしも適切でないことがある。 公共交通機関(ワンマンカー)を利用する際は知っている停留所などをみて適切に降りる合図(紐を引っぱる)ができる。彼女の公共バスでの行動は適切で、95%彼女ひとりでできる。

○職業
 Aは受産施設などの状況では、非常に高い作業能力を示す。彼女は小さな区画でひとりで作業するのを好きである。彼女はアルファベット順にしたり、切ったり、数や色や文字によって並べたりするのが好きである。現在は、2-3の小さな数字を読んで衣類をサイズ順に並べている。

○身辺自立
 Aは食事とトイレは自立している。 食後の洗顔はときどき注意してやることが必要。背負ったり腰につける鞄や財布は少々雑だが自分で管理する。ときどき背中に背負う鞄の口があいたままだったり、財布やウエストバック、本など含めてあまりにたくさんのものを抱えて歩いたりすることがある。A は着替えの間声かけが必要だがほとんど一人で着がえれる。


障害児教育の対象基準に合致する: ○はい


(措置について考慮中なら,付属の対象基準表を参照すること。)

○Aの強調されるべき長所の要約:
 理解力;
 拡大コミュニケーション(手段)の使用能力、援助を快く受けること;
 好みの多様性 ;
 見て読むこと ;
 コンピュータの操作

○Aの援助すべきニーズの要約:
 社会的技能;
 相互交通技能;
 表現 (はっきりという);
 感情や怒りのコントロール;
 ごほうびがなくても作業をやり遂げること;
 粗大運動技能

○長期目標 親の家の近くに(ひとりで)住むこと:
 感情や怒りをよりうまくコントロールできること

○進路・職業訓練目標/ニーズ:
 適切な職業訓練の場を見つけること;
 作業能力の向上と技能のレパートリー拡大の必要.あり

○コミュニケーション:
 Aは受容コミュニケーションがとてもよく、動議づけされた場合には(ステップバイステップでなく進度の速い)指導にもついてこれる。Aは自分のいいたいことがよくわかっていて、もし誰かが頼めば言葉を繰り返す。ただし彼女の発音は彼女をよく知っていないと理解し難いものであるが。 Aは行動管理や買い物や余暇の選択Mayer-Jphnson の絵シンボルを使う。

○娯楽/余暇の過ごし方:
 Aは余暇の過ごし方について広いレパートリーをもっている。教室では一人で雑誌、本、広告を見たり写真を切り貼りしているのが好きである。生徒同士でピクチャービンゴをするのが大好きで「コーラー」(発呼者)をつとめる。歩くこと、散歩、運動はあまり好きではない。

○粗大運動:
 Aは上手に体を動かして移動できる。しかし、口を大きくあけたまま歩く。Aは彼女のサイズと能力にあった重量上げに集中するときには力強い。Aは片足立ちが2-4秒、ジャンプが2-4回、スキップが2-4秒、駆け足が25秒できる。Aは重量上げ機の一番軽いおもりので押し上げることができる。座起運動(sit-ups) は10回、脚上げは8回できる。

担当者:J.W.  矯正体育スペシャリスト

(翻訳者 中島康明 MHG03143@niftyserve.or.jp 編集者 成田 滋 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp)

●行動介入指導案(IEP)

計画提案日:1994年11月
計画承認日:1995年1月19日
担当責任:A.S.

生徒氏名:A
年令:16才
生年月日:1978年
教師:A.S
実施学校:Santa Clara高校

行動分析に関する評価についての要約<p>  Aは、課題から別な課題に移る間や、自分が欲しない課題をすることを要求されたときに、欲求不満を表します。彼女は、通常、哀れっぽく泣いたり、奇声を発することによって自分の欲求不満を表現します。時々、Aは、備品とか身の回りの物をたたき、椅子を投げるというように非常に興奮した状態になることもあります。彼女はまた、たまたま彼女のそばにいる仲間への攻撃とか、課題をするように指示するスタッフへの攻撃を向けます。スタッフへの殴り、のどへの攻撃、服のひっつかみ、咬みつきなどの局面では、非常に興奮した状態になります。

 先行な動作、結果、ベースライン・データなどの詳細な標的行動については、付随する評価報告に記述されています。

I. 行動の類型

A. 標的行動について
○哀訴や反抗への介入
身体的抵抗:
 クラスまたは、地域社会から逃げだしたり、テーブルの下をはいまわったり、視線を合わせることを避ける行為のことです。
破壊:
 身近にあるもの、テーブル、コンピュータ、いす、ロッカー、窓をたたいたりすることです。
攻撃:
 クラスメイトに対して:たたいたり押したりすることです。
スタッフに対して:
 叩く、押す、蹴る、のどをつかむ、あるいは咬みつくことです。

B. 選択/代替行動について
哀訴や奇声:正常な声を使用します。
身体的抵抗:二つの領域から活動を選択させます。
破壊:席につけ、水を飲ませます。
攻撃:スタッフから離したり、寝かせたり水を飲ませます。

C. 目標と目的:適切な目標に関する記録BからのIEPリストBからの記録
職業訓練目標:絵で描かれた日課
職業訓練目標:集団活動
地域社会目標:ニーズを表現するための携帯用コミュニケーションブックの使用
社会的/情緒的目標:通常学級への出席
学習目標:与えられた課題への取組み

II. 行動介入

A. あらゆる生活環境における介入の場
 □学校 □家庭 □地域社会 □仕事 □その他

B. 予防
1. 生活様式の高揚:(望ましい変化の一覧表)
・健常な仲間との統合を拡げます。
・グループ活動への参加を拡げます。
・身体運動活動への参加を拡げます。
・学校計画における絵を使った日課表による行動予測を拡げます。
・課題達成見込みについて予測を拡げます。

2.行動の代替(教示または、行動の代替についてのステップの一覧表)
哀訴:正常な声を出すよう指示したり、意図的に行動を無視していることをAに気付かせます。
奇声:Aに緊張をほぐす姿勢である“タートルポジション(床にうつ向け)“を教え、または別の指示を選択をさせたり、褒美をとりあげます。
破壊:寝かせて“タートルポジションをとりなさい“と指示します。
攻撃:寝かせて、危害を加えるような行動を抑えるために“タートルポジションをとりなさい“と指示します。

3.積極的処置(先行動作、結果または、教育計画における計画変更の一覧表)
・積極的強化:望ましい行動に賞を与えます。
・強化:望ましい代替行動をするとき、ポジティブな強化を与えます。
・他の行動についての異なる強化:望ましくない行動が起こった後は、一定時間は強化を与えません。
・自然な強化についての認識:活動または、行動についての自然に起こった結果である強化子を使用します。つまり調理活動をしたあとは、食べ物を食べることを褒美とします。
・漸次接近行動:標的行動に徐々に近ずくような行動については、僅かでも見られる積極的な変化を強化します。

4. 変容の設定(誘因、環境、活動、カリキュラム、教育方略、予測等についての 修正の一覧表)
・Aは、教師の近くで作業をするようにします。
・個別の日常スケジュール、計画の変更などは早めに知らせ、Aが適切な選択ができるように配慮します。
・Aに対して、日常の課題が作られそれが説明されます。
・ルールや課題を説明します。
・自分が好きでないこと指示されたとき、課題を終えたときに与えられる褒美に随伴して、別の行動が与えられます。
・不適切な行動は無視され、適切な行動や活動には強化が与えられます。
・適切な行動を助長するために、まわりの仲間を強化するとともに不適切な行動を無視します。
・不適切な行動の代わり、適切な行動について指導したり別な指導を行います。
・教示の代わりや娯楽行動:正しく発声するよう指示したり、タートルポジションをとらせます。
・自分のニーズを適切に伝えれるように、機能的コミュニケーションシステムを用意しておきます。

C. 標的行動に関する反応
 最も少ない制約から最も多い制約を伴う介入の経過についての計画を列挙し、そのステップを含みます。(緊急の場合の手続きを含みません。)
・哀訴:正しくしゃべることや望ましくない行為に対しては、意図的に無視されることを気付かせます。
・奇声:正しくしゃべるよう、言葉で注意を促します。
・強化子を徐々に減らすようにします。
・適切な行動について彼女に気付かせます。すなわち、「Aさん、わかりますね。これが欲しければ普通のいいかたで言ってね。」とか、「こっちを向いて。両手を出さなくても誰もそれをとったりしませんよ。」などによって、褒美が減るのではないかという恐れを抱かせないように配慮します。
・日課や自分のすべきことに気付かせるようにします。
・褒美が得られることに気付かせます。この場合は、日課を描いたカードで選択させたりします。
・褒美があったり、なかったりする活動を選択させます。この場合も、活動を描いたカードを選択させます。
破壊:
・「タートルポジション」をとることをAに口頭で告げ、もし、彼女がその指示に従わないならば次のステップを考えます。
・彼女が、いすに腰かける準備ができているかどうか彼女に尋ねます。もし、yesならば、次のステップを考え、もし、noならば床に一分間腰をおろし、それからもう一度尋ねます。
・椅子に1ー3分座らせ、それができたら即時に水を与え、一分後に雑誌を与えます。
・散歩をさせます。
・活動に復帰させます。
・攻撃:
・「タートルポジション」をとるようにAに口頭で告げ、もし、その指示に従わないならば次のステップを考えます。
・床に横になることを命じ、平静にさせます。(一分間)
・彼女がいすに腰かける準備ができているかどうかを尋ねます。もし、yesならば、次のステップを考えます。もし、noならば、一分間、床に腰をおろし、その後もう一度尋ねます。
・椅子に1ー3分座らせ、それができたら即時に水を与え、一分後に雑誌を与えます。
・散歩をさせます。
・活動に復帰させます。

D. 緊急の場合の介入:
 緊急の処置が必要な場合の行動を記述します。最も制約の少ない介入と最も制約の多い介入の段階的なフェードアウトの過程を記述します。なお、全ての緊急介入は、行使することが事前に承認されていなければなりません。

レベル1 攻撃あるいは破壊的な行動の抑制

 穏やかなことばの叱責による介入:スタッフは、不適切な行動に対して穏やかな調子でしかも簡潔に、その行動が望ましくない旨を生徒に伝えます。

反応の対価:
 スタッフは望ましくない行動が見られた後、Aから特定の自由や報酬を取り上げ強化します。

環境の回復:
 Aはスタッフまたは、クラスメイトに対してわめいたり物を壊したりした後で詫びるならば、通常の状態の環境に戻します。

軽食の遅滞や拒否:
 生徒の適切な行動が促進されるのに最も有効であり、その場合軽食が与えられます。

タイムアウト:
 コンピュータを使える時間や、使えなくなる時間が告げられます。

レベル2 破壊的・暴力的行動に対する嫌悪

行動の補正:
 Aは、破壊的状況以前の良い状態の環境に戻すようにします。即ち、彼女が椅子を投げるならば、部屋中の全部の椅子を元の正しい位置に整頓するように指導します。

レベル3 破壊的・暴力的行動と他の子どもに対する攻撃

 これにはAの破壊的行動の指導計画や管理について、訓練を受けている職員によってのみ実施されます。

学習環境からのタイムアウト:
 Aは、彼女が他人から観られない安全な場所に離されます。たとえば介助者の席近くの介助者室の後部とか。直ちに職員の観察に基づいて、Aにはこのタイムアウトの事態が説明されます。その職員は1-5分後に、Aに対して通常のクラス活動に加わりたいかどうかを尋ねるます。

1-2人の介助者:
 Aを介助するために、安全な場所か、または抑制にふさわしい場所に移します。このようにAは他の生徒から引き離されます。

「タートルポジション」による抑制:
 Aが他の生徒や職員を殴打したり、正当な防衛を損なうか、行動を抑制する方略に効果が少なかった場合に行使します。

1. 彼女に、“タートルポジション(床にうつ向け)“の姿勢は当然なのだ、といいうことを指導します。彼女は、そのようにすべきで、自らもそうすべきであると思えるように普段から指示され学んでいます。ですから彼女は、自分が落ちつくまでの1〜2分はこの姿勢であると思っています。

2. もしAが“タートルポジション“の姿勢をとらなかったり、抵抗することが続くようであれば、訓練を受けた職員は、1〜2人で“タートルポジション“の抑制手続きを用います。

 a. Aが、より落ちついたり受け入れるようになれば(普通、2,3分の間)、徐々に物理的抑制を弱めていきます。
 b. Aが、言語による確認ができるならば、彼女はその時点で全ての拘束を解かれます。

3. Aに対して、3分間がタイムアウトの期限であることを指導します。何か合図となる用具、例えば計時器や時計などを用いることで、Aはタイムアウトの間隔を理解することができるようにします。初めに水を与え、しばらくしてから雑誌を与えます。

4. タイムアウトの期限がきたとき、彼女を直前の活動に戻して、彼女がしたかったことや願望を表現することで自分自身に気付くようにします。思い起こすために彼女に時間と機会を与え、それから適切な行動へと導きます。

5. この時、彼女は、クラス関わる刺激から解放され、気分転換のために教室から散歩にいってもよいでしょう。

 もしAが、自分からうつ向きの姿勢をとろうとしないのは、彼女は他人や自身に対して防衛的だからです。そのときは、訓練を受けた職員1-2人によってうつ向け姿勢をとらされます。彼女が大抵は2〜3分でより落ち着き受け入れるようにりますので、その場合は床への抑制は徐々に解かれ、少し筒彼女に対する言葉での確認によって全ての制止が解かれます。このときは、上記のステップ2、3、4が適用されます。

(翻訳者 吉利 宗久 yoshitos@naruto-u.ac.jp 筱 更治 shino@edu.hyogo-u.ac.jp 編集者 成田 滋 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp)

●通学途上の行動についての指導案(IEP)

計画承認日:1995年1月19日
生徒氏名:A
年令:16才
生年月日:1978年
教師:A.S.
実施学校:Santa Clara高校

1. 標的となる行動についての記述:
 標的となる行動とは、Aがシートベルトを開放して外す、座席から離れる、席を替わる、他の生徒を殴打する、または奇声をあげることです。
2. 介入適用の理由:
 Aがバスに乗車中、一定場所でシートベルトを着用した状態は、彼女の安全の観点から必要だからです。

3. 安全な抑制が用いられること:
 段階的な安全抑制を含む以下の手順が含まれます。

前触れとしての状況:
 自分の席に誰か座っている。命令的な仕方で指示される時。病気の時。

強化子:
 誉めることや注意を与えること、雑誌(Avon, ads, coupons)等、食べ物、図版カード、学校での好きな活動、たとえばパソコン、化粧や爪の手入れに熱中すること、地域への外出、家庭でテレビの時間、リュックサックのおもちゃや、おかしな包みなどを強化子とします。

介入指導:
 Aの学校への行き帰りでのバス乗車に関する家庭・学校、通学途上における一貫した介入指導を行います。

1. 母親は、バスの乗車前のAに対して、とるべきいつもの手順や行動について思いおこさせます。さらに母親は、Aに対して、彼女がバスの中でふさわしい安全に必要な行動がとれれば、帰宅してからテレビを見ることができることも言葉で想起させます。

2. 両親、学校職員、そしてバス運転士は、Aに穏やかな言葉で安全乗車が必要であることを指示し、指示や適切な結果や褒美がもらえることを気付かせます。
 a. 職員は、Aにとってバスでの登校が、安全で適切に行われるための援助者であることを強調します。さらに、褒美としてはクラスの活動で特に好きなこと、朝食、絵カードなどを想起させます。

3. 運転士は、Aをバスに迎えると適切な行動をとれると褒美が与えられることや、自分がAの援助者であることを彼女に思い起こさせます。このような声かけは、教育委員会が規定しています。

4. 適切なおもちゃや書籍は、彼女の背負い袋に入れておきます。

5. Aには、バスの後方に自分の席を割り当てられて、監督を受けます。

6. もし、Aが座席の留め金を外したり座席を変わろうとしたら、運転士は言葉でAに注意します。例えば、普通の語調で、「自分の席に座って、座席のベルトを締めなさい」などといった具合です。

7. 「いつ/そのとき」という関係や状況を明確にします。例えば、「シートベルトをして座っていたらラジオが聞けるよ。」

8. もし、行動が安定し、それが持続した場合、彼女に対してバスのステッカーが貰えることを思い出させます。

9. もし、ふさわしい行動が継続、ないし持続しない場合、「〜しなさい。そうでなければ、あなたのおもちゃ/本を取り上げますよ」とAに注意を促します。

10. もし、ふさわしくない行動が継続し、拡大するような場合は、Aや他の生徒に危険を及ぼすような場合は、運転士は道路の安全を見計らって車を停車させます。
 a. 運転士は、Aがおもちゃや本を手放すように指示し、取り上げます。ただ次のバス停でそれを返してもらえることも伝えます。

11. もし、ふさわしくない行動が継続し、拡大するような場合は、運転士は次の段階の安全かつ適切な決定のために通学についての責任者と協議します。

12. 通学についての責任者は、ただちに校長と協議します。

(翻訳者 筱 更治 shino@edu.hyogo-u.ac.jp 編集者 成田 滋 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp)


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