1997年10月の会報です。


障害者とコンピュータ利用教育研究会のホームページ



目次

第86回関東例会のお知らせ
第86回関西例会のお知らせ
第85回 MES関東例会の報告
報告
パソコンバンクのコーナー
チャレンジキッズ総論(未定稿)
皆さんからのお便り
電子情報通信学会教育工学研究会 研究発表の募集
社会福祉士へのお誘い
キネックス3.5.2日本語版とMacOS7.5.5との相性について
動作訓練著書の紹介

673-14 兵庫県加東郡社町山国2007 兵庫教育大学 学校教育研究センター
0795-40-2205 phone
Email:成田 滋
Web上の会報URL:MES会報

第86回関東例会のお知らせ

○日時: 10月11日(土)午後2時〜5時 懇談会も予定
○会場: 筑波大学附属大塚養護学校
 〒112 東京都文京区春日1-5-5 電話 03-3813-5569
○担当: 永田和子(携帯電話 020-655-8706)野村勝彦 
○交通: 地下鉄丸ノ内線、または南北線の「後楽園駅」下車、 徒歩7〜10分 丸ノ内線の後楽園駅で下車し、4番出口(小石川方面)を出ると駅のすぐ左手に工事中の公園があり、その前を進みます。(通りの向かい側に文京市役所(シビックホール)があります。)つまり東京ドームから離れる方向に進むと、そこに春日通りの交差点(富坂下)があり、左手(池袋方面)に曲がって下さい。春日通りは上り坂になっていて、やや離れた前方に「中央大学理工学部」の文字のある建物が見えます。その正門前を通過し、「富坂上」交差点まで進んで下さい。その信号を左手(中央大学の外壁に沿うように)に曲がり、突き当たるようなところを右方面に曲がり、すぐ、左方面へ進んで下さい。
 突き当たりにレンガ造りのマンションが見えるところまで進み、左手を見ると、そこに大塚養護学校の正門があります。(区立第三中学校のプールが正門前にある場所です)他に、都営三田線「春日駅」下車、JR飯田橋下車等があります。

第86回関西例会のお知らせ

○日時: 10月25日(土)午後2時〜5時
○会場: ミネアポリス市 Raddison South Hotel
○内容: AAC関連入力機器の試しと評価、新作教材の評価
○幹事: 成田 滋
 この例会には、Closing The Gapカンファレンスに参加する関西と関東から6名の会員らが集まります。

第85回 MES関東例会の報告

 夏枯れと言いますか、レギュラーの面子5人に、地元新宿の特殊学級に通う小学3年生のSくんとお母さんの7人という少人数で、失明者更生館を会場に執り行われました。 Sくん(小3)のお母さんは「手をつなぐ」の7月号のコンピュータの特集を元に興味を持ってWin95機を導入したそうです。 周りの人にそういう人がいないのでと思っていたところパソコンバンクからMESを知ったとのことです。永田先生は筑波大学附属大塚養護でS君の上級生の弟と関わりがあるとのことで縁は異なものです。千葉聾学校の宮下さんは、昨日まで林間学校にいっていての参加です。Win機で教材を作らないといけなくてOMOに取りかかっているとのこと。Asahiパソコンの9/15号にかっての教え子が障害者の関係の連載で紹介されているそうです。野田養護の熊谷さんからは、教育総合展のベネッセ・ブースでのマルチブックの紹介と「カルロといっしょにあいうえお」を紹介してくれました。鎌倉養護の林先生からは、フリーウェアと数カ月越しになっているCD-ROMの紹介の用意をしていただきましたが、時間切れでまたもや来月にお預けです。さて、まずは熊谷さんから。

・「カルロといっしょにあいうえお」
 以下の4つのモードがあります。
「よんでみよう 」 50音表をクリックすると単音だけでなく、行・列も読み上げる。
「かいてみよう」 「あ」ならあひると「あ」がでてきて書き順をカルロが教えるモードと自分でやるモードがある。
「これなあに」 「れんが」を50音表から選ぶ。
「しりとりめいろ」  絵が表す単語をしりとりしていく。正解だと音が出る。
 熊谷さんもいってましたが 、絵はきれいなのですが勉強臭が強く面白くないです。ジャストシステムのポンキッキーズシリーズにかなり負けます。ただ安い(実売は2,000円程度)ので勉強勉強した雰囲気の方が好きな子供もいるのでそういう子には合うだろうとのことでした。
 続いてSくんが使っているCD-ROMからお母さんが紹介してくれたのは次のものでした。

・「マックスとマリーかいものにいく」
 マックスとマリーが頼まれたものを買い物にいくという絵本風の数の学習ソフトで、「おばあちゃんとぼく」と「プレイルーム」を足したような雰囲気のものです。絵からして面白いです。絵をクリックすると何か起きる仕掛けがでます。買い物などの場面設定(何カ所かで買わないといけない)は自分で選びます。買い物リストは常に表示されているので買うものはすぐに確認できます。

・「よーい、どん!」
 ハイブリッド版なのですが、Win用のフォルダしか表示されず、なぜか動きませんでした。

・「MES CD-ROM'97」
 Sくんに「おおがね」をやってもらったのですがすぐに飽きました。96年版の「マックへいこう」は興味を持ってやろうとするのですが、手続きが今一歩わからずもどかしそうでした。

 永田先生のCD-ROMからです。
・「らすたぁちゃんとあそぼう」

 元々父親が娘のために作ったソフトウェアだそうです。町の動物園とか買い物に行ったりするもので絵もかわいく、Sくんも熱中していました。

 久しぶりに新しい方が見えて、特にお母さんからの質問には、いろいろ答えることができたと思います。ただ、今回の例でもWin95機で動くソフトウェアの紹介(ハイブリッド版とか)にだんだん移行していかないとMacのユーザーグループでそれは許されるのかという疑問はありますが、参加者のニーズにも応えられないのかなとか、ソフトウェアの紹介だけでなく、今回のように実際に体験してもらったりクリニック的なものを取り入れていかないと、活動がじり貧になっていってしまうなという危惧は感じました。来月は、久しぶりに筑波大学附属大塚養護学校で行います。
(報告:佐原恒一郎 千葉県立市川養護学校 GEC02532@niftyserve.or.jp)

報告

  「人とのつながりを大切にしたネットワーク交流」
七尾養護学校におけるコンピュータ教育活用から
 小塚 雄一郎・前 正人・島田勝浩・大橋 学 石川県立七尾養護学校
 koduka@po.incl.or.jp
   http://kidsnet.jeims.co.jp/ishikawa/nno-yogo/index.html

【ネットワーク教育活用のきっかけ】
平成8年度「学校教育マルチメディア通信ネットワーク利用実験」(NTT)によりISDN回線、フェニックス(マルチメディア会議システム)等の通信環境が実現しました。

【学校間交流プロジェクトへの参加】
学校間交流プロジェクト「メディアキッズ」【メディアキッズ・コンソーシアム】新谷 隆会長(国際大学GLOCOM)と「チャレンジキッズ」(滋賀大学教育学部附属養護学校)という子ども達のためのネットワークに参加しています。

〈特徴〉
・『FirstClass』というソフトを使用し、Macintosh、Windows両方での利用が可能。

・画像ファイルや音声ファイルの添付も簡単で生徒が使いやすいGUI環境での操作。

 チャレンジキッズは「メディアキッズの参加校のうち希望する養護学校や小・中学校の特殊学級の子ども達が、自由にゆったりとした共通の話題でネットワークをじゃぶじゃぶ使える環境として、メディアキッズの中でのローカルなコミュニティーという位置づけにする。そして,教室内での学習活動と同様に,失敗しても許される場として,ローカルサーバー(チャレンジキッズ)を活用し,日本国内ではバリアフリーが実現されている数少ない場として、メディアキッズでの校種・年齢・地域などを越えた交流・共同学習などを行っていく」という計画のもとで設定され、現在24校が参加しています。

【コンピュータ利用のねらいと目標】
 本校では、今年度、パソコン(インターネットとマルチメディア)利用のねらいと目標を次のように揚げて計画しました。
・相手を意識した自己表現・自己決定の場としてのネットワーク利用。 ・障害者のための入力操作環境の改善。
・教育活動の公開と社会との情報交流の場としてのホームページの位置づけ。

【学校間交流プロジェクト「メディアキッズ」「チャレンジキッズ」の活用から】
 本校では主に、部活動と作業学習(印刷班)・休み時間などを利用してアクセスしています。生徒は、自己紹介をしたり、雪が積もった様子やきれいななのはな畑の様子をデジタルカメラで撮って近況報告したりと、ネットの向こう側の人に対して自己表現する楽しさを体感しています。(ひらがなの部屋・自己紹介の部屋)最初は「え、ほんとに、もう、私の手紙行ったん?」目を丸くしながらメールを出していました。返事を待つ間、毎日のように「先生、返事、書いてあった?」と聞いてきます。本当に待ち遠しいという、素直な気持ちがよく伝わってきました。また、「今度は運動会のことを書く」とか「現場実習のことを載せる」と言うように積極的に活動するようになりました。相手があって初めて成立するコミュニケーションです。

 また、これらの会議室は、子ども達の自由な書き込みによる自由な活動が可能な場となっております。書き込んだ内容を参加者全員が見ることができます。時には、生徒がネットワーク上で「けんか」をしたり「悪口」を言ったりすることもあります。その様な場合でも、参加する教師の部屋で話し合いながら「○○君、このはなしは○○せんせいといっしょにかんがえてみてくださいね」というふうに他校の生徒にも投げかけています。まさに「時間と距離を超えた教室」であり、参加する教師は参加する生徒全員の教師となり得るのです。教師側の意思疎通を十分にしておかないと中途半端に終わってしまいます。特に、抽象的思考が苦手な生徒にとっては、水面下でいろいろなフォローや仕掛けを補っていかないといけない面が少なくありません。その点、これらのプロジェクトでは、参加校の教師同士のコラボレーションがしっかりしているので心強いのです。

【高等部・作業学習(印刷班)・チャレンジプリント】
 高等部・作業学習(印刷班)では、ネットワーク活用による新しい共同作業を展開しようとしています。それは「チャレンジキッズ」内に、印刷に関するネットワ−クコラボレ−ションの為の会議室「チャレンジプリント」を設置したことです。自分の担当工程や各校作業学習の内容の紹介・情報交換等を行い、滋賀大学教育学部附属養護学校高等部印刷班と連携した、作業学習における共同作業の新しい形態を試みています。具体的には、七尾養護で手動印刷機で印刷する名刺や封筒の版下を、ネットワークを利用して滋賀大附養に依頼・発注します。附属養護では、樹脂凸版の版下を作り、できあがった版下を七尾養護に郵送します。附属養護の生徒が宛名を書いて直接、七尾養護あて投函するという内容です。鉛筆で書かれた郵便物を、生徒が開いて附属養護の生徒の「できたので送りましたよ」というメールを読み、返事を出すという関係の中で、それぞれの作業班で「いい仕事をしたい」という自覚につながるようです。生徒がお互いに共通の土壌で役割を意識しながら、外に向けたコミュニケーションに発展してくれることを期待しています。始めたばかりなので、まだまだこれからですが受注伝票なども生徒にさせていくよう、教師の部屋で相談をしながら進めています。

【中学部・・自己紹介の部屋】
 中学部では、今年度修学旅行で関西方面へ行くことになっています。チャレンジキッズの自己紹介の部屋で、滋賀大学付属養護学校中学部の生徒どうしの交流がもてないかと考えました。日程的な都合などで、直接交流は計画できませんでしたが、生徒によるネットワーク交流の機会を設定することができました。幸い、相手校の配慮により、同じ中学部の生徒との交流で、しかも、教科の1クラスの授業の中で扱っていただいたので、安定してやり取りさせていただくことができました。以下に、その取り組みについて、順を追って説明します。

・ゲームソフトを使って
 本校中学部でネットワーク交流を行っているのは、2年数学科Aグループ3名です。 この3名は、昨年度、パソコンでの学習も経験しており、苦手意識は少ないと思いました。しかしながら、キーボード操作(特に文字入力)やマウスでの操作などは十分ではないので、まず、パソコンの操作に慣れることも含め、ゲームソフトを使っての操作学習を数時行いました。

・文字入力に慣れる
 文字入力の基本操作について練習しました。これまでも、文字入力の経験がある生徒もいましたが、主に、馴染みのある人の名前や行事についてなどの作文を入力しました。

・相手校のメールを確認する
 相手校から届いたメールをプリントアウトし、パソコンを通じて送られてきたメールを見て、相手校の友達について知りました。その後も、届いたメールは、できるだけプリントアウトして教室に掲示し、読めるようにしておきました。また、週1回パソコンを開き、パソコン上でメールを確認するように心がけました。

・メールの文章を入力する
 まず、相手校の友達の中から、一人ずつメール相手を選び、自分の紹介をしました。その後は、決まった相手に対して、好きなことや出来事など文章で表わし、紹介するようにしました。

・中学部の取り組みのまとめと課題
 ネットワークによる交流は、「見えないところの相手との、直接は共有しない事項についての分かち合い」という難度の高い部分が多く含まれています。従って、ネットワークのみによる交流は、その意識を継続していくのが非常に難しいように思えます。本来は、直接交流を挟んだ事前、事後の交流としての役割が強いように感じられます。しかし、今回の交流を通じて、各生徒はいろんなところに、友達がたくさんおり、メールのやり取りを通じて知り合えることを経験できたのではないかと思います。

 今後も、より親密感がもてるように、写真のやり取りや絵などの作品のやり取りなどの工夫を行いながら、交流を深める努力をしていきたいと思います。また、今回の修学旅行では、日程的に滋賀附養の運動会が間近ということもあり、生徒同士の直接交流は実現できなかったのですが、滋賀附養の先生方が教官交流として宿舎を訪問してくれました。七尾養護では、修学旅行報告で全職員にその内容が伝えられ、とても暖かいネットワークを通した交流が紹介されました。教師間の交流ではありますが、今後の活動に関して有意義な出来事であり、まさに「ネットワークは人なり・・・」を実感しました。

 今年度は、中学部にとって、そして、私にとっても、ネットワーク利用においての可能性の模索の時期であるように思えます。自分たちの受けもつ生徒のできそうなことは何か、教師の支援の必要性をあらためて感じました。また、コンピュータ活用の少ない中学部の各教師に対しても、何らかの刺激を与えることができたのではないかと思っています。しかし、今のところ、ネットワーク利用による活動が生徒にどんな変化をもたらしたのかを見極めるまでには至っていません。今後は、そうした点にも目を向け、ネットワーク利用の取り組みが着実な生徒の成長の一役となるよう、努めなくてはならないと考えています。

【入力装置の工夫】
【今井美諸(いまいみお)さん・・・高等部2年】
〈これまでの経過について〉

 高等部入学以前より、本人の意思伝達や言語の発音の補助具として簡易入力装置(トーキンエイド)を使用してきました。また、コンピュータについても、在宅訪問学級在籍時より担当教諭の入力装置の工夫によって親しんできました。

 高等部に入学し、さらに本人にあった入力装置について検討し、PAD-BAC-80(パッドバック・エイティー)とトーキングエイド、ハンドル式ジョイスティックを試してきました。これにより、これまで困難であったマウス操作がジョイスティックで可能となりました。そして、「もっといいものはないか」ということで、ボタンスウィッチ一つで文字入力が可能なキネックスを使用しました。これは、ボタンスウィッチを押すことで画面上で文字を選択できる入力装置で、肢体不自由をともなう人にとっては有効な入力装置です。キネックスを使用することで、画面上にでてくる文字をボタンスウィッチで選択し、スムーズに文章を入力することができました。  キネックスを使用していて問題となったのは、画面上を動くときの「時間」でした。というのは、画面上を動いている間「待つ」ということが必要になってくるからです。これにより、本人のペースで入力ができない・・・・・待つことができない・・・という問題が起こってきました。

 そこで、「インテリキー」を使用してみることにしました。これは、以前に使っていたトーキングエイドとよく似た入力方法で、ボード上に使用者に合ったオーバーレイ(インテリキー上にのせる紙)をのせ、文字を入力することができる装置です。しかし、指先の力加減をコントロールしないと、同じボタンを2度連続してさわってしまったり、思うボタンの隣をさわってしまったりと、難しい面もありますが、体にあわせてインテリキーの角度と位置を調整することによって、現在のところわりといい感じで入力できるような状態ではあります。

 PAD-BAC-80は、ジョイスティックによるマウスエミュレートを利用した絵描きソフトの活用やトーキングエイドを入力装置としとしたワープロ入力が可能となる装置で、埼玉県立和光養護学校の斎藤明朗氏が数年前に自作したものです。それを今回、斎藤氏と同じ「埼玉の障害児教育とコンピュータ利用を考える会」に入っておられる埼玉県立宮代養護学校の中島明弘氏に作っていただきました。

【教師にとってのネットワーク活用】
 これらの入力装置の情報のやりとりは、「Challengeプロジェクト」(滋賀大学教育学部附属養護学校)や特殊教育共同利用企画・インターネットと障害児教育(東京都立光明養護学校)などのグループウェア・メーリングリストという会員制のネットワークによって行っています。このように、必要な情報を得る手段として、私たちの学校のように特に地方、田舎にいても、色々な分野に詳しい人たちの力を借りて、メール上でやりとりしながら「知っていく」と言う意味で、ネットワークによる仲間の存在は本当に心強いものだと思います。

 トーキングエイドは、言語表出に障害がある方が文字を入力し、それを代わりに音声化してくれる機械です。また、プリンターにつなぐと入力した文章を印刷することができます。しかし、残念なことにコンピュータのテキスト文章として保存することができないので、トーキングエイドで打った文章をそのまま電子メールなどで送ったりすることもできないわけです。美諸さんには、現在のように自分で書いた(打った)文章を多くの人に見てもらったりその返事をまた送ったりという環境の中で、もっともっと自分自身のやりたいことを増やしていってほしいと思っています。コンピュータを使った文字や絵の入力に関わっていくことが本人の自信や生活の柱として位置づける事ができたらうれしいです。ですから、障害をもっている人の特別な機械・・・としてではなく、もっと簡単に手に入りメンテナンスが容易な装置や手だての部分のサポートが必要なのだと思います。それを、メーカーが取り組んでくれればありがたいですし、そういう方向を切り出していくのが、私たちの役目だと思います。

 それぞれの障害に関してよりわかりやすい表現の方法や、知的障害をともなう人たちにとっての画面上のボタンのわかりやすさなども工夫していかなければならない大切な部分です。

〈他の生徒に対しても〉
 「知的障害をともなう人たちにコンピュータがいるのか」「ネットワークなんてやれるの?」「知恵遅れの学校にネットワークは必要なの?」と厳しい?冷たい?言われ方をいろいろな場で聞かされました。「肢体不自由」は見えても「知的不自由」はなかなか目に見えにくいわけです。七尾養護学校において、美諸さんに対する試行錯誤の部分がベースとなって、多くの知的障害児(者)にとっても、「道具立ての工夫次第ではちゃんとワープロできるよ。文字を読んでコミュニケーションできるよ」と言うように個々の生徒に「個に応じた指導や道具立て」をしていく事が大切だと思います。

 タッチパネル付きディスプレィやインテリキーを使ってキッドピクスやテキストファイルに文章を書く活動は、「『知的不自由』に関してもこのような配慮でできるんだ」という、一つの確信になったと思います。小学部や中学部でもそれらの入力装置を使って子どもと一緒にコンピュータをさわってみようする教師が増えてきました。美諸さんに対する入力装置の工夫を、今度はこの子にも・・あるいはこの子はどうなのだろうか・・・と、個々に対する対応を考えて実行していくことが今後の実践課題です。「この子らの学習には、こんな物がいるんだ」と、一つ一つ要求していくこととが、ようやく学校内で認められ実現していけそうです。

【親と子の応援のもとで・・・NHK教育テレビ取材を終えて】
 ホームページに関する個人情報の保護その他のガイドラインと合わせて、親御さんや本人の承諾を得るよう連絡しました。様々な親の考え・希望等が見えました。ホームページにかぎらず、教育関連誌や研究会での発表・マスコミの取材にいたるまで、親や本人との意思疎通を図りながら進めていくということは、今後私たちにとって大きなエネルギーとなるものであり、大切なことであります。

 今回美諸さんのお母さんが、美諸さんがカレンダーを作ってそれを製品として販売するという、今まで本人が経験したことのない活動をしていることに対し、「この子にとって本当にうれしいことです・・・」とおっしゃっていたそうです。チャレンジキッズやメディアキッズの活動の中である程度通信メディアを経験しながら子どもたちのメールのやりとりが、もっと日常的になって、一般的なメールやホームページなどでも「私はひらがなならば、意思伝達ができますのでひらがなの情報をください」というような自己主張ができる子どもたちを育てていきたいと思いました。

【まとめと今後の課題】
 マルチメディア通信環境の充実と、補助具としてのインターフェースやテクニカルエイドの開発によって、障害をともなう人たちが一般の人たちと同じようにコミュニケーションをとれる社会がすぐそこまできているのです。今後、情報化社会の中で、コンピュータネットワークは重要な役割を担うことになっていくと思われますが、その予算や位置づけなど、まだまだ課題は多いと思います。

 また、ネットワークのオープン性という長所とプライバシーの保護という課題においても、整理をしていかなければなりません。「人的ネットワーク」に支えられながら、継続して可能性の追究をしていきたいと思っています。

Email:  nno-yogo@kidsmail.jeims.co.jp (七尾養護学校)

パソコンバンクのコーナー

●その一 「子どもがあまり興味を示さない」のにはどうするか。
 山平喜一郎 明石市 k-yamahr@psn.or.jp

 親の方々から「パソコンは買って子どもに使わせようとするが、興味を示さないのでどうしたらよいか」という質問を受けます。そのような質問への一助になれば幸いです。

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 確かにパソコンを買ったけれども、「子供があまり興味を示さない」とおっしゃる方もけっこうおられます。この場合、原因は次のようなことが考えられます。

 1.その子が興味を持つようなソフトが入っていない
 2.入力装置が思うように使えない
 3.使い方、動かし方が理解できない
 4.性格に合わない(例えば、待たねばならない時間が多い)

 このなかでも興味を持つソフトを与えることが最も重要です。では何に興味を持つのでしょうか?本やおもちゃと同じように、一般論で言うならば、

 1.その子が自分自身の能力を高めるのに必要なもの
 2.親しみを感じているキャラクター、絵、文字
 3.五感を刺激する絵、音、動き
 4.入力や判断に対する正誤の明確な評価

といったものに興味を持ちます。健常児であれば日常生活の中で、親・兄弟・友人・教師との関わりや本・おもちゃ・テレビ・ビデオ等から成長に必要な刺激を受けて成長して行きますが、障害児の場合は、何らかの原因でそれがうまく行きません。10回の刺激で成長できなくても、100回か1000回か10000回ならできる可能性があります。人間は感情の動物ですから応答回数に自ら制限を加えてしまいます。それをパソコンを使って無限回繰り返そうと言う訳です。また、一部のおもちゃを除いて、本やテレビは子供からの働きかけに対して応答をしません。パソコンは応答ができます。

 それから、本やおもちゃでも同じですが、いったん興味を持っても時間が経つと飽きがきます。能力がアップしますと興味の対象が変化します。同じものをずっと使っていればよいと言う訳ではありません。新たな刺激が欲しいのは大人も子供も健常児も障害児も同じです。子供の成長に合わせて、興味を持てる新しいものを与え続ける必要があります。

 さて、今お使いのソフトに「あまり興味を示しません」とのことですが、まず始めから興味を示さなかったのか、途中から興味を示さなくなったのかで対策が違います。始めから興味を示さなかったのであれば、「入力装置が使えているか」「使い方、動かし方が理解できているか」をチェックして下さい。もしこれらの点に問題があるのなら、入力装置(マウス、キーボード等)の使い方やそのソフトの動かし方を理解させる必要があります。

 これも、その子の能力や発達段階によってやり方が変わってきます。言葉を使ってあるいは手を取って教えることが可能であれば、そうして下さい。それが不可能であれば、自然と入力装置の使い方や目標をクリックやドラッグによって動かすことを理解できるようなソフト(例えば「キッドピクス」)を使って、言葉や手を添えて教え、後は自由に使える環境にして、復習させるのがよいでしょう。

 入力装置は使えるし、動かし方も分かっているが興味を示さないのであれば、ソフトを代える必要があります。どのソフトに興味を持つかは、これまで述べてきましたように、

 1.障害の種類
 2.障害の程度
 3.発達の程度
 4.常日頃興味を持っているキャラクター、絵、文字、数
 5.性格
 6.年齢
 7.性別

 等によって異なります。おたよりにはこれらの情報がありませんので、太田さんのお子さんが興味を持ちそうなソフトを特定することはできません。最近のソフトはほとんどハイブリッド(WinでもMacでも動く)ですが、Macでしか動かないものもありますので、購入されます場合は必ず確認して下さい。

●その二 中島晃大君のこと
 神戸西区にある兵庫県立のじぎく療育センターの山脇さんとOTの卵3名

 9月18日の午後、兵庫県立のじぎく療育園の作業療法士(OT)の山脇さんとOTの卵の方々、そして同じく兵庫県北部にある出石町より中島さん親子3名の計7名がセンターにおいでになりました。中島さんは先日のキャンプで赤穂養護学校の教諭でパソコンバンクの幹事である清水直博さんの紹介を受けてこられました。中島さんご子息晃大くんは車椅子で、作業療法士の方の介助を受けながらソフトや入力装置をためしておりました。話し合いをして3時間ほどゆっくすごされて帰られました。晃大君は、生徒50名あまりの小さな小学校の通常学級に学んでいます。出石町始って以来の最初のインテグレーションのケースだそうです。親の一年あまりの努力が実り、晃大くんがいきいきしているとおっしゃっていました。この小さな学校にパソコンを寄付したくなりました。次回の研究会の例会をのじぎく療育園でやる話もまとまり、望外の喜びでした。報告まで。
○成田先生が説明しています。
○晃大君も真剣です。
○いつもやる気満々です。
○お母さん、ちゃんと聞いててよ。
○作業療法士さんも研修しています。

●その三 設定の報告
 渡部敏成 枚方市toshwata@osk3.3web.ne.jp

 昨日土曜日に和久田さんという方のところで設定が出来た内容を報告します。
1.パフォーマー630のメモリーの増設。
2.パフォーマーの設置
3.キッドピックス・クラリスワークスのインストール
4.付属CD(おばちゃんとぼくと)の説明
5.マックの基本的な使い方と異常終了時の対応の仕方
 以上の設定が出来ました。電源が足りなかったのでプリンターの設定が出来ませんでした。次週お伺いして行う設定は、残ったプリンターの設定とモデム・インターネットの設定です。今回の設定の説明だけでも、和久田さんには十分の量があったみたいで、私が2回目にお伺いするまでその辺を使いながら覚えるとのことです。お子さんの状態は、思った以上に良くなく思いました。下のお子さんがかぜをひいているとのことで、何処まで出来るかはつかめませんでした。まずは、親の方から覚えることをすすめました。1週間使っていただいて、次週私が行ったときにこの一週間の利用状況を聞こうと思います。

●その四 機器が届きました
 都留 晋 神戸市立枝吉小学校 PXU04615@niftyserve.or.jp

 神戸市立枝吉小学校の都留です。先日は本当にありがとうございました。今日、さっそくセッティングして使ってみました。「キッドピクス」を立ち上げると、横にいた植濃君が、マウスを持って、あれやこれやと実演してくれました。植濃君、慣れた手つきでした。お迎えに来られた保護者の方も、興味深そうに眺めておられました。山平さんがインストールしてくださった「キッドピクス」の他にも、クラスの子どもたちの興味や関心に合ったソフトをいくつか導入したいと考えています。ただ、休み時間などに自由に使わせると、きっと取り合いのけんかになるだろうあ・・・。導入ソフトや子どもの使用感など、後日メールさせていただきます。

チャレンジキッズ総論(未定稿)

 大杉成喜 滋賀大学教育学部附属養護学校 osugi@net135.or.jp

 高度情報化社会と言われるようになって久しい。新聞やTVニュースでも「マルチメディア」や「インターネット」といった言葉が頻繁に使用され、現代用語としても定着してきている。パソコンの普及に伴い、個人レベルでそれらを容易に利用できるような環境が整ってきた。WWWや電子メールの普及に伴い、国籍や地域、年齢、社会的地位といった立場を越えた情報のやりとりができるようになっている。電子社会においては誰もが情報の発信者であり受信者でもある。マスメディアのような一方通行ではなく、双方向できめ細やかなコミュニケーション形態であるといえよう。そして、その情報環境が安価でかつ容易に提供されることで高度情報化社会の社会基盤を構築されてきたのである。

 学校現場においても情報化への対応が進んできている。先進プロジェクトである「ネットワーク利用環境提供事業(平成7・8年度CEC・IPA共同事業、いわゆる100校プロジェクト)」が成功のうち終了し、学校教育における様々な情報化の可能性が示唆されるに至った。学校の情報化は現在、普及期に入ったといってよいだろう。中央教育審議会答申では全学校への導入という方針が示され、全国各地で機器導入や活用が進められてきている。現在、学校教育における情報化は実験的研究から実践的研究へと変化してきたといえるのである。

 学校の情報化はパソコンの導入とその活用だけではとどまらない。情報化に伴う「開かれた学校」としての社会的要請はいわゆる「学校文化」をも変えつつある。単に施設を市民に解放するだけでは「開かれた学校」とは言えない。通学する児童・生徒の教育にとどまらず、学校教育が社会の中での役割を見直す時期にさしかかっていると言えよう。学校が「学校」であるのは通学する児童・生徒に対してだけではなく、学校と関わる全ての人々にとって「学校」たりうるべきものである。その中での学校の情報化であり、情報化は共に学ぶ「共育」の考え方の広がりであると考えたい。

 情報化に伴う「学校」の変化は学校外に対してだけではない。「学び」そのものの見直しの機会をも提供している。JeanとEtienneは『状況に埋めこまれた学習』の中で「学習のカリキュラムは本質的に状況に埋めこまれている」と述べている。ここでの学習とは実践共同体に参加することである。実践共同体に参加することは状況に埋めこまれており、仲間同士や仲間に近い関係同士での知識の伝え合いの中で「学んで」いくのである。この学習環境は古くは職人の徒弟制度に見られるものであり、彼らはこれを「正統的周辺参加」と呼んだ。参加しているうちに、学習者は背後に多くの人々の社会的、文化的な営みがあり、そこに自分が参加していることに気付くのである。「世界」の広がりの実感とそれへの参加意識が芽生えることで、「学び」が深まっていくと考えられるのである。

 その「学びの共同体」を支援するものとして電子ネットワークは有益なものと考えられる。学校や教室は「学びの共同体」へアクセスしていく「橋渡し」の場と考えたい。それぞれの学校が「学びの共同体」のノードとして活性化し、大きな共同体として活動していくのだ。電子ネットワークにおいてそれぞれのノードである学校は物理的には離れていてもさしつかえない。それぞれのノードが共通の「学び」を必要とすることで、あるいは補完的な「学び」を必要とすることでその結び付きを強めていく。電子ネットワークによる「学びの共同体」は学校の連携の新しい形となりうるのである。それは、とりわけ僻地校や小規模校といった物理的条件に恵まれない学校により恩恵を与えてくれることが期待されるのである。山内は「電子ネットワーク上の学びの共同体はそれだけで完結するものではなく、教室における学びの共同体と相互補完しあっている。それは、単に、電子上か、実空間上かだけの問題ではなく、二つの共同体は緊張関係を持ち、複雑な相互交渉を行っていると考えられる」と述べている。その関係をいかにうまく保持していくかは大きな課題となってくるのである。

 もちろん、「学びの共同体」は子どもたちだけのものではない。佐藤は教師たちが専門家として仕事を創造し高め合う「同僚性(collegiality)」の構築や、学校内外のことがらに関して教師集団が意思決定の主体となる「自律性(autonomy)」の樹立においても「学びの共同体」は有益なものであると述べている。実際私たちも、電子ネットワークにより教師の「学びの共同体」を構築することで、視野が広がり専門性を高めることができた。「こんなことがしたい」という若い教師の想いに対し、様々な学校からそれを具体化する方策を支援することがなされた。単なる雑談から始まったアイディアが議論を経ることで学校間プロジェクトに成長することもあった。「学びの共同体」に参加した教師はその良さが忘れられず、転勤した後もその学校から参加しようと努力していった。その結果、「学びの共同体」は新たな広がりを持つことになったのである。

 ネットワークによって「学び」そのものが変化することは前述の通りである。しかし、「ネットワーク」という道具を活用するにはいくつかの手順が必要である。山内はネットワークがコミュニケーションの道具となるためには次の4点が必要であるとしている。

 1)自尊心---認められる経験
 2)遊びを経由すること
 3)コミュニケーションの経験--リテラシーの学習
 4)他者の援助

 認められる経験を通して、自信が生まれてくる。それは学習の場だけではなく遊びの中でも培われなくてはならない。子どもにとって「遊びの場」は「学習の場」とともに大切なものである。これら2つが切り離されたものではなく、相互に子どもの成長を育むものであると考えられるのである。同時に、ネットワークを通じてのコミュニケーションには他の学習とは違ったある種のリテラシーが必要である。そのリテラシーに関する学習も必要である。しかしそれは必ずしも授業で身につくものとは言えない。「学びの共同体」に参加する中、友人やあるいは先生をはじめとする大人の援助を通して成長していくのである。そしてこれは子どもにのみ当てはまるものではない。初めての経験ならば大人も子どもも同じような道を歩むのである。それゆえ、大人にとっても「楽しいよ」ということを大切にしたいと考えるのである。

 さて、障害児にとっての「電子ネットワーク上の学びの共同体」ついて考えたい。「障害児」といってもいわゆる「健常児」と大きな違いがあるわけではない。その子がコミュニケーションの道具としてネットワークが使えるならば「電子ネットワーク上の学びの共同体」への参加は困難なものではない。様々な障害により入出力が難しい場合、その子に合った機器のフィッテングは必要であるが、それは共同体への参加への準備でしかない。むしろ障害児にとって、児童・生徒数が少ないために経験不足であったり、引っ込み思案であったりすることが課題となるのである。リテラシーの学習において十分な支援が必要であるが、一旦身につけた知識を活用するという点においては他の子どもと平等であるといえよう。「電子ネットワーク上の学びの共同体」ではバリアフリーが前提なのである。私たちは私たちの「電子ネットワーク上の学びの共同体」を「チャレンジキッズ」と名付けた。これは「障害児はChallenged children-チャレンジすることを与えられた子どもたちである」という言葉によるものであるが、何より「いろいろなことに挑戦してみよう」という想いを込めた命名であった。私たち教師は子どもたちのひたむきなチャレンジを精一杯支援したいと考えたのである。昨年度、WWW上の公募によって始まった「チャレンジキッズ」は滋賀大学教育学部附属養護学校をホスト校とし、障害児学校 校・障害児学級 校の「電子ネットワーク上の学びの共同体」として運営を続けている。

 パソコンは「知的自転車」であると言ったのはApple社である。小さい子どもたちにとって自転車に乗ることは憧れである。はじめは補助輪をつけて乗り始めるが、いつしか乗りこなせるようになる。乗りこなせれば自転車を意識することなく自由に走れるようになる。パソコンも同様である。使いこなすうちにパソコンそのものを意識することなくその向こうにある「電子ネットワーク上の学びの共同体」に参加できるのである。さて、自転車はその気になれば日本一周もできる乗り物であるが、最初は近所で乗る練習から始まる。「自転車に乗る」ことと「旅をする」ことは別のものなのである。パソコンもいきなりインターネットで世界へ旅立つことも可能ではあるが、自分のまわりの世界を知ることも大切にしたいと考えた。

 そのためネットワークに触れる学習は「インターネット」より「イントラネット」から始めることを選んだ。「イントラネット」によりある程度範囲を限定した「学びの共同体」を構築しそれに参加することを通して、子どもたちがイメージできる範囲から「学び」を広げていきたいと考えたのである。こういった取り組みで成果をあげているのが「めでぃあきっず」である。広い「電子ネットワーク上の学びの共同体」の中でテーマ別の小さな「会議室」を作り、ひとつひとつが「学びの共同体」として独立したものとなっている。「めでぃあきっず」自体は大きなコミュニティであるが、参加する子どもはそれを意識しないで自分の「会議室」に参加しているのである。私たちは「めでぃあきっず」の会議室の一つである「ひらがなのへや」へ参加しつつ、「チャレンジキッズ」独自の会議室を持ち、後者を「チャレンジキッズ」参加校のみの非公開とした。つまり、小さな「学びの共同体」と広範囲な「学びの共同体」を持つことでそれぞれの利点を生かした「学び」を目指したのである。また、教師はあくまで「学び」を支援する立場であり、運営は子どもたちとともに行うことを常に確認しながら「学びの共同体」に参加したのである。

 小さな「学びの共同体」である「チャレンジキッズ」では以下の4点に注意して運営を行った。

 1)具体的であること
 2)日常的であること
 3)自主的であること
 4)継続的であること

 「具体的であること」については子どもたちがイメージできる範囲を大幅に越えないように配慮した。「電子ネットワーク上の学びの共同体」では直接会うよりイメージが持ちにくい。そのため顔写真やスナップ写真、絵などを貼付することでイメージが持ちやすいように配慮した。

 「日常的であること」については、子どもたちの日常的な活動をベースに交流を行うよう配慮した。小学校においては合同学習や学習発表の練習、高等部においては印刷作業学習など子どもたちが共通の話題としてイメージしやすい内容を中心に運営を行ってきた。またイベントのための交流ではなく、交流の結実としてのイベントでありたいと考えた。修学旅行の事前事後の取り組みは単なるイベントではなく「学びの共同体」をより親密なものにするある種の「オフ会」位置付け、そこから新たな交流が始まることを期待したのである。

 「自主的であること」について、子どもたちが進んで参加できる環境を用意した。子どもたちの要求に応じ「会議室」を新設・改変していくことで、子どもたちが「自分たちのネットワークであること」を意識し、より自主的な参加が行われた。また、場合によって入院先や家庭からもアクセスできるようにし、子どもの「参加したい」という気持ちを大切にした。

 「継続的であること」について、散発のイベントによって盛り上げるのではなく、日常的な取り組みの継続を大切にした。そのため教室やフリースペースに端末を設置し、自由にアクセスできるように配慮した。子どもたちは休み時間や放課後にも時間を見つけ継続的に利用した。現場実習前の「しばらく留守にします」というメッセージが、子どもたちの去りがたい思いを象徴しているといえよう。

 このような考えのもと「障害児学校・学級ネットワーク-チャレンジキッズ-」の運営を行ってきた。以下、具体的な実践について述べたい。なお、この実践研究は参加校全てによるものであり、子どもも含めて参加者すべての研究成果であると考えている。従来の「研究校-協力校」の関係ではなく、すべてが「学びの共同体」の平等な参加者なのである。

●参考・引用文献

文部省『情報教育に関する手引』1990
Jean Lave・Etienne Wenger、佐伯胖訳、福島真人解説
 『状況に埋めこまれた学習』産業図書、1993
水越敏行・佐伯胖
 『変わるメディアと教育のありかた』ミネルヴァ書房、1996
新谷隆・内村竹志
 『めでぃあきっずの冒険』NTT出版、1996
佐伯胖・藤田英典・佐藤学
 『学び合う共同体』、東京大学出版会、1996
山内祐平
 電子学習共同体のデザインをめぐって
 〜ネットワーク上の学びのために何が必要か〜、1996.8、
 日本教育工学会研究会(和歌山)資料
山内祐平
 ネットワークを利用した学習環境のデザインに関する試論(1)
 表象主義的デザインから存在観的デザインへ、1997.9、
 JCET教育工学関連学協会連合第5回全国大会講演論文集第一分冊、
 pp.93-96
山内祐平
 電子学習共同体の形成要因の分析(2)
 質的研究法を用いて、1997.9、
 JCET教育工学関連学協会連合第5回全国大会講演論文集第一分冊、
 pp.313-314
滋賀大学教育学部附属養護学校ほか、
 「チャレンジキッズダイジェスト'96」、
 平成8・9年度文部省機器利用研究指定校中間報告書
 -特殊教育諸学校におけるコンピュータ利用-
 インターネットを活用した教育実践研究、1997.3

皆さんからのお便り

●パソコン、フル稼働中
 加藤浩之 鳥取県中山小学校 hirokato@apionet.or.jp

 このたびパソコンバンクより寄贈していただきましたLC630はフル稼働しています。約2週間、子供用にカスタマイズした後、さっそく学校に持っていって使ってみました。写真は、朝の会に使ってみたところです。IMETS自作教材集からも多くを使っています。こちらはハイパーカードを使ってスケジュールカードとして使ってみました。学習の自己選択と確認に使っています。写真や動画などを使ってビジュアルに学習をすすめれば、自閉症の子ども達は見通しを持ちながら気持ちを安定して生活・学習を行っていくことができます。2学期は、生活単元「おつかいにいこう」を生活・学習のメインとして持ってきます。そこでも、このパソコンをかなめとして使ってみたいと思います。学習の様子等、またお伝えします。まずは報告まで。
○パソコンに夢中です。
○勉強に集中しています。

●「おつかいにいこう」
 加藤浩之 鳥取県中山小学校 hirokato@apionet.or.jp

 2学期の柱となる生活単元「おつかいにいこう」をスタートしました。 第1次です。子ども達の学習への意欲喚起と持続性を意図しました。 はじめに保護者からいただいていた手紙を読みました。そこには、学習への励ましと買い物の注文が書いてあります。 (plan1-1) つぎに 米子市、商店街とデパートのビデオを見ました。 夏季休業中に撮影しておいたものです。 (plan1-2) 明日は、学習全体の計画を子ども達と確認します。
パソコンには「1時間の学習のスケジュール」スタックと この学習の「計画とあしあと」スタックを自作して使っています。学習のあしあとをホームページ上で公開すればいいのですが 毎日何らかの子供用スタックを作っているので時間がありません。
○中山小学校のお友達

●近況報告
 前田卿子 静岡医療福祉センター sifc@fuji-mt.or.jp

 MES8月号を送って頂いて有難うございました。障害児のこどものためのソフトの紹介のまとめを出して頂いて有難うございました。参考になりました。当センターも10種類以上ソフトを揃え、いろいろ楽しんでいます。MESCDROM97も楽しんで利用しています。10枚送って頂きましたが、完売しました。POEM97ではROM1枚頂き有難うございました。目下STの先生が小島先生のPICTを使ってmakatonのアイコンをいれてPICT作成しました。KENXを使って使っていくところです。私もすこしハイパーカードの勉強を始めました。
 一昨日心身障害児総合医療療育センターの瀬下さんにメールしたら、なんと翌日に念願の療育関連施設のメーリングリスト始めて下さいました。目下メンバーは、瀬下さん、心身障害児総合医療療育センターの整形外科の柳迫先生と、伊豆の板垣さんと私の4人です。これから療育の輪をインターネットで拡げていきたいと思っています。MESの会員になってから、いろいろな方と知り合えて、現在にいたりました。コンピューターにしろ、ネットワークにしろ付いていくのがなかなか大変ではありますが、初心を忘れず、静岡の障害を持った子どもたちがコンピューターで楽しめるような環境を拡げていきたいと思います。

●第34回日本リハビリテ−ション医学会と展示に参加して
 大前洋介 神戸市立垂水養護学校 omae@wsml.kyokyo-u.ac.jp

 昨日、上記の会合に行って来ました。私なりの感想を。香川大の中邑先生の展示でシンボルを使ったネット上でのコミュニケーションをネットスケープ・コミュニケーター上でやっていました。シンボルでのやりとりだから英語圏と日本語圏でのやりとりも可能だという設定でした。いよいよこんなことやる時代かと思いましたね。中邑先生もていねいに解説してくれましたが、PerlでつくっていてCGIでサーバーにアクセスしたインターネット・チャットということです。私は最初メール機能かなと思っていました。先日のPOEMでインテリキーでファーストクラス用につくったオーバーレイシートも興味深かったですが、知的障害の分野でいうとシンボルでやりとりすることによって、文字のみでのやりとりより、対象児がふえるようにも思われます。またモニターのブラウザ上での入力ということで、視点はかえずにいけるという利点がありますね。実用化および商品化はまだまだなようですが。といっても中邑研究室が商品化するわけではないでしょうけど、ちょっと注目すべきものかなとも思いました。あと、おもしろいのはイージープロローグ(NTTPCコミュニケーションズ)というソフトが1.0から2.0へバージョンアップされるそうです。とても障害者に使いやすくなっていました。これはwin版も1.0がでるそうですが、バージョンアップに関してはマックの方がwin版よりやりやすいので先行するということです。(開発関係者、曰く)OSとアプリの間にあるこのようなインターフェースをうけもつソフトはマックの方が楽というか仕様がはっきりしているとのことです。垂水養護学校などのユーザーにとっては、朗報ですね。

電子情報通信学会教育工学研究会 研究発表の募集

 電子情報通信学会教育工学研究会では,下記の要領で11月の研究会を開催いたしますので,日頃の研究の発表をお願いいたします.
【テーマ】 障害児・者/特殊教育
・障害者教育のためのシステム,支援デバイスの開発
(手話システム,点字システム,音声入出力デバイスなど)
・障害者のためのネットワーク利用実践
・特殊教育におけるCAI,コンピュータ利用
・障害者支援システム(歩行ナビゲーション,スポーツ支援など)
【開催日】 11月22日(土)
【応募締切】 9月20日(土) (原稿の締め切りは,10月中旬予定)
【申し込み要領】 題名,著者氏名・所属(共著の場合は全員分)
  100字程度の要旨
  代表者の連絡先(住所,電話,FAX,E-mail)
【発表申込・問合先】
 浮貝雅裕(千葉工大)
  [0474]78-0533,FAX[0474]78-0549
  :ukigai@uki.cs.it-chiba.ac.jp
 三輪和久(名大)
  [052]789-4747,FAX[052]789-4800
  miwa@info.human.nagoya-u.ac.jp

社会福祉士へのお誘い

 斎藤憲磁 三浦しらとり園 js1kcq@sf.airnet.ne.jp
 MES会員の皆様。神奈川県社会福祉士会(KACSW)の理事をしている斎藤と申します。以前より個人的に社会福祉についての相談室を設置しておりましたが、この度神奈川県社会福祉士会のプロジェクトとして、会としての相談室を設置しました。

 『福祉についての素朴な疑問や質問がある』、また『困っていることがあるがどこに相談したらよいかわからない……』などの質問をお寄せください。神奈川県社会福祉士会のメンバーがガイドいたします。
例えば
・社会福祉士になりたいんだけど、どうしたらよいか?
・福祉関係の職に就きたいのだが?
・障害者の税控除について知りたいのだけど?
・子どものことで困っているけれど、どこへ相談したらいいの?などなど

※社会福祉士とは国家資格を有し相談援助を業とする者で、社会福祉士会とはこの国家資格を有する専門職能団体です。この専門性を皆様のお役にたてるように、皆さまの質問に対して分野別に相談員が回答いたします。社会福祉士には、法律によって秘密を守ることが定められています。相談内容を他言することはありません。どうぞ気楽にご利用下さい。URLは以下のとおりです。(JS1KCQの部屋に設置してあります)

◇神奈川県社会福祉士会ネットワーク相談室
 http://www.sf.airnet.ne.jp/js1kcq/project/sodan_k.html

◇神奈川県社会福祉士会について(神奈川県社会福祉士会の会報も見れます)
 http://www.sf.airnet.ne.jp/js1kcq/kacsw/kacsw_ix.html

◇運営者のページ
 http://www.sf.airnet.ne.jp/js1kcq/

 また、このネットワーク相談室と相談員の相互乗り入れをしている仮想合同社会福祉士事務所もあります。あわせてご利用下さい。

◇仮想合同社会福祉士事務所
 http://www.asahi-net.or.jp/~zi8y-SD/soudan/soudan.html

キネックス3.5.2日本語版とMacOS7.5.5との相性について

 キネックス3.5.2日本語版は、現在OS7.5.5上で正常に作動していません。つまり PowerMac4400,PowerBook2400c,3400cなどで作動しないとのことです。なお、英語版のアップデータ英語版では問題ないようです。近い内に4400とキネックスの組み合わせで動作するようアップル・ディサビリテイセンターはローカライズをしています。問い合わせ 06-536-5515

動作訓練著書の紹介

●「動作訓練入門養護学校現場でどう生かすか」
 監修 村田 茂 編集 宮崎 昭  早坂方志
 発行 社会福祉法人日本肢体不自由児協会  本体1942円

「本テキストは、初心者が動作訓練を学んでいく上での手がかりを書いたものです。また、ここに記述されていることがらは、検討途上のものなので、今後も改訂されていくものです。ですから、本書の内容は、講義、実技、ならびに研究協議という研修をとおした知恵として各自が身につけて、実践に生かしていただきたいと思います。」

●「動作法ハンドブック初心者のための技法入門」
 大野清志・村田 茂 編 発行 慶應義塾大学出版会 本体2233円

「本書は、これから動作法を学ぼうとしている、主として養護学校の教師を対象にして編集したものです。...初心者が、実際の技法を学ぶための手引きとる...」

 本についての内容,編集者メールアドレスが以下のホームページに載せてあります。
http://www.marco.or.jp/users/k/kirikisi/teacher/dousa.html


では来月の会報をお楽しみに。

●制作:成田 滋

●編集:成田 研究室