1996年11月の会報です。

障害者とコンピュータ利用教育研究会のホームページ




目次

第76回関西例会のお知らせ ウィスコンシン-マディソンより 文化の日を前に「白夜の広場から文化を考える」 MES自作教材集CD_ROM97の刊行と教材の募集 日本教育心理学会へどうぞ 天狼&ディル in Madison 〜自閉症児を連れてアメリカへ 卒論に協力してください。 市販教材の紹介 1997年アメリカ合衆国障害児教育とマルチメディア/ネットワーク活用の視察 報告書の紹介 皆さんからのお便り 事務局から 673-14 兵庫県加東郡社町山国2007 兵庫教育大学 学校教育研究センター 0795-40-2205 phone Email:成田 滋
Web上の会報URL:MES会報

第76回関西例会のお知らせ

○日時:11月23日(土) 2:00-4:30pm
○会場:大阪教育大学附属養護学校 平野区喜連 4-8-71 電話 06-708-2580
  幹事 中島康明氏
○交通:地下鉄谷町線「喜連瓜破」で下車。左に折れ徒歩2分のところに学校があります。
  初心者や親子連れの参加を歓迎しています。
○プログラム
・大教大附属養護学校の情報活用教育の報告 中島康明氏
・ワンスイッチソフトの紹介
・「小学4年生ランドセル」「カルロとげんきにこんにちは」などの新しい市販教材の紹介
・いろいろな自作教材の紹介
・インターネット上の障害児教育の新しいページの紹介
・その他

ウィスコンシン-マディソンより

◎皆さまのご活躍のご様子はニュースレターからも感じとれます。それに玉稿だなんて、身に余るお言葉ありがとうございます。最近はたくさんの人が私達のホームページを読んで下さるようになり、嬉しいような怖いような気分です。マディソンのことは成田様の方がずっとお詳しいと思います。もし私達の文章に「ちょっと違うんじゃないかな。」などと思われる部分についてはご指摘いただければ幸いです。  ユニバーシティハウスで暮らしながら、トイレが詰まったり、火災警報がとまらなくなったり(これは乾電池を外したままにしています。見つかったら叱られますね)、といった些細なトラブルにあったり、外で働くハウジングサービスの人達を見る度に、いただいたメールを思い出していました。
 少しづつここでの暮らしにもなれ段々快適に感じるようになってきた今は、秋の訪れは寂しく感じてしまいます。原稿はもうし少し書き続けるつもりです。これからもよろしくお願いいたします。
  佐藤恵利子

◎私の方は、10月5日から始まるケンタッキー州レキシントンでの学会の口頭発表が事実上の最後の仕事ととなり、残る1か月は帰国準備や、こちらで行った研究結果を論文にまとめることに費やされることになりそうです。満足のゆく研究成果が得られたことで、渡米は大成功だったと思っています。
 私の仕事以上に満足感を覚えるのが長男の教育です。マディソンの充実した障害児教育を惜しみなく与えて下さったショウッドヒルズ小学校や教育委員会の方々への感謝の気持ちでいっぱいです。帰国後は、こちらのでの経験を日本で生かして行くことを真剣に考えたいと思っています。
  佐藤 裕

文化の日を前に「白夜の広場から文化を考える」

兵庫教育大学 成田 滋 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp MGH00175

 空港はどこも広々しています。乗り継ぎの合間にビールを飲みながらぼんやり窓の外を眺めていると、暖かい日差しをいとおしむように人々が乳母車を押してゆっくり散歩しています。この空港ではパスポートの審査が無かったような気がします。あの大袈裟な「ALIEN(外国人)」というサインも見かけません。だれでもいらっしゃいという雰囲気があります。EUの実質的な統合が始まったのだからでしょうか。腰をあげるとウェイトレスが「落としましたよ」といって駆け寄ってきました。お釣りの札がポケットからはみ出たらしいのです。なにか良いことがありそうな予感とともに、この国の印象がきまったようです。国の代名詞は「スオミ」、国民的な英雄シベリウスを輩出したところです。そしてバルト3国の一つ、エストニアが回想の場です。
 地図やガイドブックを手にする家族連れがあちこちから繰り出してきています。多分遠くの田舎から汽車でやってきたのでしょう。精悍な体格と質素な服装からすると酪農か農業でも営むのでしょうか。二両連結の路面電車の中で子どもは、両親にあれこれと質問しています。父親は質問に対する用意があまりなさそうで、威厳を保ちながらも戸惑いを押し隠すように答えています。ここは、こうしたお上りさんやまわりの国からの新参者が行き交っています。通りに面したカフェやレストランは競うように色鮮やかなパラソルをひろげ、テーブルや椅子を並べて客を迎えています。待ちに待ったつかの間の夏です。ここには東洋からの若くて元気の良いギャルの群は見かけません。それにしても街のあちこちに広場があります。大道芸人のアクロバットや道化師のパントマイム、弦楽三重奏をかなでる音楽家、そうした芸術を演出する通りがかりの人々、そして白夜という舞台が用意されています。

   ここでは広場について考えます。古今、政治も経済も祭りごとなど貴族や庶民の生活は、この空間で繰り広げられたと案内板に記されています。討論がなされ、政治が語られ、裁判も行われついでに処刑も執行され、そしてとりなしの礼拝が行われました。いわば神も市民も集まったのです。こうした場所では聖と俗の住み分けが難しいほど、政教が混在していました。中世の暗黒時代を、ルネッサンスの華やかな時代を知っているのは、この広場というところなのでしょう。ここでは、古から現代の歴史を広場から考えるのが本稿の目的ではありません。広場が市民の生活や文化の形成にどんな役割を果たしたのだろうということです。
 街の原点は広場にあるようなものです。その中心はなんといっても市場という広場でしょう。広場は、生活の場でもあります。マーケット広場とかマーケット通りという地名が必ずといってよいほど大きな街にはあります。ヘルシンキもタリンも例外でありません。広場はとりわけ食の交流の場ではなかのではないかと思われるほど活気があります。どこの広場もこと食べ物に関しては、例外なく賑わいが演出されています。毎日早朝から市場が広場につくられます。近隣の農家が競って新鮮な野菜や果物を山のように並べています。数時間前に掘り出したかのように土がべっとりとついている馬鈴薯を人々はせっせと買っています。日本人にあっては、米のない食生活が考えられないように、かの地では馬鈴薯なしに食文化は語れないようです。アメリカの生活もそうしでした。もともとヨーロッパからの移民で形成されるのだから当たり前の話なのですが。苺などベリーの種類の多いのも北国の特徴です。オフィスの受け付けには、苺が篭に入れられて自由に振る舞われています。広場のカフェでは、苺がのったケーキやルーバーブのパイをほおばりながら珈琲を注文するのが粋なのだそうです。
 広場はまた魚市場のようなところでもあります。魚といえば鮭か鰊(ニシン)に限ります。スモークされた薄切りの紅鮭は涎がでそうです。鰊はスライスされたタマネギと混ぜられて甘酸っぱく味付けされています。味が濃く”ヘビー”なマリネです。これもたくさんの種類があって、朝食から食卓にのってきます。かって北海道の日本海側では、この魚は鰯(いわし)のように随分とれたのを想い出します。筆者も最北端の稚内にいたは、大根おろしにつけながら飽きるほど食べたものです。マリネも悪くはないのですが、素朴な味がどこかへ行ったようで少々寂しいところもあります。

 広場に戻ります。政治は広場とともにありました。とりわけ、中世に勃興した自治都市と広場の関係は興味深いものがあります。タリンの街は城壁で囲まれて発展しました。その中には古い教会が建ち並び、街のタウンホールといういわば役場が広場の一角にあります。広場は街の中心にあり、恐らくいろいろな集会が開かれたに相違ありません。さらに街には、商工組合の原点とされるギルトのあった建物があり、政治とは切り離された独自の商行為をしていたことがうかがわれます。その建物は今は歴史博物館となっていてお年寄りがのんびりと入場料をとっています。この広場も政治と経済と宗教がおりなした人間の歴史や文化をみつめてきたといえるようです。

 文化とは共有化されるべきのものだといわれます。その共有のための手段として、当時は人と人が出会うことが必要でした。それが広場であります。「人」と「もの」と「情報」がなくては広場は成り立ちません。ものとは、商品などを指します。ついで情報ですが、これは文化ということです。文化といえば、その使われ方は一つの方向性があります。つまり、文化とは好ましいもの、望ましいものと考えられていることであります。その例として、文化という単語は、枚挙にいとまがないほどたくさんの名詞があります。文化大革命、文化国家、文化都市、文化村、文化庁、文化勲章、文化功労、文化の日、文化人、あげくは文化風呂、文化鍋、文化食品や文化包丁などというのもあります。どれをとっても文化とは誰にでも好感を持って受け入れられようなところがあります。しかし、それは文化の一面にしかすぎません。
 人間の所産が文化とするならば、すべての業が人間を幸せにしたということではありません。人は文化によって苦しみ、虐げられ、死に追いやられてきた事実もたくさんあります。文化を生み出した広場の歴史を垣間みてもそれがいえます。たとえば、魔女狩りが行われ、火あぶりやギロチンなどのみせしめの処刑が行われたのも広場であり、君主政治にみられる権力や権威が横暴を振る舞ったのも広場であります。その象徴が壮麗な建造物に囲まれた広場に見られます。赤の広場や天安門広場は政治の舞台となりました。ロンドンのトラファルガー広場は戦勝記念につくられていて、人のエゴがむき出しのなんとなく歪んだところがあります。歪んだ文化の最大の所産は、人が同胞を殺す道具を作ったことでしょう。広場は皮肉にも暗い文化の断面を見つめています。

 情報化社会で広場とはなんでしょうか。「人」と「もの」と「情報」といういわば文化の三要素が、ここでも新しい空間を形成しています。それは、電脳広場とか電子広場というものであります。今はまだ、気軽に人と人とが対面してやりとりはしてはいませんが、早晩テレビ電話も実用化するでしょう。目に見えない人々が待ち合わせ、行き来して、そこで集まり、休憩もしています。このような広場では、誰もが主役になりえます。かっての「政治」「経済」「宗教」という従来の位相は、電脳界ではどことなくなじまないところがあります。組織もそうであります。人の顔が見えない組織は、飽きられるといわれます。個人と個人とが線となり、それがより重層的に結びあっているのがこの新しい電脳の広場であります。しかして、国境のない電脳広場に、「国益」をめぐってのぎすぎすした政治はさして重要とは思われません。
 情報ですが、ある人にとってはとても大事なことは別の人にとっては屑のようなものとなります。それは選択する側が決めるからであって、その人がなにを求めているかによります。わけもわからない情報ばかりがは充満している、ときめつけるのは勝手だとしても、その前に「貴方はなにを主張するものを持っているのか」という問いに対する用意がなければなりません。広場というところは、なにかを主張する者と、なにかを感じる者が登場して成立するようであります。白夜の地の大道芸人のおかしい芸には、なんらかの真剣なメッセージがこもっています。だから人々は立ち止まり、そしていくばくかのお金を入れたくなるのです。どのような広場でもその舞台の主役は、情報を共有しようとする人々ということになるのでしょう。

エストニアの首都、タリン

MES自作教材集CD_ROM97の刊行と教材の募集

「障害者とコンピュータ利用教育研究会-Mac Education Society--MES」が結成されて7年経ちますが、その間学習上に困難を示す子どもや大人がMacintoshを使って学習したり、余暇を楽しんだり、仕事に役立てたりすることを支援してまいりました。その活動の一環として教育教材の開発と普及に力を入れ、ワークショップやカンファレンスを開催し、これまで滋賀大学教育学部附属養護学校と協力して2種類の「MES自作教材集CD_ROM」制作してきました。
このCD_ROMに収録した教材を開発した人は主に小中学校の教員や親で、教材作品に流れるコンセプトは、遊びを通して学習のレディネスの育成、表出活動による創造性の育成、調べや探索・学習シュミレーション学習の支援、教科別の予習や復習の支援などとなっています。
おかげさまで自作教材集CD_ROMは好評で、いろいろな雑誌や新聞、親の会などの機関誌で取り上げられ、学校や家庭で使っていただいております。このたび97年版を製作することになりました。96年版と同様に97年版も教育目的のために非売品となりますが、送料などの実費はユーザーからいただき、これを基金とし増版や次作の教材制作に使いたいと考えております。教材を共有することに賛同される方は、どうか周りの方々にお声をかけてくださり、このCD_ROMに教材作品を収録さるれるようお勧めください。

●教材募集期間: 1996年9月1日-1997年1月31日
 一次締め切りは12月23日のMES関西例会です。ここで、作品の紹介と検討を行います。すでに作られている作品は12月15日ごろまでに送って下さると嬉しいです。作品は、著作権の検討でかなり時間がかかります。
●刊行予定: 1997年4月
 自作教材が早く集まると、2月21-23日のMacExpoに間に合うかも知れません。 ●開発環境: HyperCard2.0以上、Oracle Media Object、Expand Book、Action、Macromedia Directorその他
●教材の著作権: 教材開発者に帰属します。
●貯蔵媒体:128-230MO、リムーバルハードディスクなど
●媒体の送り先:
 〒520 滋賀県大津市際川3丁目9-1
 滋賀大学教育学部附属養護学校
 大杉成喜
 Email: osugi@sue.shiga-u.ac.jp
 NiftySERVE: HGA01651
●問い合わせ先:
 〒673-14 兵庫県加東郡社町山国 2007
 兵庫教育大学学校教育研究センター
 成田 滋
 直通 0795-40-2205
 Email: naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp NiftySERVE: MGH00175
 障害者とコンピュータ利用教育研究会のホームページ:
 http://www.ceser.hyogo-u.ac.jp/narita/mes/mes.html

日本教育心理学会へどうぞ

 東原文子 筑波大学心身障害学系 MHH00747
◎日時:1996年11月2-4日
◎会場:筑波大学第2学群
障害児教育に関するものもたくさんありますが,ここでは,障害に関係なくメディアに関係あるものだけとりあえず書きます。
・国際交流セッション2「教育手段としてのビデオゲーム」11/3 13:00-14:30 ・準備委員会企画シンポジウム4「コンピュータと共同学習」11/2 13:00-14:45 ・準備委員会企画シンポジウム22「教育心理学におけるインターネットの利用」11/4 13:00-14:45
自主シンポジウム13「「読み」の基礎学習を促進するコンピュータ教材−ハンディをもつ学習者へのアプローチを通して「読み」を考える−11/3 9:30-12:00 これが私の企画,発言するものです。ぜひ来て下さい!その他,全部で500近い発表があります。
◎託児所もあります。詳しく知りたい方は私までメール下さい。

天狼&ディル in Madison 〜自閉症児を連れてアメリカへ

 佐藤 裕 ysato@execpc.com
Web上のページ
サマープログラム(後編)
◎こんな遊びはいかが
このデイキャンプの中でテピがしていることを頻度の多い順に書き出してみよう。
【身体を動かすもの】
○サッカー
 ボールを蹴るだけの話だが、気を付けている点は一蹴りを大きくすることと、ひとりで蹴り続けるのではなく何人かで順番に蹴ること。体育の先生に指摘された注意点だそうだ。テピはひとりでドリブルしながらグランドをゆっくり一周することもできるようになった。
○自転車乗り
 バスケットボール(低いゴールを使って)”グランディッシュシュート”(足を広げ下から上に投げる)と呼ばれる投げ方が易しいそうで、手を 後ろから添えてもらってシュートの練習。
○フリスビー
 手を添えてもらってフリスビーを投げる練習(私も初めてフリスビーの投げ方を教わった)。
○ブランコこぎ(こぐタイミングを掴むのは以外と難しい)など遊具を使って。
○ 縄跳び
 両足を揃えてロープを見て跳ぶ。テピの場合は止まっている状態のロープ。
○ビーンズバッグ投げ
 ビーンズバッグを点数の異なる壁の穴めがけて投げる。
○ウオーターバルーン
 水を入れた風船を投げて遊ぶ。割れてずぶぬれになる子供もいるが暑い日を選んでするので平気。テピはこの風船の感触が好きなようだ。
○パラシュートを使って
 パラシュートを大勢の手で一斉に持ち上げることで膨らませてその中に入ったり、猫とネズミの鬼ごっこをする。テピはパラシュートを恐がりなかなか近づけないでいたが、少しの時間なら加われるようになってきている。
○ビーチバレー
○ドッジボール
○30分程度のハイキング(湖までの森の中のコース数種)
○ソフトボール(背後から手を重ねる補助をしてボールを打つ)
○芝生の斜面を転がる。
○その他のゲーム
 ダブダブダック(丸くなって座り鬼が水をかけて回る。とても暑い日は激しい水かけ遊びに発展することもある)。日本でいう”陣取り遊び”のようなもの。日本でいう”だるまさんが転んだ”のようなもの。日本で言う”石蹴り”のようなもの。スカベッジハントといってオリエンテーリングの応用のようなもの。バイクパレード・自分で飾り付けた自転車に乗って近所をパレードなど。

【座ってすること】
パズル
色塗り、線引き(多種の画材を使って)
カードを使ったマッチング
絵本鑑賞(テピは”ウオーリーを捜せ”シリーズの絵本を見るのが好き)
自主的なティータイム
こども達のカードゲームに静かに付き合う。
アート専門のスタッフの持ってくる毎回異なる題材をリンダと一緒に制作(週2回)。
クッキング(クッキー、ルートビア、アイスクリーム作りなど)
フェイスペインティング(テピは手足に絵の具を塗るのが好き)

【その他】
 バスを気にするテピのため、運転手さんに頼んでただで一区間乗せてもらった。また集団でキャンディーハント(芝生の中に隠した飴拾い)やアップルハント(水に浮かべたリンゴを口でとる)をした。
テピのやっていることは低学年の子が好んでする活動で、高学年になるとスポーツとしてのバスケットボールやサッカー、チェスやチェッカーなどをしていることが多い。大きな行事(障害物競走大会など)の時は高学年の子にリーダーシップをとらせることもあった。

◎集団の中で
 大勢の子供達に混じっての活動は、リンダに導かれるまま一緒に中に入って長い時間を過ごしている。個別にする活動は短時間でどんどん切り替えていくのでテピは嫌になることもないようだ。個別といってもリンダの周りには絶えず何人かの小さい子供達がくっついて、テピと同じことをしたがったりするので小集団といえるかもしれない。
 大集団だと入り乱れる子供達の声の中で、待つことの練習のような感じになることが多い。しかし、テピの動きの中には集団に添おうとする気持ちがかすかに覗き始めているようだ。子供達が大勢移動するとテピもその後を付いて歩き始めたりする.手をヒラヒラさせたり,Tシャツの袖をかじりながら足下だけを見つめていたり,身体でテピ独特のリズムをとっていたりと自分の世界に入っているようでいて結構周りのことを気にかけ,その中にいることがまんざらでもなさそうだ。

◎土砂降りスライディング
 アメリカって気候まで派手なのねとつくづく思う。戸外で活動している子供達はこの天気の変化を疎ましく思うというより、楽しんでいるように思うことがある。突然、驚くような激しい土砂降りに見舞われた時、多くの子供達は東屋の中央に集まって雨を避けるが(もちろんテピも)、高学年の元気な子供達は身体を痛いくらいたたきつける雨の中に飛び出していく。芝生の広場の縁にみるみるうちに小さな川ができ、その流れに添って一方行になぎ倒された芝の上は彼らの絶好のスライディングエリアとなる。彼らはずぶぬれになることなどお構いなし、滑りこんでは転び激しく雨と戯れる。テピとほぼ同年齢の少年達のエネルギーの闊達さ。それに感動する心は私よりも、雨を避けながらそれを見ていたヨピのほうが強かったようだ。ヨピはそれ以来、激しい雨が降ることを楽しみにいている。

◎リンダの休日
 リンダは彼女の娘達のために2日間休みをとった。この2日間はリンダ同様テピの学校でティーチャーズアシスタントをしているリサが来てくれることになった。リサはこのキャンプに興味を持っていたらしく、臨時スタッフを自ら引き受けてくれたそうだ。テピの先生のひとりでもあるリサが来てくれるというのは嬉しい驚きでもあった。本当に学校ぐるみといっていいようなテピのキャンプとなった。リンダが休みの日の朝、リンダがいないことに不安そうな表情をしていたテピだが、すぐに馴染みのリサとのやりとりの中に引き込まれていった。

  ◎言葉の辛さ
 このキャンプに日本人の兄弟(8才と6才)が一組参加している。4月にここに来たばかりで英語はほとんど分からない。夏のプログラムは何も申し込まなかったという彼らのお母さんにこのキャンプを教えてあげ、それから来るようになった。2人とも話し言葉のはっきりした賢そうな子供達である。しかし、英語が分からないというストレスは子供心にも大変なものであることを彼らを見ていて感じたのだった。
 日本人のおばさん(私)がいると安心するようで、いろんな話をしに私の所へ来る。私がテピに付いて歩いている時でも追いかけて来てまで話しをしたがる。彼らが日本語を話すときの生き生きした姿と、英語で話しかけられた時の硬い表情が対象的だ。集団で何かする時、いくら誘っても入って来ようとしない。言葉が分からないのが嫌だという。兄弟だけで離れた所で遊んでいることが多く、兄弟喧嘩もよくする。スタッフ達の声かけも拒否するのでフォローのしようがない。私の話す日本語だけは受け入れるが私も一日中ここにいるわけじゃない。彼らを見ていて痛ましささえ感じた。どうにかみんなの中に入れられないものかと考えた。
 いいものがあった。折り紙などのクラフトである。日本人の子供は幼児期にたくさん折り紙などで遊ぶせいか、他の国の子供達よりも器用に感じる。彼らも例外なく折り紙大好き少年だった。思惑どうり彼らの作る折り紙は他の子供達の好奇心をそそり、教わりたがる子も何人かでてきた。折り紙などは実際やって見せることと、手を貸すことだけで教えることができる。短時間だったが彼らに折り紙の先生をさせたことが、少しだけでも心を解させたように思う。それからはアート専門のスタッフの持ってくる課題には素直に参加するようになったのだった。

◎ヨピの参加
 他のデイキャンプで4週間過ごした次男のヨピは、中盤からテピと一緒にこ のキャンプに参加し始めた。キャンプの後半にはテピと関わりたがる子供たちも増え(リンダがするのを 真似て本を読んであげたり、一緒にボールをけったり)、他のスタッフも積極 的にテピに働きかけるようになっていた(彼らの多くはテピに無視されたり、うるさがられる結果に終わるのだが)。
 兄のテピがこの場ですでに人気者になっていたことがヨピにとって快かった ようだ。テピのそばにいるとヨピもテピ同様、皆にたくさん声をかけてもらえ た。テピに近づいてくる子供達とのやりとりをきっかけにすぐに一緒に遊ぶこ とができた。ヨピにとってこのキャンプは兄のおかげで始めから親しみやすい ものとなっていた。しかしヨピにとって何よりも楽しかったのは同じ日本人の子供と日本語を話 しながら遊べるということだった。マディソンに来てからは友達と日本語で遊 ぶということがずっとなかったので、その喜びは大きかったようだ。
 日本人の子供が固まって日本語を話しているという光景は美しくないかもしれない。この夏で急に英語が上達してきたヨピだが、日本語の豊かさ、自由さには比べものにならないのもよく分かる。だから、毎日朝から夕方まで、日本語を自由にしゃべり、泥だらけになって好きなことをして遊ぶのも悪くないとも思う。そこで、スタッフから見える範囲で遊ぶことを条件に、好きなようにさせておくことにした。この日本人の兄弟は7月末日に帰国。ヨピにはつらい別れだったと思う。

◎終わりに
 私はしばしば午前中ここで子供達と一緒に遊んで過ごした。なぜかこの場所でくつろげる.人との付き合いは夜に家族ぐるみでというパターンが休みに入ってから定着していた。夏休みで町全体がリラックスして明るい雰囲気に包まれていて,その空気が例外なく私の周囲にも立ちこめていている。この長い休みをこんなに和やかに過ごせると思わなかった。仕事が佳境に達している夫だけは例外だが。
 まだ7月中旬だというのに「夏休みは過ぎていくのは早いわ。後少ししか残っていないんだもの。」とつぶやくアメリカ人の母親達の信じられないような言葉も理解できそうな気分だ。テピは重い障害を持つために手厚く個別に扱ってもらっているのだが,その事自体もこの環境の中に自然に溶け込んでいる。
 人生経験豊富で話し好きのリンダとのおしゃべりも楽しかった。その間テピは放っておかれ、退屈してか自主的に自転車の自分のコースを回って帰ってくることもあった。テピが自主的に行動した!!これって素晴らしいことよね!と、自分たちのいい加減さを棚に上げて私達は喜びあった。リンダは日本に興味を持ち始め、新学期からは大学で日本語の講義も受けることにしたそうだ。
 途中テピの様子を見に訪れたテピの担任のマットは、テピが自転車に乗っている姿を見て、驚きのあまりポカンと口を開けたまま見入っていたとリンダが報告してくれた。自転車に乗れると言った私の言葉を信じていなかったのね。両足揃えてジャンプもできない2歳程度の知能のテピのことを思うとそれは無理もないことだけれど。
このキャンプは親の参加も自由なので時々子供の様子を見にグランドに出てきている親達の中に知り合いの顔もあったし,新しく知り合う親もあった。こういうところもコミュニティー内のプログラムの良さだろう。
 なによりも、テピがとても落ち着いて、彼なりに満足してこの場で過ごしていたことがありがたかった。私が事前にMSCR(Madison School - Community Recreation) に提出した参加目的はほぼ達成されたと思う。MSCRのスーパーバイザーからはキャンプの前半には「キャンプについて何か不満や不足があったら知らせるように」という伺いの書簡が届き(この時点で担当スタッフに不満がある場合、スタッフの配置を替えてもらうこともできるようだ)、終わりには「プログラムの内容やスタッフの評価」を求める書類が届いた。公的なものでも、あくまで利用者本位であるのが嬉しい。
そして秋冬に行われるMSCR主催の各種のリクレーションに、個別アシスタントを付けて参加できるという情報も送られてきた。水泳好きのテピをよく知っているリンダは、自分がテピのアシスタントとしてスイミングプログラムに参加するのは大歓迎だから、参加させる決心がついたらぜひ電話をくれるようにと言ってくれた(リンダは新年度からティーチャーズアシスタントを辞めて学業に専念する予定)。リンダを始めとして、テピやその家族の私達に豊かな夏くださった多くの人達に感謝の言葉を贈りたい。

卒論に協力してください。

 東原文子 筑波大学心身障害学系 MHH00747
筑波大学心身障害学系の東原です。皆様にぜひお願いがあります。私の研究室の後輩が卒業研究で,障害をもつお子さんがインターネットを「おもちゃ」にできるようにと,教材を作成して公開しました。そこで,家や職場で,インターネットを使える方にぜひご協力いただきたいと思います。教材はいたって簡単で,絵しか出てこない見本合わせ課題です。内容的には7段階,全部で70題用意されています。お子さん(障害をもつもたないに関係なく,発達年齢が6歳以下ぐらいの方)に実際やっていただき(大人の方がそばで援助をして下さってもかまいません),飽きたところでやめてアンケート(いたって簡単です)にお答えいただくというものです。以下に本人からのメッセージをのせましたので,よろしくお願い致します。
−−− はじめまして、こんにちは。筑波大学人間学類心身障害学専攻4年の原田悟と申します。東原文子先生からご紹介いただきメールいたしました。実は、現在卒業研究で「インターネット上における障害児用教材提供と利用の可能性に関する研究」と題し、WWW上で行える簡単な見本合わせ課題を作成しています。そこで、ぜひ先生にご協力いただき、試用していただきたく思っています。また、そちらからリンクもしていただければ幸いです。URLは下記の通りですので、まずはご覧ください。ご感想、ご意見、ご指導などありましたらよろしくお願いします。
http://ningen.human.tsukuba.ac.jp:8080/~s-harada/edu/index.html

市販教材の紹介

「カルロこんにちは」
 このソフトは、3才から5才位までの子どもが対象です。以下の内容で構成されています。
・「あいさつ時計」毎日の生活の中で、どんなあいさつをするのか覚えましょう。
「ちゃんといおうね」
 どんな気持ちをこめて、どんなあいさつをするのか覚えましょう。
・「なんていうのかな」 楽しいクイズで、あいさつの復習をしましょう。
・「ひとりでOK」 楽しいクイズで、基本的なマナーを確認しましょう。
開発元 IBM CD-ROMタイトルサポートデスク 0462-73-2244 2500円

「Oregon Trail II」
MECCの数あるソフト作品の中でも最もインタラクティブな歴史冒険ゲームです。生涯をかけた西部開拓時代のスリルが味わえます。旅の途中で沢山の決断を迫られます。生きる延びるためにバッファロー狩りをしたり、外見ではわからない川を渡ったり、物物交換で福や弾薬を手に入れたりして行く先々でアクション満載のアドベンチャーを繰り広げます。
・アメリカのその後の歴史を決定づける要因となった時代を体験。
・オールドウエスト西部開拓時代の地理の学習。
・過去の開拓者が置かれていた状況に対する的確な判断をつけます。
販売元 Media Vision 12,800円

「図鑑おもしろ博士 昆虫1」
-季節のイラストから虫を探そう。
春夏秋冬の画面でカードから虫を探せます。季節によって見られる虫も変わるので、いつどんなところでも視覚的に学べます。
-じっくり鑑賞、しっかり観察
200種類におよぶかぶと虫を写真と映像で紹介。かぶと虫の一生や食事など知られざる素顔がわかります。
-ばっちり検索
科名、名前、写真とあらゆる角度からの検索が可能。
-昆虫博士への道
かぶと虫を育てようではモニターのなかでかぶと虫の飼育をシュミレーションできます。
開発元 NECインターチャネル 4800円

1997年アメリカ合衆国障害児教育とマルチメディア/ネットワーク活用の視察

 この研修の参加予定者は15名となりましたので、申し込みを締め切りました。なお、案内のページは以下にあります。
http://www.ceser.hyogo-u.ac.jp/narita/us_visit97/us_visit97.html
●日時 1997年2月8日-16日
● 視察箇所 カリフォルニア州サニーベール/サンホゼ/クーパーチーノ市学校区など。

報告書の紹介

「京都府八幡市手をつなぐ親の会」発行 21ページ
 子どもの生活、教育、仕事、将来に対する課題についてアンケート調査をいたしました。その結果を以下に要約します。
 まず、「 自分が世話ができなくなった後、誰が子供の面倒を見るのか、見てくれるのか」という将来に対する不安を大部分の保護者の方が抱いています。その一方で、ほとんどの保護者は非常に積極的な人生観をもって暮らしています。子供の養育は大変ではあるけれど、子供ど共に生きる人生を非常に価値あるものと捉え、感謝や喜びの気持ちをもって日々生活しています。また地域社会に対しても、自然に、あるいは積極的に係っており、障害児・者を隠そうとしている人はほとんどありませんでした。
 就学者では、普通学級、特殊学級、養護学校在学者の比率は1:4:5で、卒業後の進路希望は「一般企業や福祉工場に就職させたい」が最も多く、4割の保護者が希望しています。そして、保護者が「これから力をいれてやっていきたいこと」の第1位が「子供にぶさわしい就職先を探す」になっています。
 卒業した人の約半数は通所施設に通っており、1/4の人が企業就職しています。この現実は、就学者の進路希望とは一致しておりません。これから卒業する人には、卒業後の行き先がないという現実問題があり、それをどうしていくかが、大きな課題として認識されています。また行政の福祉政策には期待が寄せられています。行政に期待する内蓉としては、「施設の建設」や「作業所への補助金の増額」が上位を占めております。ノーマライゼニーションの理念を知ってい季人は約2割で、半数の人は「知らない」と答えています。障害者福祉関連の諸制度は2/3の保護者の方がご存じでした。
(連絡先:八幡市手をつなぐ親の会 075-981-7638  この要約は親の会の了解を得て掲載します。)

皆さんからのお便り

●石川より
   前 一臣 石川県立七尾養護学校 nno-yogo@kidsmail.jeims.co.jp
 ご無沙汰しております。ようやく、七養もホームページを開設することが出来ました。皆さんからのご指摘があったE-mailの「URL is error」ですが、確かにerrorというメッセージがでました。そこで、急いで手直しを行い、mailを送れるようにしました。
 今回のホームページ作成には、PageMillを使いました。Netscape上でいちいち確認することもないですし、私のような初心者でも簡単にホームページがつくることが出来ます。いろいろ「ああしよう、こうしよう」と考えていたのですが、とにかく早くアップしようということで急いでつくりました。今後、更新を加えながら、少しでも良いものにしていきたいと思いますので、いろいろご意見をお聞かせ下さい。よろしくお願いします。

●自分のページを開設
 志田一彰 千葉県立千葉養護学校 kazu-s@mxg.meshnet.or.jp
 私は、現在、千葉県立千葉養護学校に勤務しておりますが、一昨年、長期研修生で千葉特殊教育センターの指導をいただいて研究をしておりましたとき、センターの谷中先生と知り合い、障害者とコンピュータ利用教育研究会のことを聞きました。私も、未熟ながら、ホームページを出しました。もし、よろしければ、リンクを張りたいと思うのですが、許可していただけますでしょうか。個人のホームページですが、障害を持つ人の支援に携わるひとのページにでもなればと思っています。ページ事態は、まだまだですが。最近、本校でも私がインターネットでホームページを開いていることを知って、アクセスしてくださる人がでてきました。少しずつ、広がってきていますが、その啓蒙にでもなれば、そして、インターネットの利用が盛んになって、広く意見交換や情報が手に入ればと思っております。

●房総から
 遠藤和弘  千葉県立安房養護学校 kazuend@awa.or.jp
 ニフティのメール読みました。ありがとうございました。インターネットができるようになったので、MESのページを見せていただきます。まだ物珍しさが抜けきれず、あっちこっちのホームページを見ては感動しています。特に、福祉関係のページはチェックしています。アメリカの教育事情にも興味があります。いろいろ教えて下さい。若潮マラソンは、10キロがいいところみたいです。フルのコースの方が気持ちがいいのですが。

●滝野の田舎で
 筱 更治 兵庫教育大学 shino@edu.hyogo-u.ac.jp  思わぬところで、お姿を拝見しまして、声をかけました。昼頃から、外出し、ビデオショップへ行き、食事のあと、滝野町の図書館で過ごしていました。そのあと公園を散歩していたのですが、先生が早足で歩いておいででしたので、思わず声をかけてしまいました。本を読んだり、キーボードを叩いていると運動不足は必至。先生から「ずっと歩いている」と伺って、なお驚いています。昨年の丁度今日ですが、中国・北京での長走(長距離の徒歩)に参加して、市内から明の十三稜まで21キロメートル歩いたイベントに出発したのです。あのときは、3時間と31分かかったと思います。真っ青な北京の空のもと、朝9時を合図に、500人ほどの老若男女が取り組んだのです。そういう体験から、やはり自分の四肢をしっかりと動かして、歩くということは、運動の基本のような気がしています。

事務局から

皆さんからのご意見、提案、手紙などをいつでも歓迎しています。NiftyなどのIDをお持ちの方はそれおを添えて下さい。私信の場合はその旨お書き下さい。編集の手間を少なくするために、数字やローマ字は半角を是非お使いください。カタカナの半角がありますと、送信できませんので使わないで下さい。

   以上11月の会報でした。次号をお楽しみに。