1997年5月の会報です。

障害者とコンピュータ利用教育研究会のホームページ




目次


第81回関西例会のお知らせ
新刊書の紹介
第80回関東例会報告です。
1997年度自作教材集CD_ROM教材募集の締め切りが近づきました。
THE MAGICAL TOY BOXの資料をお分けします。
「2010年の養護学校はネットワークでこうなる」--自主シンポジュウムのお知らせ
パソコン利用の現場から
自閉症児を連れてアメリカへ
皆さんからのお便りです。
第81回関東例会のお知らせ
第3回MES九州例会の報告

673-14 兵庫県加東郡社町山国2007 兵庫教育大学 学校教育研究センター
0795-40-2205 phone
Email:成田 滋
Web上の会報URL:MES会報

第81回関西例会のお知らせ

○日時:5月24日(土) 2:00-4:30pm
○会場:大阪教育大学附属養護学校 平野区喜連 4-8-71 電話 06-708-2580   幹事 中島康明氏
○交通:地下鉄谷町線「喜連瓜破」で下車。左に折れ徒歩2分のところに学校があります。
  初心者や親子連れの参加を歓迎しています。
○プログラム
・ワンスイッチソフトの紹介
・いろいろな自作教材の紹介
・インターネット上の障害児教育の新しいページの紹介

新刊書の紹介

●「障害者とMacintosh」著者 小川美紀雄 mikioo@pis.bekkoame.or.jp
   著者の言葉から。「いきなり奇妙な小見出しだが、ちよっとぷりかえって「パソコンっていったい何だ」ということを考えてみたい。パソコンは、テレビや自転車と違って、なんともよくわからない機械だ。急に「いったい何だ」といわれても即答に苦しむ。あえて定義をしようとすれば「コミュニケーションを支援する装置」ということになるだろうか。ワープロで文章を書く、表計算で表やグラフを作る、マルチメディアソフトで動画を制作する。どれもこれも「誰かに何かを伝える」際に行う、つまりコミュニケーションのための装置だ。もちろん通信機能は、まるっきりコミュニケーションであるし、さっきちよっと書いた「ハローキティの7つのおくりもの」のようなCD‐ROMタイトルもまた、書籍に代わるコミュニケーションメディアである。ところでメガネは「視力を支援する装置」である。これは視力に問題があり、よりよい視力を望む人のための装置だということになる。そういう視点で考えれば、「コミュニケーションを支援する装置」は、本来「コミユニケーションに困っている人」のためのものであるはずだ。障害者は、ほとんどの場合「コミュニケーションの分野で困っている」人たちである。視聴覚の障害はもちろん、肢体の障害でも「行動に制約がある」、「コミュニケーションの機会を阻害される」という点で、コミュニケーションの部分で問題を抱えているのだ。それならば、パソコンは本来障害者のものだ、ということはできないか。そこまでいうのは言い過ぎだとしても、障害者は、パソコンの本来の意義からすると、「もっとも大切なお客さん」だということになるはずだ。昨今、よく「障害者もパソコンを使っている」という姿勢の新聞や雑誌の記事を見かけるようになったが、本当は、障害者こそパソコンを使う意味も必要もあるのだ、と私は主張したい。パソコンは障害者のものなのだ。」

第1章「初めまして」
第2章「私達の実際の活動から」
第3章「障害者のためのMacintosh選び」
第4章「障害者のためのMacintoshの基本機能」
第5章「障害者のためのMacintoshの周辺機器」
第6章「Macintoshを使いやすくするソフト」
第7章「Macintoshを核として活動している団体について」
第8章「これからのことを少し」
第9章「資料編」

「近視の人が眼鏡をかけるように障害を持つ人のコミュニケーションツールとしてコンピュータを使用しよう。しかし、現状のコンピュータはどうだろうか。そこで現状のコンピュータ(Macintoshを中心)の紹介と、「障害者とコンピュータの活動をしている団体」(Macintoshに限らず)の紹介を行い、私達はどう活動するかなど私案を紹介させていただいています。障害を持つ人、その家族だけでなく、コンピュータを使っている人、エンジニアなど読んでほしいと思っています。」
214頁 1750円
◎発行所 毎日コミュニケーションズ 102 千代田区九段南 1-5-13 共同ビル2号館 03-3230-3802
注:この本のテキスト版があります。ディスク1枚で、180円切手同封で入手できます。
○「障害者とMacintosh」の表紙

●「個別教育計画の理念と実践」
 「近年、発達障害児・者の療育等において、時代の流れとともに一人びとりのニーズに応じた療育・教育・援助のサーピスが重視されるようになってきました。しかし、わが国の実情としては、従来の、教育や指導の枠組みに子どもたちを合わせていく傾向はまだ根強く残っています。そうなると当然、発達障害児・者に関わるサーピスを提供する側の発想や行動の転換が必要になってきます。財団法人安田生命社会事業団では、平成2年から5年間にわたって「中・重度発達障害児の社会的自立に向けての指導プロセス--年齢別の中心課題とその対応--」をテーマとして、研究・調査に取り組んでまいりました。調査・研究に際しては、多職種の専門家による研究会を結成し、会員の皆様が総力をあげて努力されてきました。その結果としてこのたぴ、わが国の文化等も考慮に入れた「個別教育計画の理念と実践」の報告書がとりまとめられました。」 約300頁。
 発行所 財団法人安田生命社会事業団
 03-3986-7021 2,000円
○「個別教育計画の理念と実践」の表紙

●「肢体不自由者のためのコミュニケーション機器」
 この小冊子は、国立特殊教育総合研究所の松本廣氏の推薦です。" 機器を利用する人や援助者の地平で書いてあります。決して評論家や批評家のおかめはちもくではありません"というコメントがついています。¥300
発行所 東京いきいきらいふ推進センター 03-3269-4126

第80回関東例会報告です。

 このところ東京と横浜で交互に開催している関東例会ですが、今回4月12日は、「横浜国立大学付属養護学校」を会場として行われました。ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、ここはMacのショールームではないかと錯覚させられる台数のMacとインターネット接続の条件がそろっていて、レポータは勤務している学校との差に、何度訪れても羨ましさを禁じえません。
 さて、当日の参加者ですが、小船井さん、渡辺さんのご家族を含めて19名と結構な賑わいとなりました。遠方からの参加者は、静岡中央養護学校の山崎さんと常連の栃木県は今市養護学校の宮田さんでした。
 今回も内容はかなり盛りだくさんで、MacEXPOで紹介していた97年度MES-CDROMのデモ、保土ヶ谷養護学校 佐々木さん制作の教材、EXPO会場で売っていたというチャイプロという幼児教育用のソフトとMACRO-10MVというプログラマブル10KEYについて、Kai's Power GOOの紹介、がありました。
 最初は、EXPO会場で定価の約9割引!で売っていたMACRO-10MVの紹介でした。MSXのジョイスティックポートを持っているので、それを利用した外部スイッチによるマウスエミュレーション機能の利用方法の説明がありました。ちなみに、紹介者の林さんは、神奈川県の第二教育センターでの研修でこの外部スイッチ類を制作したそうです。他にも、この10KEYはマクロやキーの割り付け等ができるとのことで、EXPO会場でか続きなりの台数をまとめ買いしたMES会員もいたそうです。
 佐々木さん製作による教材は、かずの基礎的な部分の学習と絵や形のマッチング、文字の学習にむけての作品でした。実はこの教材、昨年も紹介されたのですが著作権関連で、ちょっと難しい部分がありCD-ROM収録をあきらめたものです。とはいえ、今年度機能強化されて、さらに良くなっているという感想を持つだけに収録できないのは惜しいなあと感じました。例えば文字の書き順練習では、かわいいキャラクターが「ここだよ」とかき始めの位置を話しを加えて教えてくれたり、子どもの実態に合わせて文字のぶれに余裕を持たせることができたりと「マックランドセル一年生」の一部の機能より使い易い部分があるのでは?という感想が会場の中からもでていました。今回の機能強化で重要なポイントは、この教材作成を可能にしたエディター部分にあるような気がします。これだけでも収録できれば面白いのに、いや、やっぱり難しいかと独り言をいっていたレポータでありました。
 チャイプロは、千葉聾学校の宮下さんの紹介で、数の学習を中心とした全10枚のミニ教材集でした。本格的に利用するためには、物足りないかな?という評価が会場ではありましたが、アイデアには面白い部分も見られたので、今後の宮下さんの実践経過を聞く必要があると思えます。
 Kai's Power GOOは、画像をかなり自由に変形させられるツールでした。変形や合成を行って遊ぶという要素の他に、タイトルを制作したり、自動車の画像を変形させQuickTimeの音と組み合わせてしゃべらせる。また、文字データをPICTで作っておき加工して教材に利用する等の可能続き性が考えられるとのことでした。ちなみに、デフォルトのモナリザの顔を変形させてみましたが、どうも過剰に変形させてしまうので「気持ち悪い」という声が会場のあちこちからあがっておりました。利用にはアイデア次第という例だと思えます。
 97MES-CDROMのデモは、EXPO会場でも好評だったクリック練習用のスタックを中心に行いました。音の効果といい絵のかわいさといい、さすがはMESのブースがゲーセンに一時変わってしまったのがわかるような気がします。他には定番、安永さんの「ひとりでできるもんシリーズ(シム◯◯)」のシムコール等、たくさんの力作が紹介されました。
 以上の他にも、中邑賢龍先生からのAACに向けての資料が配布されたりと時間を目一杯使っての例会となりました。次回、第81回例会は、5月10日お馴染みの東京都失明者更生館で行います。さらに第82回例会は、6月14日神奈川県立保土ヶ谷養護学校で行います。どちらも気軽にいらしていただければと思います。

1997年度自作教材集CD_ROM教材募集の締め切りが近づきました。

「障害者とコンピュータ利用教育研究会-Mac Education Society--MES」が結成されて7年が経ちますが、その間学習上に困難を示す子どもや大人がMacintoshを使って学習したり、余暇を楽しんだり、仕事に役立てたりすることを支援してまいりました。その活動の一環として教育教材の開発と普及に力を入れ、ワークショップやカンファレンスを開催し、これまで滋賀大学教育学部附属養護学校と協力して2種類の「MES自作教材集CD_ROM」制作してきました。
 幸いこのCD_ROMは好評で、学校や家庭で使っていただいております。このたび97年版を製作することになりました。このたびのはハイブリッド版とし、MacintoshとWindowsのパソコンの両方で使えるものとします。今回の97年版は96年版と同様に教育目的のために非売品となりますが、送料などの実費はユーザーからいただき、これを基金とし増版や次作の教材制作に使いたいと考えております。教材を共有することに賛同される方は、どうか周りの方々にお声をかけてくださり、このCD_ROMに教材作品を収録さるれるようお勧めください。

●教材募集締め切り: 1997年4月末日
●刊行予定: 1997年7月下旬
●開発環境: HyperCard2.0以上、Oracle Media Object、Expand Book、Action、Macromedia Directorその他
●教材の著作権: 教材開発者に帰属します。
●貯蔵媒体:128-230MO、リムーバルハードディスク、Zipなど
●媒体の送り先:
〒673-14 兵庫県加東郡社町山国 2007
兵庫教育大学学校教育研究センター
 成田研究室気付 大杉成喜
 直通 0795-40-2205
 Email: osugi@sue.shiga-u.ac.jp
 NiftySERVE: HGA01651

THE MAGICAL TOY BOXの資料をお分けします。

 3月29-30日の行われました、THE MAGICAL TOY BOXのイベント資料を実費1000円(送料込み)にてお配りしたいと思います。内容は以下のとおりです。

◎目次
イベント案内                   2ページ
会の設立主旨                   4ページ
MTBが出来るまで                 5ページ
スイッチから始まるテクノロジーの活用について   9ページ
活用事例集                    13ページ
 1996年全肢Pの大会資料より          13ページ
  機器の利用に至るまでの能力を発掘する・育てる 14ページ
  外に向かう力を養い、向上心を育てる      17ページ
  機器の利用 〜家庭と学校での実践 〜      21ページ
 1996年府中養護学校文化祭資料より        25ページ
  さとみちゃん                 25ページ
  たいちゃん、みいちゃん            27ページ
  しょうくん                  37ページ
  だいちくん                  40ページ
  まさやくん                  42ページ
  めぐみちゃん                 50ページ
  さとしくん                  52ページ
  まなちゃん                  54ページ
  なおゆきくん                 55ページ
  あきこちゃん                 59ページ
  かつらちゃん                 69ページ
障害者のためのシンプルテクノロジー講座      71ページ
雑誌等の記事より                 84ページ
ニューズレター会員募集              88ページ
=================================================
興味のある方は以下の連絡先にお申し込みください。

THE MAGICAL TOY BOX
吉澤千恵 東京都狛江市東和泉2-20-5 Tel 03-5497-2140 Fax 03-5497-6766
金森克浩 NAH00531@niftyserve.or.jp
kanamori@koumei-sfh.setagaya.tokyo.jp

「2010年の養護学校はネットワークでこうなる」--自主シンポジュウムのお知らせ

以下のようなシンポジュムを、今秋10月10-12日の日程で熊本大学で開かれる日本特殊教育学会第35回大会で行うことになりました。どうかメモしてください。
●企画趣旨
 我が国の養護学校は、重度対応への偏重、個別教育計画の欠如、教師の専門性の欠如、教育投資と成果の不問、テクノロジーへのアレルギー、不可解な教員の人事異動、教員の高齢化と若手教員の不足などが営々と続いている。高度情報通信時代に生きる生徒の育成を担う教員の資質や能力とはなにか、これからの養護学校はいかにあるべきか、といった議論も将来の青写真もない。兵庫県の養護学校も同じような状況にある。
 しかし、近年になってわずかの養護学校ではあるが、孤立しがちな養護学校の生徒や教員の交流がネットワーク上で始まり、養護学校の新しい姿を垣間みることができるようになってきた。しかも養護学校間だけでなく普通学校や外国の学校との交流も見られる。養護学校の生徒の自己主張や教育情報の公開もネットワークで始まっている。こうした新しい試みは、現在の障害児教育の閉塞的な状況に一つの風穴をあけるものと期待される。
 本企画は、「2010年の養護学校はこうなる」「こうなっていなければならない」という予測をネットワークの利用によって試みるものである。話題提供者からは、所属する学校でネットワークを使って生徒がどのように変わりつつあるか、教員はそれをどう支援しているか、学校にどのような変化があらわれているかを報告していただく。そして2010年の養護学校の姿を投影してもらう。
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テーマ:「2010年の養護学校はネットワークでこうなる」
○企画者 成田 滋、上谷良一、中島康明
○司会者
 成田 滋 兵庫教育大学学校教育研究センター naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp
○話題提供者
 中島康明 大阪府立盲学校 06-693-3471 MHG03143@niftyserve.or.jp
 舛谷 晃 山口大学教育学部附属養護学校 0839-25-5480
 masuya@po.cc.yamaguchi-u.ac.jp
 長谷川正寛 福岡市立福岡中央養護学校 092-847-2789
 JAG00106@niftyserve.or.jp
 小野龍智 佐賀県立金立養護学校 0952-98-1135
 edq40197@saga-ed.go.jp
 武富志郎 宮崎県立清武養護学校 0985-85-6641
 KHE02635@niftyserve.or.jp
○指定討論者
 棟方哲弥 国立特殊教育総合研究所教育工学研究部 0468-48-4121
 munekatt@nise.go.jp
 上谷良一 兵庫県立教育研修所 0795-42-3

パソコン利用の現場から

入力装置の工夫とネットワークでの交流〜操作環境を改善する方法〜
 小塚雄一郎 石川県立七尾養護学校 koduka@po.incl.or.jp

○パソコン利用のねらい
 本校は、能登地区唯一の知的障害を持つ子どもたちの養護学校である。平成8年度「学校教育マルチメディア通信ネットワーク利用実験」NTTによりISDN通信、フェニックス(NTTマルチメディア会議システム)などの通信環境が実現した。能登の柳田村にある満天星(植物公園内の大天文台)をテレビ会議システムで結んだ授業を行ったり、広域学校間交流プロジェクト「メディアキッズプロジェクト」メディアキッズ・コンソーシアム 新谷 隆会長(国際大学GLOCOM)や滋賀大学教育学部附属養護学校のチャレンジキッズという知的な発達障害をもつ子ども達のためのネットワークへも共同研究校として参加することができた。パソコンを遠隔地とのコミュニケーションや表現手段として教育利用していきたいと考えている。

○パソコン利用の実践例
 本校中学部在宅訪問学級から入学したM子は脳性小児まひの障害を持つ。在宅訪問学級の小学部高学年から、訪問学級担当教諭により、コンピュータを使った文字による表現活動を学習している。当初から運動機能障害による不随意運動のため、動かせる手の範囲に限りがあることからキーボードやマウスによる操作は非常に難しく、入力装置とプログラムの工夫がなされてきた。トーキングエイド(キー入力すると音声で返してくれる携帯型意思伝達装置)を使用したことばによる表現方法がある程度可能である。
 M子に「PAD-BAC-80」ボードマイコンを用いてトーキングエイドを入力装置としたワープロソフトの活用を試みた。「PAD-BAC-80」は 埼玉県立和光養護学校の斎藤明朗 氏が開発したMac OSに対応した拡張入力装置である。埼玉県立宮代養護学校 中島明弘氏に作ってもらった。PAD-BAC-80とジョイスティック等を組み合わせることによって、難しかったマウスによる操作をより自由にこなすことができるようになった。作業学習(印刷班)の時間に、キッドピクス(絵描きソフト)でいろいろな絵を描くことができた。この活動は、ことのほか気に入ったようで、絵を描くことを楽しんでいる。彼女のオリジナルの作品を印刷製品として価値を見いだしていけたらと考えている。
 9月に、電子メールを利用した障害児教育情報交換メーリングリスト「edhand96特殊教育共同利用企画」へ参加することができた。これは100校プロジェクトに参加している肢体不自由養護学校の東京都立光明養護学校が中心になり、インターネットと障害児教育について全国の学校教育関係者が参加するメーリングリストである。そのリスト上でM子の実践について紹介した。障害者の入力補助機器の「Ke:nx(キネックス)」を共同研究として借りることができた。(100校プロジェクト事務局・光明養護学校)
 Ke:nxは、Macintoshを一つのスイッチやマウスエミュレーターで利用するためのインターフェースである。スキャン入力による日本語漢字変換ができる。キネックスを使って文字入力を試みた。
 本校が参加するメディアキッズやチャレンジキッズは、『FirstClass』というサーバーソフトを使用することでMacintosh、Windows両方での利用が可能となる。また、画像ファイルや音声ファイルの添付も非常にわかりやすく子どもたちが使いやすいGUI環境で操作ができる。M子が描いた絵や文章(手紙)をネットワーク上にアップロードすることができた。
 次の絵と文章は、M子がPAD-BAC-80やKe:nxを使って書いたものを、メディアキッズの「ひらがなの部屋」やチャレンジキッズ「小さな美術館」に載せたものである。それぞれ、他の学校の生徒や先生から返事をもらい、彼女なりにさらにたくさんの絵や手紙をネットワークをとおしていろんな人に知ってもらおうと意欲的である。

○指導するときに苦労したこと・工夫したこと
 最初は、気持ちのあせりによるミスタッチが多かった。慣れてくると、一定のボタン位置で押すことができるので、トーキングエイドのように、あちこちに手を動かさなくてもよく、リラックスできるように思われる。まず、キネックスのオートスキャン方法に慣れるのに苦労したようだ。しかし、トーキングエイドに比べると、上半身の力の入れ具合が少なく、スムーズな姿勢での入力が可能になっている。将来性を考えるとキネックスの方が利用しやすい。漢字の変換などワープロソフト本来の機能の学習を理解し、印刷するまでの手順を覚えようと真剣に取り組んでいる。

○今後の課題
 本校に在籍する運動機能障害を持つ生徒は肢体不自由養護学校や病弱養護学校に比べれば決して多くはないと思う。しかし、障害の多様化は、明らかに広範囲になって来ており個々の障害に応じたアプローチとステップが必要とされるわけである。  重度の障害がある人や知的障害をもつ人に対して、入力環境の工夫によってワープロを打つことは可能なのである。また、音声・映像・テレビ電話的利用等のマルチメディア通信環境の充実によって、その人たちが一般の人たちと同じようにコミュニケーションをとることは可能になったといえる。
 絵本校におけるネットワーク利用の試みと情報機器活用の試みは、数カ月前にスタートしたばかりである。障害をもつ人たちが対等に社会に参加することを支援するために、マルチメディアの可能性やインターネットの効果的利用を様々な面から研究実践していきたいと考えている。

自閉症児を連れてアメリカへ

 M-Team Evaluation
 佐藤 裕 ysato@execpc.com

1. 我が家で行われたM-Team Evaluation
 「学校や教育委員会の記録は、全て親が見る権利がある・・・・・・。」ウィスコンシン州の特殊教育に於ける親と子どもの権利をうたった書簡を、ミーティングのたびに手渡される。そして、特殊教育委員会と行き来している書類の写しが必ず私の元に届く。これを取りにわざわざ学校に出向かなければならないこともあった。  M-Team Evaluationの通知に目を通すと、疑われる障害の一覧にはCognitivedisability(認知発達障害)と Autismにチェックがしてあった。そこでわが家にテピの詳しい評価をしに訪れたのは、自閉症のスペシャリストであるジョエルとCognitiveDisability (CD) Program Support Teacher のベスだった。彼女達はたくさんの教材の入った大きな鞄を抱えて吹雪きの中を雪だらけになって現れた。

2. 教材を使っての関わり
 彼女達が現れた時、テピは窓の外の雪をひたすら眺め続け、彼女達を無視していた。教材を使って何がどれだけできるか正確に見たいという彼女達の誘いに乗る気配は全くなかった。そこで先ず、私が教材を使ってテピと関わり、徐々にジョエルへとバトンタッチしていく方法をとることにした。ジョエルが持ってきてくれた教材はテピのレベルに合っていて、私もテピも迷うことはなかったし、前回の私の報告をよく把握してくれたことがよく分かった。
 この方法はうまくいき、15分間学習を続ける事ができたことをジョエルは喜んでいた。ジョエルは時々シャボン玉を吹いて見せることでテピの視線を自分に向けさせていた。一度、ご褒美?気を引く?ためのお菓子(セサミクラッカー)をもらって食べるが、テピはその目的をくむ様子は見られなかった。

3. コミュニケーションカード
 家で使っているカードを実際どう使っているのか見せ、それを具体的にどう変えるか話し合う。まず、ジョエルが加えて欲しいという言葉の絵カードを増やすことにする。新しい言葉の絵は、コンピューターに入力してある絵を参考にしながら、私が書くことになった。そしてカードの上端には英語、下端にはローマ字を添えた日本語を明示する。テピが理解しにくいと思われる言葉には写真を撮って貼る。「おやつ」の絵は学校で用意できるものに限定すること。「ごはん」の絵も学校のホットランチに変えることなども付け加わった。カード作成作業は全面的に私に任された。ジョエルに合う度に作ってほしいという言葉が増え、結局は40枚余りのカードを作ることになった。

4. テピの好きな物
 テピの気持ちを落ち着かせられる物、やる気にさせられるものについて、前回に続いて具体的に試しながら話し合う。音楽、ビデオ、運動、食べ物、接し方などあげる。実際、好きな音楽を聞いて足踏みしながら笑うテピを見て、ジョエルもテピの手を取ってにこやかに一緒にリズムをとっていた。テピの好きなジャパニーズティー(ほうじ茶)も試飲してもらう。子どもを誉める動作は、日米ともそう変わらないことも分かった。そして、ジョエルの提案の、テピの好きなカセットテープの入ったウォークマンと、ほうじ茶の入った携帯用ポットを毎日学校に持っていかせることに同意した。

5. その他
 ベスがテピの学習能力の細かいことを私に聞き、記録をとる。約2時間にわたるのわが家でのミーティングは、4日後に学校に於いてIEP作成のためのミーティングの約束をして締めくくられた。この時、テピがホームスクールに通えることと、そこには専門の先生がいることを知ることができた。3日後に郵送られてきた、行政官のサインいりのM-team Findingの通知には7ページに埋められたテピの評価と、勧めたい教育やサービスの内容、親の評価まであった。

(注) M-Team Evaluation とはMulti-DIsciplinary Team Evaluationといわれ、文字どおり訳しますと、「専門家による診断判定委員会」といいます。これは、いわゆる個別教育計画をつくるための手続きのひとつです。 (成田)
(本稿は、佐藤裕氏の許可を得て掲載しています。どうか感想をおよせください。)

皆さんからのお便りです。

●住所の変更です。
 寺野英二  浦和市立原山小学校 OAS01026@niftyserve.or.jp

 こんにちは。まずは私のメールアドレスからです。実は私まだインターネットにはアクセスしたことがないのです。友達がしているのを覗いてはいます。そろそろ覗こうかなというところです。推薦のサイトがありましたらまた教えてください。それから、この4月から職場が変わりました。以下の通りです。
 浦和市立原山小学校
   〒336 埼玉県浦和市原山1-30-12
 電話 048-882-7907 fax 048-811-1332
 この2年間は5・6年生と通常学級の担任をしていました。通常学級の教育を経験しておかないと障害児教育をやっていけないという思いからです。けっしてうまくできたわけではないですが、そしてそれはくやしいのですが、今年からは再びという感じです。原山小では固定の情緒学級を担当します。いままで精神薄弱養護学校の小学部・中学部、通級の情緒学級は経験していますが、固定の情緒学級は初めてで、楽しみです。精神薄弱特殊学級3学級と並んでいますので、いろろいとやりとりしたいとも思っています。
 先日のマックエキスポには都合で1時間ほどしかいられなかったのですが、永田さんや安永さん、杉田さん、金森さんらにお会いすることができました。成田さんもいらっしゃるかと思ったのですが、残念です。ただ、会報で相変わらずのご活躍は存じておりますので、一貫したそのパワーに驚嘆しております。会報は上記アドレス宛に毎回きちんと届いています。
 会報にアメリカ教育視察の記事を見るにつけ、一度行かないといけない」という思いにかられます。また企画がありましたら是非御知らせください。都合がつけば行きたいと思います。今からでは遅すぎるくらいなのですが、やはり一度実感しなければと思っています。できれは1年以上いれればいいのですが。

●静岡でもMESのような例会を
 前田卿子 静岡医療福祉センター sifc@fuji-mt.or.jp

 昨年暮れにMESの会員になり、今年1月には横浜の関東例会に参加しました。永田、佐原先生らにお会いし、いろいろなコンピュータ情報を教えていただきました。今年2月から、Performa5280、タッチパネル、KENXなどを揃えて、障害児のリハビリプログラムにコンピュータを利用しています。2月には併設の静岡南部養護学校へ中邑先生をお招きして講演していただきました。3月のマジカルトイボックスの例会にも参加してきました。インターネットも開設し、ようやく当センターのホームページを作りました。

●周辺機器の購入
 竹林地 毅 広島県立教育センター  TCC00140

 ご無沙汰しております。4月からも引き続き教育センターにおります。内部の機構改革で、所属の名称が変更になりましたが、仕事内容は同じく研修、研究、教育相談の3本です。昨年度の研修生の加地先生がOMOで様々なスタックをつくられましたが、私は事務仕事に追われて、まったく構想も練れない状態です。
 さて、念願がかない教育センターに次の機器が導入されました。仕事の中で活用するだけでなく、必要としている方に使っていただけるような運用ができないかを検討しています。
 1 ヘッドマウス
 2 タッチウインドウ
 3 スリーアームなどセッティング用アーム
 4 メッセージメイト
 5 ウオーカートーカ
 6 アルファトーカー
 7 キネックスオンボード
 これらが複数配置されていることも強味ではないかとおもいます。ぼちぼち広島でもこれらの活用を考える機会が増えてきています。よろしくご指導下さい。

●『障害者とMacintosh』と愛泉ホーム
 小川美紀雄 障害者とワープロパソコン通信研究会
 mikioo@pis.bekkoame.or.jp

 『障害者とMacintosh』を出版してからいただいている暖かなお言葉をありがとうございます。本当は、1年前にでているはずだったのですが、仕事のつごうで、つめができなくて2年たってしまいました。成田先生がアップルディスアビリティセンターをご紹介していただいたり、中邑先生をご紹介していただいたおかげで、何とかまとまった本の形になりました。
 MESもたくさんの支部ができて、とってもすてきな活動になりましたね。土曜日の午後ということで、私には例によって仕事がありますので、参加できませんが、あの焼き肉やの頃を思い出すと、なぜかファイトがわいてくる思いがします。  愛泉ホームは、一時は25名いた職員が、現在は8名になって、この人数に2名の臨時をプラスして、学童育、老人活動、配食活動、デイサービス、乳幼児活動、障害者活動など事業を展開してます。誰か一人でも倒れたら、活動が回らないという事態です。でも、昨年の県の案では、7名で、臨時はつけないということでしたので、住民の皆さんの活動がくい止めたというところでしょうか。さらに来年は職員を限りなく0に近い人数にするといっていましたが、それも大型バスを連ねて住民と組合が一緒になった抗議行動を3回くり返したことで、うやむやになりました。どちらにしても、県がいつまでもやっているのではなくて川崎市にはやく移管できるように進めてもらいたいものだというのが住民組合の一致した願いです。
 もし職場を失ったら、横須賀老人ホームに行って、先生の旧職場に誰かを訪ねていくのもいいかなあなんて、または三浦しらとり園に皆さんを訪ねに行くのもいいかなあなんて思ったりして・・・この愛泉問題を長期に抱えながらの「障害者とMac」の執筆でしたので、逆に執筆が息抜きになるときもありましたし、愛泉問題の運動が厳しいときに、原稿の締切が重なったりして、この3月はてんやわんやでした。

●ごあいさつ
 中島康明 大阪府立盲学校nakajima@cc.osaka-kyoiku.ac.jp
 この度4月1日付けをもちまして大阪府立盲学校へ転任致しました。大阪教育大学附属養護学校在任中は、なにかとお世話になりましたこと深く感謝申し上げます。赴任して3年間、障害児教育における指導方法の研究に取組みました。オンデマンドカラーDTPによる印刷の指導やインターネットを活用したコミュニケーション指導などに取組み、さらには情報化に関するいくつかのプロジェクトへの参画という貴重な経験も積むことができました。
   それらを通して何にもましてひととネットワークの大切さを学びました。学校を変わってもそのことは大切にしていきたいと思っています。新しい任地で、今まで賜りました御厚情を胸に刻み、鋭意努力致したいと存じています。なにとぞ今後とも相変わりませず御厚誼のほどお願い申し上げます。
 本来ならば、拝眉の上ごあいさつ申し上げるべきでありますがとりあえずmailをもちましてごあいさつ申し上げます。ということで今後ともよろしくお願いします。 中島 康明 4月から [大阪府立盲学校] 〒558 大阪市住吉区山之内1-10-12
Tel 06-693-3471 Fax 06-693-1504 nifty:MHG03143
  nakajima@cc.osaka-kyoiku.ac.jp

●パソコンバンク御中
 横山留美 東京都 yokoyama@mtcnet.co.jp
 この度初めてメールを送らせて頂いております。大阪府箕面養護学校の伊東昭巳先生より貴団体をご紹介頂きました。私共は、MAC(マック)検定委員会と申しまして、パソコンのマッキントッシュの利用者対象にその利用技能力をはかる資格検定を実施しております民間団体です。私はその事務局を担当しております。
 当検定へのお問い合わせやご質問等で、障害者の方よりご連絡を頂くこともございます。しかしながら、正直なところを申しまして私共の支援体制等の不足な面や市場調査の働きかけがおこたっていることが主な原因で、障害者の方の志願率は年間1%に満たないばかりか、受験後のリピート率の低下も止めることができないといった状況下にあり、抜本的な改革が急務とされる中、日々活動を模索している段階なのです。資格本来の価値が問いただされている中、徹底した市場ニーズを得ることで障害者の方にもいずれ生涯学習の一環として、検定をレベルアップの尺度にして頂けるような資格を作って参りたいと私は思っております。
 運営人員が少ないこともあり、微力ではございますが、貴団体の活動へお役に立てるようなございましたらお声をかけていただけますようお願い申しあげます。また、当委員会のホームページ( http://www.mtcnet.co.jp/mul.html)をご参考までにご高覧下さいますようお願い致します。
 MAC検定委員会
 東京都千代田区神田小川町3-8 中北ビル5F
 TEL 5259-9513 FAX 5259-9705
 事務局 横山留美

第81回関東例会のお知らせ

初参加の方も大歓迎です。どうぞお気軽にいらして下さい。
◎日時: 1997年5月10日(土)2:00--5:00PM
◎会場: 東京都失明者更生館 (新宿区河田町10-10 03-3353-1277)
     2F 調理室(とても明るくてきれいです。)
◎お世話役: 失明者更生館主任指導専門職 深沢茂氏
◎交通:
新宿西口小田急ハルク前から
都営バス「抜弁天経由 東京女子医科大学」行きに乗り「河田町」でおります。
進行方向へ20m歩くと左手に青春出版があります。
その向かい側に無人の交番があり、その隣に東京都失明者更生館があります。
新宿から、バスで15分、徒歩1分です。
◎内容:
自作スタック・ソフト紹介
市販ソフトの紹介
Q & Aコーナー
その他

第3回MES九州例会の報告

小宮幸三 筑後養護学校 k-komiya@ariake.or.jp
 ダイエーのメガホンや帽子に囲まれながら第3回九州例会を福岡ドームのすぐ横にある福岡中央養護学校で行いました。今回は佐賀県立金立養護学校からの3名をはじめ11名の参加、大半の人たちがMacにふれはじめて1、2年ということで、「起動している途中にフリーズしてしまう原因は?」「デスクトップ上のアイコンを見えなくするにはどうしたらよいか?」などと、トラブルへの対処法についていろいろと質問がでていました。それから、藤田さんからはお子さんに何かいいソフトはないかということで、「ポンキッキーズ」シリーズや「らすたあちゃんとあそぼ」などのCDを動かしてみてもらいました。福岡市はNECと富士通に機種が指定されており、Mac・Winのハイブリッド版になるMES97年度版CD-ROMは早くほしいといった感じでした。
 話をしているだけであっと言う間に2時間半が過ぎてしまい、皆さん物足りない感じでした。今回は会場に2台のMacしかなかったので実際にMacに触れる時間がありませんでしたが、次回は隣にある発達教育センター(8100AVが4、5台)でゆっくりとMacに触れたり通信もしたいと思っています。
 毎月第二土曜日と定期的な例会に落ち着きはじめ、参加者も福岡県外に少しずつ広がりはじめています。ダイエーの調子もよく、次回(5/10)あたりは例会を終わってからそのままドームに直行するのもいいですね。MES九州の例会は、基本的に毎月の第二土曜日10:00〜12:30に福岡中央養護学校を会場に行います。スケジュール帳にご記入下さい!



では来月の会報をお楽しみに。

●制作:成田 滋

●編集:曽根秀樹