障害者とコンピュータ利用教育研究会

1998年3月会報 NO. 92 Mac Education Society(MES)

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MES
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1997年2月号

1998年1月号

1997年12月号

成田研究室

 

〒673-14 兵庫県加東郡社町山国2007
  兵庫教育大学 学校教育研究センター
  narias@ceser.hyogo-u.ac.jp
  Fax 0795-40-2203

■ 目次 ■

第92回関東例会のお知らせ

第91回関東例会とMacWorld Expoの参加お礼

MES/ACE/NMES合同例会の報告

資料

個別障害者教育法(IDEA)第19回議会報告書の要約

随想:白夜の広場から文化を考える

皆さんからのお便り

市販教材の紹介

障害児教育におけるインターネットの活用

新100校プロジェクト 平成9年度成果発表会のご案内

THE MAGICAL TOY BOX(マジカル トイ ボックス)

■第92回関東例会のお知らせ

●日時 1998年3月14日(土)2:00--5:00PM
●交通 横浜市営地下鉄「弘明寺(ぐみょうじ)」駅下車 徒歩3分。
 横浜市営地下鉄弘明寺駅を出ると真ん前に横浜国大附属中学校があります。
 その正門に向かって右側(南警察署の脇)の外塀を2〜3分歩くと附属養護学校の門が左手に見えてきます。駅からすぐです。
●会場 横浜国立大学附属養護学校
     232 横浜市南区大岡 2-31 045-742-2291
     お世話役 根立 博氏

■第91回関東例会とMacWorld Expoの参加お礼

 Expoではご苦労様でした。特に佐原、熊谷さんら千葉の方々の努力に感謝でした。同じ兵庫県の龍野市から行った前田さんとご一緒しました。福岡の小宮さんも私費をはたいて3日間つめてくれ頭が下がりました。医王養護の川井さんの呼びかけで、国総研の短研生の方々もチラシ配布に手伝ってくれて感謝でした。兵教大で研究中の大杉さんもとんぼ返りでしたが、コテコテのブース設営、チラシの印刷などに関東の方々が驚いていました。CD-ROM98は大いに期待が高まりました。お陰で98年版の発行は資金が70万円が集まりまったので教材の収集を本格的に始めます。
 今回のExpoでは、横須賀の関東自動車からパンクあて100台のMacの提供の話があったのは大収穫でした。目下、幹事の山平、前田、成田で収集の方法について、関東自動車の西川様と連絡をとりはじめています。後日、Mac100台受け入れの件の進展状況を皆さんにお知らせいたします。

ブースの様子(その1)
ブースの様子(その2)


■MES/ACE/NMES合同例会の報告

 去る1月24日に石川県立七尾養護学校で合同の例会が開かれました。七尾養護学校の先生、子どもさん、企業の方など40名あまりの人が大雪の中に集まりました。会場は、キネックスとインターネット接続したマッキントッシュなどが7〜8台、インテリキーなどが用意され、液晶ビデオを用いてプレゼンテーションが行われました。最初は、七尾養護学校の実践紹介と以下のプレゼンがありました。

・学級ホームページのガイドライン
・学校間交流プロジェクトチャレンジキッズへの参加についての説明
・マッキントッシュ環境での入力装置の実践等
・インテリキー、キネックス、タッチパネルディスプレーの紹介
 次に以下のような自作教材が七尾養護と兵庫教育大学の現職の教員によって紹介さ れました。
・マクロメディアを用いた書き方練習用ソフト
・曽根さん修士論文の概要紹介
・岩井さん カードめくりソフト 入力の仕方等に工夫を凝らす。

 石川県立小松瀬領養護学校の上狭氏からはウインドウズ環境での、入力装置の実践自作の入力装置を用いて生徒がインターネットを通して電子メールをやりとりしたりホームページを見たりする実践を紹介されました。。その際、小松工業高校との協同的な取り組みの中で、工業高校の生徒が自作のジョイスティックとボタンを組みあわせた入力補助装置をつくり生徒に使ってもらうなどの実践の取り組みが紹介されました。この様子は、石川県立小松瀬領養護学校ホームページに掲載されています。
 今回の研修では、教育関係者に加え、DDI北陸ポケット電話(株)の方から、モバイル通信の実際と今後のモバイル・コンピューティングについて紹介がありました。 近い将来、PHSによる位置検索サービスや自動販売機の中にモバイルを組み込み、在庫等を遠隔に確認するサービス、カラー画像のデータ通信サービスなどが行われる予定でますます、その教育利用の可能性が広がっていくように感じられました。また、インターネットの色々な場面での有効利用としてホームページを通して、インターネットの様々な教材や地域の情報を提供(あん共育)していこうといった地域に根ざしたグループの方々の発表もあり、学校をとりまく、教育グループや企業との連携が感じとられるものでした。
 また、富山大学の穴山先生からHyperCardをつかったいろいろな自作スタック紹介をしていただきました。紹介されたソフトの中ではアニメーションを含む軌跡やスタンプ等を表示するお絵かきソフトや自動処理ソフト、ユーザーが簡単に問題を作成することができる絵と文字を対応させるためのクイズソフトなどの紹介がありました。  それぞれの発表は、モバイルから修士論文の概要まで、幅の広い、なおかつ密度の濃い研修内容で七尾養護学校の先生方の日頃の実践の一端がうかがわれるものでした。
 夜は、会場を和倉温泉に移し、兵庫教育大学一行、ACE北陸支部の方々、七尾養護学校の職員の方々との親睦会を中心に、富山湾の海の幸を満喫できました。小塚先生、前先生をはじめとする七尾養護学校の先生方には、会場準備や宿の手配等本当にお世話になりました。

(レポーター:渡部親司 兵庫教育大学大学院障害児教育 m97332h@students.hyogo-u.ac.jp)

七尾養護学校会場での集合写真
会場の様子
司会の小塚先生

■資料・実践研究

●自作ソフトは、やすい、はやい、かるい をモットー
大杉成喜 兵庫教育大学 osugi@www.net135.or.jp

 大杉 "電波" 成喜@滋賀大学教育学部附属養護学校です。大前さんの書かれたものに多少コメントを。
大前:題材はMES自作教材95年版のケンタッキー(大杉成喜さん)、96年版のマクドナルド(荻野泰弘さん)などのファーストフーズものにヒントを得ております。ただ回転寿司というのは、形態そのものが現実に存在するオートスキャンなのでめざす教材のネタに向いているなと発想したわけです。
大杉:回転寿司は皿によって値段が違うので、その計算などを盛り込むと面白いですね。全国チェーンの「アトムボーイ」さんあたりとタイアップして作れると汎用性のあるものになるかもしれません。「KFC」はもともと自閉児のサバイバルスキルの習得のために作ったもので、お店の手順を学習するものでした。K君のお母さんの話で「街に出かけたものの一人でお店に入ることができず、結局昼抜きで帰ってきた」と いうのが動機となっています。私が担任していた子たちはたまたま「パンがあまり好きじゃない」子たちだったので、チキンになりましたが、様々な可能性があろうかと思います。現在ではメニューも替ってしまいましたし、必要に応じて作ったらいいと思っています。(現在、私は小学部の担任なのでさしあたってのニーズはなく、もっぱら「ばななくん」などを作っているのですが。)

(1)かるい
ShockWaveとしてWWW上で配布する場合は特にそうですね。フロッピー1枚だと1MBにもなってしまいますしね。そのためにCDを作ったのですが、Movieを入れて40MBなんてのはいけませんね。

(2)はやい
DirectorもOMOも見た通りに作るという感じですから初心者にも作りやすいと思います。要はキャストなり、オブジェクトなりといった「部品」の考え方を理解すればいいのですから。私はOMOをお薦めしますが、残念なことに発売元のオラクルさんが今後の開発をしないとのことで、事実上、現在市場に出ている分でおしまいということになりそうです。フリーウェアにするかMSが買い取って配ってくれたら嬉しいんだけどね。

(3)やすい
・Director V4.0 MAC版 実売価格 3万円ぐらい 品薄これ、時々見かけます。「買い」ですよ!
・Director V6.0 ハイブリッド版 15万円ぐらい
Lingoがかなり拡張されています。「on MouseEnter」といったいかにもHyperCard的なハンドラもあったりして便利です。同時に提示できるキャストも150ほどになりましたから足りなくなることは少ないと思います。ただ、拡張Lingoは命令が多すぎて冗長でもあります。それと、作ったプロジェクタによってはメモリを7483MB要求したりして、古いマシンでは動かすのがしんどくなっています。(8MBのマシンなんてもうないのかなあ)それと、ユーザーインターフェースがV4.0とV6.0では大きく変わってまして多少とまどいます。慣れればいっしょなんですがね。

大前:さらに、web上のshockwave形式のファイルをコンパイルする前のデータへの逆変換も可能だとか。
大杉:それは僕も知りませんでした。
大前:Directorの先人、大杉氏@滋賀大附&兵庫教育大いわく、「これで十分」だそうです。
大杉:キャストを同時に48個以上表示しない、あるいはLingoで凝ったことをしないのならV4.0でいいと思います。「ばななくん」ならV3.0でも十分です。ちなみV5.0はとても中途半端です。大切なのは「子どもに何が必要か」だと思います。そしてその次に「何を与えたいか」が来るのだと思います。で〜〜も。僕は今でもHyperCardが好きなんだな。

●NHKハート展入選
  加藤浩之 鳥取県中山小学校 hirokato@apionet.or.jp

 中山小学校、なかよし学級(担任をしております)、大西達也君(自閉症です) (氏名公開については保護者より了解を得ています)が、 NHKハート展に入選しました。ハート展とは、障害者から募集した詩に、各界の著名人が絵を添えるものです。2月6日、東京にてオープニングセレモニー、その後、全国巡回するそうです。1月28日、NHKさんと日本海新聞社さんが来校、大西君の学習の様子を取材され、当日、NHK鳥取局、中海テレビにて放送されました。翌日には新聞報道もされました。MESさんから寄贈していただいたパソコンを使って学習している様子も大々的に報道されました。

入選作品
 まち
 しらないまちにいきたい。
 しらないまちで牛どんをたべる。
 しらないまちでおっとっとをかいたい。
 しらないまちでやきゅうをする。
 まいごになりました。

です。(著作権が発生しています)
漫画家のさかいひろこさんがイラストにされるそうです。機会があれば見に行ってください。以下、中山小学校で使っている教材をお知らせします。
・KFCへ行こう(MES自作教材集’97収録 )
買い物シュミレーション・サバイバルスキル。日常の学習との抱き合わせに最適なソフトです。
(ゲーム)
・金魚すくい・・・(フリーウェア、中野洋一氏、MES自作教材集’97収録)金魚すくいそのものです。
・CandyBow・・・(シェアウェア、CandyHouse氏)
 ボーリングそのものです。金魚すくいやボーリングはよく教室でも遊ぶので、現実空間と仮想空間との競演ができます。
・BalloonCrush・・・(フリーウェア、Teo氏)
 風船割りゲーム。ブロックくずし風ゲームです。このゲームの後、教室に風船をいっぱい敷き詰めて子ども達と思いっきり割って遊びました。
(学習)
・かんじえほん・・・(MES自作教材集’96収録)
 漢字にこだわりがある3年生のA君はこればかりやりたがります。
・しりとりマックん・・・ (MES自作教材集’97収録)
 4人で一緒に考えます。子ども達の語彙量が試されます。
・ステップワープロ・・・ (MES自作教材集’96収録)
 ワープロものの開発ソフトはたくさんありますが、使いやすく安定しているス テップワープロに人気があります。
・マックへ行こう・・・(MES自作教材集’97収録)
 このシュミレーションで学習した後、実際にマクドナルドに行きました。自閉症にはこういった実生活のシュミレーションソフトが実に有益だと感じています。
・TrainSimulator8・・・(体験版、音楽館)
・東急東横線シュミレーター・・・(シェアウェア、津久井悠氏 )
 本当に電車に乗っている気分になります。子ども達と一緒に電車に乗った時、最前車両に乗り込み、運転の様子やレールの様子を見ました。電車シュミレーション学習と組み合わせて使い、切符の買い方を学習します。
 DOS(WIN)でもMACでもシュミレーションソフトは数多く出ています。(自作もします)何気ないフリーウェア・シェアウェアそして、各社試用版のソフトでも、子ども達と使ってみると、意外な面で興味を持ち、学習や成長に生きてくることを感じています。特に自閉症教育・療育にたずさわっているみなさん、シュミレーションソフトに注目されてはいかがでしょうか。
 市販エデュティメントソフトやCAIソフトは高価すぎます。MES自作教材集や雑誌の付録、キャンペーン会場でもらえる体験版ソフトで充分だと思います。

大西君と加藤先生

■個別障害者教育法(IDEA)第19回議会報告書の要約
(Seventeenth Annual Report to Congress on the Implementation of The Individuals with Disabilities Education Act, 1997. U.S.Department of Education, Washington DC.)

 今月から3回にわたって、合衆国における最新の障害児教育の報告書を掲載します。この報告書は300ページにわたる膨大なものですが、毎年議会に報告されるものです。

[翻訳者] 渡部親司 兵庫教育大学大学院障害児教育 m97332h@students.hyogo-u.ac.jp
(編 集) 成田 滋 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp
 

●第一部

○経緯と環境要因:
第一部は、5つのモジュールで構成されている。ここでは、障害生徒やその家族へのサービスの普及に影響していると考えられる社会的、教育的要因について記されている。

教育改革と障害生徒:学校改革の経緯
過去15年間にわたり、義務教育の改革は6つの主要な政策領域に集中して行われてきた。すなわち、学力水準や教育アセスメント、教育の責任、管理法、教師、教育行政などであった。その間、障害児教育においても、障害生徒を通常学級の中でインクルージョンしていくという方向に変化していくとともに、生徒(特に文化あるいは言語の異なるマイノリティの子どもたち)に対する障害の特定が適切に行われるようにり、同時に義務教育終了後でも、成人まで障害児教育サービスを受けることができるようになった。

最近、州学校主管管理者協議会は政策調査委員会と協力して通常の教育および障害児教育改革の効果を検討するための全国的調査を行った。その調査結果から、全米の38州とコロンビア特別地区において一つ以上の領域教科で習熟標準学力を準備していることがわかった。また、34の州とコロンビア特別市区では、個別教育計画に基づく領域教科の習熟標準学力を適用する予定であることがわかった。

教員免許状については、障害児教育と通常教育の両方を備えたものからより細分化された免許に切り替わる傾向がみられる。その傾向は、障害児教育においてより幅広い発達上の障害種の特定に向かっていることにも現れている。通常教育の教員免許取得については、22の州で小学校教諭に対して障害生徒に関するいくつかの単位取得を要件にあげている。また、21の州で助教諭に対して同じような要件を課している。そして、11の州で障害生徒と関わる仕事の経験を有することが免許取得の要件にあげられている。

・貧困が障害児教育に与える影響
過去25年間、全体的な貧困率はおおよそ12%と比較的一定であるが、児童の貧困率は15%から18%と増加傾向にあり、より低い年齢層の児童ほど貧困率が増加する可能性が高いという結果になった。1990年-1995年の間の平均的貧困率を見ると、2歳までの乳児の貧困率は25.7%、3歳-5歳が24.3%、6歳-7歳が19.9%であった。

このような貧困の問題は教育にも影響を与えている。低所得家庭の子どもは、学校の欠席率が高い。低学力者の様相もまた、低所得家庭の子どもと関連している。その差は、特に高所得者の家庭の子どもと比較すれば、中途退学の割合により顕著に見られる。

また、貧困の問題は、出生児の低体重に伴うリスクの増加にも関連している。低出生体重児は、学習障害や、多動性障害、心理的障害、精神的障害、神経発達障害、視覚障害、聴覚障害などの危険性を高める。そのため、貧困でなおかつ低出生体重の場合、障害児教育サービスを受ける可能性が高くなることが予想される。

・障害児教育にかかる費用
障害児教育費用に関する情報の出典には、以前行われた障害児教育費用に関する全国的研究のデータや、個別障害者教育法の618条によって州から収集されたデータも含まれている。最新の障害児教育費用については、障害児教育財政センター(CSEF) によって行われた最近の州調査や全国の生徒一人あたりの教育費、障害児教育への連邦政府の支出総額などに基づいている。

過去のデータは障害児教育費用が、通常の教育費用に比べるとその率に上昇がみられることを示している。しかし、その上昇分の多くは、個別障害者教育法の実施に伴うものであったり、5歳までの早期障害児教育サービスの拡充によるものであると考えられる。障害児教育費用の上昇に関する現在の要因としては、以下の点があげられる。

(1)障害児教育の対象となる生徒の在籍年数が増えたため。
(2)資金を供給する機関や、障害児教育サービスの種類が変わったため。
(3)財産税と同じような考え方で、通常の教育にかかる支出に関しては一定の制限がある一方、障害児教育にかかる支出については制限をしなかったため。
(4)経済的あるいは医学的に危険な状態の生徒や乳幼児の増加がみられたため。

障害児教育財政センターの調査に応じて、24の州から回答があった。そのうち13の州では、障害児教育プログラムにかかる費用を確信をもって算定することができたと報告した。9つの州ではある程度確信をもって、あるいはそのデータに確信をもって費用算定することができたと報告した。残りの2つの州では確信をもたないまま費用算定したと報告した。また、障害児教育プログラムにかかる費用を確信をもって算定することができたと答えた13の州では、障害児教育対象生徒一人にかかる費用の上限は5,435ドルになると報告した。

・教育問題の前線:薬物使用と暴力
違法ドラッグ、特にマリファナの使用が1992年から中学校で増加している。また中学校生徒や大人の飲酒率については、1990年代に入りあまり変わっていないかあるいはいくらか減少傾向にある反面、喫煙率は増加している。

青少年の暴力は、過去10年の間に地域社会の中で劇的に増加した。そして、その傾向は特に学校内で顕著に現れている。暴力の増加や薬物使用の問題について理解していこうという動きの中で、これらの問題がひいては障害生徒にも影響を与えるという点が徐々に理解されるようになってきた。

・少数民族と公民権に関する問題
少数民族の生徒と障害児教育サービスを受ける生徒に関する問題については、障害児教育局と、公民権局の双方とも大きな関心を寄せるようになった。

1992年の公民権局が準用しているデータや現在の同局の動向からは、障害児教育における少数民族の生徒と少数民族でない生徒との比率格差が全国的に広がっていることがうかがわれる。さらにその問題は一定の地域で継続して起こっていると考えられる。一例として、アフリカ系アメリカンの生徒は、精神遅滞や情緒障害、学習障害などの障害児教育プログラムを受ける頻度が全体平均に比べると高いことなどがあげられる。

障害児教育局と公民権局は、このような公民権問題の解決にむけて積極的に様々な資料や教材を地域住民に提供している。その中で、地域住民と一緒になって問題を解決しようと模索している。障害児教育局が独自に予算を立てて行った調査や専門的指導などの支援活動により、障害児教育における少数民族生徒の問題を解決するための方策も少しずつ見えてきた。公民権局もまた、障害児教育における少数民族生徒の問題を優先的に解決しなければならないとしている。そのため、具体的には生徒の教育措置に関する活動に力を入れたり、教育プログラムの情報を誰でも得ることができるように配慮したりしてきた。(以下続く)

■随想:白夜の広場から文化を考える

兵庫教育大学 成田 滋 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp

空港はどこも広々している。乗り継ぎの合間にビールを飲みながらぼんやり窓の外を眺めていると、暖かい日差しをいとおしむように人々が乳母車を押してゆっくり散歩している。この空港ではパスポートの審査が無かったような気がする。あの大袈裟な「ALIEN(外国人)」というサインも見かけない。だれでもいらっしゃいという雰囲気がある。EUの実質的な統合が始まったのだからだろうか。腰をあげるとウェイトレスが「落としましたよ」といって駆け寄ってきた。お釣りの札がポケットからはみ出たらしい。なにか良いことがありそうな予感とともに、この国の印象がきまったようだ。国の代名詞は「スオミ」、国民的な英雄シベリウスを輩出したフィンランドである。そしてバルト3国の一つ、エストニアが回想の場である。

地図やガイドブックを手にする家族連れが、あちこちから繰り出している。多分遠くの田舎から汽車でやってきたのだろう。精悍な体格と質素な服装からすると、酪農か農業でも営むのだろうか。二両連結の路面電車の中で子どもは、両親にあれこれと質問している。父親は質問に対する用意があまりなさそうで、威厳を保ちながらも戸惑いを押し隠すように答えている。ここは、こうしたお上りさんやまわりの国からの新参者が行き交っている。通りに面したカフェやレストランは、競うように色鮮やかなパラソルをひろげ、テーブルや椅子を並べて客を迎えている。待ちに待ったつかの間の夏、今は夏の盛りである。ここには東洋からの若くて元気の良いギャルの群は見かけない。それにしても街のあちこちに広場がある。大道芸人のアクロバットや道化師のパントマイム、弦楽三重奏をかなでる音楽家、そうした芸術を演出する通りがかりの人々、そして白夜という舞台が用意されている。

広場について考える。古今、政治も経済も祭りごとなど貴族や庶民の生活は、この空間で繰り広げられたと案内板に記されている。討論がなされ、政治が語られ、裁判も行われ、ついでに処刑も執行され、そしてとりなしの礼拝が行われた。いわば神も市民も集まった。こうした場所では聖と俗の住み分けが難しいほど、政教が混在していた。中世の暗黒時代を、ルネッサンスの華やかな時代を知っているのは、この広場というところなのだろう。古から現代の歴史を広場から考えるのが本稿の目的ではない。広場が市民の生活や文化の形成にどんな役割を果たしたのだろうと考えている。

街の原点は広場にあるようなものである。その中心はなんといっても市場という広場だろう。広場は、生活の場でもある。マーケット広場とかマーケット通りという地名が必ずといってよいほど大きな街にはある。ヘルシンキもタリンも例外でない。広場は、とりわけ食の交流の場ではないのかと思われるほど活気がある。どこの広場もこと食べ物に関しては、例外なく賑わいが演出されている。毎日早朝から市場が広場につくられる。近隣の農家が競って新鮮な野菜や果物を山のように並べている。数時間前に掘り出したかのように土がべっとりとついている馬鈴薯を人々はせっせと買っている。日本人にあっては、米のない食生活が考えられないように、かの地では馬鈴薯なしに食文化は語れない。アメリカでも全く同じである。もともとヨーロッパからの移民で形成されるのだから当たり前の話だが。苺などベリーの種類の多いのも北国の特徴である。オフィスの受け付けには、苺が篭に入れられて自由に振る舞われている。広場のカフェでは、苺がのったケーキやルーバーブのパイをほおばりながら珈琲を注文するのが粋らしい。

広場は、また魚市場のようなところでもある。魚といえば鮭か鰊(ニシン)に限る。スモークされた薄切りの紅鮭は涎がでそうだ。鰊はスライスされたタマネギと混ぜられて甘酸っぱく味付けされている。味が濃く”ヘビー”なマリネである。これもたくさんの種類があって、朝食から食卓にのってくる。かって北海道の日本海側では、この魚は鰯(いわし)のように随分とれたのを想い出す。筆者も小さい頃は、大根おろしにつけながら飽きるほど食べたものだ。マリネも悪くはないが、素朴な味がどこかへ行ったようで少々寂しい。

広場に戻る。政治は広場とともにあった。とりわけ、中世に勃興した自治都市と広場の関係は興味深い。タリンの街は城壁で囲まれて発展した。その中には古い教会が建ち並び、街のタウンホールといういわば役場が広場の一角にある。広場は街の中心にあり、恐らくいろいろな集会が開かれたに相違ない。さらに街には、商工組合の原点とされるギルトのあった建物があり、政治とは切り離された独自の商行為をしていたことがうかがわれる。その建物は今は歴史博物館となっていてお年寄りがのんびりと入場料をとっている。この広場も政治と経済と宗教がおりなした人間の歴史や文化をみつめてきたといえるだろう。

文化とは共有化されるべきのものであるという。その共有のための手段として、当時は人と人が出会うことが必要であった。それが広場である。「人」と「もの」と「情報」がなくては広場は成り立たない。ものとは、商品などを指す。ついで情報であるが、これは文化ということではなかったのか。文化といえば、その使われ方は一つの方向性がある。つまり、文化とは好ましいもの、望ましいものと考えられていることである。その例として、文化という単語は、枚挙にいとまがないほどたくさんの名詞がある。文化国家、文化都市、文化村、文化人、文化庁、文化勲章、文化功労、文化の日、あげくは文化風呂、文化食品、文化包丁などというのもある。どれをとっても文化とは、誰にでも好感を持って受け入れられようなところがある。しかし、それは文化の一面にしかすぎない。

人間の所産が文化とするならば、すべての業が人間を幸せにしたということではない。人は文化によって苦しみ、虐げられ、死に追いやられてきた事実もたくさんある。文化を生み出した広場の歴史を垣間みてもそれがいえる。たとえば、魔女狩りが行われ、火あぶりやギロチンなどのみせしめの処刑が行われたのも広場であり、君主政治にみられる権力や権威が横暴を振る舞ったのも広場である。その象徴が壮麗な建造物に囲まれた広場である。赤の広場や天安門広場は政治の舞台となった。ロンドンのトラファルガー広場は戦勝記念につくられていて、人のエゴがむき出しのなんとなく歪んだところがある。歪んだ文化の最大の所産は、人が同胞を殺す道具を作ったことだろう。広場は皮肉にも暗い文化の断面を見つめている。

情報化社会で広場とはなんだろうか。「人」と「もの」と「情報」といういわば文化の三要素が、ここでも新しい空間を形成している。それは、電脳広場とか電子広場というものである。今はまだ、気軽に人と人とが対面してやりとりはしてはいないが、早晩テレビ電話も実用化するだろう。目に見えない人々が待ち合わせ、行き来して、そこで集まり、休憩もしている。このような広場では、誰もが主役になりうる。かっての「政治」「経済」「宗教」という従来の位相は、電脳界ではどことなくなじまないところがある。組織もそうである。人の顔が見えない組織は、飽きられるといわれる。個人と個人とが線となり、それがより重層的に結びあっているのがこの新しい電脳の広場である。しかして、国境のない電脳広場に「国益」をめぐってのぎすぎすした政治はさして重要とは思われない。

情報であるが、ある人にとってはとても大事なことは別の人にとっては屑のようなものとなる。それは選択する側が決めるからであって、その人がなにを求めているかによる。わけもわからない情報ばかりがは充満している、ときめつけるのは勝手だとしても、その前に「貴方はなにを主張するものを持っているのか」という問いに対する用意がなければならない。広場というところは、なにかを主張する者と、なにかを感じる者が登場して成立するようである。白夜の地の大道芸人のおかしい芸には、なんらかの真剣なメッセージがこもっている。だから人々は立ち止まり、そしていくばくかの賽銭をおきたくなるのだ。どのような広場でもその舞台の主役は、情報を共有しようとする人々ということになるのだろう。

 

■皆さんからのお便り

●Speaking Dynamically
 前田卿子 静岡医療福祉センター sifc@fuji-mt.or.jp

 1月24日に静岡では、H9年3月、5月、7月、10月についで、5回目の障害児コンピュータ講習会を行いました。障害児の親子、療育施設職員、病院の言語療法士、指導員、養護学校の先生、静岡パソコンボランティアねっとの人達およそ40名の方々が集まりました。Speaking Dynamically、パソコンあいうえお、サンリオタイニーパークのソフトの紹介をしました。
 Speaking Dynamicallyは、英語版ですが、一部日本語に編集して紹介しました。絵がきれいで分かりやすいこと、色々の場面設定に合わせたコミュニケーションの種類が豊富なこと、ボードメーカーを使って少し作ってみましたが、とても簡単で色がきれいで、こどもと言語訓練をしながら、コミュニケーションを楽しみながら拡げていけそうです。早く日本語版を購入したいと完成を心待ちしています。
 静岡医療福祉センターでは、障害児が家庭でコンピュータを使える環境を作るために、2月から静岡パソコンボランティアねっとの協力で、施設指導員、障害児の親を対象にパソコン体験教室を開くことになりました。コンピュータを媒介に、障害児の親子、施設職員、パソコンボランティアの人達で、人の輪が拡がって行くことを願っています。地域のネットワークへのこども達の参加も実現して行きたいと思っています。では、Speaking Dynamicallyのデモのお礼と静岡障害児コンピュータ講習会のご報告まで。なお当センターの97年度障害児コンピュータの歩を作りました。ご希望の方に郵送いたします。

●「Speaking Dynamically Pro」を試して
 加藤圭子 府立岸和田養護学校 katokey@osk2.3WEB.NE.JP

事務局からSpeaking Dynamically Proをお借りして、早や二ヶ月がたとうとしています。その間慣れない英語のマニュアルに悩みながらやっと先日完読いたしました。うわさどおりのすぐれもののソフトウェアだと思います。その醍醐味を少しでもみなさんにお伝えできればと思います。まずは概要から・・・
「Speaking Dynamically Pro」は、会話補助装置として、教材として、writing ツールとして利用することができるソフトです。会話補助装置としては、ソフトに添付のMachinTalkの読み上げ音声を利用したり、外部音を録音して割り当てることができます。画面情報の選択は、マウスを用いた直接選択の他、タッチスクリーンやヘッドポインティングデバイスにも対応しているし、スキャン入力(オートスキャン、ステップスキャン(どのキーを用いるかかなり自由に設定可能)、インバーススキャン(キーを押している間オートスキャンし離すと止まる)、矢印キーの利用)も簡単に設定できるようになっています。もちろんスキャンの順番も自由に設定できます。また、一画面のみの非常にシンプルなコミュニケーションボードから、いくつもの階層を持たせた高度な要求にも耐えうるコミュニケーションボードも作れます。
1階層で選択すると2階層に切り替わります。

教材としては、基本的な概念形成を支援したり原因と結果を認識させることにすぐれており、そのような教材ソフトを簡単に作成できます。また、文字の読み書きや文の作り方(構文)などの教材をつくることにも最適です。ボタンの中で変数(文字)を設定でき、その値によって簡単な条件分岐ができるので教材にバリエーションをもたせることができます。
 構文を教える為に(グループスキャンが設定でき、スキャン方法も柔軟に設定できるので正しい文法を例示することも可能です。)
 Writingツールとしては、音声フィードバックのあるオンスクリーンキーボードを簡単に作ることができます。また、それをスキャン入力やタッチスクリーンやヘッドポインティングやジョイティックで利用するように簡単に設定できます。単語類推機能(自分用の設定ができる)があるので、少ない入力でスピーディーに入力することも可能です。もちろんファイルの保存や呼び出しも簡単に行えます。
オンスクリーンキーボード(スキャン入力を設定しています。)
単語類推機能

●パソコンバンクへの申し出について
 小宮幸三 筑後養護学校 k-komiya@ariake.ne.jp

小宮です。最終日はちょっと早く帰らせていただきましたが、7時前には無事家につきました。EXPOの様子をデジカメで撮ったのですが、マックサロンの小菅さんにFDを貸したままです。手元に戻ればお送りします。それから、横須賀の関東自動車からパンクあて100台のMacの提供の話があったのは大収穫でした。総幹事の山平さん、大変かとは思いますがよろしくお願いします。もし、保管場所等が必要になった場合は言って下さい。九州の拠点としてよろこんで場所を提供します(必ず場所を確保します)。私も小物をいろいろゲットできて、例会のおみやげができました。ご協力ありがとうございました。

●ACEとMES
 中島康明 大阪府立盲学校 nakasyma@anet.ne.jp

大阪の中島です。皆さん、お疲れさまでした。いつもの皆さんのパワーには頭が下がります。ぼくはACEの方にかかり切りでお手伝いできませんでした。CDの資金もできたようでよかったですね。ことしは視覚障害関係のものもいれていただけるようがんばります。ACEのほうでもMESの皆さんに喜んでもらえそうな話しがいくつかありました。今年はたくさんプレゼントがありそうですね。具体的なことが決まりましたらまたお知らせします。

 

■市販教材の紹介

●「グレン・ドーマンのビッツの世界 Vol.2」

 人間能力開発研究所は,世界中の子供のために,国際的に活動をしている非営利の組織です。国際本部は,米国のフィラデルフィア市におかれています。同研究所は,世界的に知られるグレン・ドーマン博士によって設立され,およそ半世紀にわたって脳障害児のために尽くし,世界各地から訪れてくる家族達を指導し続けておられます 。この研究所が広く知られているのは,脳障害児に関する先駆的な業績に併せて,健常児のための能力開発の業績のゆえでもあります。  「グレン・ドーマンのビッツの世界 Vol.2」は,英語,日本語,フランス語,スペイン語,イタリア語から言葉を選ぶことができ,絵カードと発音・文字が対応しています。Vol.1より,カテゴリーの種類が増えており,外国語の習得にも役に立つソフトです。MacintoshとWindows95のハイブリット版です。開発元 人間開発研究所 (株)テラソフト 06-375-5012

グレン・ドーマンのビッツの世界(その1)
グレン・ドーマンのビッツの世界(その2)

 

■障害児教育におけるインターネットの活用 〜在宅学習支援システムの効果と課題〜

東京都立光明養護学校  伊藤 守・金森克浩
佐賀県立金立養護学校  小野 龍智・深町俊善

1. はじめに
 新100校プロジェクト重点企画・高度化教育企画の中に,「障害児童・生徒のネットワークへのアクセシビリティ改善」という企画がある。100校プロジェクト発足時から,障害児のネットワークへのアクセシビリティ改善の問題については「edhand」というメーリングリストを運用する中で研究を進めてきた。今回の報告は,メーリングリスト「edhand」の様子と,肢体不自由児を対象とした在宅学習支援システムの効果と課題について報告する。

2. メーリングリスト「edhand」
 メーリングリスト「edhand」は,100校プロジェクト「特殊教育共同利用企画」推進のためのメーリングリストとして,96年12月14日に発足した。当初は,100校プロジェクト参加校のうちの特殊教育諸学校担当者に,アドバイザーグループなどが加わって,15名の参加者で発足した。その後,いくつかの紆余曲折を経て,さらに,小・中・高等学校教員・教育委員会指導主事・障害児教育研究者・リハビリテーション工学研究者・システムエンジニア・技術ボランティア・地域の施設職員など,100校プロジェクト参加校以外からも参加を得て,98年2月現在で約100名の規模になっている。

<メーリングリスト開設の第一報から>
目的

 100校プロジェクトの特殊教育諸学校8校における活用研究と実践が円滑に進むよう,各学校,先生方への支援と検討の場を提供する。また,子どもたちの積極的な企画が実現できるコミュニケーションの場として活用し,様々な試行を行いながら,障害児教育から様々な発信ができるよう,準備を整える。

内容
1. 公開シンポジウム「障害児教育とネットワーク」
議題その1 アクセシビリティのあり方(障害児に優しいネットワーク環境を求めて)
議題その2 コミュニケーションとプライバシー(情報発信とプライバシーのはざまで)
議題その3 校内体制と教育課程(学校にネットワークを位置づけるには)
議題その4 こどもからの発信(こどもの自主性をどう引き出すか)
議題その5 フリートーク(ネットワークに期待するものなど)

2. 協同企画の試行
 子どもたちが参加できる企画を試行的に実施していく。子どもたちの自主的な企画が出てきたら,順次それらを尊重し,移行していく。

3. 肢体不自由生徒を対象とした在宅学習支援等の実践
(1)佐賀県立金立養護学校におけるチャレンジキッズを使った在宅学習支援
<M君の状況>
  ・高等部2年生の5月に病状の進行により気管切開を行い,退院後は在宅での生活を余儀なくされている。
・ノート型マッキントッシュとその上で動作するキネックスという入力装置を購入し,佐賀県教育センターより本人のインターネットIDの発行を受け,使用している。
・週2回の家庭訪問の形で,火曜日は主要5教科,金曜日にコンピュータを使ったコミュニケーションという内容で在宅学習を行っている。以下に今年度のコンピュータ利用の学習状況をあげる。
 コンピュータ操作に慣れるために,ワープロによる入力練習から始めたが時間がかかること(スキャン方式),また,20分に1回の吸引が必要なため疲れやすく,あまり興味関心は示さなかった。(単元:文字を入力しよう)/雑誌等に掲載されているホームページを紹介してみたがあまり興味は示さなかったが,全国の同じ養護学校のホームページで生徒が紹介している作品や自己紹介には目を輝かせていた。(単元:ホームページをみよう)/複数の教師が訪問前にメールを送信しておき,本人に受信させてみた。はじめは楽しんでいたが,訪問日以外に自分だけで受信したり,メールを送ってくれた人に返事を書くことは無かった。しかし,学校の同級生がワープロで打った文章を教師が代理で送信した時は今までになく嬉しそうだった。その時は自分から返事を書いて送ることが出来た。やはり教員より同年代の友達とのやり取りを望んでいることがはっきりと分かった。でもこのやり取りも教師を介してのやり取りのため長くは続かなかった。(単元:電子メールを使おう)

<チャレンジキッズに参加して>
 コンピュータを使ったコミュニケーションを主に学習を進めてきたが,本人からの自発的な発信はあまり見られなかった。そこで,「チャレンジキッズ」(運営:滋賀大学教育学部附属養護学校)を一週間ほど自由につないで見せることにした。その後,97年10月3日に放送された「メディアと教育」でチャレンジキッズの内容が紹介されていたのでビデオを見てもらい,その上で「チャレンジキッズダイジェスト96」を読んでもらった。本人もチャレンジキッズの内容が少し理解できたらしく,頻繁に自ら接続するようになった。母親の話ではうまく繋がらない時でも,2時間もいろいろと操作していたという話を聞いた。そんな時に,「一度チャレンジキッズに自己紹介をしてみようか」との問いかけに,彼は次の訪問の時までに自己紹介のメールを作成するまでになった。
 チャレンジキッズの良いところは,すぐに返事が来るところで,その後,本人も「初めてのメールなのにこんなに返事が来た」と嬉しそうだった。

(2)東京都立光明養護学校におけるCU-SeeMeを使った実践
光明養護学校は97年の秋,38.8kのアナログ回線から64kのデジタル回線に変更された。それを受けて,かねてから懸案であったCU-SeeMeを使った在宅学習支援の実験を行った。使用器材は以下の通りである。
学校側:Apple Macintosh LC630/Enhanced CU-SeeMe・カラーQcam/64kデジタル専用回線
生徒の自宅:PowerBook 5300cs/Enhanced CU-SeeMe・カラーQcam /NTTパーソナル・パルディオ312S  32Kパルディオ・データカードDC-1S
・98年1月24日(メーリングリスト・edhand97から)

4. まとめ:肢体不自由教育における在宅学習支援の現状と課題
・在宅学習支援をするにあたって一番重要なのは,在宅を余儀なくされた児童・生徒のコミュニケーション意欲を如何に引き出し育てるかにある。そのために,支援する側はどのような環境を整えればいいのか。金立養護の事例は,貴重な教訓を提示している。
・テレビ会議システムを使った在宅学習支援の試みにはいろんな方法が考えられる。電話回線を使った専用テレビ電話を使うケース・ISDN回線で双方のパソコンをつなぐケース・インターネット上で動作するテレビ会議システムを使うケース。ここで紹介した光明養護の事例は,インターネットを利用したケースであるが,この実験結果によれば,回線速度は最低でも32kくらいないと,実用にはならないということであった。ISDN回線が普及してきたとはいえ,一般家庭の中でISDNを利用している所はまだまだ少ない。
 全国各地で肢体不自由養護学校の高等部の訪問教育の試行が始まっていることをあわせて考えたとき,現段階では,ノートパソコン+PHSという環境が最も現実的と言える。今回,光明養護の実験では,PHSについては教員個人のものを利用してみたが,公費で購入できている学校は多くはないと思われる。早急な対応がのぞまれる。  しかし,教育利用ということを考えたとき,それ以上に重要だと思われるのは,在宅学習支援=子どものコミュニケーション支援だということだと思う。それさえ忘れなければ,最低限の環境でも大きな教育効果をあげられる。光明養護の実験はそんな事を示唆しているようにも思われる。

 

■新100校プロジェクト 平成9年度成果発表会のご案内  新100校プロジェクト事務局

 新100校プロジェクトでは、これまで実施してきた先進的なインターネットの教育利用の実践事例とその成果を広く公表し、教育におけるインターネット活用の有効性を探り、将来の本格的な学校間のネットワーク拡大に資することを目的に、以下のとおり「新100校プロジェクト成果発表会」を開催致しますのでご案内申し上げます。毎年、新学期前の慌ただしい時期の開催となりますが、ぜひご参加いただきますようお願い申し上げます。

1.開 催 日 平成10年3月4日(水)
2.開催場所 京王プラザホテル
  (東京都新宿区西新宿2-2-1 TEL: 03-3344-0111)
3.定  員   1,000名
4.参 加 費    無 料
5.主  催   情報処理振興事業協会
 財団法人コンピュータ教育開発センター
6.プログラム
 (1)分科会(実践事例発表)
   10:00〜14:45 4会場に分かれ、各部会による実践事例発表。
           各会場9事例、合計36例の発表。
           発表時間20分/件、質疑応答5分/件
 (2)全体会(成果報告)
   15:00〜 開会挨拶:情報処理振興事業協会
           挨 拶:文部省
挨 拶:通商産業省
   15:25〜 報 告:(財)コンピュータ教育開発センター
   15:35〜 休 憩
   15:45〜 パネル討論:
           「地域における教育ネットワークの展望と課題」
   17:45〜 閉会挨拶:(財)コンピュータ教育開発センター
 (3)情報交換会
   18:10〜20:00 発表者と参加者との情報交換
7.参加申込方法:
 (1)申込先
   URL http://www.cec.or.jp/soumu/seika.html
    E-mail seika97@cec.or.jp
    FAX 03-3593-1806
 (2)記載事項
   ・参加内容(参加を希望する項目に◯印を入れる)
    分科会に参加( ) 全体会に参加( ) 情報交換会に参加( )
   ・氏名(フリガナ)
   ・学校名又は団体名(フリガナ)
   ・所属、役職 ・住所(〒番号7桁含む)
   ・TEL・FAX・E-mail
 (3)注意事項
   ・参加者1名毎の申込みが必要です。
   ・申込み締切り:3月1日(日)

 

■THE MAGICAL TOY BOX(マジカル トイ ボックス)

 第3回イベント:大人も子どももコミュニケーション
「障害が重くてもコミュニケーションをしているはず。なんとかそれを豊かにできないだろうか?」 この思いを実現するために、見る聞く段階の遊びの工夫から始めて、障害に合わせたスイッチを使用したテクノロジーの利用をご一緒に試みてみませんか。

○主催:THE MAGICAL TOY BOX
○協力:アップル・日立・キヤノン・テクノツール
  パシフィックサプライ・昭和貿易
  NTTPCコミュニケーションズ
  おもちゃ図書館・ONE・STEP企画
  埼玉の障碍児教育とコンピュータ利用を考える会
  障害者とコンピュータ利用教育研究会
○期日:1998年3月28日(土)13:00〜16:00(一般展示)
        16:00〜19:00(イブニングセッション)
             29日(日)10:00〜12:00(AACセミナー)
        13:00〜16:30(公開講座)
        13:00〜16:30(制作講座)
○会場:東京都立光明養護学校
        東京都世田谷区松原6-38-27 Tel 03-3323-8421
 (交通= 新宿より小田急線で約15分。梅ヶ丘駅から徒歩3分。)
○参 加 費:無料(今年度はボランティア基金の助成を受けたため)
  ただし、2日目のセミナーと公開講座については資料代がかかります。

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1日目(28日(土)
<一般展示・実演>  13:00〜16:00
●スイッチ遊びコーナー・・・・・・・MAGICAL PLAY BOX
 見る聞く段階からの遊具を紹介します。
 また、実際に子どもたちが遊べる物を用意します。
 ボーリングゲーム、水鉄砲、ポラロイド写真、プリクラ等
●コミニュケーションエイドコーナーMAGICAL COMMUNICATION BOX
 VOCAからコンピュータまで機器の紹介をします。
●生活機器コーナー・・・・・・・・MAGICAL ABILITY BOX
 電気製品の操作や電動車椅子など生活に関わる様々な機器を紹介します。
●コンピューターコーナー・・・・・MAGICAL COMPUTER BOX
 コンピューターメーカーによる最新の機器の紹介をします。
●自作機器展示コーナー・・・・・MAGICAL CRETE BOX
 参加してくださったみなさんよりの工夫の数々を実際に紹介してもらいます。

<イブニングセッション>  16:30〜19:00
●基調提案「欧米におけるコミニュケーションエイドとマジカルトイボックス」
     講師 三室 秀雄氏
(マジカルトイボックス事務局、東京都立八王子東養護学校教頭)
●懇親会

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2日目(29日(日))
  <AACセミナー>  10:00〜12:00

●講演「人と人との架け橋としてのAAC」(仮題)
  講師 畠山 卓朗氏
 (社会福祉法人 横浜市総合リハビリテーションセンター 企画研究室係長)
 公開講座 13:00〜16:30
●シンボルを利用するコミュニケーションソフトの利用技法
(Speaking Dynamicallyを利用して)
  1回目 13:00〜14:30
  2回目 15:00〜16:30
<制作講座> 13:00〜16:30
●制作講座
 おもちゃの改造、スイッチ制作講座を開きます。
・フィルムケーススイッチ
・全方向スイッチ
・ボイスメモ改造
・電源リモコン
などを作ります。
また、工作に関して実費がかかります。
●お問い合わせは
吉澤千恵 東京都狛江市東和泉2-20-5 Tel 03-5497-2140 Fax 03-5497-6766
金森克浩  NAH00531@niftyserve.or.jp

会報は以上です。では4月号をお楽しみに。なお、住所が変更になった方はお知らせください。