2003年6月会報 No.149
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■特記ニュースから
絵記号で意思疎通スムーズに--養護学校長会が支援ボード開発
 人との意思疎通が困難な知的障害者や自閉症児らが、絵記号で自分の考えを伝えるための「コミュニケーション支援ボード」を全国知的障害養護学校長会(岸本啓吉会長)が開発した。パイロット地区として東京都立川市など多摩地域5市の駅や商店などに試作版4,000枚を集中配布する。校長会は「地域ぐるみの絵記号利用は世界的にも例がない。点字、手話に続く第三の意思疎通手段として全国に広めたい」と話している。
 障害児との意思疎通のため、親や養護学校がトイレの絵や「はい」「いいえ」などの絵記号を独自に作るケースはあるが、校長会は「絵記号を全国統一し、意味を地域にも理解してもらえば障害者が街に出やすい」と、一昨年から検討していた。

 ボードはラミネート加工されたA4判4ページ。「痛い」「電話して下さい」など一般的な10項目と、レストランや駅、警察などで使うことの多い17項目の絵記号を掲載している。障害者はこの絵を指さすなどして自分の意思を相手に伝える。夏ごろまでに確定版10万枚を作成して全国に配布し、普及を図る。

「普通の人と肩を並べていこう」盲人校長
 千葉県四街道市の県立千葉盲学校校長に同校出身の伊藤和男・県特殊教育センター主任指導主事(56)が着任、幼稚部から高等部専攻科までの新入生38人とともに新しいスタートを切った。伊藤さんは県内では初めての全盲の校長。後輩にあたる在校生には「特別に生きるのではなく、普通の人と肩を並べて生きていってほしい」とエールを送る。

 伊藤さんは先天性の緑内障で小学校1年から同校へ。中学部時代は1年間、市原市の実家から当時千葉市小仲台にあった学校に電車と徒歩で通った。駅のホームに落ちたことも一度ではなかったが「不思議と大けがはしなかった」。中3で完全に光を失い、東京教育大附属盲学校へ進学。理療科の専攻課程、同大特設教員養成部を経て千葉盲学校に教員として赴任し、40代で社会科の教員免許も取得した

 転機は1997年。当時の盲学校校長から教頭試験を勧められ98年度から3年間、教頭を務めた。管理職になって文書の処理量が飛躍的に増えたためか「数カ月間、2〜3時間しか眠れず宙の上を歩いているような感覚」にとらわれた。「目が見えたら今以上に仕事ができるのに……」。悔しい思いも数え切れないほどあったが「自分はこの学校に育てられ食べさせてもらってきた。入学してくる子供たちはみな自分の後輩だ。なんとかしたい」という気持ちが強まった。

 今度は校長として赴任。40数年前に伊藤さんが通っていた当時と比べ、複数の障害を持つ「障害の重複化」が進んでいる。障害の重複化に対しては、現在のような盲・聾(ろう)学校といったような障害別の教育ではないアプローチが模索されているが、伊藤さんは「少しでも視力のある子供は、他に障害があってもなくても、教師が個々の目の見え方を十分わかったうえで指導したい」と、盲学校ならではの専門性を生かした教育を目指したいと話す。
  
福岡の小学校の空き教室に障害児を一時預かる施設完成 
 障害児を放課後や長期休暇中に預かる場所が、福岡県宗像市の市立河東小(村上校長、約600人)に完成しサービスを始めた。障害児は通常、小中学校の特殊学級や養護学校に通っているが、放課後や長期休暇中は家庭で過ごすため、父母らが付きっ切りとなり、負担になっている。このため、宗像市内の障害児を持つ父母らが昨年2月、市議会に一時預かり事業所の開設を求める請願を出し採択された。

 これを受け、市が準備を進め、1600万円掛けて同小の空き教室130平方メートルを事業用に改築した。このようなサービスはレスパイトサービス(障害児や家族の一時休息)と呼ばれる。施設は通称「げんきっこくらぶ・ほっぷ」。運営は社会福祉法人さつき会に委託、指導員4人が1日10人程度を預かる。平日が放課後から午後6時半(利用者負担500円)、土曜日が午前8時半〜午後5時(同850円)、夏休みなどの長期休暇中は午前8時半〜午後6時半(同1000円)。日祝日は休業。施設開設を求めてきた「ほっぷ親の会」代表の境さんは「子供たちがここで楽しく過ごすようになって、親も本当の意味で休息になる。このクラブを通して障害児を理解してもらうきっかけにしたい」と話している。
 
不登校児童への働きかけ重要」文科省専門家会議が最終報告
 不登校の子供たちへの対応を検討してきた文部科学省の専門家会議は3月11日、「ただ待つだけでなく子供の状況に応じた働きかけが重要」と提言した最終報告をまとめた。「登校を促すと状況を悪化させる」という見解が誤解されているとして、学校に対応の見直しを求めた。学校や教育委員会がフリースクールなど民間施設と協力する必要性も強調している。同省は、3月の中間報告を公表した後に一般から意見を求めた。不登校の子を持つ親や不登校経験者らから約170通が寄せられ、「対応には親や本人の声を聞いてほしい」「子や親を追い詰めないようにしてほしい」などの要望が多かった。

 これを受け、最終報告では、学校に来ない子に働きかけたり、かかわりを持つことが重要としたうえで、「機械的な働きかけで児童生徒や親を追い詰めてはならない」「不登校の当事者の声に耳を傾けることも大切」などの文章を追加した。不登校の子のために自治体が設置した「適応指導教室」については、実績のある民間施設に運営を委託する「公設民営型」の検討を求めた。「適応」という言葉に違和感があるとする意見があったことなどから、「教育支援センター」という名称を併用することも提案した。

 同教室は全国に991カ所(2001年度)設置されているが、市町村の中で設置しているのは3割程度にとどまるため、さらに拡充が必要とし、子供10人当たり2人の指導員を置くなど、整備指針も示した。このほか、学校で不登校に対応する教員を明確にすることや、中学卒業後も自宅に閉じこもって「ひきこもり」になっている若者への支援も求めている。同省は報告をもとに教師向けの指導資料を作成し、現場に徹底を求める。
 
バリアフリー2003から
 丹羽 登 大阪府教育委員会教育振興室障害教育課 nobchan.niwa@nifty.com
 今日はバリアフリー2003の最終日だったので、ちょと覗いてきました。第1の感想は、出展会社が少なくなってきた(これは昨年も感じましたが)第2の感想は、参加者が増えてきた。という気がします。おかしな話ですが、参加者が増えている感じがするのに、出展会社が少ないのです。不況の折、東京で催さされるH.C.Rに注力している様ですね。出展会社の方に聞いても、来年も大阪に出店できるかどうか分からないといって言いました。福祉機器展は、大阪で新しい物を出展し、愛知で現実的な具体的な紹介をし東京のH.C.Rで発売にこぎつけるというパターンが多かったのですが、昨年今年と、出展社が少なくなったためか、不作ですね。

 その中から、情報関係のものを2つ紹介させて貰います。1つは、けいはんな情報通信融合研究センター(確か独立行政法人?)のロボティック通信端末プロジェクト(RTC)です。これは、カーナビのGPSのバリアーフリー版といったもので、目的地までのバリアフリーな道路や歩道が確保されている道路などが最短コースでパソコン上に表示されるシステムです。1月後に京都で(観光客が多いので、需要がありそう)実験が開始される予定だそうです。GPSでは、店の情報なども手にはいるので、同じようにバリアフリーな店情報が手にはいるとありがたいですね。
http://www2.crl.go.jp/jt/a131/indexj.html

 2つ目は、HITACHIがついに脳血流量の変化を利用したYES/NO検出装置を参考出品したことです。2年前の岡山でのリハ工カンファレンスで、見せていただきましたが、平常時の脳血流量の測定までに時間が掛かり、実用にはほど遠いといった感じでしたが、ついに参考出品出来るところまで来たのだなと感心させられました。マクトスとはまた違った方面からの、Yes/No検出装置で、今後の改良が楽しみな製品です。マクトスでうまくいかなかった人にとっても、朗報なのではないでしょうか。

 情報と関係がないところでも、新しいものがいくつかありましたが、その中でもセコムのMy Spoonは、見ていた人の意見が2つに分かれていました。手の動かしにくい障害者の方や、施設の方からは、「これはいいかも」と評価されるのですが、小学校や就学前の保護者の方からは、「何でも機械でしようとしている。食べさせて貰うから、つながりが出来るのに」といった声が出ていました。保護者の方の言われることもよく分かるけど、障害者自身が人の助けを借りなくても食べることが出来る喜びという観点も、大事なんだけどなと思いながら聞いていました。
http://www.secomtown.com/myspoon/ 東京でのH.C.Rまで、アトム元年の今年は、どんな機器が出てくるのか楽しみです。

■お便り
200人を超える児童生徒に囲まれて
 渡辺正夫 千葉県立松戸つくし養護学校 masao@js7.so-net.ne.jp
 異動の学校で元気に頑張っています。100人を超える職員と200人を超える児童生徒に囲まれて仕事をしております。職員室には職員全員が入ることができず、分散しています。教室も特別教室を教室に代えてどうにか間に合わせているところです。千葉県内でも2番目に大きな学校ですが、施設はその大きさに合わず、みんなで創意工夫して使用しております。まあ、県には、要望をしているのですがね。

 さて、千葉県も、特別支援教育課が設立されました。これまで特殊教育室ということでしたが、文科省の流れを受けて、この4月に組織を大きく代えました。また、特殊教育センターも特別支援教育部ということで、県の総合教育センターの一部となりました。今後、この流れが市町村にも広まっていくものと考えます。

障害児教育講座にニューフェイス
○井澤信三講師 障害児臨床心理学  主として自閉症,発達障害児・者の社会的行動支援に関する研究
 isawa@edu.hyogo-u.ac.jp
 http://www.edu.hyogo-u.ac.jp/isawa/index.html
 
○小島道生助手 障害児心理学 主としてダウン症の研究
 mkojima@edu.hyogo-u.ac.jp
 (筑波大学から来られました。)
 
論文の採択
 宇野宏幸 兵庫教育大学障害児教育講座 uno@edu.hyogo-u.ac.jp
 時下、先生方におかれましては、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。さて、この度注意欠陥多動性障害をどのように理解したらよいかという問題に対して、神経科学的観点からアプローチした論文「意欠陥多動性障害と行動抑制--認知神経心理学的モデル」が展望論文として特殊教育学研究に掲載されました。また、本学修士課程修了生の伊丹昌一氏との共同研究論文「Orbitofrontal cortex dysfunction in attention-deficit hyperactivity disorder revealed by reversal and extinction tasks」がNeuro Report誌に掲載されました。ご一読頂きまして、ご意見、ご批判などをいただければ幸甚でございます。
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