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障害児のトイレ介助

【相談】
●娘は小学校の障害児学級の 3 年生。新学期から介助の先生が男性に変わりましたが、男性に娘のトイレ介助はしてほしくありません。担任は校長に助言したそうですが、聞き入れられなかったようです。現在は、その時だけ携帯電話で障害児学級の女性の先生を呼びだすらしいです。いない場合は、養護や音楽専科、事務、交流学級の先生らにトイレ介助を頼むみたいですが、不慣れで、安全面でとても不安です。校長は「小さいから男の介助でもかまわないだろう」と言ってどうサポートするか、安全を確保するかを事前に全く考えていなかったのです。介助を頼まれた先生方も当惑しているようです。― ―主婦

【回答】
早稲田大学名誉教授 子安美知子
●お母さん、堂々と自信を持って、もう一度校長先生に会いましょう。そして「お願いです。娘のトイレ介助は女の先生にしていただけるよう、ご配慮ください」ときっぱり言うのです。
 「無理かもしれませんが」などというビクビクした姿勢ではなく、そうかといって苦情を訴えるとか校長に反抗するとかいうような態度でもなく、当たり前のことなのだというおおらかな心で、静かに先生に向きあうのです。介助が必要な子供は、とても繊細、敏感で、感受性が豊かです。そして、個性の違いも大きな幅があります。男の先生とトイレに行くのを気にしない子もいるかもしれませんね。でも抵抗を感じる子は、その感じ方がとても強いのです。それを受け止めてあげないと、トラウマになって残りかねなません。校長先生は男性なのでしょうか。女性だったら、分からないはずがないですよね。
 参考になるエピソードを一つ。私のアメリカ人の知人(40 代の男性)が 9 歳のめいに、「かわいい」という気持ちで軽くポンポンとお尻をたたいただけで、その子は「セクハラ!」と叫ぶほど心が傷ついたそうです。
 現代では、それほど真剣な厳しさを含む事柄なのです。ただこのエピソードは、校長先生に最初から切り口上で持ち出したりしないでください。お母さん自身が心の中で動じないために、知っておくだけでいい。しかし、どうしても先生が分かってくれないとなったら、最後に話してみてください。校長先生を怒らせるためにではなく、一緒に深いところまで考えてもらうために、です。

 回答者 こやす・みちこ。ドイツ文学が専門。一人娘をドイツのシュタイナー学校へ入れた経験から「ミュンヘンの小学生」(中公新書)を記し、シュタイナー教育を日本に紹介。毎日出版文化賞を受賞。学校法人シュタイナー学園設立準備会代表。(よみうり教育メール 05 月 29 日 vol.411 より引用)

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