2003年7月会報 No.150
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■日本支援教育実践学会 Japanese Association on Special Educational Needs (JASEN)結成のお知らせ

今後の特別支援教育の在り方について「最終報告」がでました。このことにより、我が国の障害のある子どもたちの教育における変容が、少なからず現れることが期待されます。この最終報告に示された特別支援教育の内容が実現に向かい、そして充実するかは、私たち障害のある子どもたちを取り巻く者たちの共同責任であり、あらゆる教育に関わる実践にかかっています。そこで、
 1. 家族にとって教育とは
 2. 家族にとって実践的な教育とは
 3. 家族と専門家との肯定的な関係の在り方とは
 4. また、どのようにすればそのような関係が結べるのか
等、多くのとり組むべきテーマが考えられます。

これらのテーマから、例えば、「家族の感じていることやニーズの把握」、「ニーズへ対応できるような実践報告」、「保護者、現教師・療育者、管理職、研究者など障害のある子どもに関わる総ての人たちの協働のあり方」などについて活発な議論の場(東京の野口さんの引用)を創造していくことが大切であります。
以上の主旨を踏まえ、これまでの特殊教育が特別支援教育に名称が変わるのを機会に、「日本支援教育実践学会」を結成します。この学会の特徴は、様々な背景や専門性を持つ保護者、教師、研究者の教育にかかわる実践を相互に交換し、新たな教育の実践を推進することを目指すことです。教育実践を特に大事にし、特別支援教育を従来の単なる方法論の研究中心から、教育や療育、子育ての場における実践に研究、討議などの軸足を置く、真の意味での支援教育を構築しようとする試みー「学会」です。

この新しい試みー「学会」では、これまでの学会組織にない新しい運営を志していきます。たとえば、学会における研究大会は、保護者と教師と研修者がともに参加し、それぞれの実践の発表の場を創造していくため、それぞれの専門分野や背景にある学校や保育・療育、家庭教育、研究機関などにおける「実践の知」を共有する場となります。そのためには、研究や実践の論文は、会員すべてが投稿することができ、同時に論文は誰もが批評、評価することができ、査読できるようにすることが重要となります。また様々な立場からの相談に応じる活動も行います。

これらのことを実現するため、本会の活動は、ネットワーク上で運営することとなります。それによって、誰もが家庭や職場のパソコンから学会の活動に参加できるようになります。以上のような趣旨をご理解くださり、本学会に参加してくださることをお願い申し上げます。

        発起人 京都市立西養護学校 朝野 浩 hir-asano@edu.city.kyoto.jp
            兵庫教育大学学校教育研究センター 成田 滋 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp
            京都市教育委員会 芝山泰介 shibayama@mtb.biglobe.ne.jp
            龍野市 前田俊幸 PXE00631@nifty.ne.jp
            大阪市立教育センター 栢木隆太郎 kayap@cello.ocn.ne.jp
            東京都 野口美加子  tv5m-ngc@asahi-net.or.jp
            京都市立西養護学校 冨家直樹  naotom2000@ybb.ne.jp
            大阪府立交野養護学校 井上久美 inokumi@rr.iij4u.or.jp
            兵庫県立のじぎく養護学校 梶    正義 mkaji@mb4.seikyou.ne.jp
            大阪市 春木裕美  hicco@oct.zaq.ne.jp
            京都市立西養護学校 加藤 勉 
            京都市立東養護学校 田邉滋人 tanabe@pop07.odn.ne.jp
            大阪市 田崎ゆかり yukari515@mui.biglobe.ne.jp
            京都教育大学付属養護学校 早川 透  hykwtoru@nifty.com
            大阪府教育委員会 丹羽 登  nobchan.niwa@nifty.com
            神戸市立東舞子小学校 田中敦夫 atsut@cameo.plala.or.jp
            兵庫教育大学教育心理臨床センター 井上雅彦  mainou@edu.hyogo-u.ac.jp
            常磐短期大学 曽根秀樹  sohideki@tokiwa.ac.jp
            奈良県立奈良工業高等学校 筱    更治    shino@ceser.hyogo-u.ac.jp
            滋賀県甲西町立三雲小学校 西谷 淳    a-nishi@jungle.or.jp
            島根県立松江養護学校 渡部親司  wshinji@skyblue.ocn.ne.jp
  
           学会紹介ページ http://kansas.ceser.hyogo-u.ac.jp/jasen/
           事務局ページ http://anders.ceser.hyogo-u.ac.jp/jasen/



■最近のニュースから

●特殊学級入学を希望したが、、、
 近くの市立小学校の特殊学級入学を希望したにもかかわらず、県立しらとり養護学校(婦中町下邑)への就学通知を受けた新湊市の知的障害児の父親が5月14日、行政不服審査法に基づき、県教委に、就学通知の取り消しなどを求める異議申立書を提出した。障害児の親が、普通学校への進学を求めて法律に基づく異議申し立てを行うのは県内初めてである。 申し立てたのは、新湊市のR.T.さんで長男Kさんは、重度の知的障害がある。
 
 申し立てでは、新湊市立片口小は自宅から徒歩で十分なのに、しらとり養護学校はスクールバスの巡回もなく、毎日30分かけて親が車で送迎する必要がある。障害児を一律に排除するのは、すべての児童に普通教育を保障した憲法に反するとしている。また、特殊学校への就学強制は健常児との隔離にほかならず、健常児が障害児と共に教育を受ける権利も侵害しているなどと主張している。長女が通っている片口小への入学を求めている。
 
 Kさんは、歩行や階段の上り下りも可能で、他人との意思表示や会話もできるという。これまでは富山市内の知的障害者通所施設に通っていたが、小学校入学にあたって片口小への入学を希望した。Tさんは昨年秋から十回近く、同市教委に入学の申し入れを行い、同小での体験入学も行った。しかし、現在は、どの学校にも通えない状態となっている。

 申立書提出後に会見したR.Tさんは、「体験入学では、一年生と一緒に音楽の授業を受けた。息子は飽きることもなく集中して授業を受けていた。息子が生きていくうえで、普通の学校に通うことが大切と感じた」と話し、「姉も通っている学校に通わせたい。受け入れてくれるなら、できる限り協力もしたい」と訴えた。同席した、市民団体「障害児も普通学級へ富山連絡会」のT.F.代表は「ほかの市町村では、同じ程度の障害児も普通学校で受け入れている。地域間格差だ」と新湊市教委の判断を批判した。 一方、同市教委の教育長は「内容をよく検討し、県教委と協議のうえ、適切に対処したい」とのコメントを発表した。県教委は、申し立て内容について協議したうえで裁決を下し、Tさんに通知するという。
 
障害者教育でIT交流へ 水戸聾学校と米フロリダ州の学校
 日米間の障害児教育現場がインターネットを使ったIT(情報技術)交流を始めることになり、その準備のため、米国人教諭が茨城県水戸市の県立水戸聾(ろう)学校を訪れている。日米教育委員会が運営する「フルブライトメモリアル基金」の、「マスターティーチャープログラム」を利用したもの。今年は水戸聾学校が共同研究校の一つに選ばれ、日米の教員が互いの学校を訪問し、ITを使って交流を進めていく。

 同校を訪れているのは、米フロリダ州の「オークパークスクール」のアンジー・クラフト教諭(41)。長年にわたって耳の不自由な生徒を教えてきたクラフト教諭は、17日まで約1カ月間滞在する。水戸聾学校の授業を見学するなどしたクラフト教諭は、「手話表現に、日米間の違いがみられた。文化の背景が異なるためで、この差もインターネット交流の中で伝えていきたい」と話す。水戸聾学校の教諭3人も今年3月、オークパークスクールを訪れ、共同研究の準備のほか、教育現場の違いなどを学んできた。今秋からは「環境」をテーマに共同でホームページを作成、両校の生徒がインターネットのテレビ会議システムを使うなどして意見交換を行うという。
 
●ADHDとLDの小5女児の母親が人権救済申し立て
 京都市に住むADHD(注意欠陥多動性障害)とLD(学習障害)の小学5年の女児と母親が5月14日、「小学校や市教委が障害に配慮しなかったため不登校になり、学習権を侵害された」として、京都弁護士会(塚本誠一会長)に人権救済を申し立てた。弁護士によると、ADHDやLDの児童が学校の対応の不備を訴えた人権救済申し立ては全国初という。申し立てによると、母親は入学前に当時の校長に対し家庭での状況などを話し、教室の席を最前列にするなど配慮を要望した。しかし女児が99年4月に入学すると、校長は異動で交代、引き継ぎもされておらず、繰り返し改善を求めても学校側は特別扱いできないなどと応じなかったという。

 女児は「私は(勉強などが)できない」と自信をなくし、学校でも時々いじめを受けるなどして、3年生の3学期だった昨年1月以降、不登校になったとしている。女児は生後の健診で発達の遅れを指摘され、1997年4月から市内の障害児施設に通園。98年11月の就学時健診で、普通学級での教育が適切と判断された。弁護士は「配慮と理解が少しでも学校にあれば、学習していくことに問題はなかった」と主張している。女児が在籍する小学校の校長は「保護者とは何度も話し合いをし、さまざまな要望に対して最善の努力をしてきたが、理解してもらえず残念だ」と話した。


夏季研修【ワークショップ】のご案内
 滋賀大附属養護の太田です。まもなく夏期休業に入り,研修がいっぱい出来る時期になりますね。もう予定は立っていることでしょうが,あと1つ,予定を加えてください。お待ちしています。
平成15年度 夏季研修【ワークショップ】のご案内
○会 場 滋賀大学教育学部附属養護学校(会議室、ランチルーム、にじの家等)
○主 催 滋賀大学教育学部附属養護学校 大津市際川3丁目9−1
○日 時 平成15年8月19日(火)午後13時から16時くらいまで 
○対 象 現職教員、教職を目指す大学生や大学院生
○参加費 無料
○参加申し込み方法 8月8日(金)までに 別紙申込書にご記入の上、郵送またはFAXにてお申し込みください。申込書は必要に応じて、コピーしてお使いください。また、同様の内容をEメールにて送信していただいてもけっこうです。
○内容
情報
 特別支援教育におけるICT (Information and Communication Technology)活用〜ひろがる,つながる,たのしい,もっとやりたい情報教育〜体育
 「発達特徴と運動領域からとらえた子どもたちの運動の力と手だて」−自閉症児などの運動のぎこちなさをさぐる−算数
 障害児学級の先生を対象とした「はじめての算数」と即、使える教材・教具の紹介
 
詳細な情報及び申し込みは
http://fyw.sue.shiga-u.ac.jp/
http://elics.edu.shiga-u.ac.jp/work/
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太田容次
hiroota@sue.shiga-u.ac.jp
〒520-0002 大津市際川3-9-1 Tel077-522-6569 Fax077-526-2279 学内内線 79134
 
●日本LD学会第12回大会のご案内
日時 2003年11月22-23日
会場 宗像ユリックス 福岡県宗像市久原400
特別講演 カナダアルバータ州立大学名誉教授 J.P. Das氏
 知的障害と学習障害の三つの側面--アセスメント、プロセス、アプローチ
問い合わせ 日本LD学会事務局 (栃木県カウンセリングセンター内)
   028-649-0090

■皆さんからのお便り

●最近の活動
 渡部親司 島根県立松江緑が丘養護学校 wshinji@skyblue.ocn.ne.jp
 本校病弱養護学校に赴任して2年目となりましたが、本年度は、精神疾患を伴う生徒の担任となりました。本生徒の場合、その病状のため、主治医が何度も変わったりいろいろな各ドクターから、PTSD、ストレス障害、ヒステリー、思春期性うつと様々なキーワードが聞かれるほど治療困難な状態の生徒さんです。また、問題行動の度合いもたいへんシリアスで、教育的アプローチも困難を極めるといった状態で引き継がれました。

 しかし、その病状の特性から主治医がきまらないこともあり、その病状理解のために、かなりの時間を費やしております。特殊教育関連の一般書籍では十分な対応ができないため、精神療法と精神科ドクターの論文をリサーチして、その臨床像を含めて、私なりには具体的教育アプローチのストラテジ見通しがやっと見え始めてきた段階です。幸い、修士論文が、コンピュータを活用した心理臨床であったこと、重要な論文のリサーチスキルや読みこなしスキルを諸先生につけていただいたこと、前学校で知的障害を伴う強度行動障害の実践に関わり続けていたこと、など現在の私にはより適切な教育を提供できる可能性が他の教師より少しはあるのではと考えております。

 これだけの教育的アプローチの困難な事例は、研究実践として十分特殊教育研究の価値があると、私なりには判断いたします。こういったケースは、まだ養護学校では多くは見受けられませんし、今後、精神疾患の児童生徒を教育サービスとして受け入れる社会的な動きも高まると予想しています。また、こういったきわめて指導困難な児童生徒に対する教育的なネットワークサービスも十分できていないといった現状もございます。そして、不登校やひきこもりも有しますので、ゆくゆくは遠隔学習、遠隔生活支援の方向もこの生徒さんには必要と考えます。

 今回の担任の場合、医療的な情報が乏しいため、精神療法と医療論文等をリサーチすることも必然的に必要ですので、現在進めております。そのこともありできれば、論文に仕上げるつもりで実践してみたいと考えます。

●高知から

 横井啓介 高知県立高知江の口養護学校 keisuke_yokoi@kt3.kochinet.ed.jp
 今年は、家庭的な事情があって異動することなく、現在の職場で6年目ですが頑張っています。私たちの病院内学校も心のケアを必要とする子ども達が増えてきています。昨年は3〜4名でしたが、今年は4月段階で2〜3名います。その中にADHDもいます。医師と協力しながら教育の指導を行っています。ADHDの生徒は初めての在籍ですので、情報などが少ない現状です。研修会などあれば紹介してください。現状をお知らせします。
 
●講話を聞いて
 山田貴司 兵庫教育大学障害児教育講座 hirone@hat.hi-ho.ne.jp
西谷淳先生の講演で出てきた養護学校の隣の校区の養護学校に勤めています。とにかく何かを始めようとする時には、核となる人物が存在します。西谷先生のお話では、親の会の相当な動きがあったようですが、それを支えていた人物も必ずいるはずです。私達の学校でも、すぐ近くに第2名神の取り付け道路並びにジャンクションの計画が立ち上がりました。その際、重度の子どもたちにとって、環境の悪化の免れない、そして命に関わる(死因の多くは呼吸器感染症という実態)重大な問題として、保護者始め、学校一体となって、計画の変更を求めたことがあります。

 県議会でも、この時の請願では、全会一致で採択されるという成果をあげました。道路公団とも公害調停をしました。この時に、中心となって、科学的に、客観的に、そして冷静に、関係機関に働きかけた人物が、兵庫教育大学大学院修士課程を卒業された方です。きっと物事は、始めていかないと始まらないし、誰かが始めないと始まらない。そして、協力する強力なブレーンがいないと形にはなりません。でも、実際に、この兵庫教育大学から、構想を実現された先輩諸氏がたくさんいるということを糧に、とにかく、一歩ずつでも歩んでいきたいものです。

●Macの提供
 高橋 進  
 こんにちは。兵教大大学院障害児教育専攻を平成12年3月に修了させていただきました鳥越ゼミの高橋です。覚えていただいていますでしょうか?修了してからしばらくアフリカに行って修行していまして、ここしばらくは日本でゴロゴロしていましたが、またアフリカに行くこととなりました。そこで大学院時代に使っていたMacをどうしようかと思い、パソコンバンクに寄付しようとおもいたちました。なにせ、古い機種ですが、まだ動きますので、また2〜3年眠らせておくには惜しいと思いましたので。昔成田先生のHPで知ったパソコンパンクに提供したいと思い立ったわけです。ただMacもダンボールもないですし、出国も6月中旬ですので、6月の第1週あたりに取りに来ていただきたいと思うのですが。Macはダンボール以外はすべて揃っているはずなので、使用するには何の問題もないはずです。寄贈したいMacはPerforma5430です。くわしくは http://www.apple.co.jp/datasheet/performa/performa5430.html
を参照してください。ただメモリ88Mに増設しています。MacOS 8のCDもあります。

あとLAN CARD MITSUSAKI 10/100 BASE-TX, KENSINGTON Thinking Mouse カスタマイズ可能4ボタンマウスFUJIFILM ZIPドライブ SCSIタイプ Macintosh用も一緒に引き取っていただけるとうれしいです。なにかとても失礼なお願いなんですが、どうぞよろしくお願いします。また、アフリカに行っている時に、勉強をしたいとおもいますので、MES自作教材CD-ROM2003を入手できないでしょうか?できればプログラミング関連で、貢献できればと考えています。本当に失礼なお願いかと思いますが、どうぞよろしくお願いします。
 

■新刊書のご案内
●「通常学校の障害児教育」 清水貞夫、青木道忠、品川文雄編
 クリエイツかもがわ 2,000円
 通常学校での障害者教育に重点を置き、一線で活躍する教師などが実践例や今後の課題を述べた1冊。筆者の1人は「楽しい、おもしろいが基本」とし、絵本を使った取り組みや、科学的な目を育てるための科学実験の実例を挙げています。このほか通級による指導や養護学校と地域の通常学校との連携など内容は豊富です。文部科学省の調査研究協力者会議は今年3月、通常学校で学ぶ軽度の障害者を対象とする「特別支援教育」への転換を打ち出しており、理解を深めるのにも役立つかもしれません。


関連リンク
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