■目次■第78回関東例会のお知らせ 「MESin北陸」のお知らせ(第78回関西例会) 第77回関東例会報告 第76回関東例会報告 自閉症児を連れてアメリカへ 第21回特殊教育教材教具展示会の発表 光明養護学校のホームページの内容とインターネットの利用状況 難聴言語通級学級におけるコンピュータの活用 満天星(植物公園の大天文台)テレビ会議の報告 学校における情報教育の取り組み 市販教材の紹介 皆さんからのお便り 673-14 兵庫県加東郡社町山国2007 兵庫教育大学 学校教育研究センター 0795-40-2205 phone Email:成田 滋
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【関西例会の様子1】【関西例会の様子2】【関西例会の様子3】
●日本語とテピ
自閉症児は言語に依存しない分、外国で暮らすことを容易に受け入れられるということを聞いたことがある。それはある意味では正しいと思う。コミュニケーションすることに、一般の人々のように大きな意味を持たないテピのような子供には、言葉の通じない苦痛は小さなものだろう。英語で色々話しかけられ、その意味がわからなくても、平然として知らんぷりを決め込むテピの姿勢は、たくましささえ感じることもある。
しかし、日本の生活のあらゆるものにこだわりをもっているのも事実だ。食べ物であったり、家では必ず、を脱ぐことに代表される日本での習慣であったり、テレビ番組であったり、過去に体験した様々な出来事であったりする。
アメリカに来てから、テピも英語を数語は話すようになったが、その何倍も語彙が増えたのは日本語のほうだ。意識して日本語を教えた訳ではない。彼の記憶の中に眠っていた言葉がどんどん出てきているのだ。テピの話す言葉は99パーセントが独り言である。それを聞いていると、テピの頭の中は思い出だらけであり、それは3歳から通い始めた幼稚園時代まで遡ることもある。過去の記憶がテピにとって大切なものなら、いい思い出が沢山あるほど、彼の生活は豊かになることになる。過去の一部を切り取ったように、一人で再現しているテピを見て、もっともっといい経験を重ねさせてあげたいものだ、と改めて思うのであった。
同じように、日本に帰ってしばらくたっても、アメリカの先生達の言葉を思いだし英語で独り言を言うテピの姿が想像される。私もそれを聞く度にアメリカでの生活を懐かしく思い出すことだろう。ここでの生活も5カ月を残すだけになると、そんなことまで考えてしまっている。
●大人の夢
・たくましいシングルマザー
アメリカ人は実にあっけらかんと自分の離婚歴について話し出すが、夏休み中テピのデイキャンプでたくさん話をしたリンダも例外ではない。私と同年齢の彼女は、3人の女の子を持つシングルマザーであり、ダンスを専攻する学生であり、学校がある時は非常勤のティーチャーズ・アシスタントであり、夏休み中はMSCRのスタッフアシスタント、週末は病院で事務の仕事をしているという。当面の目標はダンスセラピストの資格をとることなそうだ。
「ダンスセラピーって聞いたことないけど、ミュージックセラピーと似たような感じなのかしら?」と尋ねると「アメリカでもポピュラーなものじゃないのよ。そうね、ミュージックセラピーにダンスが加わったような感じかしら、」という答えが返ってきた。
彼女の長女は17歳だということを聞いて驚いている私に、「(結婚と出産は)私のほうがちょっと早かったわねー。アハハ・・」と屈託なく笑ってみせるリンダだ。
・幅広い援助
彼女の私生活の話を聞いているだけも、その多忙さとその裏側にあるだろうストレスが想われて疲労感さえおぼえてしまう。しかし、それは自分の生き方を変えようとするエネルギーに欠け、堅い殻につつまれているような日本の社会・教育背景を背負っている私の閉ざされた疲労感なのかもしれない。どんな状況でも自分の求めるものに向かって進んでいける素晴らしさにまず目を向けよう。そういった柔軟さがアメリカにはあるようだ。社会全体が弱い者を支援して、社会的な不利があっても当たり前のレベルの生活ができるように公的にも私的にも支援されているように思う。その一部の例に、無料でベビーシッターをするなどシングルマザーを支援するグループがあったり、外国人学生が心豊かにここで暮らせるようにと何かと世話をしてくれるグループがあったり、障害児でも受け入れるデイケアーがあり、学校のスクールバスも下校時はデイケアーセンターまで送ってくれたりすることなどに反映されているように思う。
・多様に生活形態を変える大人達
テピのクラスメートのジョナサン(自閉症児)のお母さんもウィスコンシン大学の学生なのだそうだ。それに担任のマットは先生になる前は工場に勤めていたそうで、現在はCD教師、将来は修士号も取りたいと言っていた。アシスタントのリサはある日の連絡帳に「私は結婚は2度目で娘は前の夫の名字をそのまま名乗っているから、私と娘の名字は違うんです。」と書いてあったことがあった。また、私が日本語を個人指導している男子高校生のお母さんと、彼が背が高いことを話題にしていると、彼女は「最初の夫(男の子の実の父親)はそんなに背が高くなかったのよ。」とあっさり話し出す。そこで初めて彼女も離婚経験者だということを知った私は、「えーあなたもなのー。」と心の中でつぶやき、そして離婚率50%というこの国の数字をより身近に感じたのだった。
狭い私の人間関係の中でこうであるから、こういったことはここでは一般的なのだろう。努力すれば人生の再スタートも可能な素晴らしい柔軟性と、社会問題にもなっている離婚率の高さがどう関係しているか私には分からない。ただ、この地にずっと住んでいれば、古いタイプの日本人の私でも何か出来そうな気がしてしてくる。
・アメリカの主婦の鏡
一方、これと良い意味で対象的な女性達の姿も浮かんでくる。アメリカに30年近く住んでいる日本人女性に一度たしなめられたことがある。「アメリカ人は料理をしないなどと思ってはいけません。アメリカ人の主婦の中には日本人顔負けの”内助の功”を尽くし、完璧に家事をこなし、その上余った時間をボランティア活動に注いでいる賢く立派な人達を私は何人も知っています。そのボランティア精神も見返りなど全く期待しない、自分自身の為の仕事であるという磨かれたものなのです。」と。
私もそういった人達にはとても親切にしてもらい、マディソンでの私の日常生活を豊かにしてくれたことに感謝の気持ちでいっぱいでいる。バリバリ仕事をしている女性が多いアメリカではむしろ貴重な存在の彼女らのような人達がいなくなったらどんなにか殺伐とした世界になるだろうか。だた、両極端のように見えるこの女性達も志次第でその正反対の立場を獲得することが容易に思えるところに魅力を感じるのだ。
大統領選挙の真っ直中のクリントン大統領の選挙公約の中のひとつに社会人に大学進学の門戸を広げるという項があった。この選挙がどういう結果に終わるか分からないが、魅力的な内容だと思う。いくつになっても実現可能なこととしての夢を持ち続けられる大人達がここにはたくさんいる。
●差別について
・進んでいる大学コミュニティー
ここイーグルハイツとユニバーシティハウスの説明書の中に、いかなる差別もしないことが書いてあった(断りがあるということは差別があることの裏返しかもしれない)。したがって人種、宗教の違いはもちろんのこと、ホモの夫婦であろうがレズの夫婦であろうが、既婚であればここに住むことができる。
知人にいわせるとウィスコンシン州(特に大学のコミュニティー内)はカリフォルニア州同様、自由な意識が浸透しているところなのだそうだ。またこんな小さな街でもホモやレズ、バイセクシャルの人達のパレードを始めとするお祭りがあって、わざわざそれをアピールしなければならないのかと、こういうことに慣れていない私は驚きと共に解釈に悩んでしまう。
・少数派の人々の誇り
少数派で社会的に弱い立場にある人々の権利主張として考えると毎年札幌でも行われる”サンシャインふれあいフェスティバル”という知的障害者のために行われるお祭りとだぶって見える部分もある。日本ではまだまだ興味本位でしか扱われがちなホモ・レズ・バイセクシャルの人々のお祭りは、アメリカ人の友人に言わせると社会への啓蒙と法的な差別の改正を求めると共に、自分たちの誇りを示す意味もあるのだそうだ。シカゴでは毎年「レズビアン&ゲイ国際映画祭」が開かれ一般にも高い支持を受けているようだ。考えてみれば私も過去にゲイの精神的側面に触れるような映画をいくつか見てきて、コメディの場合は思いっきり笑い、悲劇の場合は考え込んだものだった。いろいろ知るほど人種問題や障害者問題よりも複雑な背景が見えてきて今までそんなことを真剣に考えたことのなかった自分に気が付く。
・学校・先生を評価するシステム
アメリカ社会に根深い人種差別がないといえないことは、学期末に教育委員会から送られてくる学校に対する個別調査書にも物語られていると思った。無記名で学校や担任の先生に対する細かい評価をするもので、特に人種的な差別に関しては念入りに質問している。また、親が学校や先生を批評するシステムがあること自体驚きだった。しかし、公的教育がサービス業的であれば、ひとりひとりの子供のニーズを汲み上げやすいものになることも事実だろう。
今のところ私達家族は、ろくに英語も喋れないアジア人として、差別的な扱いをされたことがない。たまにスーパーなどで不愛想な店員がいて、アジア人だと思ってバカにしてるのかしら?と思いながらよく観察していると、誰に対しても同じ対応で単に無愛想な性格の人なんだとわかったこともあった。こんなことに神経質になっても自分が不快になるだけだから、それ以後気にしないことにしている。差別などを感じることなく、平和に暮らしている現在である。
(この原稿は、佐藤氏の許諾を得て掲載しています。成田)
大賞 なわとびジャンプ 小橋川 哲男 大阪府立寝屋川養護学校
金賞 洗面ボウル屋さん 小林 克彦 国立久里浜養護学校
〃 まとあてで、数のおべんきょう 小橋川 哲男 大阪府立寝屋川養護学校
〃 かず博士 内藤 壽市 大阪府立寝屋川養護学校
銀賞 ハカリ計算器「正解くん」 朝井 翔二 兵庫県立阪神養護学校
〃 紙すき機 大澤 越也 埼玉県立三郷養護学校
〃 ケンパ 朝井 翔二 兵庫県立阪神養護学校
〃 中途失明者のための点字蝕読初期指導の学習セット 松原 静也 愛知県立名古屋盲学校
〃 万能補聴システム「きき耳君」 三上 純一 栃木県立聾学校
銅賞とび上がるペットボトル2 村上 和夫 鹿児島県立皆与志養護学校
〃 勇者のピカピカゴール 立花 裕治 国立久里浜養護学校
〃 マジカルデスク 永坂 理重 鹿児島県立鹿児島養護学校
〃 音階表示板 吉田 真弓 茨城県立勝田養護学校
〃 「ステップアップ玉入」誰にでもできる玉入をめざして創作教材研究会 東京都立府中養護学校
〃 ワンショトカッター 相沢 雅文 宮城教育大学附属養護学校
入選 くるくるポロリ ー中村 昭子 ー川越市立養護学校
〃 卵パッククッションPart 竹本 朱美 愛知県立安城養護学校
〃 「カラカラ、ピヨピヨ、ふうせんフワー!」 島森 邦夫・小林 倫代 国立久里浜養護学校
〃 クルクルUFO 泉 匡 神奈川県立相模原養護学校
〃 くっつけてOK! 中村 昭子 川越市立養護学校
〃 金銭学習器U「おつりトレーナー」 菅原 智志 秋田市立土崎小学校きこえの教室
〃 SRCウオーカー用「サウンドキット」 岩本 浩二 北九州市立小倉南養護学校
〃 時間⇔数直線変換器 重永 幸英 山口県立聾学校
〃 かくれんぼポケット 岩下 由喜子 神奈川県立相模原養護学校
〃 目を使うことを通して頭部コントロールを高める学習装置 松村 緑治 東京都杉並区立済美養護学校
〃 さいころじゃんじゃん 稲美 裕子 東京都立江戸川養護学校中学部
〃 アラカルトBox 平塚 百合子 吉川市立北谷小学校
〃 ランプ付ミュージック Box 長岡 典子 島根県立松江養護学校
〃 巻き物本読みとり板 伊藤 一夫 埼玉県日高養護学校
〃 UP-UP(あっぷあっぷ)くん 辻尾 壽市 大阪府立盲学校
〃 グランドオセロ 中学部 石川県立養護学校
〃 アルファベットくん1号・2号 菅原 智志 秋田市立土崎小学校きこえの教室
〃 視覚障害者が”楽しく・安全に滑る”「スキー場立体地図」 久保田 弘 新潟県立高田盲学校
〃 星物語 足立 英二 神奈川県立小田原養護学校
〃 植木鉢台(コンクリート製)の製作治具 津田 守一 神奈川県立湘南養護学校
光明のホームページの作成は、高等部の3グループ(本校の高等部では、学習グループを、大きく、教科学習・中間・重度重複の三つに分けている)の授業などの報告から始めた。結果として、肖像権などの問題をクリアするためにも、本人の意思表示が一番明確な高等部の3グループから始めた事はよかったと思われる。
昨年度の光明のホームページの主な構成は、(1) 生徒自身の作品の発表、(2) 授業とか行事の様子を教員がホームページへ公開であった。(気管切開をしており、登校制限のある生徒がいたので、その生徒への報告という意味あいが強かった)
今年度は、文字だけによる表現活動が可能な生徒が少なくなってしまったということもあり(肢体不自由の養護学校では、従来から、児童生徒の障害の重度重複化・多様化が指摘されてきている。また、普通学校に比べて児童生徒数が少なく、年度によってその障害の様子は大きく変化する)、一年生にはパソコン操作になれるという意味からも、デジタルカメラで撮影した画像にコメントをつけるという形の通信を生徒が作り、それを教員がホームページに書き込むという授業から始めた。最初は自分の受けている授業の報告から入り、少しずつその報告の範囲を他の学習グループの様子の報告へと広げていった(3グループの生徒が作った「選択科通信」)。
二学期の前半は、グラッフィック・ツールを用い校内の地図を作成、後半はHTMLの学習・データ量が増えてきてわかりにくくなってきたホームページの整理の意味もかねて、生徒自身の手によるホームページの作成に取り組んだ。
また、光明では、修学旅行・移動教室などの宿泊行事は学年単位で行う事になっている。従来から宿泊行事の際は、フィールドアクセスの一例として、移動端末としてノートパソコンを持っていき、現地から様子を逐次学校に送り、それを受け取った学校では、順次印刷し、宿泊行事が終わったときには、報告集を配布するというような取り組みを行ってきた。このことにより、報告を担当した生徒にとってはまたとない表現の機会を得る事になり、その報告によって、一学年の取り組みが他の学年の職員にも伝わり、結果的に、一つの行事を生徒・教員・父母の三者で共有する事が可能になる。
昨年度の修学旅行(高三)・今年度の移動教室(高二)の時も、デジタルカメラで撮影した写真入りの通信を作成し、これをホームページにも書き込んだ。結果的に、このことにより、高等部のすべての学習グループの生徒がホームページに登場する事になった。(学年で行った「移動教室通信」「修学旅行通信」の公開など)また、今では小学部の授業の中でも取り組まれるようになり、そのことを通じて、児童の作品も発表されるようになった。
また、本校は、100校プロジェクトの中で唯一の肢体不自由児を対象とした学校である。だから、ある意味で、全国の肢体不自由養護学校のテストケースとでも言うべき立場にある。そんな事もあって、上に書いたような児童生徒の教育活動の紹介だけにとどまらず、都肢研(東京都肢体不自由研究会)で発表された資料なども本校のホームページで公開し、全国の先生達の参考になるようなデータも閲覧できるようにしてある。
さらに、今年に入ってから、インターネットを経由して、滋賀大学付属養護学校の中にあるネット局での生徒達の交流も始まっている(チャレンジ・プロジェクト)。ホームページが、基本的にオープンな場であるのに対して、チャレンジの場合は会員制なので、常に問題となる肖像権の事・プライバシーなどの事を考えても、相手が限定された場から交流を始めた方が、生徒達も、より自分自身を出せると考えたからである。
コンピユータの教育利用については様々な考え方や方法が挙げられるが、結局は次のようにまとめられるであろう。
(1) 直接的目的一コンピユータを道具として学習や生活に活かす
(2)問接的目的一コンピユータによって知的能力を促す
(3)文化的目的一コンビュータ文化の面自さを味わう
これら3つの観点は、すべての教科の学習に当てはまることであり、この点でも総合学習としてのコンビュータ教育の意義がある。情報教育そのものは、コンビュータという機械とは分けて考えられるものである。高度情報化社会においては、実際の人や物・事実への直接的接触を経ずに情報のみを手がかりに判断・意志決定する機会が増加するために情報の持つ意味は重大であり、結果として、慎重さ、賢明さを含む情報に接する態度の育成は早い発達段階から必要となってくる。情報教育の目標としては「人間として構報を適切に取り扱い得る能力を養うこと」にまとめられるであろう。そのために、必要とする情報の収集の仕方、収集した情報と元の情報との差異を認識すること、意図した情報伝達のための情報表現方法などが学習されるべきであろう。今回は学校での情報教育の具体的な取り組みとして、附属養護学校の先生方の実践を報告して戴きました。特に、マルチメディアの利用は今後のコンピユータ教育の中心になるものであり、その試みは注目すべきものでした。以下に概要をまとめて戴きました。
1. 教育におけるマルチメディア活用の意義
・マルチメディアの意味
音声、文字、映像などの情報を、学習者又は指導者が必要に応じて選択し、関係付け、活用することのできる融合型のメディア又は技法である。(印刷が発明された時のような、人問の感覚の変容が期待できる)
・マルチメディアの特徴
情報の融合性、学習者との相互交渉性(インタラクティブ)、情報の無構造性、情報の編集性、等があげられる。
・マルチメディアに対する教育的期待マルチメディアは個々の学習者の主体的な学習、学習する意欲や学習する力を重んじる学習を笑環する二可織をもつと考えられる。(中答申で述べられた「生きる力」につながると考えられる)
2.マルチメディアとネットワークの融合自作教材の製作・普及について
・MES(障害者とコンピュータ利用教育研究会一Mac Education Sciety−)とは
MESは障害児教育を支援するパソコンについて現場の教師や親とともに研究している。現在、関西・関東で月一回、九州・信州・北陸・四国で不定期に研究会が持たれている。
・「MES自作教材集CD-ROM」とは
「MES自作教材集CD-ROM」は、障害児教育にたずさわる親や教師、それを支援する人たちによって作られたMacintosh用障害児教育ソフトを集めたものである。その制作・発行にあたって滋賀大学教育学部附属養護学枝が事務局を受け持ち、実務を担当している。95年度版、96年度版があり、それぞれ1600枚発行し好評を博している。
・CD-ROM制作プロセス
まず、各方面で教材募集をし、寄せられた教材の動作確認と修正を行なう。同時に編集作業としてブラウザに登録し、α版(CD-R)制作、再び動作確認と修正を行なう。その後、β版(CD‐R)制作、調整の後、業者へ発注、配布を行なった。
3.ネットワークの教育利用(県立守山養護学校の実践事例)
集団にうまく入れない生徒や難病により個室隔離されている生徒を対象に、児童・生徒が情報を処理し、情報を発信できる環境(病室・教室へのコンピュータ設置、BBSSoftの"FirstClass"によるイントラネット構築)を整えた。病弱・虚弱児がもつ特有の問題を個々に応じた形で児童・生徒自ら解決することができた。児童・生徒はネット上で、社会を形成して
いった。これからも、このような事例を重ね、より効呆的な学習のための道具として学校の中で位置づけていくことが必要であろう。一方、情報化社会の中で生きていく児童・生徒を育てるため、環境整備はもちろんの事、ネットワークの長所を生かしつつ、児童・生徒のプライバシーをどのように保護していくか、問題は残されている。
4.インターネットを利用した教育の試み「特殊教育諸学校におけるコンピューター利用」--インターネットを活用した教育実践研究について
・BBS開設ソフトの「FirstClass」を使っての交流インターネット上にFirstClassサーバーを設置、IDを発行し(児童・生徒のプライバシーを守る)会議室を設定して交流を行なっている。県外は近畿の5つの附属養護学校、石川県立七尾養護学校、県内では滋賀県総合教育センター、守山養護学校、三雲小学校、等と協力して実践研究を始めている。平成8年度9年度、文部省の研究指定を受け、また、全国組織である「めでいあきっず」にも参加し、広い場も経験できるよう用意している。
5.WWWホームページを使っての情報発信
教育概要を発信、養護学校の教育内容について内外にアピールしている。各方面からのコンスタントなアクセスがあり、人気を博している。今後、小学部総合学習「琵琶湖一周歩け歩け」の実践、高等部職業教育(作業)の作品など、教育実践情報を発信、公開展覧会「あしあとてあと展」公開展覧会(3月)を予定している。
●スイッチで楽しめ学べる12種類の教材の紹介
金森克浩 東京都立光明養護学校
『Cows!』
( 内容) 数の学習ソフト。「うし」と「ぶた」と「あひる」のかずをかぞえる。「count to 10」では画面左に1から10までのボタンがあり、それを押すと右にその数の動物が数字付きで表示される。「count to 20」は同じ形式でボタンが20ある。「How many to 10」は画面左下の「How many ?」というボタンを押すと、10までの数の動物が右に現れ、左に表示される1から10までのボタンから正解を選ぶようになっている。「How many to 20」は同じ形式で20までの数を学習するようになっている。このほかに設定として音声のオンオフとファインダーの画面のオンオフが出来るようになっている。
(評価)これは1スイッチで操作するソフトではなく、マウスを操作して画面をクリックしなくてはならない。たまたまお借りしたソフトに入っていたのであるが、10までの数が不確かな生徒で、ある程度マウスが操作できる場合には利用できそうである。ただ、不正解のメッセージが英語なので音声を変更して使いたいところだ。
『New Frog & Fly』
(内容)カエルがハエを食べるソフト。まず起動すると、「Instructions」「Set Scan Speed」「Select Activity」「Quit」の4つのボタンがある。「Instructions」は解説のようだ。「Set Scan Speed」はオートスキャンで操作する場合の速さの設定が出来るようになっている。「Select Activity」はゲームの選択で「FEED THE FROG (Simple Cause & Effect)」「TRAP THE FLY 1(Dual Switch Stepped Scanning)」「TRAP THE FLY 2(Linear Sequential Scanning)」「FROG AND FLY(Classic Game of Reaction Time)」の4つがある。「FEED THE FROG 」はマウスクリックまたは「1」のキーを押せば画面の上の方にいる「ハエ」をカエルが舌をのばして食べる。全く単純にスイッチを押すとカエルがハエを食べるだけなのだが食べるときのカエルの鳴き声がときどきかわるので子どもが興味を持ってスイッチを押すようである。「TRAP THE FLY 1」はやはりハエを食べるのだが、画面上に「円」があり「1」を押すたびに左から右に動いていく。これがハエの場所と一致したときに「2」またはマウスクリックすると見事にカエルがハエを食べることが出来る。2スイッチが出来る生徒のステップスキャンの学習としても使えそうである。「TRAP THE FLY 2」は「TRAP THE FLY 1」とおなじようだが、「円」が自動的に動いており、ハエのところでタイミング良く「1」またはマウスを押すと食べることが出来るようになっている。「FROG AND FLY」はこれまでのようにハエが画面上に止まっているのではなく、左から右に移動しタイミング良くスイッチを押すことが出来ると、カエルがハエを食べることが出来る。ハエの移動の速さは3段階に調整可能である。
(評価)単純なCause & Effectを学習する物からあり、「使える」ソフトであると思う。あるところでこれを紹介したところ、一番単純な「FEED THE FROG 」に普通の小学生がおもしろがって何回も遊んでいた。
『One Switch Picasso』
(内容)スイッチを押すだけで画面の色塗りが出来る単純なソフト。起動すると「Instructions」「Select Activity」「Quit」の4つのボタンがある。「Select Activity」には「天使」「恐竜」「サンタ」「くま」の4つの絵が出てくる。どれか一つを選ぶと、画面に白紙が出る。「1」またはマウスクリックするとサンプルで出ていた絵の輪郭が少しずつ表れ、終わりの方になると、1カ所ずつ塗り絵されて絵が完成する。
(評価)スイッチを押すたびに絵がかわって完成するのでCause & Effectの学習として利用可能であると思う。このように単純なソフトが市販されるところにアメリカのすごさがあると思うが、もっとバリエーションを持って自分でも作ってみたい気もする。
『Scanning Picasso』
(内容)『One Switch Picasso』のオートスキャンバージョン。起動画面で「Set Scan Speed」が加わり、スキャンスピードを変更することが出来る。また、塗り絵の画面では下の方に5つの枠があり、その中の1つだけ絵の具のパレットが書かれており、カーソルがそのパレットに来たときにスイッチングすると絵が出来上がってくるようになっている。
(評価)ある程度自分で操作することがわかり、タイミングを合わせて操作する学習の段階の生徒には面白いだろう。
『Switch Arcade』
(内容)遊園地などにある的当てゲームのようなソフト。起動すると「Instructions」「Set Scan Speed」「Select Activity」「Quit」の4つのボタンがある。「Select Activity」には「ダーツ」「鉄砲」「ボール」の3つのゲームが用意されている。それぞれに「Cause & Effect」と「Linear Scanning」が用意されており、「Cause & Effect」だとスイッチを押せばかならずどれかに当たるようになっており、「Linear Scanning」だと画面上に固定した標的を左から自動的に移動してくる四角い枠でねらいをつけて打つようになっている。
(評価)このゲームははずれてもそれほど「失敗感」がないので、ゲーム感覚でスイッチ押し練習するのには良いと思う。
『Scan & Match #1〜6』
(内容)形のマッチング学習ソフト。起動すると「Instructions」「Set Scan Speed」「Select Activity」「Quit」の4つのボタンが用意されている。「Select Activity」を選ぶとそれぞれ3つのカテゴリーがあり、どれか一つを選ぶと、学習者の名前を要求するダイアログが表れる。次に何回学習するかのダイアログが表れる。(25回まで)これはこのあとに学習の履歴を残すためである。するといよいよ操作が始まり、画面上に見本があり、下に3つの選択肢が表れる。その3つの選択肢をスキャンしていき見本と同じ物を選ぶようになっている。設定した回数を終えると、学習履歴をセーブまたは印刷する画面が出て終わるようになっている。
それぞれのカテゴリー次のとおりである。
#1「Flowers」「Candy」「Puppies & Kittens」
#2「Insects」「Cars & Trucks」「Dinosaurs」
#3「Babies」「Critters」「Toys」
#4「Breakfast & Lunch」「Dinner」「Snacks」
#5「Women's Wear」「Men's Wear」「Grooming」
#6「People」「Places」「Signs」
(評価)この手の物は日本でも自作教材として作られているので、目新しいところではないが、前にも書いたように市販されている意味は大きいと思う。ただ、やはり日本とは文化が違うところもあるので、画像など違和感がある。データを差し替えできると良いのだが。
●公開講座の感想
山上弘之 大阪府立寝屋川養護学校 SGV00333@niftyserve.or.jp
大阪の山上です。11月の例会も家の用事で参加できませんでした。残念です。11月公開講座感想です。直接、バウチャー制度とは関係ありませんが、最近の新聞報道を見るにつけ、日本の厚生省は何をしているのかと思います。障害者の尊厳のためにサービスの選択肢を増やすことをうたっていますが、その費用は受益者負担。お金に余裕のない人はどうするのかと思います。日本人は税金は取られてしまえば、もう何も返ってこないものだと信じているからなのでしょう。
昔、文化人類学で、米を作る日本は手間暇かければ生産性が上がる分、麦を作る西洋に比べ、忍耐強いのだと聞きました。教育の分野にも競争原理が導入され、日本の国に、バウチャー制度ができてくるには、まだまだ時間がかかりそうに思います。一昨年前、荻窪にあるコロロメソッドと言う療育法を実践している塾を見学にいきました。
養護学校の先生が学校を辞めてここに勤めようか悩んでいると言っていました。その方の養護学校より、はるかに内容が充実しているからだそうです。私も、そんなことで悩まないで良いように、日々の実践を積み上げていかねばと思います。
では来月の会報をお楽しみに。
●制作:成田 滋
●編集:曽根秀樹