障害者とコンピュータ利用教育研究会

1998年2月会報 NO. 91 Mac Education Society(MES)

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MES
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1998年1月号

1997年12月号

1997年11月号

成田研究室

 

〒673-14 兵庫県加東郡社町山国2007
  兵庫教育大学 学校教育研究センター narias@ceser.hyogo-u.ac.jp
  Fax 0795-40-2203

■ 目 次 ■

第91回例会とMacworld Expo 98/Tokyoへのユーザグループ出展について

第90回関東例会の報告

第5回カナダ/アメリカ合衆国の教育情報ネットワークと障害児教育の研修案内

松下視聴覚教育研究財団

電子情報ネットワークの利用:ミネソタ州ミネアポリス学校区教育委員会

「全障害児教育法」と「障害者教育法」に関するお問い合わせ

パソコンバンクコーナー

修士論文「発達遅滞児に対する画像刺激を用いた文章表現力の形成」

皆さんからのお便り

新刊書の紹介

市販教材の紹介

埼玉の障害児教育とコンピュータ利用を考える会の会報がwebで

 あらためて新年明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくご支援、ご協力のほどお願い申しあげます。今年の11月でMESの例会は100回を迎えます。

第91回例会とMacworld Expo 98/Tokyoへのユーザグループ出展について

 来年のMacworld Expo 98/Tokyo は、2月の例会をかねます。Expo 98/Tokyo は、以下の会期/会場にて開催されます。MESも参加します。現在、関東地区のユーザグループでは、このMacworld Expo 98/Tokyoに向けて、ユーザグループ合同ブース事務局体制をつくるべく、月例会などで準備/議論をしているところです。なお、関東ユーザーグループには佐原、熊谷両氏が参加して準備にあたっています。なお、準備のための会員間の話し合いがNiftyServeの掲示板-Patioで行われています。使い方は以下の例会報告にあります。

●会期: 1998年2月18日(水)〜21日(土)
●会場: 幕張メッセ
 Macworld Expo 98/Tokyo
 http://shop.fsi.co.jp/IDG/MACW/macindex.html

 

第90回関東例会の報告

 佐原恒一郎 千葉県立市川養護学校 GEC02532
 今回は、2年ぶりに千葉で行いました。会場は昨年の4月に開校されたばかりの千葉県立養護学校流山高等学園、千葉県初の高等養護学校です。参加者は、大雪の後で分かりづらい位置の中、千葉県の養護学校の先生が多く初お目見えしました。最終的には12人、そのうち4人が初参加でした。会場準備の同校、星野先生ありがとうございました。
 まずは、千葉県立養護学校流山高等学園のホームページの閲覧。千葉県内の精神遅滞児の養護学校の公式ホームページとしては初めてのもので、千葉県情報教育センターをサーバとして、協力校という形でISDN回線を使って接続しています。一般に公開されているものはまだかなり工事中のものですが、まだアップロードしていないベータ版は、MPEGで作業の様子のビデオが見れたり、「流山高等学園」というロゴがくるくる回ったりというものでした。容量は今の時点で50MBあると言うことでインターネット経由だと、ちょっと重たいホームページになりそうです。
 ホームページ関連では、出席の千葉県特殊教育センターの谷中さんから1月中旬に「千葉県特殊教育センター」の公式ホームページが公開されるという話もありました。このほかにも初参加者の方への宣伝でMESのホームページを見たり、いくつかの障害児教育に役立つサイトの閲覧をしました。
 千葉県立養護学校流山高等学園の生徒が実習に行った会社のホームページもみました。ホームページを製作している会社で、実習の内容は、データを入力するというものだったそうで、参加者(精神薄弱養護学校の先生)からは「うちの学校の生徒じゃ実習に行けないや」という感嘆ともやっかみともつかない声があがりました。
 次は佐原から、以前紹介した作業学習用の「コンクリートの型枠管理」スタックを再紹介しました。
 つぎは、おなじみ熊谷さんからPHSによるPIAF接続でのインターネットの実演です。参加者ですでにインターネットを行っている方は誰しもがやりたがっていた組み合わせのようで、ハードの値段・月々の使用料・快適さなどあらゆる質問が飛び交いました。熊谷さんの話によれば、使い始めた経緯は、職場で職場用の回線を使わず自由に自由な場所で生徒達に使わせるために購入したとのことで、28800bpsとほぼ同等の使い勝手だそうです。32000bpsフルでつながることはほとんどないそうです。購入したモデムカードは160頁の取扱説明書のうちMac関連は2頁しかなく、ATコマンドなどは、試行錯誤で行ったと憤慨してました。
 続いて、熊谷さんによるインテリキーの再紹介です。米国ではレジの代わりに使ったり多様な使い方をされていること、感度がよく肢体に麻痺がある子でも役に立つこと、ヤノ電器が積極的な取り扱いを中止したのが残念なこと、などを紹介して下さいました。なお、ヤノ電器のホームページに行くとインテリキーのコーナーはまだあります。POEMのホームページからとぶと簡単にたどり着けることを宮下さんが補足紹介して下さいました。
 つぎは、千葉の新団体の設立の宣伝です(仮称)「千葉・教育とテクノロジー利用研究会」(Technology for Education,Chiba:TEC)と言いまして、佐原・熊谷に、今回初参加の県立富里養護学校教諭菊池聡の3人が発起人となって「埼玉の障害児教育とコンピュータ利用を考える会」や「THE MAGICAL TOY BOX」といった形の地域密着型の自主研修会をこの1年かけて立ち上げていこうというもので知的な面や肢体に関わる面で、ハンディキャップを持つ人たちにパーソナル・コンピュータ(MS-DOS・MS-Windows3.1・Windows95・Macintoshを対象)を始めとしてスイ ッチ類などコンピュータに限らず「テクノロジー」利用による援助方法を考える会にしたいというものです。
 次には、新春お年玉大会と言うことで、佐原の幼なじみの経営している秋葉原の「FunkyStation」さんの協力で、いろいろなソフトウェアを用意して(今通信販売のソフトというとやはり「アダルト」です。ですから、メーカーから販売促進で送られてくるのもそういう系統が多くもらったソフトの半分はお年玉には使えないようなものでした(^^;)。残り物も、「お香」が付属そているソフトとか毛色の変わりすぎているものも多かったです。
 最後は「(道が分からず)今日はさすがに着かないかと思った」という中野さんからで、まずはNewton用のほのぼの自作ソフト「fishpot」です。これは、「Newton ProgramingContest」で大賞を受賞した作品で金魚鉢にいる金魚が泳ぐだけでなく日記を書いたりするというものでして持参のeMate300で紹介してくれました。
 次のソフトは、Mac用で実は不具合がありこの場では動きませんでした。内容は中野さんから「今はちょっと公開しないで」ということなので、参加者だけの秘密です。なお、中野さんのホームページは pweb.aix.or.jp/~yoich-na/で、「金魚すくい」や「射的」、「fishpot」の最新版はここからダウンロードできます。
 次回は、2/18-2/21の「MacWorldExpo Tokyo98」が例会の代わりとなります。みなさん、Nifty-Serveの「Expo参加準備室」パティオへの参加、よろしくお願いします。パティオへの参加方法は別掲のとおりです。

●パティオ利用方法
-----パティオへの行き方-----

「>GO PATIO」としますと、パティオの概要が表示され、 「 1. ご案内 2. サービスに入る」となりますので「2」を選びます。 「ID (改行のみ:自分のパティオ)」は「GEC02532」 「パスワード」は「EXPO98!」です。 いずれも大文字半角で打ち込んでください。パスワードの最後の「!」も忘れませんように。(パスワードには何かしら記号文字が入っていないといけないので去年の分かりづらかった「`」をやめて、「!」)にしました。なお書き込むときは、PATIO(N)>のプロンプトのあとに「SAY」と入力します。 パティオは設定者 (パティオを設定された方) の責任、管理のもとに設定者から承認された方のみが使用することのできる会議室機能です。ご利用に際しては必ず「1.ご案内」を一読の上ご利用くださいますようお願いしますパティオを設定する場合は、設定者に接続料金の他に 500円/月の設定料金が掛かります。設定されたパティオに参加される方は基本料金のみでご利用いただけます。

 

第5回カナダ/アメリカ合衆国の教育情報ネットワークと障害児教育の研修案内

http://www.ceser.hyogo-u.ac.jp/narita/canada98/csile_visit.htm

●日時: 1998年3月24日-31日
●目的:  協同双方向学習用ネットワークの構築と利用の視察と研究協議
●視察箇所:   トロント大学オンタリオ教育研究所(Ontario Institute for Studies inEducation: OISE)
 バージニア州モントゴメリー郡学校区の小中学校
その他
 スミソニアン博物館
 航空宇宙博物館
●行程:
 3月24日(火) 出発 (関西/成田) ミネアポリス経由トロント着
 3月25日(水) トロント大学オンタリオ教育研究所(Ontario Institute for
        Studies inEducation: OISE)
 3月26日(木) トロント市内小中学校視察 トロント発ワシントンDC着
 3月27日(金) バージニア州モントゴメリー郡小中学校視察
 3月28日(土) スミソニアン博物館等の見学
 3月29日(日) ジョージワシントン博物館等の見学
 3月30日(月) ワシントンDC着、ミネアポリス経由
 3月31日(火) 帰国 (関西/成田)
●費用:
 往復運賃  110,000円 (ノースウエスト航空)
 滞在費 @7,000*7=49,000円 (2人部屋は半額となります)
 雑費  レンタカー他 20,000円
 計  約180,000円程度
●申込み締め切り:
 募集人数 7名
 1998年2月10日
●参加申込み先:
 お名前、ご住所、性別、連絡先電話、電子メールアドレス、 部屋の希望な どを書いてメールでお申し込みください。
Email: naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp

 

松下視聴覚教育研究財団

第24回視聴覚教育研究助成応募の案内
 1年間を単位とした実践研究に最高額70万円(約80件)がもらえます。どうかどしどし提出してはいかがでしょうか。

●応募期間: 1997年12月1日-1998年1月31日
●申請方法:
助成を受けようとする学校、社会教育施設は視聴覚(情報)メディアを活用下、教育に関する研究計画について、所定の申請書に、申請団体名、研究課題(最大100字)、研究実施計画、助成金額(最高70万円)および、その使途内訳などの必要事項を記入し、公印を押印のうけ財団に提出する。
●助成の対象: 学校教育、社会教育、教育関係団体・機関、研究団体・グループ
●問い合わせ:
 松下視聴覚教育研究財団
 03-5460-2705
 http://www.mef.or.jp/

電子情報ネットワークの利用:ミネソタ州ミネアポリス学校区教育委員会

Internet Guidelines for Staff and Students of Minneapolis Public Schools
 翻訳 成田 滋 兵庫教育大学
 インターネットに代表される電子情報通信網は、教育において重要な情報資源となっています。現在、ミネアポリス市に住む児童生徒の一部は、すでにこうした資源を利用しています。それ以外の生徒も早晩学校がインターネットに接続して、電子メールアドレスを取得することにより、いろいろな人々とコミュニケーションをすることが予想されます。
 インターネットは、情報通信ネットワークのなかのネットワークであり、教育者はもとより、企業、政府、様々な組織で今や盛んに活用されています。学習資源としてのインターネットは、人々を教育し、知らしめ、娯楽をもたらす書籍であり、雑誌であり、ビデオであり、CD-ROMでもあります。ミネアポリス学校区は、このインターネットに代表される電子情報ネットワークを貴重な教育資源として位置づけています。そのために、ミネアポリス学校区の個人情報保護条例にそって、利用ガイドラインを策定しています。
 児童生徒は、インターネットを使い遠隔学習に参加し、専門家に相談したり質問したり、教育ニーズを満たしたり個人の情報収集を行うことができます。学校の情報教育担当者や教師は、専門家としての責任を有し、児童生徒が批判的な思考を養うために支援します。また教師は、情報資源のなかから生徒の年齢や発達レベルに合致したものを適切に評価したり選択し、それぞれの教育目的にそった情報を活用することが要求されます。私たちは、生徒が自ら意思決定を行い、思想の自由を体験し、関連する情報や証拠や事実や異なる見解を評価する過程を通して、自立的な判断をおこなえる者となることを支援します。ただ私たちは、学校環境だけが電子情報に接すること機会ではないことを認めるものです。
 ミネアポリス学校区は、児童生徒のインターネット環境を統制するつもりはありません。積極的にインターネットの活用を支援します。ミネアポリス学校区は、親や親権者がインターネット情報情報を利用するに際しては個々の生徒の責任があること、さらに倫理的かつ教育的なマナーがあることを理解させるものです。インターネットへの接続は、生徒にとって好ましくない情報や論議をかもす情報など潜在的な危険も同時にもたらすことを知らねばなりません。インターネット上の情報は、刻々と変化し生徒がどのような情報に遭遇したり、統制するかを予測するのが困難な状況にあります。
 インターネット環境の統制に関することよりも、むしろ責任あるインターネット利用者としての知識を授けることが必要となります。個人情報保護条例には、電子情報ネットワークの利用に関する基本的な要件が謳われています。ミネアポリス学校区におけるインターネットのガイドラインは、情報ネットワークやインターネットの適切な教育的、かつ倫理的な利用に関することがらを規定するものです。このガイドラインは、また個人の責任と義務を明らかにし、違反に対する適正な処置を執行する手続きを規定するものです。

 

「全障害児教育法」と「障害者教育法」に関するお問い合わせ

伊藤大郎 神奈川県立武山養護学校 ef9d-itu@asahi-net.or.jp
 「世界の特殊教育の新動向」読ませていただきました。 日本も全国一律の教育でなく、学校単位でもっと工夫することが必要だと痛感しました。 この国は、国家官僚も地方行政官も、そして現場もそうした精神風土にない、という感じです。以下質問します。

●質問1
 「全障害児教育法」が「障害者教育法」という名前に変わりましたが、児を者に変えた理由は
・児は者に含まれる
・者と表記して権利の主体であることを表現したというような理解でよいでしょうか。
◎お答え
 「全障害児教育法」が「障害者教育法」への変更にはいくつかの理由があります。まず、州により異なりますが、特別の教育のニーズのある人々の措置上限が18歳から21歳とか24歳へと引き上げていることです。また措置の下限は州により0歳であったり3歳であったりします。「障害者教育法」で使われた"children"が"individuals"に変わったのは、こうした措置の範囲が広がったからでしょう。
 連邦教育省は、毎年障害者教育法の施行状況を議会に報告書を提出していますが、1997年度の年次報告書を見ても、infant(嬰児)、toddler(幼児)、children(子ども)、student(生徒)、youth(青年)など、教育の対象となる者の用語が登場します。ただし、"children"という使い方は、"children ages 6-21"という表記も報告書にあります。
 「者」と表記して権利の主体であることを、、、ですが、そのニュアンスは薄いと思います。障害児の権利は、全障害児教育法の施行以来、きわめて正確に保障されているからです。

●質問2
 IEPのIは「individualized」となっていますが、これは「individual」という言葉とどういった ニュアンスの違いがあるのでしょうか。私は欧米の近代というものが、教育を通じて、個人を<主体化>する、という文化的背景がそこに込められている、と理解したいのですがそんなことではないでしょうか。
◎お答え
 「individual」は「個々の」、とか「それぞれの」という形容詞です。同時に「individualized」も形容詞ですが「一人一人異なった」、「一人一人に合致した」、「一人一人を考慮した」という意味になります(Webster's New World Dictionary)。「individual」と「individualized」では意味が大きく違います。なお複数形の「individuals」となりますとご指摘のように「主体化した個人」という意味になります。

●質問3
  坂本秀夫という人の「PTAの研究」という本に、1980年代末から父母・生徒参加による学校協議会が全国的に組織され始まっていると書かれていました。(school-site counsel) また、西村じゅん子の「父母の学校参加」という本には地方教育機関に助言をする「父母諮問委員会」が各学校に設置されることになっていると書かれています。この学校協議会と父母諮問委員会は同じ物でしょうか。役割が違うのでしょうか。
◎お答え
 「学校協議会」と「父母諮問委員会」との違いはわかりません。ただ、こうした組織は、学校行政に対して助言や提言をしたりはできますが、意思決定には関わらないのは確かです。大事な組織として、学校区には必ず「理事会」(school board)があることです。理事は市民による直接選挙で選ばれ、教育政策、教育長の選出やその他の人事、予算、プログラムにまたがる大きな権限を持っています。アメリカの学校教育の特徴をみるときには、この「理事会」の存在が大事です。

●質問4
 旧西ドイツでは、学校会議が校長選出に関し権限をもっているようですが、アメリカでも校長は同じように学校協議会で選ばれるのでしょうか。校長選出の方法を教えて下さい。
◎お答え
 校長の選出ですが、校長は教育長が任命します。父母諮問委員会などが指名することはありません。校長になる者は、そのための資格要件を持っていることが先決です。学校行政学の修士号を持つこと、教師経験があることが必須の要件です。当然教育行政法に精通し、問題解決能力があること、博士号を持つ校長も少なくありません。校長に選ばれる者は、書類審査の他に教育委員会において面接を受けます。このとき、父母諮問委員会の委員が入ることは考えられます。なお校長の年齢は大事な要件ではありません。30代の校長もたくさんいます。校長は、教育委員会の行政官より権限は少なく、地位も低いのです。この点は我が国とは異なります。

●質問5
 高等学校においてインテグレーションを考えると、とりあえず普通高校に特殊学級を置く、というイメージなのですが、日本の高校は偏差値により輪切られているので、インクルージョンなど遥かかなたという感じがするのですが、アメリカの高校は、やはり学力別にわかれるのでしょうか、それとも地域の学校へかよって、様々な選択授業がある、といった様子なのでしょうか。お答えをいただければ幸いです。
◎お答え
 アメリカの公立高校は、学校区制をとっています。成績の偏差値による選抜はありません。ただ、生徒の住む地域や住民の所得差などは、学校によって歴然と現れます。下町の公立高校の生徒の学力は、郊外の裕福な地域に住む生徒の学力とで違います。問題も下町の学校に多くなります。最近は、生徒が学校を選べる制度が増えています。学校区以外の学校へ行ける制度です。問題のある学校は、敬遠され生徒が減りますから、学校長も教師も懸命に努力することになります。廃校になると、教師は職を失うことになりかねません。そうした雇用契約を結んでいるところもあります。  公立高校のインテグレーションは、主として知的な発達障害が少ない軽度の生徒に見られます。車椅子の生徒は通常、普通高校で学びます。バリアフリーの建物であることは当然です。

引用文献
・落合俊郎監修(1997). 世界の特殊教育の新動向. 日本精神薄弱者福祉連盟.
・US Department of Education(1997). To Assure the Free Appropriate Public Education of All Children with Disabilities. 19th Annual Report to Congress on the Implememtation of The Individuals with Disabilities Act.

 

パソコンバンクコーナー

パソコン提供と支援の仕方について
 明石市 山平喜一郎 k-yamahr@psn.or.jp

 いろいろな方よりパソコン寄付の申し込みがあります。それらを読みながら、難しい問題であるなと思いながら自分の考えを整理してみました。今後も同じようなケースが出てくると思いますので、私の考えを申し述べます。
 パソコンバンクは「障害児にコンピュータを利用した教育をしたいが、経済的な理由からコンピュータや周辺機器を購入できない個人または学校」を支援する(パソコンを送る)ことになっています。ここで、「障害児にコンピュータを利用した教育をしたい」と考えるのは支援を受ける側ですし、「経済的な理由からコンピュータや周辺機器を購入できない」と判断するのも支援を受ける側です。すなわち経済的な理由があるので支援をして欲しいという申し出があれば、断わる理由はないのです。したがって、これまでに支援の依頼があった場合は、上記のパソコンバンクの支援方針確認の意味で伝えて、「経済的な理由があるのであれば支援いたしますが、どうでしょうか?」という意味のことを婉曲にあるいは直接的に伝えてきました。そうしませんと、我も我もと支援依頼が来て対応できなくなることが予想されたからです。同時に支援することになった場合のことを考えて、障害の種類や程度、将来どのような能力を付けさせたいか等も併せて聞いております。
 その結果、多くの場合、その問いかけに対する回答が戻って来ません。推察しますに、「経済的な理由」という条項があることが判った、あるいはパソコンバンクには無尽蔵にパソコンがある訳ではないことが判ったのではないでしょうか。一方でこちらから出した文章にまずい点があったのではないかという疑念もあります。
 こちらからの問いかけに答えて、支援を希望された場合に、今度はバンク側の判断で、二つのレベルに分けて支援を実施してきました。通常のレベルは送料は依頼者負担、ソフトや周辺機器が必要な場合も依頼者負担、さらにバンクへの金額任意の寄付をお願いするというものです。特別なレベルとして、生活保護家庭で障害児がいる場合や重度の障害児が2人以上いる場合には、全ての費用をバンクで負担するというものです。
 したがいまして、基本的には依頼者の自主的判断による依頼の事実上の取り下げがなければ、これまでは支援を実施してきております。申込者が「経済的な理由」という条項をご存じか否かはわかりませんが、もし、知っていて支援を希望されるのであれば、支援すべきであると思います。外から見ても家庭内の実情は判らないからです。例えば「ドーマン法の訓練を家庭で毎日行う」という家庭からパソコンの申し込みがあったとします。かって私が横浜に住んでいたころ、娘もドーマン法の訓練に藤沢まで行っておりました。費用は1回5万円でした。パタニングを行うには本人以外に3人必要です。両親だけでは足りないのです。
 たとえ経済力があっても希望されるなら、在庫がある限り支援して行きたい、むしろ、いかに在庫を増やすかに知恵をしぼりたいというのが私の思いです。

 

修士論文「発達遅滞児に対する画像刺激を用いた文章表現力の形成」

兵庫教育大学大学院障害児教育専攻 (宮城県仙台市立第一中学校)
   曽根秀樹 sohideki@edu.hyogo-u.ac.jp

 発達遅滞児には,学童期を過ぎても一語文どまりの言語発達を示す子どもが多数いる。養護学校に通っている中度発達遅滞児にも,言語発達が全般的に低い者がおり,言語指導法も課題が多く,発達遅滞児の言語獲得の困難さの指摘がされている。  現在では,そうした子どもたちに対する様々な言語指導法が研究されているが,必ずしも研究者・実践者に共有されていない傾向がある。それゆえに,親,学校,施設における経験主義的な言語学習指導方法だけでなく,系統的な言語学習指導法が重視されている。
 発達遅滞児の言語発達のさまざまな研究や指導実践事例を考察した結果,言語の獲得においては,一語文から二語文の名詞の獲得から動詞の獲得に懸隔があり,発達遅滞児はもちろん,健常児においても困難を示すことが報告されている。  言語指導の実践例を考察すると,通常の言語形成プログラムにおいては,二語文の形成においては,ほとんど絵カードや写真カードなどの静止画が用いられてきた。このような刺激は,絵(写真)と単語との一対一対応がつきやすいという点で,訓練初期には有効であると考えられる。二語文から多語文の形成については,使われる学習材料の属性が,指導の重要な要因となることが明らかになっている。静止画よりはむしろ,ビデオ動画が有効性ではないかという指摘もされている。動画上の素材は,日常場面との類似性が高いので,学んだことを般化させやすいということも報告され,動画刺激の有効性が注目されている。
 新教育機器と呼ばれるコンピュータを用いた学習場面では,発達遅滞児自身が学習プログラムを操作することが可能であり,そのことによって意欲的な学習活動を誘発するという報告もされている。コンピュータは,「学習者の注意を集中させやすい」「音声・映像などの多方面からの刺激が学習者に強い印象を与える」「学習者が操作できる」ということが特徴である。
 そこで本研究では,学習場面における教育機器として期待が寄せられているコピュータを用いる言語指導に注目した。ここでは,発達遅滞児に対してコンピュータによる画像刺激を用いて構文形成教育訓練を行い,それがどのように獲得され,般化するかを検討することを目的とし,次のような実験課題を設定した。

 1)基本的な構文が対象児に獲得されるのかの検討
 2)基本的な構文で機能内に般化が成立するかの検討
 3)学習された構文で機能間に般化が成立するかの検討

 本研究では,言語発達に遅滞を示す3人の対象児を選び,次の4つの過程で実験が実施された。

 1)普段の文章表現のベースライン値の測定
 2)画像刺激を用いた文章表現力のベースライン値の測定
 3)コンピュータによるプログラム訓練
 4)般化テスト

 実験の結果,発達遅滞児の文章表現力の形成のためにコンピュータを用いた画像刺激による訓練を試み,対象児3名について所期の実験課題は達成された。
 学習された構文が客観的に般化しているかを,20名の大学院生に訓練前・後の作文を評価してもらい,おおむね良好な結果を得た。しかし,E.S.児の自由作文の項目では,訓練前の作文の方が,訓練後の作文より高い評価を与えた人が多かった。自由作文をみてみると,訓練後の作文は接続助詞を多用し,一文あたりの字数が多くなった。本人は詳しく書いたつもりではあるが,読み手として読みづらい文になったようである。作文というのは,読み手がわかるように表現しなければならないことや文章の推敲の重要性を示唆している。
 訓練前・後の作文を比較してみると,全体の字数や一構文あたりの字数に増加がみられた。それに伴い,助詞の出現が多くなったり,使用する構文の種類に幅がでてきた。さらに,感想が増え,自分の気持ちや考えを表出できるようになった。字数や感想が増加したことは,それだけ周りの出来事を把握し,自分の中で文章表現の処理を行い,表出ができるようになったと考えられる。
 以上のことから,画像刺激が発達遅滞児の文章表現力の形成に有効であることが判明した。しかし,実験上の手続きについては,対象児の言語の発達段階を鑑みた課題の精選や実験条件の設定に課題を残した。さらに,コンピュータ上の構文形成教育訓練だけでは,作文の内容が深まらず,話法,態,副詞句等の訓練が必要であるということが判明した。
 発達遅滞児は健常児とは異なり,言語環境の変化に適応していくストラテジーをもちにくいので,指導する者の適切な介助を必要とする。言語指導においては,例えば,自然な場面の設定や,対人的な相互交渉を強調しながら学習できる配慮が求められる。発達遅滞児が,大人や健常児との関わりを共有する活動のなかで言語やコミュニケーション能力が育まれる。さらに,学校教育と家庭教育が連携することが,発達遅滞児の言語指導の効果を高める要因となる。そうした言語指導の環境によって日常への般化も容易になり,コンピュータもこうした場面において介在することにより,言語生活全般が活性化されてくると考えられる。

提示刺激の画面

 

皆さんからのお便り

●明けましておめでとうございます
 都留 晋 神戸市立枝吉小学校あじさい学級 PXU04615@niftyserve.or.jp

 パソコンバンクの皆様明けましておめでとうございます。昨年は、いろいろとお世話になり、ありがとうございました。今、子どもたちは、休み時間になると6人で奪い合うようにマウスを持って、ゲーム(MES CD-ROMの中からもたくさん入れさせてもらいました。)で遊び倒しています。たまに学習の時間に、「今日はパソコンしようか。」と言うと、目を輝かせて、びっくりするほどの集中力で取り組みます。電源のオンオフのしかたやマウスの操作のしかたができるようになったので、今年は、学習の中での活用方法を考えていきたいと思っています。思いもよらず身近にパソコンに親しむことができるようになって、子どもたちもとても喜んでいます。私も、情報機器利用についての研修の機会を得られたこと、とても感謝しています。今後ともよろしくお願い申しあげます。

●A Happy Year Year
 前田吉秀 福井県特殊教育センター CXK03617@niftyserve.or.jp

 一昨年は、研修講座で大変お世話になりました。おかげさまで、昨年の「障害児の教育工学実習」の研修講座では、ウチのセンター所員によるパソコンを使った研修講座を開催することができました。障害者用のソフト・タッチパネルやインテリキー等の入力装置の紹介を始め、インターネットの体験、学級通信・学級カレンダー作り等かなり盛りだくさんの内容で受講者の方々に参加してもらうことができました。
 また個人的ではありますが、昨年11月に金沢でありました「全国特殊教育研究大 会」の受け付け付近で、1997年版MES自作教材集を販売していたので一緒に参加した人とそれぞれ1枚ずつ購入しました。Hybrid版になっていたので驚きました。今後も楽しみです。

●A new book published
 福島 勇 福岡市立南福岡養護学校 sam@i-kyushu.or.jp

 当方、障害のある子どもたちの教育にかかわりはじめて10年目になります。節目の年に当たり、気持ちを新たに取り組んでまいりたいと存じます。昨年同様、ご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。私事になりますが、昨年11月に、拙著「デキルことを活かすシンプルテクノロジー(1500円)」を、こころリソースブック出版会(Tel050-754-8525、Fax087-837-4800)より出版していただきました。この本には、障害のある人々が自分の得意な動きを利用して能動的に生活していくための工夫をまとめさせていただきました。是非ご一読いただき、ご助言くださいましたら幸いに存じます。

●ご挨拶
 上農 肇 金沢市教育センター教育相談部 reg71998@biglobe.ne.jp

 ろう学校14年勤務の後、1年の難聴通級指導教室担当を経て、現在金沢市の教育センターで研修指導主事をしております。主に障害児教育相談を担当しておりますが、調査研究では「学習障害」についての研究プロジェクトに係わっております。どうぞよろしくお願い致します。

● 謹賀新年
 高橋武三 兵庫県立いなみ野養護学校 AHD94489@biglobe.ne.jp

 旧年中はお世話になりました。新年も宜しくお願いいたします。昨年、大石先生より回していただいたFM-TOWNSは、県立いなみ野養護学校の高等部3年E組の私の教室のパソコンラックに納まっています。生活単元学習の「お楽しみ会」のときに、CD-G(画像と歌詞付きCD)でカラオケをしたり、ことばのグループ学習(国語)のときに市販ソフト「ひらがなのえほん」を使って学習したりして活用させていただいたいます。特に、一人のダウン症の女子生徒はこの「ひらがなのえほん」が気に入って、休憩時にも楽しんでいます。また、CD-Gも昼休みなど人気です。学校での理解はまだまだですので、今年も少しずつですがコンピュータ利用教育の伝道を続けていこうと思っています。

●肢体不自由児のコミュニケーションに
 加藤圭子 府立岸和田養護学校 JCD01100@niftyserve.or.jp

 明けまして、おめでとうございます。今年は暖冬で、社の方も例年に比べて暖かい正月をお迎えになったのではと想像いたしております。しかし、六甲は寒いでしょうね。昨年はいろいろお世話になり、ありがとうございました。内地留学を終えてからも、皆さん方との情報交換ができ、常に新しい知識や刺激を受けることができるのも、一重にMESのお陰と感謝いたしております。肢体不自由児のコミュニケーション等の支援を、パソコンを 用いてどのように実現できるか、今年も実践を深めていきたいと思っています。

●あけましておめでとうございます
 宮田宜浩 栃木県立今市養護学校 RXN02604@niftyserve.or.jp

 あけましておめでとうございます。98年正月をいかが過ごしていますか。私は雪がなくてちょっと欲求不満です。またMac Expoの季節がやってきましたね。いつもはお会いできない先生方に会えるのでとても楽しみです。しかし今年は第3週なので去年のように泊まりで参加できないかもしれません。(私はまだ学校の中で一番年下なので二日連続で年休は取れません)それでも1日は必ずお手伝いに行きたいと思いますのでそのときは宜しくお願いします。それでは幕張でお会いしましょう。

●年末にPOWER BOOK1400Cを奮発
 西谷啓三 堺市立百舌鳥養護学校  VFF13746

 今年は例会にはあまり顔を出せませんでしたが、それでも毎回メールの案内をいただき ありがとうございました。一度勤務校の同僚を連れて例会に行った時には、暖かくその同僚をむかえていただきその同僚は感激していました。私も連れて行った甲斐がありました。その同僚鈴木先生に会えたことが良かったと言っていました。私自身は学校内で勤務外にパソコン初心者の教職員を対象にしたパソコン教室を今年度 開設したところ、結構盛況でキー操作やワープロ文書作成等楽しみながら、取り組んでくれています。私自身もそんなにパソコンには詳しくありませんが、その方々とともに来年も続けていけたらいいなと考えています。でもパソコン貧乏のどろ沼にはまっていきそうな感じもしています。年末にPOWER BOOK1400Cを買ってしまいました。それでは来年もよろしく御指導のほどお願い申し上げます。

●1998年元旦
 筱 更治 奈良県立志貴高等学校 sh-shino@kcn.or.jp

 旧年中は、大変お世話になり、ありがとうございました。先の3月までは兵庫教育大学で、生徒指導・学校カウンセリングにかわる2か年の大学院での研鑚をさせていただき、教員生活の進める上で大変意義ある期間でした。
 そこでは多くの方々に支えられて、時間制限心理療法を援用した学校カウンセリングモデルの構築、を題目とする拙論をまとめることになり、研究仲間と共に、2月、米国での学校カウンセリング・障害児教育・情報教育の一端に触れることとなりました。
 4月からは、職場、奈良県立志貴高等学校において、教科指導(数学・情報数理)の傍ら、生徒指導・教育相談係として生徒の指導にあたり、場面緘黙の子どもを始めとして、定期的な面接を重ねました。また、日本カウンセリング学会では、調査研究にかかわる口頭発表や栃木でのワークショップなど、継続して課題と取り組む日々でありました。
 これらも生徒や保護者の方々、職場や大学での同僚、管理職の先生、地域の方々、そして大学院での教授・助教授あるいは講師・助手の教官各位による有形無形の指導のおかげと感謝しております。
 本年は、目標・期限を明らかにして、さらに自らの課題に取り組む日々としてまいる所存です。また、50歳台を目前にした一つの区切りの年であり、重みを感じています。どうぞ、また昨年以上にお引き立て賜りますよう、お願い申し上げます。寒さが厳しくなる季節です。どうぞ、無事故で、ご健康で、幸多き年をお送りいただきますよう、祈念いたしております。

●虎年正月
 舞薗恭子 VY2K-MIZN@j.asahi-net.or.jp

 明けましておめでとうございます。昨年は、コンピュータが故障し、ついにCentris650からPowerMac7600に乗り換えましたが、腕のほうはいまひとつでした。グリーンをつかって子供たちの作品集をつくったり、インターネットの環境がやっと整ったりという程度でした。今年は、教材の一つも作れるようになりたいものと思います。よろしくご教授の程、お願い申し上げます。

●今日からおぐりも業務を始めました。
 小栗 信 和歌山大学教育学部附属養護学校 ogurim@center.wakayama-u.ac.jp

 今年は本校だけでなく、外へも目を向け、ネットを広げる年にしたいと考えております。具体的にはまだまだ思案中ですが、「障害児・者」「インターネット」「コミュニケーション」そして「バリアフリー」をキーワードに勉強し、動いていきたいと考えています。そのためのも皆様のご支援が必要です。なにとぞ、この一年も力をお貸しくださるようお願い申しあげます。

●New Years Greetings
 伊藤可主也 HGC02705@niftyserve.or.jp

 当地、長野でのオリンピックの年が明けました。昨年は、昭和63年の開校以来8年半に渡り勤務した安曇養護学校を離れました。新しい学校の中身を作る時期に立ち会えたこと、子どもや保護者の方々、先輩、同僚、たくさんの方たちとの出会いがあったこと、卒業後のおつき合いも含めて、一人ひとりの成長にじっくりと立ち会うことができたこと。自分にとって初めての障害児教育の場であったこと、、等々。思い出は数えきれず、最後まで立ち去りがたく後ろ髪を引かれる思いでの移動となりました。
 11月に安曇養護学校の同窓会のホームページ(http://www.avisnet.or.jp/~kaztotro/anyoh.html)を立ちあげるたのも、自分を育ててくれた感謝の気持ちからでした。4月からは、初めての小学校の経験、それも情緒障害学級の担任ということで仕事の中身をつかむのにすでに9ヶ月を費やしている感じです。普通学校で障害児教育をしていくことの難しさも実感しました。新年を迎えて、心構えを新たに「個々のニーズに応じた教育を実現する学級」という立場で、できることからがんばっていこうと思います。
 パソコンの障害教育の利用については、古い機種を寄せ集めながらも個別学習の適切な動機づけとなったり、障害児学級ならではの手応えを感じました。NIFTY-serveの障害児教育フォーラムを通じて寄付していただいたパソコンを市内の別の障害児学級に寄贈することができたり、特殊学級担任者会の中でもパソコンを利用していきたいとという声が出てきました。F社の伊藤さんの協力で、伊藤さんが開発された「キッズタッチシリーズ」の紹介をすることもできました。ニーズはあるが、ソフト、ハードの情報が不足しているという状況を何とかしていきたいというのが、変わらぬ今年のテーマになりそうです。
 総合教育センターではOMOとhtmlを使った教材作成について複数で研修を始めました。自分のせいで作成が遅れてしまい、なかなかこちらは深まらないうちに、結論を出す発表の月が近づいています。作成はMacでも、利用はWindowsでもOKというOMOの存在は貴重です。
 もう一つ県教委の進める「特殊教育(実践事例)シリーズ」の原稿書きも仕事になった半年でした。経験も少ない自分がQ−Aコーナーを担当したりしましたが、それはさておき、過去の40冊弱出ている本シリーズが、公式な形で県に保存されていないことにも驚きました。専門性の必要な特殊教育の分野で、web出版など利用しやすい形での資料の整備も必要なことと感じた一年でした。
 内地留学時代からいっしょに勉強させていただいている信州大学小島研究室でのAAC研究会の方には、あまり顔を出せない一年でした。しかし、今年は長野市を会場にATACがあるということで、アシスティブテクノロジーについてもしっかりと勉強していこうという意欲だけは燃やしています。
 自分にとって課題山積みの新年に思えます。が、今年の自分の目標は「もてなし」(^^;です。どうも、自分のペースだけを考えことを急ぎ、出会いの時を大事にしていない自分を反省して、より他の人から学ぼうと決心しました。
 皆様、本年もよろしくご指導、おつき合いのほどお願いいたします。なお、9月に立ち上げたホームページに書き込み可能な掲示板を設けました。よろしかったらぜひ、お立ち寄り、落書きしていって下さい。URLは、
http://www.avisnet.or.jp/~kaztotro/index.htmlです。

●「障害児の教育工学実習担当
 滝川国芳  福井県特殊教育センター takigawa@sip.interbroad.or.jp

 今年度の研修講座事業で「障害児の教育工学実習」という講座を担当しました。初任者研修を兼ねた講座だったので、パソコンはむずかしくない、おもしろい、障害をもったお子さんには役立つtoolになる、こんなに興味をもってくれる教材も簡に!?作れる、ということをお伝えしたいという思いで企画運営しました。内容としては、以下のようなものでした。
・テレビ視聴
 NHKメディアと教育ーインターネットで出会いの場を・障害児教育とマルチメディ アー他(ここのメンバーの成田さん、太田さん、小塚さん、前さん登場)
・教材紹介を含めたお話 「障害児教育とテクノロジー」
・実習「パソコンとその周辺機器を使った教材づくりなど」
  インターネットしませんか
  画像の取り込みあれこれ
  やってみようエデュテイメントソフト
受講された先生方に記入いただいたアンケートには、次のような反応がかえりました。
・パソコンを使って今すぐにでも実践できそうな子どもがいる。
・パソコンがほしくなった。
・パソコンを使って子どもがいきいきと活動しているのを見て、必要性を感じた。
・パソコンの楽しい利用法があることがわかった、さっそく学校のパソコンを触って みたい。
・子どもが能動的に活動できる教材開発の必要性を改めて感じた。
・実用的な研修で楽しかった。
・いろいろな機器やソフトの存在を知ったが、学校の設備だけではそこまでできない。
・障害児教育にとってパソコンがいかに必要なものであるかがわかった。
・パソコンは鉛筆やノートと同じように有効な表現手段になる。パソコンを使うことで今まで見えなかった子どもの気持ちが見えてきたらとてもすごいことだと思う。
・パソコンが身近に感じた。
 以上のようなコメントがありました。午後は、適宜休憩をとるようにしたのですが、ほとんどの方が休憩なしに夕方までパソコンにむかっておられました。これからも研修の内容を充実させていきます。

●元旦六甲登山
 成田 滋 兵庫教育大学 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp

 元旦は六甲山へ行って来ました。一行は、院生やフリッピンからの留学生の4名でした。阪急芦屋川駅の近くに車を停め、高座の滝を過ぎて、ロックガーデンという見晴らしの良いところを過ぎました。そのあたりから雨が降り始めました。全員大晦日のdinnerとアルコールと睡眠不足がたたり、10分おきに休憩という異常な登山でした。芦屋カントリークラブの脇をとおり、おたふく山の手前、雨ヶ峠という休憩所で道は二つに別れました。標識が不明なので右手の「太陽と緑の道」という悩ましい名前のルートを行くことにしました。15分で東おたふく山の頂上です。それを降りて北山を経て六甲山の頂上にいくはずでした。途中崖くずれで迂回を余儀なくされ、同行の留学生が自嘲気味に名付けた「自殺崖--Suicide Cliff」を這いあがって行きました。雨はやまず、全員びっしょりです。慣れないコースに悪戦苦闘、六甲山の手前にある北山を偵察の結果、山頂まではさらに1時間はかかるという道の険しさでした。雨ヶ峠では左のルートをとるべきだったのです。これが分かれ目でした。
 そこで登山隊長は、もはやこれまでと下山を決意。芦有道路という有料道路にでるまで30分、灘区に住む院生に携帯電話からSOSを出そうとしましたが失敗。仕方なくバスを30分待ちながら遅い昼食となりました。そしてようやく芦屋川駅に帰りました。苦闘4時間の元旦六甲山登山でした。
 ですが、今回の元旦登山の本来の目的は有馬温泉。そこで目指す有馬温泉ヘルスセンターで90分も湯に浸かり、浴場内で動作法を留学生から学んでご機嫌でありました。そんなわけで、今年も体力は大丈夫だという自信がつきました。院生にはびしびしやれそうです。 (^^;)

今年もがんばるぞ〜。
あ〜,疲れた。

以下の方々よりも賀状をいただきました。敬称略します。
Ray Myers 合衆国連邦教育省 ray_myers@ed.gov
松田知之 横浜市 tmatsuda@seaple.icc.ne.jp
吉利宗久 鳴門教育大学 大学院 yoshitos@naruto-u.ac.jp
山平喜一郎 パソコンバンク k-yamahr@pop.psn.or.jp
栢木隆太郎 大阪市教育センター VZZ06370@niftyserve.or.jp
小塚雄一郎 七尾養護学校 koduka@po.incl.or.jp
森 孝治 鎌倉養護学校 morikoji@aol.com
前田俊幸 パソコンバンク PXE00631@niftyserve.or.jp
檜皮 修 大津市立仰木の里小学校 hiwada@mbox.kyoto-inet.or.jp
前田卿子 静岡医療福祉センター sifc@fuji-mt.or.jp
神尾敦男 長野県総合教育センター a-kannoo@edu-ctr.pref.nagano.jp

●震災を振り返って
 大前洋介 京都教育大学特殊教育専攻科 omae@wsml.kyokyo-u.ac.jp

 神戸市立垂水養護学校の大前です。神戸は大震災から3年がたちました。幸いにも私自身は自宅マンションも一部損壊ですみその後の生活にもほとんど影響なく過ごしてこれました。この3年間、障害児教育や情報教育といった分野でも震災関連の報告や防災への提案などをよくみかけます。
 しかし、場所としては震災の中にいた人間が、そんな文を読んだとき実感がなく、 他人事みたいな気分になることもあり、不思議です。ちょっと震災のころの心境を振り返ってみます。最近よんだパソコンボランティアの本にもパソコンのネットワークの力で垂水養護学校を支援した話がのっており「おーそうだったのか。」と思ったものです。このメーリングリストのメンバーの大石先生(当時、垂水養護学校)も、そんな活躍の中心だった人で、モデムをつないで遠隔地に支援の要請を発信されていたということをご存知な方も多いはずです。
 一方、垂水養護学校から離れた神戸の東に住んでいる私は震災がおきたとき何が何だかわけがわからず、近くは燃えているのに消防車は来ないし、テレビは使えない、電話、電気も使えない、「ラジオの電池が切れたら情報がわからなくなって終わりや」という気持ちでラジオのスイッチを何度も切って節約しながら、その日の夜を過ごしたのを覚えています。2日目の未明、「近くのガスタンクが破損して、爆発の危険があるので逃げて下さい。」という宣伝カーの声に起こされ、家を後にして大勢に混じって、のこのこ歩いて避難したものです。情報が錯綜し、誘導もだれが中心に指揮しているのか分からず混乱していました。
 あのとき公衆電話の回線は使えていたかもしれませんが、10円玉をいれすぎて、それ以上硬貨をいれられずに使えなくなった公衆電話が多かったです。公衆電話を管理する店の人も避難していたのでしょう。硬貨を電話からとり除くことができなかったのだと思います。
 情報機器とは意外なところでもろいものだなと、このとき思ったものです。これに始まり震災のときは「電気より電池が神様」という意識や、「コンピュータってのは、電気がなかったら無力やな」とか。
そのころ大石先生の努力で垂水養護学校は機器を使った教育をとりいれ、効果が現れつつありましたが、私自身は、教育の中でコンピュータを利用してきたことに対する一種の不信感というかそんなものが芽生えました。不信感へのぐちを大石さんにも言っていたと思います。
 このあたり情報機器をつかって児童・生徒のために危機的状況をのりきっていた大石さんとは、まったく対照的だったのを思いだします。(大石さんはこのとき倒れてきたタンスから家族を護るため身を張って肩を骨折してたにもかかわらず。)大石さんが活躍されていた震災直後2週間ぐらいは、交通手段や自分への余裕がなくて、学校へも行けていませんでした。ここに述べたような心境は、震災直後だけそう思ったのでしょう。今は、不信感などありませんが。

●神戸市防災教育研究発表会に参加して
 鵜飼 博 愛知県立春日台養護学校 hiroshi_ukai@ma3.justnet.ne.jp

 1/13-14日に神戸市防災教育研究発表会に伺いました。震災の体験からの研究実践の報告からは、すべて報告者の熱意が伝わりました。避難したものの、障害への配慮まで手が回らない状況のなかで体調を崩して亡くなった方々の状況を耳にし、涙しました。
 会場の中で「安否確認」と言うことが話題になったとき、視覚障害者(盲学校)が最も早くできた。−ネットワーク(広義の)が日常から確立していたから早かった。と言うことを耳にしました。大石さんが活躍されたのもこの部分なのでしょうね、頭の下がる思いです。私もあと2時間遅く地震が起きていたら・・・、愛知県で起きていたら等々・・・3年前と同じ思いが巡りました。「盲・養護学校 地震対応マニュアル」もいただきました。
 さて、私の職場でも飲料水とクラッカーの備蓄をすすめたり、大地震を想定した避難訓練を含め、いろいろな想定で年に11回の避難訓練を行たりしていますが、一人一人の幼児児童生徒の状況と必要な配慮について、いつ緊急事態が発生してもその子の周囲にいる人間が把握して、対応できるかどうかまだまだ課題はあるなと言う感じです。学校の職員と保護者だけでは到底難しい課題です。
 スクールバスの運行中に被災したらどうするか?と言うことと、公共交通機関による自力単独通学途上に被災した場合の対応、例えば個人の情報を周囲に伝え、助けていただく事をどのように進めるか等について早速研究し、来年度から対応したいと考えています。また、ネットワークという点については今後の課題です。このことに関することで皆様のご意見をいただけたら幸いです。
    付け足しですが、帰りのバスの中での地元の女性が「もう3年経ちました」「忘れたいのに、思い出したくないのに毎年イヤですな・・・」と言ってみえました。2日間よそ者がおじゃましましたが、神戸のいろいろな方にどこでも親切にしていただきました。夜の三宮は活気が戻りましたね (^_^)/~

●心身障害児総合医療療育センター
 瀬下 遥  情報ネットワーク ssm-ml@dns.ryouiku.or.jp

 当センターの公式ホームページが公開されましたのでご案内いたします。
当センターは障害をもつ子どもの医療、福祉施設として比較的伝統のある施設であり、他の同様施設への波及効果も期待できると思います。療育において公開すべき情報について、外部からの忌憚ない意見をいただくことが、情報通信基盤整備にとって一番の刺激となります。URLは以下です。http://www.ryouiku.or.jp/ ぜひ、障害児教育などの立場から、当ホームページへの忌憚ないご意見をメールなどでお寄せください。いただいたメールは、当センターの情報ネットワーク管理委員会、幹部会議等の意思決定機関に確実に伝え、改善をはかっていくよう、担当者として努力していきます。よろしくお願いいたします。

 

新刊書の紹介

合衆国障害児教育に関する議会への年次報告書
「To Assure the Free Appropriate Public Education of All Children with Disabilities. 19th Annual Report to Congress on the Implememtation of The Individuals with Disabilities Act」(アメリカ連邦教育省発行、1997). 500ページ.

 毎年、合衆国の障害児教育の施行状況が議会に報告されます。その第19回目の報告書が出ました。
 第一部では、子どもの教育をめぐる環境的な要因、教育改革や学校改革の経緯の中での障害児教育、教育予算、貧困と子ども、薬物使用と暴力などが触れられています。
第二部は、生徒の特徴として早期教育の内容、障害児措置の立法、注意欠陥-行動障害に焦点が当てられています。第三部では、教育措置の内容に言及し、最も制約の少ない教育環境の分析、障害の鑑定、家族と教師のパートナーシップ、指導案、テクノロジーの活用、教育措置の選択などが考察されています。第四部は総合分析結果となっています。
 この報告書の要約部分は、日本文にて2月末にwebにて掲載します。なお報告書を借りたい方は、80円切手10枚を同封して事務局まで申し込みください。

市販教材の紹介

「ORGOTTO-オルゴット」
 この教材は、文字や音声の説明がなくても音を聞いて考えたらわかる仕掛けになっています。「耳で聞きながら音を並べていく」感覚で音楽が作れます。「どうぶつのおなら」「どうぶつハーモニー」「赤ちゃんの部屋」「メロディーボール」「デスクトップオルゴール」の五つからなります。音を感じて聴くハートが音楽につながる、というフレーズがあります。
開発元: メガソフト(株)6800円

オルゴットの画面1
オルゴットの画面2

埼玉の障害児教育とコンピュータ利用を考える会の会報がwebでご覧になれます。

NO 43  1997.12.14 代表:斎藤明朗
事務局:和光養護学校 和光市広沢4-3 048-465-9770
   櫻井宏明 HGE03206@niftyserve.or.jp
  桜井〔青りんご)のホームページのURL:
 http://www.bekkoame.or.jp/~shiroaki/

それでは来月号の会報をお楽しみに。