1996年8月の会報です。

障害者とコンピュータ利用教育研究会のホームページ




目次

第73回関東例会のお知らせ 第73回関西例会のお知らせ ACE Centre(Aids to Communication in Education)を訪ねて 1995年度アメリカ合衆国の小中高等学校における先端通信技術利用の現状について MES九州例会in福岡を終えて 第72回関東例会の報告 天狼 & ディル in Madison THE MAGICAL TOY BOX 皆さんからのお便り 文化としての遊びと科学技術 兵庫教育大学インターネット上での大学公開講座

673-14 兵庫県加東郡社町山国2007 兵庫教育大学 学校教育研究センター 0795-40-2205 phone Email:成田 滋
Web上の会報URL:MES会報 


MacCity in Fukuoka 7/19-21/1996より  ・家族連れが多かった  ・ブースの賑わい  ・説明に汗だく  ・幹事の小宮幸三さん  ・親の会の大森裕一さんら  ・長崎大附属養護上田文啓さん家族

第73回関東例会のお知らせ

始めての方を特に歓迎する例会です。ご家族連れで是非おいで下さい。
◎日時 199年8月10日(土)2:00--5:00PM
◎会場 東京都立光明養護学校
   156 東京都世田谷区松原 6-38-27
03-3323-8421
◎交通
小田急線「梅ヶ丘」で下車し、北口に出ます。そのまままっすぐ北に進むと郵便局の角にくるので、そこを左に曲がると「光明養護」の交差点があり、右斜め前が光明養護学校です。
03-3323-8421
◎お世話役 光明養護学校教諭 金森克浩氏
光明養護学校のホームページ

第73回関西例会のお知らせ

 昨年度も実施しご好評をいただきました研修を今年も行います。
◎日時
    8月22,23,24日(2泊3日)
            8月22日(木)   午後1:00〜4:00
            8月23日(金)   午前9:30〜12:00 午後1:00〜4:00
            8月24日(土)   午前9:30〜12:00
◎目的
 1. ネットワークの意義と活用方法を学ぶ。
 2. インターネット上のワールド・ワイド・ウエッブ(World Wide Web:WWW)など情報検索や発信機能を使い、障害児教育関連の情報を得る。
 3. WWW上のホームページの作り方を研修し、情報発信のインターネットの活用の仕方を体験する。
 4. Oracle Media Objectによる教材の作り方を学ぶ。
◎会場 兵庫教育大学 学校教育研究センター
◎講師
   上谷良一(兵庫県教育研修所)
 太田容次(滋賀大学附属養護学校)
 大杉成喜(滋賀大学附属養護学校)
 多田幸浩(大阪市立聾学校)
 Mark Taylor(兵庫県加東郡教育事務所)
◎宿泊 兵庫教育大学 ゲストハウス
◎対象  障害児・者の教育/福祉に携わっている人々、その他。
◎定員 15人(先着順、あと4名で締め切りです。)
◎申込方法 インターネットメール、葉書など。
◎申込締切 1996年7月31日厳守
◎問い合わせ・申込先 673-14 兵庫県加東郡社町山国 2007
 兵庫教育大学 学校教育研究センター
 成田 滋
 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp
 niftyserve: MGH00175

ACE Centre(Aids to Communication in Education)を訪ねて

 兵庫教育大学 成田 滋 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp MGH00175
 ロンドンから西北に電車で一時間でオックスフォードに着きますが、そこにあるACE Centreは、主としてコミュニケーションに障害のある子どもや大人の診断、教育、療養、職業訓練、各種のワークショップ、教材開発と出版、教育資源の収集・普及、コミュニケーション・エイドの貸出しなどを行う総合的な機関です。このたび、スコットランドの北部にあるダンディという町の研究所で研究する香川大学の中邑賢龍氏を誘ってこのセンターを訪ねました。
 我が国は、アメリカなど北米の影響を受けがちなためでしょうか、それほどイギリスの障害児教育は知られていません。ですが障害児教育は長い歴史と伝統があります。この国も障害児教育は、いくつかの転換点を経て今日に至っています。その最たる出来事は、障害児の教育を全面的に保障したウオーノック報告の影響です。これをきっかけとしてイギリスは、障害児と親への全面的な支援が行われることになります。アメリカの全障害児教育法の考え方に大変似ていて、最も制約の少ない教育環境である「統合教育」や「特別な教育ニーズ」が強調されてきました。また、診断から教育計画やその評価に至るまでの親の果たす役割が強調されています。我が国の分離型の障害児教育の見直しに、今も影響を持ち続けています。
 さてACE Cetreです。ここの働きは知る人ぞ知るのですが、残念ながら教育関係者にはさほど知られていません。それもそのはずです。研究者の場合は大概、大学や研究機関にでかけるからでしょう。ACE Cetreを我が国に広く紹介したのは、このセンターと長いかかわりを持つリトミックの実践で知られる玉野教育研究所ではないかと思います。また小児自閉症の研究者である佐々木正美先生もこのセンターと関わりが深いといわれています。玉野教育研究所の玉野先生は、ご自分で教育研究活動をされているユニークなお方です。この研究所が1989年に主催したコミュニケーションエイドのワークショップが東京と横浜で開かれたときに、言語治療士であるMs Gillian Nelmsさんを講師としてお招きました。私は、そのとき彼女の講演を通訳させていただきました。彼女とはそれ以来のお付き合い、そしてずっとACE Centreの働きに注目している一人です。
 思うに研究活動というのは、人と人とのつながりそのものでして、これなしには研究者や研究機関とはスムーズな関係を持つことができません。この関係はいわゆるコネです。英語でコネとか人脈のことを「Old Boy Connection」といいます。コネというのは、我が国の特許では決してありませんで、どこの国でもこの人脈は人間関係や仕事をスムーズにするには欠かせません。人の紹介や推薦があってはじめて著名な研究者や教育者に会うことができます。国際的な学会活動の場合は、特に人脈がモノをいいます。人脈を作る秘訣は、一つしかありません。それは英語で研究論文を書いてどこか国際学会か専門誌でそれを発表することです。ともかくACE Centreを紹介して下さった玉野研究所長さんには今も感謝しています。
 ACE Cetreの活動を紹介しましょう。まず、専門職員ですがコンピュータ関連の教材開発者がいます。さしずめmedia specialistとプログラマーを足したような人です。つぎに言語治療士です。さきのMs. Gillian Nelmsさんがそうですが、彼女はさまざまなコミュニケーション・エイドにほとんど精通するという大変なスペッシャリストです。次に作業療法士です。肢体不自由や自閉にともなう言語障害を持つ人々の障害の診断や判別、さらにコミュニケーションエイドの処方や坐位の調整など重要な役割を果たしています。次にテクニカル・コンサルタントです。この職は研究プロジェクトのテクニカルな側面、たとえば電子機器やツールの調達から教材開発まで幅広い知識を有しています。つづいてプログラマーがいます。この職は、インターフェイスや教材開発を担当しています。ソーシアルワーカーもいます。この人は、主として家族や障害児と就学に関わるあらゆる相談をの橋渡しをする役割です。以上の人々は、いずれも専門職ですから、修士号や博士号を持つのは当たり前です。事務職員は、主としてコミュニケーション・エイドと障害に関わる資料を整理したり、教育相談の受け付けなどを担当しています。
 ACE Cetreの最大の特徴は、コミュニケーションに関わる治療教育と研究開発を統合しているということでしょう。そのために、実際に学校で教えたり、生徒に関わってきた人々が専門家として働いています。研究機関にありがちな障害者から遊離した活動はないとみました。
 ACE Cetreは、Ormerod Schoolという学校の中にあります。この学校は、いわゆる養護学校のようなものでしたが、統合教育の推進によって、子どもたちが地域の学校へ通い始めました。そのために生徒が減少していきました。ですがここ数年、専門的な治療教育を必要とする障害児が再び通いはじめ、今ではACE Cetreのスペースを圧迫するほど生徒が増加しているそうです。ACE Cetreは、モービルホームのような別棟を作り、そこをたくさんのコミュニケーション・エイドを収納して、試用、装着、貸出しなどを行っています。
 ACE Cetreの国際共同研究として、PCAD(Personal Communication Aids for )というのがあります。これは、脳卒中などによる言語障害者に対するコミュニケーションを支援し、言語治療を行うリハビリテーション計画です。PCADの中心は、携帯用コミュニケーション端末の開発にあって、これにはアップル社のNewton Memo Padが使われます。この研究には、イギリス、スエーデン、ドイツ、ポルトガル、ベルギーにある大学、研究機関、病院、教育工学センターなどが参加しています。これらは、コンピュータシステム研究所、失語症研究所、そしてACE Cetreなどです。
 全く偶然だったのですが、私も数名の研究者と一緒にこの研究に類似した課題で2か年の科学研究にとりかかっています。この研究課題は、「精神遅滞児の携帯用ガイドとなる多目的エージェントの開発研究」というものです。これは、言語の発達に遅れのある子どもが携帯用の端末を使いあらかじめプログラムされた指示やヘルプ機能を頼りに、バスに乗り決められた買い物をして家に帰るというものです。この一連の作業を支援するアプリケーションを「エージェント」と呼んでいます。エージェントが子どもを誘導して初期の目的を達成させることを目的としています。現在は、音声による指示や確認のメッセージを追加するなど、機能の向上を目指しているところです。
 PCADの興味ある点は、その研究成果の実用性が確かめられたうえでライセンスが販売されることです。こうした開発戦略は、ヨーロッパ、北米、オセアニアなどがその市場として有望であることや、研究者間のネットワークも研究と並行して整備される見通しであり、こうしたネットワークによってPCADの普及に伴うフォローアップが可能であると判断しているからです。ACE Cetreのこの計画における位置ですが、主に携帯用端末の臨床テストを受け持ち、この機器が市場性からしてコミュニケーションの支援に有効か否かを検討したり、その信頼性などを点検することです。
 ACE Cetreは、Oxford市が運営する小さな規模の教育センターですが、コミュニケーション障害に関する診断から治療とフォローアップ、さらに国際共同研究に力をいれるなど実践的な研究活動をしています。もっと詳しい研究を知りたい方は、下記にお問い合わせください。その際には、自分がどのような領域で活動しているかを伝えて下さい。それから資料は有料ですので、送付の費用などをお聞きするのを忘れないで下さい。最後に「どんな資料でも下さい」などという曖昧な尋ね方はくれぐれも避けてください。

  Ms. Gillian Nelms
  ACE Centre
  ace-cent@dircon.co.uk

1995年度アメリカ合衆国の小中高等学校における先端通信技術利用の現状について

 以下の要約は、アメリカ連邦教育省全国教育統計センターが発行している「Advanced Telecommunications in US Public Elementary and Secondary Schools, 1995」という報告書にあるものです。この報告書は63ページからなります。これをご覧になりたい方は、成田までお知らせを。1995年版もあります。

1. 50%の公立学校はインターネットへのアクセスができる。前年の1994年は35%であった。
2. 低所得の家庭の子弟が通う公立学校の31%がインターネットにアクセスできる。 高所得の子弟の通う公立学校の62%がインターネットにアクセスできる。
3. 生徒数が300人以下の学校の39%はインターネットにアクセスできる。一方、生徒数が1,000人以上の学校の69%がインターネットにアクセスできる。
4.   中学校の65%がインターネットにアクセスできる。小学校の46%がインターネットにアクセスできる。
5. 現在インターネットにアクセスできない学校の74%がネットワークにアクセスする準備をしている。
6. ネットワークに繋がっていない学校が抱える問題は、予算が不足していることとアクセスポイントが整備されていないことである。55%の学校がネットワークの整備のための予算が不足しており、54%の学校がアクセスポイントが不足していると報告している。
7.  インターネットにアクセスできる学校の9%が教室や実験室、図書室などのメディアセンターに端末機が設置されている。1994年の調査では、3%であった。
8. 学校当たりのコンピュータの平均台数は72台である。一方、それらのうちの14%(12台)がインターネットにつなげることができる。
9. 85%の学校が、なんらかのネットワークにつながっている。そのうち77%の学校は、構内情報網(LAN)を利用し、61%の学校が広域情報網(WAN)を利用している。 10. インターネットにアクセスしていない学校のうち、11%はなんらかの広域情報網を使い、同じく23%の学校が構内情報網を使っている。
11. 76%の学校のコンピュータにはモデムが接続され、同じくケーブルテレビもみることができる。
12. インターネットに接続する7%の学校は、コンピュータ教室、図書室とかメディアセンター、教室からインターネットを使えない状態である。47%の学校は、接続できる。24%の学校は、2-3の教室から接続できる。4%の学校は4つの教室から接続できる。19%の学校は5つ以上の教室から接続できる。
13. 1994年の秋の時点では、広域情報網を使う97%の学校は、モデムを介した接続である。3-4%の学校はT1とか56Kbなどの高速専用回線を使っている。一方、1995年の秋では、インターネットに接続する学校のほとんどは、モデムを使わなくなった。広域情報網を使う61%の学校のうち、81%はモデムを使い、23%がSLIPとかPPP接続であり、10%が56Kbを使い、7%がT1で、3%がISDN回線を使っている。
14. インターネットに接続する学校では、93%が電子メールを、83%が情報検索や収集を、80%がWWWへのアクセスを、73%がニュースグループを利用している。このように電子メールの利用が盛んであるが、多くのインターネットへ接続する学校では、生徒にいろいろなサービスを利用させているのも目立つ。例えば70%の生徒はWWWを、62%の生徒は情報検索や収集を、51%の生徒はニュースグループを利用している。ただし、41%の学校が生徒に電子メールを使わせているという現状もある。
15. インターネットへ接続する学校のうち28%の学校では、教師が広域情報網を頻回に利用し、また生徒については21%が、学校管理者については18%が使っている。
16. 高校生が広域情報網を最も利用している。そのうち30%の者がかなりの程度で利用している。一方、17%の小学生もかなり使っている。
17. 学校は、ネットワークをさまざまな方法で運営している。すなわち、45%の学校はパートタイムの管理者が運営し、24%の学校は学校区の管理者が、20%の学校は特定の管理者はいないと報告している。12%の学校が専従の管理者がいるということである。

MES九州例会in福岡を終えて

 福岡県立筑後養護学校 小宮幸三 k-komiya@pop.bekkoame.or.jp
 「九州でいつかは例会を」と各地で例会が開催される度に思い続けていましたが、念願がかなって6月30日に福岡で開くことができました。当日は日曜日でしかも第二・四でもないにも関わらず、長崎県や佐賀県、滋賀県、兵庫県、愛媛県、そして高知県からも参加していただき40名を越す盛大な例会となりました。
 私をはじめ、初めての例会で皆さん講義を受けるかのように緊張されていましたが、高知県立山田養護の横井先生や滋賀大学附属養護の大杉先生の楽しいお話に自然と和やかな雰囲気となりました。MESの96年度版CD-ROMの紹介では、その裏話を聞いたり、また自閉症児の親の会の幹事である大森裕一さんのお子さんに実演してもらうなど、「MESの例会=楽しい」を実感しました。
 また、初めての例会を記念してアップルからも忙しいなか山本純子課長さんに来福していただき、メディアキッズやこの夏のアップルのイベントなどについて話をしていただきました。それから、段ボール箱いっぱいのプレゼントもいただき、例会の終わりには参加された方全員が時計やCD-ROMなどをもらいました。
 今回の会場は第三セクターによる研究センター「福岡ソフトリサーチパーク」というところでした。福岡市の先端技術の開発で中核をなす施設で、本来なら10万円以上はかかる施設使用料も関係者のご厚意で約1/10の費用に抑えていただきました。施設の目玉ともいえる専用線に繋がれている12台のMacを使ってのインターネット体験、自閉症児に関する情報を検索したり、ディズニーランドを見て回ったりとあっという間の1時間でした。ジュースが飲めてお菓子も食べれて、そのうえネットサーフィンも楽しめて会費が500円、その辺のインターネットカフェよりもいいですよね。
 今回の例会では時間に追われ、お互いに自己紹介をするのも忘れてしまい、ヒューマンネットワークが十分に築けませんでした。次回は休日の土曜日に例会を設定し、ゆっくりと時間を確保してMac談議にも花を咲かせたいと思います。
 最後になりましたが、主宰者の成田先生にもお忙しいなかお出でいただき、また、会場や機器の準備に際しては福岡市立中央養護学校の長谷川先生にお手数をおかけしました。本当にありがとうございました。
福岡ソフトリサーチパーク

第72回関東例会の報告

 本格的な夏到来を感じさせる日差しの7月13日、関東例会ではおなじみ(深沢さんありがとうございます……)東京都失明者更生館を会場に例会は開かれました。例年7月と8月は夏枯れ?状態になることも多いのですが、なんと!当日の出席者は6名だけ。びっくりさせられたレポータでありました。栃木県は今市養護学校より出席の宮田さん・沼尻さん、千葉県勢は、佐原さん・宮下さん・熊谷(レポータ)の3名、あとは、今回のお世話係で鎌倉養護学校の林さんでした。ちなみに、永田先生の名前がないと心配の方もいらっしゃると思いますが、この理由はあとで…。
 さて、今回の内容は、約4本(約の理由も後ほど)。林さんよりドン・ジョンストン社のADBポート接続のONESWICH入力装置と自作スイッチの紹介、関連して肢体不自由の生徒で利用しているスタックの紹介。佐原さんより、簡単なスクリプトを用いて、「ことばとかずと作業!に使えるスタックが作れます。」の紹介、藤森さんよりMIDIの利用について、具体例を盛り込んだ説明がありました。
 まずは、林さんより入力装置の説明、これは、クリック、1、2、3、0の入力を1つずつのスイッチに割り当てがができるようになっていて、今回紹介のスタックは、この機能を利用しているとのこと。このほかコマンドキー等の信号も加えられるようですが、紹介役の林さん自身が今はまだよくわからないとのことなのでパス。
 さて、これを利用するスタックの方ですが、林さんの同僚の新井雅明氏が、朝の会での始めの挨拶をおこなうために制作したスタックであり、使用場面の様子などの話も加えながら説明がありました。これは、2個のスイッチの押しボタン部分を画面にでてくる図形とマッチングさせて、選択させるようになっていましたが、「最初の画面に戻す際に教師がこっそりとクリックする必要がある。」と説明があった途端、「どうしてウエイトをかけないの?」などの質問やスクリプトの変更について意見が飛び交いました。
 議論が落ちついたところで、つぎの作品、校外学習で電車に乗るためのシミュレーション?を紹介中に、おもしろい逸話がありました。この作品、校外学習実施前には、あまり興味を示してくれなかったのに、実施後には、けっこうきちんと生徒が食いついてくれるという現象が起きたそうです。具体的経験を基に学習するためなのか、それとも……。今後も考えていく必要があるかもしれません。とはいえ、この作品にもやはり注文がつきました。「リターンキーを押さなければ次の画面に進まないのでは、利用が難しい生徒もいるのではないか?」ということで、「HIT ANY KEY」で動作できるようにスクリプトを埋め込んでみては?という合い言葉が生まれました。(今後、関東例会では、どのキーを押しても画面が変わる・動くという作品が多くなりそうです。(^^;;)懐の深い林さんの作品紹介はまだまだ続きます。クラリスインパクトを利用したプレゼンテーションと資料作り(社会科)の紹介は、非常にオーソドックスな内容でしたが、MR児が主体の養護学校の教員(レポータもその1人)からは、普段あまり馴染みのない実践なだけに、質問が多く出されていました。アイデア次第で、ソフト付属の素材も活用できるという点に感心させられました。
 市川養護の佐原さんは、先日千葉県の養護学校の研修会で用いた教材を持ち込んできました。このとき佐原さんは、講師、ちなみにレポータは受講生でした。本題のスタック作りのスクリプトですが、ボタンに「contains」を用いることがポイントになっているようです。作例として紹介されたのは、ひらがなの単語の足りない部分を選び完成させる、一桁の足し算、名前を作る(自分の名前を読めるようになる)、作業学習で金額を入力し領収書としてプリントする。等のスタックでした。MESの95,96年版CD-ROMの名作スタックと比較すると小さな作品ですが、初めてHyperCardに触れてスタック作りに取り組む先生方(千葉県の教員!)に対しては、シンプルでわかりやすかったと同時に、教材はアイデア次第ということが理解してもらえたのではないか、という佐原さんの弁でした。
 最後は、沼尻さんによるMIDI講座でした。Macは音楽が得意だとはよく言われる話ですが、やはり、「それなりの基礎知識が要求されるのではないか、」「音楽は苦手だ」等、視点をコンピュータに置き換えると、どこぞの会社のCMでつぶやかれる台詞のような状態になりがちだと思えます。今回は、ローランドのシステムを用いて、MIDIの使い方、シーケンスソフトの扱い方、通信を使ったデータの収集の情報と注意点等、ごくごく初歩的な部分で紹介されましたが、これは、奥が深そうだという印象が残りました。(もっとも、奥の浅いものなんて、ないとは思えますが…)これも、アイデア次第では、という月並みな結論に落ちついてしまい(レポータだけかも(^^;)豊富な実践例がありそうなFEDHANから、ヒントをもらって挑戦してみたいという気になりました。
 以上で会場の使用時間はタイムアップとなりました。このままでは、物足りないと言うことで、全員が懇親会へ。ここで、永田先生登場!先生は、NTTのこねっとプランのセミナーに出席なされていて、例会の方には顔を出されなかったのです。約4本と上記に書いた理由は、懇親会での話題が、こねっとプランに集中し、かなり盛り上がったからでした。
 この、「こねっとプラン」ご存じの方も多いとは思いますが、今回の関東例会に参加した各校までは、具体的な話が一切入ってこないという不思議な状況にあります。情報を集めてみると、県の行政機関段階で話がストップしているようです。今回、永田先生が参加したセミナーの案内さえ、ごく一部の学校を除いては、現場の教師に届いていなかったということが、この懇親会で話題になりました。県段階でストップしているという理由については、様々な憶測が飛び交っていることもわかりましたが、はやくすっきりとした形で、現場への説明をしてもらいたいものだというのが、アルコールが入ったみんなの頭からでた結論でした。(本当は、もっと過激だったのですが、これはオフレコです。)
 さて、次回は8月10日光明養護学校で行います。その前に、8/1,2,3と幕張で教育総合展、THE MAGICAL TOYBOXが、調布市文化会館で8月の3〜4日に行なわれます。
 レポータ:熊谷 修  Nifty-Serve VYT02721

天狼 & ディル in Madison

 佐藤 裕(ウイスコンシン州マジソン市在住)  ysato@execpc.com
 天狼 & ディル in Madison

●サマープログラム(準備編)

サマープログラムの選択
 ここの小学校の夏休みは6月8日から8月25日までと,こんな北の地方でも御多分に洩れず長い.子供達には長い夏休みになるが,忙しく仕事をしている夫はせいぜい一週間ぐらいしか休めないようだ.あこがれのアメリカスンタイルのバケーション(車でキャンプしながら全米を旅する,海辺のロッジで一ヶ月のんびり過ごす,など)は我が家には無縁の話だ.
 夏休み期間に行われる子供達のための様々な活動(キャンプやレクリエーション,習い事など)の受け付けは早い物は3月中旬から始まる.公的なものだけでも大まかに分けて19種類になり,その中のひとつのキャンプをとってみても,目的や期間,場所などによって多岐に分かれしている.これに更に多様な私的な機関のプログラムを選択範囲に入れると,パンフレットに目を通すだけでも大仕事だ.人気のあるもの(安くて子供達に好まれるもの)から早く埋まっていくようで,それを心得ている親達は受け付け開始を待つように行動を起こす.私の場合は始めての経験なので,子供達にとって何が一番いいのか選択に悩むことになった.
 普通の子供ならよりどりみどりの選択肢の中から,子供の興味のある分野を伸ばしてあげることもできるのだろう.普通の子供でありながら住む場所のせいで言葉にハンデイを持つことになった内気な性格のヨピが,どれを選んだらより楽しく夏を過ごせるかと思うと簡単には決められなかった.重い自閉症のテピには自閉症児専門のプログラムがあることを望んでいたが,それは期待どうりにいかなかった.だが,テピに関しては後に面白い展開になったのだった.

ヨピはプレスクールのデイキャンプへ
 あるデイキャンプのパンフレットの片隅に「ESL(English as a Second Language)に通級しているお子さんはESLの先生にご相を.」と書いてあり,英語が理解出来ないと普通のキャンプはハードなのかなあと考えてしまった.ESLの子供達のためのプログラムは何年か前まではあったようだが今はない.日本人の少ないマディソンでは日本人向けの補習プログラムもない.数少ない情報網を手繰り寄せてみると,知り合いのまた知り合いの日本人から私に良い情報が届いた.彼女の小1の娘さんは去年の春アメリカにきたばかりの時,なかなかこの環境に馴染めずとても元気をなくしていたのだそうだ.ところが,夏休みにあるプレスクールのキャンプに参加してから,とても元気になったのだそうだ.この私営のキャンプはとても費用がかかるけど...と付け加えていた.

 私は早速そのプレスクールに行き,デイキャンプのパンフレットをもらった.その時対応してくれたマネージャーらしき人が,実際建物内を案内しながらの説明を申し出てくれたので,お願いすることにした.各教室にはロフト(梯子で上がる小さな2階)があり,動物や昆虫などかってあるガラスケースが2,3個置かれてあることが先ず目に入った.そして彼女の説明から,少人数のグループでアート,音楽,スポーツ,自然と触れあうことに力を入れていることがわかった.もちろん英語が話せなくてもOKだそうだ.この話を聞きながら私の気持ちはほぼ固まっていった.ヨピの夏休み始めの一ヶ月間はここで過ごすことに4月上旬には決定したのだった.

自閉症児専門の療育キャンプを捜して
 私はマディソンの充実した障害児教育内容からして,当然自閉症児向けの療育キャンプはあるものと期待していた.ところが私が集めたパンプレットの中には見つからない.各種のプログラムの中には,障害児のために援助するスタッフをつけられるものは幾つもあるが,それはあくまで一般の子供達のためにプログラムされたものに加わることになる.私はテピ専用のアシスタントをつけてもらったとしても,果たして一般の子供達の流れと騒音の中にテピがうまく適応できるだろうかという不安は拭い去れなかった.

担任のマットからの情報
 3月中旬,学校に行く機会があったので私は担任のマットに,テピにいいサマーデイキャンプの情報はないかと尋ねた.マットは心当たりがないようで,調べておくと言ってくれた.その後すぐにマットからひとつの情報が届いた.アシスタントのリンダからの情報で,イーグルハイツ(ユニバーシィティーハウスに隣接している既婚学生のための大宿舎群.リンダはここに住んでいる)をロケーションとしたデイキャンプがあるという.それからしばらくして,リンダが直接連絡帳に「私はこのデイキャンプでスペシャルニードの子供のためにアシスタントとして働く予定です.テピの参加は大歓迎です.もし,このキャンプに興味があるのならMSCR(Madison School Community Recreation)に申し出る必要があります.」というようなことが書いてあった.
 私はこの時既にMSCRには電話で事情を話し,障害児のための無料の援助システムの説明書と申し込み用紙を送ってもらっていて,記入して出すだけになっていた.テピのことをよく知っているリンダがいてくれるということに,希望の光が差し始めたが,私はまだ自閉症児専門の療育プログラムにこだわっていた.

ソーシャルワーカーとの面談
 我が家から歩いていける範囲の大学病院に隣接してワイスマンセンターという建物がある.ここは毎日500人もの科学者や教師,医療関係者,その他のサポートスタッフが集まり,障害のある人達やその家族のためにそれぞれの専門性を出し合いサービスに勤めるために働いているという.こういった類の施設は世界でも14カ所しかないそうだ.
 自閉症協会マディソン支部の会合はいつもここで行われる.今年はウィスコンシン州で全米自閉症協会の大会が行われるために,関係者は忙しいようで春から夏にかけての会合はもうけられていない.小学校に来ているPT,OT,STはワイスマンセンターに所属している.ここで何か情報を入手できるかもしれないと思い,パンフだけもらうつもりで足を運んだ.
 受け付けで「自閉症児向けのサマープログラムの情報はないでしょうか.」と聞いてみると,「ちょっと待って下さい,聞いてみます.」と言う.すぐにソーシャルワーカーが応対に出てきて,個室へと案内された.ソーシャルワーカーはとても丁寧に現在の私達家族の状況や何か他に困っていることはないかなど聞いてくる.肝心の夏休みのことについては,私が既に入手しているもの以外特にないようだった.何かいい情報があったら家に電話をくれるという約束をしてくれた彼女に,私はお礼を言ってその場を離れた.

Autism Resource Specialistジョエルからの情報
 そのすぐその後,私がある店で買い物をしている時,偶然Nさん(IEPミーティングの時通訳をしてくれた人)に出会った.一緒に品定めしながら,キャンプ捜しにまつわる話しをすると,「ジョエル(Autism Specialist)なら何か知ってるんじゃないかしら,ジョエルに電話して聞いてあげましょうか.」と言ってくれたので,お願いすることにした.
 約一週間後にNさんから電話があった.「ジョエルって本当に忙しい人なのね.何度電話してもいなくて,いる時間を聞き出して,やっと捕まえたわよ.ただ夏休みのことは,彼女の仕事の範疇に入っていないみたいで,あなたの求めるような情報はないみたいなの.長期の休みが家庭生活の崩壊につながるような場合なら方法はあるらしいけど・・.」ということだった.

ニューヨーク自閉症協会主催の療育キャンプ
 5月に入ってから,ニューヨークタイムズ新聞にニューヨーク自閉症協会主催の療育キャンプにまだ空きがあるという記事が載っていた.問い合わせ先の電話番号にダイアルして,説明書等をすぐ送ってもらった.この時,私はイーグルハイツのデイキャンプにテピを参加させる結論を出していて,ニューヨークまでいく可能性はほとんどないと思ったが興味だけはあった.
 届いた案内の内容は充実したものだった.泊まりのキャンプは2週間と4週間のものがあり,発達レベルに応じて多様なサービスが受けられる.その他レスパイトプログラム,レクリエーションプログラムに空きがあった.これらに参加する場合,保険や各種の診断書の他,最新のIEPの提出が求められる.こういう所でもIEPは,子供の指導の助けになる便利なシステムだ.
 ニューヨークのような大都市は自閉症協会の組織力が大きいため,これだけのことができるのだろう.対象も全米の自閉症児に向けていることが,小さな町に住む人の助けにもなっているように思う.近隣の大都市,ミルウオーキーやシカゴあたりを捜せば似たようなものがあったのかもしれないが,そこまではする気になれなかった.結局この案内は目を通しただけで終わった.

Playgrounds at the Eagle Heights(デイキャンプ)に決定
 場所 イーグルハイツパーク
 期間 6月18日〜8月1日
  実施日 月曜〜木曜
 時間 9時AM〜3時PM
 参加者の年齢   5歳以上
 費用 無料(昼食付き)
 私がサマープログラムのことについてあれこれ迷っていたことを知ったテピの担任のマットは,「アシスタントのリンダは僕がテピにしていることをよく見て理解しているから,心配することはないと思うよ.」と言ってくれた.それでとても気が楽になったような気がする.リンダが,スペシャルニードの子供のためにアシスタントとして働くということと,そこが家から歩いて5分のすぐ近くの場所であるということが決め手となって,私はイーグルハイツのデイキャンプにテピを参加させることに決め,テピを援助するアシスタントを付けてもらうための,申し込み用紙をMSCRに送った.4月下旬のことである.
 アシスタントの申請用紙にはテピの状態やどの程度の援助が必要かということを詳しく書かなければならない.特にスタッフの指名がある場合の書き込み欄があったので,私はリンダの名前を書き込み,個別に対応する場面の必要性と集団の中で安定して過ごせるようにと希望を書き綴り送った.5月中旬,MSCRからイーグルハイツのプレイグランドに於いて,テピを補助するスタッフとしてリンダを配置したとの由の書簡が届いた.その中には,プログラム開始前に担当のアシスタントと直接連絡を取り合って具体的な援助の方法を話し合うようにということも書かれていた.

リンダとのミーティング
 夏休み前,テピの感覚統合療法を見に学校に行く機会があった.その機会を利用して,担任のマットを含めてリンダとデイキャンプについての話し合いを持つことができた.マットは夏休みのデイキャンプの中で,テピに必要と思われる活動内容を既にリンダに話してあり,それをひとつひとつ私から確認をとる.
・ディープタッチセラピーとブラッシングを午前と午後に一回づつ行う.
・体力をつけさせるために歩いたり,走ったり,自転車に乗ったりする.
・全身の筋肉を均等に使うための運動,ジャンプしたり,ボールをけったり,横歩きをしたりと学校の個別体育指導で行っていることを継続する.
・模倣の力を伸ばすため身体表現ゲームを利用する.
・集団で行うゲームや様々な活動の中に一緒に加わり,一般の子供の流れの中で落ち着いて活動できるようにする.
・この集団の中に入っての活動を,休み明けの新学期から予定している親学級へ加わっての活動のために役に立てたい.
 リンダが,このキャンプはイーグルハイツやユニーバーシティハウスの子供達が対象になっているから,地域の子供達との結びつきが密接になってとてもいいはず.キャンプの前に詳しい活動内容予定の報告と相談をするため一度我が家に訪れると言う.ふくよかで無造作な巻き毛の淡い金髪がよく似合うリンダは,落ち着いた暖かさを感じさせてくれる女性だ.非常勤のアシスタントなので学校に行っても会う機会は希だが,ばったり出会うと必ず愛想良く話しかけてくれる.
 マットも時々テピの様子を見にプレイグランドに訪れたいと言う.こうしてテピの夏休みプログラムは学校の息のかかったものとなった.「リンダがいてくれてラッキーだったよ!」マットが言った.私もリンダも深くうなずいた.テピの特殊学級にいる他の子供達はどのように夏休みを過ごすのだろうと思った私は後でリンダにそのことを聞いてみた.「さあ?家にいるんじゃないかしら.」となんともそっけない答え.全てが初めてで何も分からない私と違って、皆それぞれ家族なりの生活の仕方を確立しているのかもしれない.それにしても何か働きかけがあれば動くが,何もなければ動かないというのがアメリカ式というものなのだろうか.

小学校卒業?
 日本だったら,年度の終わりは終業式や卒業式があって,子供の成長をしみじみと感じ入るきっかけになったりするけれど,ここにはそういった行事はない.ヨピは最終日は朝にクラス内でちょっとしたおやつを皆で食べ,お別れ会らしきものをしたようだが,しっかり体育の授業もしてきたらしい.5年生だったテピは本来なら小学校は卒業で,6年生から中学校に移らなければならない.しかし8月26日の新学期から2カ月半で帰国する予定なので,そんな短期間のために環境を変えたくないと,転入前の会議の時小学校に残ることを要求し受け入れられていたので,新学期からもここに通ってくることになる.日本なら卒業式が行われるはずの最終登校日は2時限で下校になるためスクールバスは手配できないらしく,スクールバスで登校している特殊学級の子供達は学校を休むことになった.こうやってテピは5年生を終了した.
(本文は佐藤氏の許可を得て掲載させていただいております。佐藤氏は現在ウイスコンシン大学で研究中です。この手記は、研究のかたわらインターネットやNiftyServe上の障害児教育フォーラムに掲載しているものです。)

THE MAGICAL TOY BOX

(マジカルトーイボックス)−テクノロジーを使ったコミュニケーションエイド−
 「障害が重い人でもコミュニケーションをしているはず。なんとかそれを豊かにできないだろうか?」この思いを実現できるのがテクノロジーの利用です。わずかな身体機能を使って《障害に合わせたスイッチを利用して》、<おもちゃを動かす>、<コミュニケーションを行う>、<生活機器を利用する>、<パソコンを利用する>ことで障害者の生活自体を豊かにしようとする考え方で、すでにアメリカでは学校や実生活のなかでも障害者のノーマライゼーションに大きく貢献しています。
 3月末に開催した第1回のイベントでは<スイッチ>と<おもちゃ>が中心 テーマでした。今回のメインテーマは<選ぶこと>と<子ども縁日>、それに< アイデアの交流>です。イベントの前日、8月3日にはセミナーも開催します。
主催:THE MAGICAL TOY BOX
吉澤千恵・三室秀雄・小松敬典・金森克浩

○期日:1996年8月3日(土) PM 1:30〜PM6:00 (セミナーのみ)
         4日(日) AM10:30〜PM5:00 (イベントのみ)
○会場: 調布市文化会館「たづくり」
     東京都調布市小島町2-33-1 電話 0424(41)6111
     3日は 8階「映像シアター」でセミナー
     4日は11階「みんなの広場」「学習室」他でイベント
     ●京王線調布駅 南口から徒歩3分 ●駐車場あり
○資料代: セミナー+イベント = 3000円
       イベントのみ  =1000円
 ・参加を希望される方は、直接会場までお越し下さい。
後援:東京都肢体不自由養護学校PTA連合会
   福岡起風会(福岡で同じような内容の活動をしている会です。)
アドバイザー:
 中邑賢龍(香川大学教育学部助教授)
 松本 廣(国立特殊教育総合研究所室長)
特別セミナー(3日) 1:30〜6:00PM
  会場 8階「映像シアター」
○概論講座「ノーマライゼーションとテクノロジーの課題」
      講師 松本 廣(国立特殊教育総合研究所室長)
○実践講座「こんな工夫で楽しく遊べる、生活できる−実践例−」
      講師 福島 勇(福岡市立南福岡養護学校教諭)
         小松敬典(東京都立府中養護学校 教諭)
  ※先着100名定員です。参加予約もできます。

<選ぶこと><子ども縁日>などなど(4日) 10:30〜5:00PM
会場 11階「学習室」「みんなの広場」など
○「選ぶこと」を支える機器の情報がいっぱい・・MAGICAL INFORMATION BOX
 □スイッチコーナー
  障害に応じたスイッチが各種あります。
 □資料・情報コーナー
 □相談コーナー
 □コミニュケーションコーナー
○「子ども縁日」いっぱい遊んじゃおう・・MAGICAL PLAY BOX
 □おもちゃコーナー
  市販のおもちゃをちょっと工夫しました。
 □ラジコンゲームコーナー
 □記念撮影コーナー
 □生活コーナー
  リモコンを自由自在に利用したら。
 □スイッチゲームコーナー
  おみやげの景品もあります。
○パソコンで何が出来るかな・・MAGICAL ABILITY BOX
 □パソコンコーナー
  各メーカーによるパソコンの障害者仕様を紹介
 □教育ソフトコーナー
  遊べて学べるソフトを紹介します。
このほか「休憩室」「セミナー室」があります。
「セミナー室」では11:00,1:00,3:00より機器の使い方や作り方などを 紹介します。

皆さんからのお便り

自宅はINS 64に
  塚田久貴 PGA00651
 こんにちは、Niftyではいつも大変お世話になっておりますラッキーログです。この度(といっても2ヶ月ほど前ですが^^)めでたくINS64を導入いたしました。デジタル環境は当初心配していたトラブルもなく、大変快適にネットサーフィンなどを楽しんでおります。ということで、もうアナログ回線は休止しても心配はないということになりまして、7月いっぱいをもちまして休止することにいたしました。

近況報告です
 福澄節夫 JCH00214@niftyserve.or.jp
 皆さん、こんにちは。いつも貴重な情報ありがとうございます。新年度も始まって3ヵ月が過ぎ、少しづつ軌道に乗ってきたかなという今日この頃。パソコン活動も、昨年マックを購入した5人の使用者が頑張っています。5人のうち2人は、ひらがな、漢字の勉強、残りの3人はパソコン通信、小説の執筆、インターネット、キネックスオンボードの改良をやっています。また、その3人も読解力、文章力に難があるので、読み上げソフトや電子辞書の利用を教えたりもしました。
 パソコン相談もディスアビリティーセンターの花岡さんに毎月1回来て頂いていて、新たに1人がマックを購入することになりました。(ワープロの給付を受け)購入する人は、メンバーの中では最年長で、電動車椅子の買い換えなどもあったので今までじっくり様子を見てきたようなのですが、学習能力はさすが年の功で優れたものがあり、前述の3人のメンバー(パソコン通信などしている人たち)と力を合わせればいいものが作れるだろうと考えています。例えば、インターネットのwwwページとか、、、
 周囲(一般の人?)から見れば、どうしてそんなに能力がない人たちに、パソコンをやらせるのだろうと不思議がられると思うのですが、障害者にとっての「学習道具」「コミュニケーション道具」として、「パソコン」に期待をかけている状態です。それにしても、学習経験不足からくる文章力のなさ、学習力のなさには参っています。
 一番文章力がある人がパソコンを持っていないし、、、でも、どんな人でも可能性を追いかける権利は持っているはずだし、施設の職員がその芽を摘むようなことはしてはならないと頑張っています。利用者も日々闘っているわけですから、職員も闘魂です!!それにしても、非常に困難なことにチャレンジしているものです。

久里浜にて
     宮崎純夫 GGB03443@niftyserve.or.jp
 さっそく会報ありがとうございました。いつも職場あてに送っていただいています。こちらでもさっそく回覧いたしました。研修もあと10日間ほどになってきました。どうも教育工学コースは、自力で研修という風潮なので(昔からなのでしょうか?)苦しい方もいらっしゃるようです。私は、普段できないことをさせてもらえる時間をいただいたと思って楽しんでいます。
 自宅でもインターネットにつなげるようになりました。兵教大のwwwにもアクセスしたいと思います。長野の例会も年間1回以上はしたいと思っています。ご案内が届きましたら、よろしくお願いいたします。

愛媛の「のびのび」学級から
 愛媛県喜多郡河辺小学校障害児学級 尾花清志 coperu@sco.bekkoame.or.jp
 会報ありがとうございました。今日は障害児学級新任者研修会で松山に出かけます。県立第三養護学校に行き授業参観した後、「新担任者にのぞむもの」という県教委の障害児教育課教育指導係長さんの講話を聞いたり、「教育課程の編成」という講義を聴いたりします。会報帰ってからじっくり見させていただきます。ありがとうございました。
     教材CDについては、ハイパーカードを使った事がなかったので、フォントを削除していたりして、それのインストールからはじめました。マックの初心者ですから、見るのに苦労しています。ある教材ソフトを開こうとして、ハイパーカードのメモリーを増やそうとするとか、いろいろいじっていたら文字化けのトラブルを起こしたりして。昨日解決しました。これからは慎重に開いてみます。宝物がいっぱいつまっていることでしょう。
 数日前に新しい会報が届いていました。ありがとうございます。教材CDですが、重宝しています。受け持ちの子が喜んでくれるのは、「なすびくん」「りんごちゃん」「すいかくん」シリーズです。ての動きと数が一致するようになりました。「おしゃべり黒板」を使ったときも反応がよくて、この2つが今のところ定番メニューになっています。それから、50音表の「あ」を指さして、「ア」と発音するようになりました。5月に「お」を指さして「オ」と発音できるようになったので、これで2つの文字の発音ができるようになったことになります。このことがこの子にとってどういう意味をもつのかはよくわかりませんが、「あ」の文字を指して「ア」と読んだということが分かったときはとてもうれしく思いました。

Good News !
 松山市立身体障害者センター 矢野純子 VYB03657
 とってもうれしいニュースがあります。身障センターインターネット上のホームページ作成の起案が通ったんです!! あまりにも遅いので、今日思いきってきいてみたら、なんと事務の人が私に伝えるのを忘れていたんです。あまりのうれしさにそんなことは吹っ飛んでしまいました。私の喜びよう、わかっていただけるでしょうか?これで晴れてPRできます!実はもう何人かから「見たよ」というメールをもらっています。なかなか長い道のりでしたが、一安心です。

こちらは宇和より
 愛媛県立宇和養護学校野村学園分校 越智公政 oti@shikoku.or.jp
 お元気でしょうか?国総研では大変お世話になりました。1990年に聴覚言語の長期内留でお世話になりました。あれから(3年前)、松山聾学校を追い出され、今、愛媛県立宇和養護学校野村学園分校に勤めております。小さな分校ですので、来年は全員卒業し、休校になるかもしれません。その場合は、またまたどこかに追い払われる身です。
 ところで先生方のホームページ(HP)の他、松山市の身体障害者センター(矢野純子さん)も拝見させていただきました。いたるところで、皆さんがたのページを拝見し、敬服している次第です。こちらも先生の足元にも及びませんが、駄作のHPを作っておりますので、御高配頂ければ幸いです。
野村学園分校のホームページ

「牛久心身障害学習会」から
 牛久市 山下 隆
 先日は「MES自作教材集」を送っていただき有り難うございました。私は教員や療育関係者ではなく高一の自閉症の娘の父親です。職業は会社員で地元の「牛久心身障害学習会」という知的障害児・者の親の会にぞくしており、この教材を会のメンバーにも紹介したいと思っています。皆さんの活動は障害児の親として大変ありがたい事です。今後も情報がありましたらご案内いただけると幸いです。

茨城より
 茨城大学教育学部 篠田晴男 shinoda@mito.ipc.ibaraki.ac.jp
   会報のお知らせありがとうございます。WWWまでできているのですね。こちらでは、養護学校で情報機器や通信をどの程度利用しているのかまだわかりませんが、少し寂しいような気がします。会報の中にあった小学校の様子を呼んで、3月にいったジョージア大と周辺の小学校の様子を思い出しました。特にスクールサイコロジストの活動に関心があったのですが、学校の一員として専門家がいることに違和感がないのに驚きました。このようなトレーニングを受けた若手が帰国し、日本の教育現場を前に分け入るのは、帰国子女と同じようなハンディを背負うことになるのでしょうか。大変考えさせられました。

●オーストラリアから
  内田絵里 eri@infomil.com.au
 私達は、オーストラリア住在ですが、7月29日まで主人は東京に出張しております。東京滞在中にMES CD-ROMを受け取ることができましたら、より簡単かと思います。私達の会社は、オーストラリアで、ソフトの開発/ローカライゼーション、マルチメディア、インターネットなど、英語と日本語を中心に他国言語も手がけております。APPLEデベロッパーとしての登録もしております。海外(特に英語圏の国々)でもMES自作教材集を役立たせる可能性はありませんでしょうか。私達自身の6歳になる娘が網膜色素変成で視野が大変狭く、英語の点字を習っております。私の母は、日本では英語を10数年、オーストラリアでは日本語を20数年教えて参りました。教材も数多く開発しております。このような関係から、MES自作教材集に大変興味を持っております。

文化としての遊びと科学技術

病気療養児の世界を広げるパソコン通信
 太田容次 滋賀県立守山養護学校 hiroota@mbox.kyoto-inet.or.jp

はじめに
 普通、子ども達は、住む地域の自然の中で、自由に遊び、自由に学び、また、友達から様々なことを教えてもらい、時には教えあって成長するのではないでしょうか。私自身の体験をふまえると、豊かな自然の中での様々な遊びが、現在の糧になっていることも少なくありません。(時には残酷な遊びもしたものです。)
 しかし、病弱・虚弱養護学校の一つ滋賀県立守山養護学校(以下、守山養護と記す zenkei.jpg参照 道路の左手が滋賀県立小児保健医療センター、右手が、滋賀県立守山養護学校)で学ぶ子ども達の多くは、幼少の頃から入退院を繰り返していたり、突然、病気になり、生涯その病気と闘っていかねばならなくなった者もいます。(病類別.jpg参照 各年度とも5月1日現在)

先日ある子どもから、
「守山養護に転入学するまで遠足も運動会もしたことがなかった。校外での社会見学も、ぼくだけ教室でビデオかスライドを見せてもらった。とてもつらかった・・・」という話を聞きました。
 学校でも、家庭でも、その病気や障害から特別扱いで接してこられた子どもは、自分から交友関係を結ぶのが不得手で、自分を表現すること、自分から積極的に行動すること等々、これから社会にでていくのに、特に必要だと思われることが苦手なことが多いようです。
 また、突然、難病にかかり、入院治療を余儀なくされた子どもは、それまでの性格が変わってしまうことがあります。1週間程度の入院ならいい骨休めになるのかもしれません。それに確実に治ると言われている病気なら、退院後の見通しを立てて、その準備を入院中にできるかもしれません。しかし、将来の夢をもち、知的好奇心旺盛な、人生の中で1番心身とも元気な時期に、生涯その病気とつきあわなければならなくなったとしたら、どういった心理的なショックになるか、想像を絶するものがあります。
 このような病気療養児と言われている子ども達が、その体を傷つけることなく(感染等の恐れがなく)、また、病状・体調に合わせて自由な時間に自由に自分を表現しながら、主体的にみんなと遊ぶことはできないかと考えてみました。これまでいろいろな方法で、このような子どもの遊びや学びを保障してきたのですが、どれも、前に述べたことができません。それを可能にする方法は、各教室、病室、学校外(前籍校・・・入院転入前に在籍していた学校)をパソコン通信ネットワークで結び、いろんな遊びをみんなで共有することではないかと考えました。

遊びの場を整える
 これまでに述べてきたようなことから、パソコン通信のサーバーを設置し、子ども達が使いやすい環境を整えてきました。(MYNet図.jpg参照)興味をもった子ども達の学ぶ教室に各1台のコンピュータを設置しました。各教室からサーバーへは、簡単に設置できるLocalTalkによりLAN接続し、パソコン通信に参加できるようにしました。また、病状から個室からでられない、友達と話すこともできない子どもの病室には、病院等を結ぶ内線電話回線を利用して、パソコン通信に参加できる環境を整えました。
 通信ソフトは、子どもも、大人も、予備知識が最小限ですむようなソフトを探していたところ、"FirstClass"(SoftArc Inc. & Creates corp.)というソフトを知り、それを試してみました。実際試したところ、MacintoshやWindowsのGUIを操作できるものなら通信していることを意識せずに通信できる実にすばらしいソフトで、小学生の低学年でも、その操作は可能でした。また、上肢に障害があっても、適当なインターフェースを用意することで、普通に通信できることもわかりました。本校のサーバーは、このソフトを使って構築していくことになりました。そして、子ども達と話している中で、ネットの名前は、守山養護のMとYとでMY-Netという名前になりました。

離れていても一緒に遊ぼう。
 教室と病室に、"キッドピクス"(BNN)の入ったパーソナルコンピュータを設置してしばらくすると、休み時間には、マウス取りが繰り広げられました。理由は、絵を描きたいからです。
 そんな子どもの中に、Y子とU子がいました。この2人は、1年近く入院しており、ほとんど外出も外泊もできず、かなりストレスがたまっているようでした。Y子は、前籍校からの話では、不登校傾向があり、欠席がちな子どもでした。また、U子は、病室に感染予防のため隔離されていて、大変な治療を繰り返しその副作用に苦しむ毎日でした。共通していたのは、イラストを描くのが好きだということで、U子がたまに教室に登校してきても、特に必要なこと以外は話すことはなかったのです。そして、教室でY子が、病室でU子がパーソナルコンピュータに向かって好きなイラストを描いていました。そして、それを気心の知れた者に見せて、ほめられて得意になっていましたが、その程度でした。
 ひょんなことから、たまたまその教室に遊びに来ていたとなりのクラスのN男が、「MY-Netにアップロードしてよ。」と頼んだことから、いろんな作品が、子ども達の手で、MY-Netの小さな美術館に登録され始めました。その時の様子を少し引用したいと思います。
Y子の絵の紹介文より一部引用(妖精1.jpg〜妖精3.jpg 参照)
とりあえず、見てください。感想、ご意見を待っています。
春休みをはさんで、やっと出来たので、とりあえず、見てちょ!久々の妖精です。
ようせいも結構なところまできて、自分でも上達したなあと思ったなあ。
U子の絵の紹介文より一部引用(U子.mov 参照)

  ど〜ぶつさんたちの人気者,うさぴょんがついに..
  す〜ぱ〜まん になりました.
  もちろんの事,絵が開きやすいので見てくれよ!
                   
  うさぴょん,す〜ぱ〜まんに続き,
  うさぴょん,ぱ〜て〜するをかきました.
  幸せそうなうさぴょんを見てくれ!
 このように、Y子とU子は、自由な時間に、楽しみながら絵を描き、普通ならその絵はうまくいって印刷される程度でしょうが、MY-Net上に発表され、Y子とU子が普段話さない子ども達とも交流が広がり、他の学校の子どもから、目標にされるようになりました。
 このことは、前籍校を欠席がちなY子にとって、自信につながり、本校でも集団不適応を起こすことがあったのに、友達から自分の存在を認められてからというもの、集団にも素直に入れるようになりました。
 また、U子にとって、MY-Netでつながった学校やその他の世界というものは、病室(滅菌された個室)での隔離が必要な治療が多い彼女にとって、唯一の外界との窓口になり、転入当初コンピュータを何とも思わなかったY子にとっても、楽しみながら、友達といろんな刺激を受けあい高めあえるメディアになったのだと思われます。このことは、孤独との闘いの中に潤いをもたらしたばかりでなく、Y子の身近な目標になり、副作用に苦しむ時期の目標になったようです。
 実際、このような病室外とのパソコン通信を通した交流が生まれてから、心理的な苦痛が少なくなったようです。そして、何より、医学的なデータが回復していても、しんどいなどの訴えがその後も長く続いていたのが、このようにいろいろな人との関わりができるようになってからというもの、医学的な検査データが回復したら、「復活したぞ〜!」というような内容の電子メイルを送っているようで、元気回復して、通信で情報を発信するのが、彼女の心身ともに立ち直りのバロメーターになっていました。

いろんな場所で一緒にやろう!
 こういう状況で、子ども達の遊びの中で、パソコン通信を通していろんな人との交流を楽しむようになって、他の子ども達にもいろいろと欲求がでてきました。そこで、子ども達の中から「みんなで何か一つのことをして楽しもう!」という話がでてきました。そこで、クラスの5人で仕事分担をして、したきりすずめの紙芝居を作ろうということになったようです。
 以下のような手順で作業を進めてきました。
1 場面を考える。
 したきりすずめの話は、みんな知っているはずなのに、みんなの記憶にあるしたきりすずめは、微妙に違い、いろいろ討議の末、あらすじを決め、場面を設定していきました。それでも、なかなか決まらず、結局何日もその話が続きました。その間も、U子とT男に、「こんな場面になったけど、どうおもう。」などの電子メイルがやりとりされていたようです。その経過も、楽しんでいたようでした。場面を決めた後、どの場面は誰がやるか決めました。そして、最終結論を、電子メイルで、病室の2人に送って、作業が開始になったようです。ここで、高速LANとCUSeeMeとか、QuickTimeConferenceなどのデジタル会議システムがあれば、と思いました。
2 絵を描く。
 下絵はA4の紙に鉛筆で書き、イメージスキャナーでデジタル化して、キッドピクスで着色しました。
 病室にいるU子とT男の分担の分は、下絵を病室から持ち出し、それを同様にデジタル化して、そのデータを電子メイルで送りました。できあがったら、教室のY子へ電子メイルで送るということになっていました。しかし、実際には、やり直しなどがあったので、何度か、やりとりが行われていました。特に、遊びで、これだけ真剣にみんなでやれるのは、すごいと思いました。しかも、クラスの全員が参加しているのですから、なおさらのことです。これも、パソコン通信があったからこそです。
3 シナリオを考え、配役を決める。
 描いた絵を場面順に並べて、全員でシナリオを考えていきました。しかし、これは、前に書いたような電子会議システムなどがあればよいのですが、残念ながら、教室のメンバーだけでやりました。そのため、病室組2人は、残念がっていました。残った3人は、一生懸命に、おもしろくなるように、考えていたようです。このがんばりを云々というのは、野暮というものでしょう。
 そうして決まったシナリオは、電子メイルで病棟の2人に送られ、意見交換の後、最終稿になりました。配役を決めるのも、病棟にいる2人が不利になっては、かわいそうと、今回は特に気を使って、病棟の2人から希望を聞いていたようです。(電子メイルで先に希望を聞いていたようです。)
4 録音する。
 教室では、各自自分のせりふを録音し、病室にいるU子とT男は、分担の役のせりふを病室で録音して、電子メイルで教室に送りました。特に、教室では、声優志望のY子が監督のような役割を自分から行い、いろいろ演技指導するなどして、熱気あふれる録音になりました。そうして集まった音のデータを、SoundEdit(システムソフト)というソフトで、1つにまとめました。
5 BGMを録音する。
 当初の予定では、BGMは考えていなかったようなのですが、試しに、紙芝居にしてみると、何か寂しい感じがするとの声があがり、BGMをつけることになりました。しかし、いざするとなると、なかなかいい音楽が浮かんでこないので、MIDIを使い、BandInABoxというソフトの自動伴奏機能を使って、いろんなメロディーを演奏させてみました。したきりすずめのBGMとして、耳障りじゃない、しかも、雰囲気を盛り上げるメロディーを探すんだと、みんな一生懸命でした。この日は、5人全員が教室に集まっていましたので、5人で意見を交換しあっていました。途中、「これでええやん。」と、妥協の声があがったときは、他の4人がそれを制するという5つの頭脳が1つになっていると、感じました。
6 アルバムにする。(したきり.mov 参照)
 製作期間3カ月という時間をかけて、QTアルバム(コーシングラフィック)を使って、アルバムにしました。タイトルはどのフォントがいいの、誰々のせりふは味があるのと、非常に盛り上がりを見せて、作業は終了しました。
 この作業の中で、これが子ども達の中からでてきた遊びなのかと思われるほど、真剣な姿が見られました。特に、Y子は、教室の子ども達と、病棟の2人の仕事の作業の進行状況に気を使いながら、電子メイルで連絡を取り合いながら、調整したり、体調が悪い子どもの作品を手直ししたりと、これまでのY子からは、想像できない活躍ぶりでした。
 また、他の子ども達も、それまで、Y子に対して、あまり積極的に関わりをもとうとしなかったのが、一緒に作業をしていく中で、彼女を無視することはできなくなり、また、その中で、彼女のリーダーシップにふれ、彼女の人間性を認めていったのだと思われます。
この取り組みを通して、以下のような点がすばらしいのではないかと思われます。 ・クラスが1つになった。
・パソコン通信を使ったことで、全員が主人公になれて、主体的に対人関係を持ちながら遊ぶことができた。
・思いやりの気持ちが育った。
・いままで認められることの少なかった子どもに目を向けて、その活動を援助することで、その活動がその子どもの自信につながっていった。

ネットがあるから一緒に遊べる。
 健康な私たちと、病気加療のため入院して生活することを余儀なくされている子ども達と、人間個人の人格の重みに違いはありません。私たちが小・中学生の時、また、現在でも、自由に遊びたい、好きな人と自由に話したい。友達のことをもっと知りたい。いろんなことをもっと知りたいしやってみたい。いろんな欲求が、いろんな人間からでてくるのは、当然のことです。
 そんな欲求は、1人の人間として、当然のことでしょう。そんな人間としての当然の欲求を可能にする技術。その1つが、パーソナルコンピュータであり、それを結んだネットワークだと思います。
 これまで、2つの遊びの例を紹介させてもらいました。MY-Netは、今も動いています。そして、それをとりまく子ども達は、今日も、いろんなことを始めています。
 大人は、子ども達に、教育的なことを要求し、それを楽しいと思える子どもだけならいいにしても、楽しいと思えない子どもにもそれを要求します。それを楽しいと思えないのは、指導者の教育技術が未熟だからだとか云々と突然教育評論家になってしまうことが多々あります。確かにそういったことは否定できません。しかし、すべての子どもが、すべて同じことを楽しいと思えるはずがありません。そして、いろんな個性がぶつかりあいながら、いろんな要求に応えてくれるもの。それを可能にするのが先端技術の利用ではないでしょうか。
 今回紹介させてもらいましたU子もY子も、学業の成績は決して良い方ではありません。しかし、このような遊びの中で、いろんなことを学んだと思います。例えば、私の幼なじみに、勉強はできないけれど、走るのは早い友達がいました。その子は、それを誇りにし、中学生になって陸上部で活躍し、自信に満ちあふれていました。そして、現在、家業を継いで、しっかりと生活しています。
 生まれつき病気がちなY子も、もともと勉強が嫌いだったU子も、そういったものをもっていませんでした。しかし、私たちと知り合い、パーソナルコンピュータと出会い、それにふれ、その向こうに友達がいるということに気がついたとき、そこには子ども達の社会・文化が形成され、得意な方法で自己表現をしているうちに、普段話すことのない友達から認められ、それが自信につながってきたのです。
 Y子の場合、集団活動に参加することを拒んでいたのが、みんなから一定認められてからというもの、集団での活動に自信を持って参加できるようになりました。このことが将来、直接職業につながらなくても、生きていく上での自信の一つになっていくに違いありません。
 また、U子の場合は、重篤な病気と闘うことを突然余儀なくされ、その中で、孤独との闘いも加わり、全く限られた人間としか関係がもてない状況にありました。その人は、医者や看護婦、そして我々教師、家族です。感染予防の関係から、友達が面会に来てくれても自由に会うこともできない。それに、副作用に苦しむ姿を見られたくないという気持ちもあったことでしょう。そういった状況で、人との関係がもて、しかも、自由に情報が発信でき、それが友達や周囲の人たちに感動を与えているということを知った時、Y子にとってネットワークは離せないものになったのです。その結果、つらい治療が終わって、少しでも元気になれば、絵を描き、ネットにアップロードするという状況が生まれたんだと思います。そして、孤独と病気との闘いを隔離病室で、友達との関わりを支えに、無事見事に乗り越えていきました。医学的に証明されたわけではありませんが、わずかな例でくらべてみますと、その差は歴然です。
 今回紹介させてもらったような例は、世間にはまだまだあると思われます。そして、今後ますます高齢化社会を迎えていく日本において、決して他人事ではありません。
 今後、遊びの中で異文化にふれたり、離れた地域や他国との文化比較や共有、また、共同作業などもおもしろいと思いますし、デジタル会議システムなどの利用が可能なら、病棟の中と学校、そして、世界中の子どもと、遊びや学びを共有できるのではないでしょうか。
 こういった科学技術の恩恵は、儲けさせてくれるお客さんではなく、このような社会的弱者といわれる人たちが受けるべきものだと思います。そして、生きる力を与えてくれるのは、機械ではなく社会の中で生活している人間であり、そこに所属し、一緒に文化を形成しているという気持ちだと思うのですが、その人間との関わりが直接もてない場合、その仲立ちをしてくれるのは、機械、そして、それを支える技術ではないでしょうか。今後、こういう暖かい技術がますます発展することを祈ります。そして、数多くの笑顔が見られますよう願っています

兵庫教育大学インターネット上での大学公開講座

アメリカ合衆国障害児教育の歴史と発展--我が国の障害児教育を見直す--
公開講座のホームページ

           以上8月の会報でした。次号をお楽しみに。