障害者とコンピュータ利用教育研究会

1999年4月会報 NO. 105  Mac Education Society(MES)

編集 成田 滋 西谷淳 猶原秀明 丹羽登 村川佳子

PDF版の会報(204K)はこちらです。お読みになるにはAcrobatReader日本語版が必要です。どうかダウンロードしてください。また、コンピュータ関連の雑誌についているCD-ROMには、無料のAcrobatReader日本語版がついています。これをハードディスクにインストールすることをお勧めします。


   
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1998年
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成田研究室

 

〒673-1421兵庫県加東郡社町山国2007
  兵庫教育大学 学校教育研究センター
  naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp
  Fax 0795-40-2203

■ 目次 ■

 

「障害を持つ人から見た大阪マップ」をつくろう

新刊書のご案内

ハワイの学校におけるIEP-個別教育計画の実際

1998年アメリカ合衆国個別障害者教育法(IDEA)第20回議会報告書 報告書の要約 第二部

アイスランドの学校見学

コロラド州デンバー市周辺での研修記

お知らせ

市販教材の紹介

新製品紹介

皆さんからのお便り

■「障害を持つ人から見た大阪マップ」をつくろう

 「2001年未来基金」の方から、現在兵教大大学院で研究する府立茨木養護学校の丹羽登氏に研究費交付の決定通知書が届きました。以下、申請の概要をお知らせします。なお「2001年未来基金」のスポンサーはマイクロソフト社です。

団体名: 障害児のネットワーク活用研究会
代表者名: 成田 滋
応募担当者名: 丹羽 登
テーマ :「障害を持つ人から見た大阪マップ」をつくろう
期 間 :1999年4月〜2001年3月迄(延長理由は具体的内容に記載)
助成金額: 3,000,000円
参加学校
学校名 : 大阪府立茨木養護学校ほか
参加者 : 生徒+卒業生+先生

□プロジェクトの背景:
 障害を持つ児童生徒(とりわけ肢体不自由児)の場合は、公共交通機関がまだまだ利用することが難しい状況であり、健常児と比べて自動車を利用することが圧倒的に多いといえる。そのため公共交通機関を利用する子は少なく、都会に出たという子も少ない。そこで、その子達が外出するのを手助けするために、利用マップの作成を考えた。
 また現在コンピュータとインターネットの教育利用が叫ばれているが、ハード・ソフトの両面に渡って整備が整わず、更にその必要性について先生間でのコンセンサスがとれていない。そこで、授業という枠にはまらずに利用していく中でこれらの有用性を示したいと考えた。そこで他校の生徒達とネットワークを通じてコミュニケーションが広がるもの、成果が形として残るもの、生徒達に達成感が感じられるものとして考えてみた。現在地域の作業所などを中心に、地域密着型の「車椅子で利用できる店」の紹介をした冊子が作られているが、今回のプロジェクトでは車椅子だけではなく、種々の障害を持った人からの感想・意見を集めて、しかも大規模なものを作ってみたいと考えている。

□プロジェクトの目的:
○ インターネットの身近な利用を生徒達に考えさせる。
○ インターネットを利用して他校の生徒達と共同でプロジェクトを持つ。
○ 生徒たちが公共交通機関や都会のことについて注意を払うことが出来るようになる。
○ 子ども達の活動を進めていく中で、周りの先生達の関心を高めていく。
○ 「障害を持つ人から見た大阪マップ」を作成する。
○ マップの制作を機に街へ出る機会が増える。障害を持つ人たちが出やすい環境を整える。

□期待される効果:
○ 生徒たちがインターネット・コンピュータは難しいものでなく、誰でも簡単に使えるものだと考え、積極的に利用できるようになる。
○ 生徒たちがネットワークの利点と怖い点などについて、体験を通して知ることができる。
○ 外で集まって会議をすることが難しい生徒たちが、大規模な共同作業をネットワークを利用して出来る楽しさとを知ることができる。
○ 障害を持つ人が、社会に出ていく妨げになっているものの一つとして、公共交通機関の利用の難しさを知り、どうすればよいか考えていける。
○ 情報を集めていく過程で、生徒たちが公共交通機関や店などに行く機会が増える。
○ 先生たちの関心が高まり、学校でのインターネット・パソコン利用が促進される。
○ 「障害を持つ人から見た大阪マップ」の作成により、障害を持つ人及び高齢のため車椅子での生活をしている人や介助者にとって、外出するときの助けとなる。

□活動の具体的内容:
○ 生徒を指導する先生へのパソコン・インターネットに関する研修会
○ 生徒たちが、公共交通機関や店、観光・レジャー地について感想をまとめる
○ Web上で他校のを見て、自分が知りたいことは何かを確認し、メールをその人とWebマスターに送る、とともに自分の分についても修正をする。
○ Webマスターが、集まったことを基に統一した形式を決定し、メールで連絡する。
○ 生徒たちが、その場へ一人または家族で行った時にそれらの場所について調べる。
○ Web上に調べた結果をあげていくとともに、掲示板やChatを利用して学校間のコミュニケーションを図る。
○ Web上で「障害を持つ人から見た大阪マップ」を作成すると共に、冊子化もする。
○ 参加校は、公共交通機関を考慮に入れて、6校を予定(現在3校、他は募集中)
○ 実施期間については、生徒たちの外へ出ることの少なさやまとめていくことの困難さ、及び役立つ冊子として仕上げていく必要性から2年間とする。

■新刊書のご案内

「アメリカの個別教育計画と情報活用の展開: 教育改革の視点から」

 文教資料協会出版 A5版398頁 定価 2,500円(送料込)
成田 滋 編著 5月1日発行 お申し込み/注文 国際比較教育研究会 郵便振替 00220-0-42537
 又はメールでも結構です。naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp

執筆者一覧(ABC順)
 後藤将裕 筑波大学大学院 masahiro@kyouiku.tsukuba.ac.jp
 岩井宏氏 大阪市立聾学校 m97305k@students.hyogo-u.ac.jp
 栢木隆太郎 大阪市教育センター kayap@ma5.seikyou.ne.jp
 梶 正義 兵庫県立のじぎく養護学校 mkaji@kids.mediafusion.co.jp
 村川佳子 兵庫教育大学大学院 m98329c@students.hyogo-u.ac.jp
 中島康明 大阪府立盲学校 nakashima@osakapref-sb.ed.jp
 猶原秀明 兵庫教育大学大学院 naochan@fa.mbn.or.jp
 成田 滋 兵庫教育大学 naritas@ceser.hyogo-u.ac.jpnaritas@ceser.hyogo-u.ac.jp
 西谷 淳 兵庫教育大学大学院 a-nishi@jungle.or.jp
 丹羽 登 兵庫教育大学大学院 nobchan.niwa@nifty.ne.jp
 大杉成喜 滋賀大学教育学部附属養護学校 osugi@net135.or.jp
 筱 更治 奈良県立奈良工業高等学校 shino@edu.hyogo-u.ac.jp
 曽根秀樹 仙台市立第一中学校 sohideki@daiichi-jhs.aoba.sendai.jp
 渡部親司 島根県立出雲養護学校 m97332h@students.hyogo-u.ac.jp


目 次
第一章 個別教育計画と学習障害
○個性のある学校作りと教師の力量形成に個別の指導計画は役立つ
○学習障害(LD)児の最新研究と親のためのガイドライン
○学習障害と個別教育計画をめぐる評価と課題
○ヴァージニア州プリンスウイリアム郡学校区障害児の個別教育計画作成マニュアル
○カリフォルニア州サンタクララ郡学校区教育委員会: 教育心理的サービスに関する報告書(IEP)
○ミネアポリス市教育委員会の軽度障害児に対するサービスモデル

第二章 障害児教育政策
○アメリカ合衆国連邦教育省教育戦略プラン1998-2002
○ミネソタ州Minneapolis学校区とRoseville学校区の障害児教育
○教育成果を問う「アカンタビリティ」の視点からみたアメリカと韓国の教育改革
○個別障害者教育法(IDEA)第19回議会報告書
○個別障害者教育法(IDEA)第19回議会報告書

第三章 ホーム・スクールとチャーター・スクール
○ミネアポリス公立学校との連携によるホーム・スクールを実施する際の親のためのガイドライン
○契約学校 "New Visions Charter School"の紹介
○ワシントンDCにおける、最初の公立チャーター・スクール
 ---Options Public Charter School---
○ミネソタ州ミネアポリス市のチャーター・スクール
○ミネソタ州 Mounds View学校区でのホーム・スクール見学訪問
○「第29回 公立学校に関する市民の意識調査」ホームスクール(Home School)に関する態度
○アメリカのホーム・スクールから学ぶこと

第四章 ネットワークと障害児教育
○メディアの変遷と学校と情報教育の課題
○新しい教授/学習支援環境とWorld Wide Webの利用
○アメリカの障害児教育と支援テクノロジー:方策と実践
○ミネソタ州ミネアポリス学校区教育委員会: 電子情報ネットワークの利用
○フェアファックス郡学校区-適切なネットワーク接続の指針
○1997年度アメリカ合衆国公立学校のインターネット接続状況報告要旨
○生徒が習得すべきテクノロジー活用能力の一覧表

第五章 情報リテラシー
○知識創造社会に生きる生徒たち
○学校社会と情報リテラシー
○大学生に対する入門的な情報リテラシー教育についての抱負
○カリフォルニア・オンライン大学 California Virtual University (CVU)
 

■ハワイの学校におけるIEP-個別教育計画の実際

 西谷 淳 兵庫教育大学 a-nishi@jungle.or.jp
 今回のハワイでの研修で複数の学校を実地に見学して,法に基づくIEPの実施が,学校の教師や校長にとって相当の時間を割かれる大変な作業であることがよくわかった。なぜなら,HG Hills Elementaryという小学校では、職員室にIEPミーティングの予定が表にして貼り出されていたが,一日に複数回の割り当てにも関わらず,時間が足りなくて予定の立たないミーティングが数多く含まれていた。
 Clockett Elementaryの校長は。我々の訪問した日に3つのIEPミーテイングを抱えており,その時間は一つが午前7時,次が午後3時,もう一つが午後7時からというハードなものであった。IEPミーティングには,親,校長,特殊教育担任,通常学級担任が必ず出席する必要がある。それぞれのメンバーの時間を調整し会議の予定を立てることは結構大変なことである。
 さらに,ハワイのKeaukaha Elementaryを含めて,3つの小学校で共通していたことは,IEPを実施する時間を完全に親の出席可能な時間に合わせていることだった。IEPは好きですかという質問に,校長も教師も"No, I do not. "と答えている。それは,子ども一人あたりのIEPフォームのページ数の多さから,教師が記入すべき事項が多く,書類の作成にもかなりの時間が必要なことが伺える。それでもIEPを肯定的にとらえる意見がいくつも聞かれた。この1月に研修してきたバンダービルト大学のPeabodyCollageで教えるDr. Craig Kennedy教授は、IEPは合衆国がつくった法律の中でもっとも優れたものの一つだと言っていた。
 Clockett Elementaryの校長であるTonyはIEPは"very very very very hard. But it is necessary."と話していた。意外に感じたことは,IEPの法律がこれほど整備されており,親の権利が保障されているにもかかわらず,親のIEPへの熱意は高くないという意見を複数の教師から聞いたことだ。親や学校任せにすることが多く,IEPに対して,何でもYESと答える傾向があるというのである。
 また,IEPに対して学校と親の考えが最後まで一致しない場合は,別の機関に間に入ってもらって調停してもらうことになり,それでもだめな場合は裁判になるというコースが決まっているのだが,実際にそうなったケースは,今回訪ねた学校では一つもなかった。
 権利が明確化されていれば,親はIEPを盾に,学校に難題を要求してくる場合もあるかもしれないと逆に心配してしまうのだが,不思議なことにそういう事態にはならないようである。このあたりは,まだわからないことが多いので,もっと調べる必要がある。ナッシュビルでもハワイでもIEPの実施に対する教師の心配は,自分の予想とは逆で,親が自分の子どもの教育について,学校に何か要求できるほど関心を持っていないということであるらしい。
 いずれにせよ,IEPは現場に徹底した取り組みを要求する。Dr. Eva Horn教授が教えてくれたが,学校は予算がないという理由で,子どものニーズに基づく措置を断ることはできないのである。また,そのことを親の権利として,学校が親に文書で知らせているのである。自分が感じたことは,「IEPは形骸化した取り組みではない。法に基づく徹底した取り組みである」ということだった。

■1998年アメリカ合衆国個別障害者教育法(IDEA)第20回議会報告書
報告書の要約 第二部

(先月より4回にわたって、アメリカ合衆国個別障害者教育法(IDEA)第20回議会報告書報告書の要約を掲載しています。今回は2回目です。この報告書は、アメリカの障害児教育の現状を知るにはバイブルのような内容が盛り込まれています。)
http://www.ceser.hyogo-u.ac.jp/naritas/idea99/index.htm
(翻訳 猶原秀明 豊中養護学校 m97332h@students.hyogo-u.ac.jp)
第二部

○生徒の特徴
 このセクションでは、生徒の個性に関する5つのモジュールを含んでいる。そのモジュールは、IDEAと、州が該当する子どもに提供するために受け取る連邦資金のもとに提供されるものである。

○IDEAによる0歳から5歳までの者
・この5年間で、パートCで提供される乳児や幼児の数は1992年12月1日の145,179人から1996年12月1日の18,7348人まで着実に増加した。パートCのもとで0歳から2歳までの人口の割合はわずかに1995年の1.54%から1996年の1.65%に増えている。
・障害のある乳幼児がサービスを受ける、最もよくある状況は家庭で9,0275件または53%である。早期介入クラスによるものは47,896件で28%である。
・この5年間でIDEA Preschool Grants Programのサービスを受ける子供の数は1992-93年度の455,449人から1996-97年度の559,902人に増加している。
・1995-96年度では3-5歳の障害のある子供の51.6%が通常学級でサービスを受け、前年度は、通常学級でサービスを受ける子供は、だいたい1%の増加があった。

○IDEAによる6歳から21歳までの者
・この2,3年で学校に通う障害のある子供たちの数は一般的な学校の在籍に比べて高い水準の学校の在籍が増えてきている。
・この10年で障害のある6-11歳の子供の数は、25.3%増加し、12-17歳の障害のある子供の数は30.7%増加し、18-21歳の障害のある子供の数は14.7%増加した。
・1996-97年のIDEAのもとでの生徒の90%以上が4つの障害分類の1つに分類されている。学習障害(51.1% 2,676,229人)、言語障害(20.1% 1,050,975人)、知的障害(11.4% 594,025人)、情緒障害(8.6%447,426人)
・障害を持つ生徒の分布は年齢のグループによって変化する。特にLD児は3つの年齢グループの中で最大のカテゴリーであり、計算すると、6-11歳の41.2%、12-17歳の62.3%、18-21歳の51.7%になる。
○障害のある生徒の民族や人種の構成
・特殊教育での少数民族や人種の不均衡な格差は、高度に複合した問題である。なぜなら、結果を区別することは難しいからである。英語の熟練の限界や、住居、特殊教育資格者の民族、民族性を反映している。
・人種と民族間での障害の流行とサービス供給の食い違いは最も知的障害のカテゴリーで顕著になる。
・人種や民族のデータは1997のIDEA修正版において、特殊教育における人種や少数民族の不均衡な説明と少数の若者のドロップアウトしたレートをモニターすることで会議やOSEPをより可能にすることを要求している。

○性差と特殊教育の認定と教育サービス
・男子も女子も、学齢期の人口は同じ割合である。男子はおよそ特殊教育に入る全ての生徒の2/3を占めている。
・特殊教育での男子の不均衡な説明は学習障害と情緒障害のカテゴリーで最も大きい、それは、しばしば判定基準を満たす範囲が最も広く定義された障害のカテゴリーであると考えられる。
・一度、ある生徒が特殊教育に適すると判定されると、彼らが受けるサービスは、性差によって大して違わない。そして、教師は個別の生徒をよく考え、教育方法を選択するために現れる。
・全般的に障害があろうとなかろうと、女子は、学校の成績が男子より良い。しかし、よい学力にも関わらず、障害のある女子は学校終了後の結果は同様の男子より良くない。彼らの就労は男子より少なく低い賃金である。そして、中学卒業後の進路も少ない。

○情緒不安定の生徒
・他の生徒と比較すると、障害の有無に関わらず、情緒の不安定な子どもは男子、アフリカンアメリカン、発展途上国出身の生徒に多い。
・情緒の不安定さを持つ生徒の過半数は、彼らの受けるサービスのほとんどで、情緒不安定を持たない生徒から環境を分けられる。たとえ、ある生徒が通常学級で成功しても、調査によると、これらの生徒と先生の多くは容易に、彼らが通常学級で成功するために必要な支援を受け取らない。
・情緒の不安定な生徒は多くの科目で失敗する。学年平均より低く、学校の日常でも多くの失敗をし、他の障害者を持つ生徒よりも進級しない。卒業する前に55%の生徒が中途退学する。
・OSEPはリサーチプロジェクトと支持し、これらの生徒の発達の問題に焦点を当てている。そして、早期介入と学校の規律への有望なアプローチを発展させるために重大な貢献をしている。OSEPは現在、防止、学習への前向きなアプローチ、文化的能力、情緒の不安定な子どもへのアセスメントに焦点を当てて資金を提供するプロジェクトをしている。
・1998年の予算では、「子どもと青少年の情緒の不安定を改善する国家計画」は、OSEPモデル、優先的なデモンストレーションの焦点化された領域になった。会議事項の7つの目標に一致した総合的なサービスを支持し、3つの新しい研究申請対して研究助成金が与えられた。

■アイスランドの学校見学

猶原秀明 兵庫教育大学大学院 naochan@fa.mbn.or.jp
 アイスランドは思ったより暖かく(といっても、0℃前後ですが)、雪も少ないです。 ここ、レイキャビクはたいへん美しい町です。温泉が世界一豊富だと言うことで、国 中のエネルギーを地熱発電でまかなっています。そのため、空気がとても澄んでいて 景色がクリアです。すべての家の暖房は、温泉によっています。出てくるお湯も温泉 です。水は、世界一質のいい、おいしい水だそうです。
 レイキャビクから飛行機で約45分の所にある、アークレイリという所に行き、2つ公立の学校に行ってきました。アイスランドの人たちは普段はアイスランド語をしゃべっていて、英語も話せます。識字率は、99.9%だとのこと。ただし、とても分かりにくいです。聞き取るのに、より集中力を要します。  Lundarskoli(Lundar school)は、公立の小学校です。6学年のクラスに入り、授業に参加しました。子供は、20人で、教師は2人です。1人車椅子に乗った肢体不自由(脳性マヒ)の割合重度な男の子がいて、その子に一方の先生がついていました。40分の授業でした。
 5つのグループに分かれて、それぞれ違う課題をしていました。教室には、2台のコンピュータがありましたが、インターネットには接続されていませんでした。車椅子の子は、先生とコンピュータで勉強をしていました。コンピュータ画面には、ソフトキーボードが出ていて、先生がマウスを動かして彼のかすかな動きで意思を読み取り、文字にします。先生が車椅子を押して、教室のあちこちに貼ってある単語の所へ連れて行き、それを覚えさせます。そして、コンピュータの所に戻って、彼にその単語を書かせる(上記の方法で教師が変わりにする)ということをしていました。他の教室の授業にも入りましたが、どこも自由な感じで楽しくやっていました。歩いて登校しています。
 2校目は、Hrafnagilsskoli(skoliは、school)で、ここも公立の学校ですが高校まであります。ここでは、4学年の授業に入りました。18人の子供に、2人の先生。1人、知的障害の男子がおり、一方の先生は、この子についています。この教師は、知的障害の専門家だと言っていました。教室の隅に、少し囲まれたコンピュータコーナーがあり、1台置いてありました。数学の授業でしたが、知的障害の男の子に、1人ついてコンピュータでゲームをしながら簡単な掛け算の勉強をしていました。そういうソフトが入っていました。ここも、インターネットにはつながっていません。しかし、コンピュータルームがあり、そこには12台のコンピュータがインターネットにつながれて動いていました。設備の整ったきれいな学校でした。生徒が、食後にのんびり過ごす天井にミラーボールのついた、音楽ががんがん鳴っているディスコのような広い部屋もありました。薄暗くしてありました。体育館も立派で、プールは屋外ですが温水です。もちろん温泉利用です。かすかに硫黄の匂いがしていました。
 昼食は、この地区の教育委員会の3人の先生と2校目の学校の校長、商工会議所の会長さんと一緒にとりました。ホテルのレストランの一部屋を取ってくれており、そこで約2時間半、インクルージョンについてと、アイスランドの教育システムについて話をしました。アイスランドには、3校の養護学校があるが、それも閉鎖が決まっているとのことでした。中度、軽度、特に軽度の障害を持つ子供のインクルージョンが一番の課題だと言っていました。商工会議所の会長さんがかなりの力を持っており、学校の経営などにも強い影響力を持っているようです。そして、教育の状況についてもかなり詳しかったです。今日見た、2校には、各教室にコンピュータがありましたが、ネットワークについて尋ねると、今、アークレイリの学校全体をネットワークでつなぐ計画をしているとのことでした。
 その後、教育委員会のオフィスに行きました。カラフルで明るいオフィスでした。アークレイリの教育状況について聞きました。世界で初めて、民主主義を作った国でもあり、インクルージョンにもかなり力を入れているようです。夜は、アイスランド教育大学の教授の家に招待を受けていきました。  アイスランド自体、人口が少なく、まして、アークレイリはアイスランド第2の町と言えども人工15,000人ほどですので障害を持つ子供の数もかなり少ないです。
 大学教育に話題を移します。UNIVERSITY COLLEGE OF EDUCATION は、3つの大学が統合されてできています。なかなか立派で充実しています。アメリカの大学もそうでしたが、とにかくきれいです。いい環境です。アイスランドの教員養成は、義務教育を21歳で終えてから24歳までの3年間行われます。
 学生数は200人で、博士課程はありません。そのうち半分以上の学生が特殊教育に関わる勉強をしているとのことです。アイスランドは、氷河や、溶岩に覆われた厳しい国土である為、遠隔教育に力を入れているとのことです。レイキャビクの学校はすべてネットワークでつながれています。
 また、教育で、この子にコンピュータが必要だと親が言えば、国費でコンピュータが導入されるとのこと。日本の状況を説明すると、日本はコンピュータ大国なのにどうして教育場面でそれが広がらないのかと逆に質問されました。学校への導入も進みつつあるが、コンピュータが入っても教員の問題で広がっていかないというと、それはアイスランドでも同じだと言っていました。  アイスランドでは、毎年各学校毎に2つの評価が行われている。ひとつは、学校が、自身の学校についてこういうことを行った、行っているという評価。もうひとつは、 大学の教授達からなる委員会のようなものによる評価である。これは、大学の先生が、直接その学校に行き、見たりインタビューしたりして行われる。この2つの評価に開きがあると指導が行われるとのこと。こちらの学校には、「スペシャルユニット」と呼ばれるクラスがある。これは、リソースルームではなく、特殊学級のようなものである。2人の教師で、6〜10人を見るとのこと。普通学校、学級にフィットしない子が入るとのこと。それは、どういう子かと聞くと、授業を妨害したり、情緒的に問題のある子との答え。昨日行った、アークレイリには、これはないようである。昨日アークレイリで見た車椅子の子は、レイキャビクでは子のスペシャルユニットに入るだろうとのことであった。同じいアイスランドのなかでも違うようである。これは、障害のとらえ方の違いによるのだろうか。
 アメリカでも、そうであったが、やはりインクルージョンといっても、すべての子供が一緒に教育を受けているわけではない。昨日、夜中に、幸運なことにオーロラを見ることができました。

■コロラド州デンバー市周辺での研修記

 福島 勇 福岡市立南福岡養護学校 sam@i-kyushu.or.jp

 現在、Assistive Technologyに関するCSUN Conferenceに参加するためにロサンジェルスに来ています。早いもので、あと一週間足らずで帰国です。明日には、最後の訪問先であるサンフランシスコに移動します。今日は、先週滞在していデンバーでの視察について報告させていただきます。

コロラド州におけるAAC&Assistive Technologyについて
 コロラド州には64の学校区があり、330人のAssistive Technology Speciatistがいます。彼らは、Speech Laungage Pathologist、OT、PT、障害児教育教師、Vision Specialist、Hearing Specialist、Regular Educator、Psychologistで構成され、そのほとんどは各学校に所属して、所属校の子どものAAC Needsに応じた指導を担当しています。ただし、各自の力量はまだ不十分であり、すべてのNeedsに応じきれていないそうです。そこで、コロラド州の教育庁は、AACに関する力量が十分なメンバー59名で構成される集団State-Wide Assistive Augmentative Alternative Communication(SWAAAC)を作っています。そして、SWAAACのメンバーを50の学校区毎に配置し(学校には所属していない)、各学校や保護者からの相談に応じるためのAdaptive /Assistive Technology Assesment Teamを作っています。SWAAACメンバーは各学校区毎にTeamを作って、所属School学校区内の学校からの要請にしたがって子どものAAC ニーズを評価し、訓練プログラムを立案し、担当の障害児教育教師を指導します。さらに、SWAAACの活動を支援(機器の提供、人材育成のためのワークショップの企画・運営・実施)するための組織として、コロラド大学医学部のHealth Science Centerに属するColorado Assistive Technology Project(CATP)があります。CATPは、全米各州に展開されているAssistive Technology Centerの一つで、その対象は0歳〜高齢者までのすべてのコロラド州民です。その運営資金は、連邦政府から提供されている基金を元に作られたJFK Partnersから支出されています。
 次にデンバー市の北東に位置するThornton市にあるHorizon高校を訪問し、主に移行プルグラムに関して視察しました。Horizon 高校は、Adams County School学校区(Thornton市も含まれる)に属する普通高校です。
(1) Adams County 学校区の高校における障害児教育について
Adams County 学校区では、LD 生徒の教育(LD プログラムと呼ばれている)とIQ70以下の特別なニーズのある生徒の教育(Reach プログラムと呼ばれている)の2種類の障害児教育があります。LD以外の生徒は、障害種に関係なくReach プログラムの教育の対象となるそうで、肢体不自由、精神遅滞、自閉、聾、盲など多様な障害の子どもたちが含まれます。学習障害プログラムは30人の生徒に対して1人の障害児教育 Teacher、Reach プログラムは10人の生徒に対して1人の障害児教育教師の割合で基本的にクラスが編成されています。Adams County 学校区の教育委員会lには、各学校を回って指導するPT(1回/週)、SLP(2〜3回/週)、Social Worker(1回/週)、Pcychologist(4回/週、Reach プログラムには1回/週)、移行プログラム教師 が所属しており、学校区内のすべての子どもに関わるシステムになっています。特に移行教育には力を入れており、Colorado Division of Vocational Rehabilitetionと協力して、16歳〜25歳の特別なニーズのある生徒を対象としたThe School-to-Work Alliance プログラム(SWAP)という組織を作って、校外で職号訓練を数多く実施しています。

(2) Horizon 高校の現状
Horizon 高校には、150人の学習障害プログラム対象児と28人のReach プログラム対象児(気管切開をしている子など重複児も在籍している)が在籍しています。学習障害プログラム対象児は、全員通常学級に全面的に統合されて授業も一緒に受けてることになっていますが、教科によってはリソースルームでの個別指導も行われています。Reach プログラム対象児も、基本的には通常学級に統合されていますが、普通学級の生徒と同じ教室にいるだけで、学習内容はほとんど別です。インクルージョンと言っても形だけという印象でした。特に職業訓練の時間が多いので、普通学級の生徒と一緒に過ごす時間は少ないので仕方のないことだという説明でした。

(3) Northglenn 高校でのIEP Meeting
 軽度MRのあるZくん19歳を対象としたIEP Meetingに参加させてもらいました。LawrenceでもIEP Meetingに参加させてもらいましたが、対象が年少児ではないので、出席者もMeetingの内容も異なります。出席者は、障害児教育教師1名、RegularのSocial Study 教師1名、Transiton プログラム 教師1名、ZくんのHelper(学校関係者ではない)1名、Colorado Division of Vocational Rehabilitetionから派遣されたSWAPメンバー2名、Zくんの母親、Zくんの計8名。Meetingの内容は、今年高校 Gradeを終了し、本格的にJob Trainingを中心とした障害児教育の対象となるために、そのための学習プログラムを構成するための基礎資料を収集することでした。まず、障害児教育 教師からZくんの学習状況と成績を説明し、その通りかどうかZくんに同意を求めます。次に、Zくんの性格や生活上の特徴が、障害児教育 教師から報告。
○依頼の仕方を知っている、
○ストレスを抑えることができる、
○人の話を静かに聞くことができる、
○音声言語によるコミュニケーションが可能である、
○記憶力が良い、といったことが報告された。さらに、RegularのSocial Study 教師から、「ユーモアがあって、ジョークをよく言うことができる」ということが補足説明された。その後、SWAPメンバーやTransiton プログラム 教師がZくんに質問。
○どんなスポーツが好きか?→ホッケー、
○どんなJobが好きか?→皿洗い。今までにいくつかのレストランで皿洗いをしたことがある。また、料理はしたことが無いがしてみたい。
○Grocery Storeで買い物をしたことがあるか?→昔買い物をしたことがあるが、今は1人では自信がない。 ○服は自分で買うのか?→NO、
○自分の服のサイズを知っているか?→NO、
○買い物の仕方を知っているか?→少しならわかる。そこで、Transiton プログラム 教師は、もっと細かく目標を設定したSocial Skill学習が必要であるということを説明。母親からは、料理・買い物・RTD(市Bus)の乗り方、お金の稼ぎ方を学校で指導して欲しいと言う要望が出されました。次回(次年度1999-2000年度9月)は、指導目標を細分化したプランを作成してからMeetingを持つ事を確認し、全員がIEPシートにサイン(私もサインしました)をして終了。

(4) Reach プログラム対象児が職業訓練をしている教会を訪問
 4人の軽度精神遅滞の女児(文字理解、音声コミュニケーションともに可能)が、教会の掃除をするという学校外での職業訓練学習を見学しました。子どもたちは、RTDを利用して自分たちだけで教会までやってきます。子どもたちが到着して職業学習をしている最中に、講師2人がやってきて、学習状況をチェックしたり、本人達からバスの乗り方や掃除仕事についてインタビューし、困難だった点をクリアする方法を指導します。1人の子どもが「バスを降りそこねた」と話したら、Assistant 教師はその原因(バス停に到着する時刻の予測ができていないこと)を考えさせ、バスの時刻表を渡してスケジュールを再考するように勧めていました。その後、子どもたちは、それぞれ自分の次回の学習スケジュール(移動のスケジュールや仕事の内容の確認)を決めます。この段階に至るまでは、講師がつきっきりで指導してきたので、自分たちで考え、決めることができるようになっているとの説明。また、子どもたちはバスに乗っている時にとても緊張するので、目的地の地名・建物の写真・建物のPCSがかかれたカードを持っています。そして、バスに乗る際、運転手にそのカードを見せて、自分が乗ったバスが正しいかどうかを確認するようにさせているとの説明。この4人は、この教会に週2回来て職業学習しており、それ以外の日には別の場所で職業学習しています(Domino Pizzaで箱折り作業、市立図書館で本の整理、商店での商品の整理、Pizza Hutで箱折り作業)。

(5) Reach プログラム対象児が職業訓練をしている企業Goodwill Industries of Denverを訪問  Goodwill Industries of Denverは、Adultの障害者を雇用している企業で、7人の生徒がJob学習をしていました。作業は、スプリンクラーの部品を組み立ててビニル袋に詰めるという内容です。ここには、Job Coach2名がおり、そのうちの1名は学校区が雇っており、もう一人はGoodwill Industries of Denverが雇っているということでした。7人の生徒は、精神遅滞が3名、自閉が1名、したい不自由が3名(うち1名はアテトーゼが強い)という内訳でした。作業しやすいように、Job Coachが工夫した自助具を利用していました。

 次にデンバー市の北部にあるAdams County 学校区 #12(http://www.ad12.k12.co.us/)のRocky Mountain Elementary Schoolを訪問しました。

(1) Rocky Mountain Elementary Schoolの障害児教育
 当校は普通小学校で、LD 生徒のクラスが2つ、それ以外の特別なニーズのある生徒のクラスが2つあります。LD以外の特別なニーズのある生徒のクラス2つはSpecial ClassとResource Classです。Special Classは、MR&PDの重複障害児11人(2人がAllday Inclusion、9人がPart-time Inclusion)が在籍しており、1人の障害児教育教師と7人の講師が指導に当たっています。一方、Resource Classは、High FunctionのPhysically Disability児10人が在籍していますが、全員がほぼAllday Inclusionされており、PT、OT、SLPの時間だけはこの教室で学習をする仕組みになっています。PT、OT、SLPはBoard of 学校区に所属しており、PTとOTは2〜3回/W、SLPは毎日やって来て指導に当たるそうです。また、当校にはLD Classがあるので,Psychologist、Nurse、Social Workerが配置されています。Special Classの子どもたちは、Art、Music、Computer、Physically Education(体育)、昼食、Reces(戸外での自由遊び)の時間にInclusionされて通常学級で授業を受けます。その際、必ず講師が通常学級についていき、指導に当たります。また、この学校の特徴として、Regular Kidsの3rd. GradeからAmerican Sign Laungageを毎朝教えており、Special Kidsとのコミュニケーションに利用させるようにしているそうです。

(2) 授業について
 CPのGくん7歳2年生は発話できませんが、W/Cの自操が可能で、指さしもできます。言語理解力は高いので、Dyna Voxを利用してコミュニケーションできるようになることを目標としたSpeechの授業が行われました。Speech Laungage Pathologistが絵本を見せて、「これは何と言いますか?」という質問に対して、Dyna Voxで答えるという内容の学習でした。約40分。
 4人のMR児のSpeechの授業では、Symbol(PCS)、文字、VOCA(Macawを利用)、Sign Laungageといった複数のコミュニケーションモードを利用してコミュニケーションする練習をしていました。子どもたちばかりでなく、Special Classのすべての教師は、子どもとコミュニケーションする際にSign Laungageを使っています。

 続いてDenver市の西に位置するLakewood市(Jefferson County Public 学校区、http://204.98.1.2/)にあるFletcher Miller Special Schoolを訪問しました。
(1) Fletcher Miller Special Schoolの概要
 当校には、Pre-School Gradeが2クラス(Deaf Classとそれ以外の子どもたちのClass)、Kindergarten Gradeが1クラス、小学が4クラス、中学が3クラス、高校が2クラスあり、全校生徒の人数は約100人です。早期教育児童は、近所のRegular Kidsも在籍しています。彼らはElementary GradeになればRegular Schoolに通うことになりますが、彼らの両親は、「幼少の頃から特別なニーズのあるPersonと出会わせたい。それが我が子の人生において価値がある。」と考えて通学させているという話でした。
 当校には、看護婦2人、ソーシャルワーカー1人、学校心理士2人(うち1人はHalf-day)、Speech Laungage Pathologist4人、OT2人(主にキーボードタイプの仕方を教える)、PT2人、Reading Specialist1人、Vision Speecialist4人、Equipment Repairer1人、が所属しており、各クラスの障害児教育教師や講師と協力しながら指導に当たっています。施設の特徴としては、体育館の横に室内温水プールがあることと、パニックを起こした子どもを隔離するタイムアウト室(壁にはマットが貼り付けてある)があることです。子どもたちの障害は、PD、MR、Deaf & Hearing Impaired、Blind &Visually Impairedと多様です。子どもたちは居住地の普通学校に通うことができるのですが、この学校の教育の質が高いので、親が望んで当校に通学させているという説明でした。

(2) AATAT(Adaptive/Assistive Technology Assesment Team)について
 Jefferson County Public学校区には、9,000人の子どもがいて、140の学校があるそうです。当学校区では、SWAAACの指導に基づき、特別なニーズのある生徒のAssistive Technologyの利用を推進するためのOut Reach Project(AATAT)を設けており、その本部がFletcher Miller Special Schoolに置かれています。AATATのメンバーは、SLP1名、OT1名、PT1名、当校の副校長先生(彼はAssistive Technology Specialistで、半日だけAATATの業務に従事する)1名、当校の事務職員(彼女はAssistive Technology Specialistで、半日だけAATATの業務に従事する)1名の計5名で構成されています。彼らは、チームで各学校に出掛けていき、特別なニーズのある生徒個々のAssistive Technology Needsに答えるのを業務としています。

(3) Colletta Shinn先生のクラス
 このクラスは高校 Gradeで、16歳〜21歳の子どもたち10人が在籍しています。そのうちの2人は、校外でのSocial Skill学習(RTDという市内バスに乗る練習)と校外でのJob学習に出かけていました。当校では、7ケ所の校外Jobの場所を持っており、高校 Gradeの子どもたち18人は、毎日の午後にはスクールバスを利用して、校外でのJob学習に出かけています。JoyStickによる電動車椅子を18歳のJさんは、不随意運動が顕著なアテトーゼ型CP。普段は、PCSのコミュニケーションブックを利用して、教師の指さしによるScanningでコミュニケーションしています。しかし、時間がかかってしまうので、Scanning入力しながらLiberatorも利用してコミュニケーションしています。彼女は、コミュニケーションブックよりもLiberatorの方が自分の気持ちを伝えやすいと、Liberatorで教えてくれました。彼女は、今年卒業して、Denver市内の水族館に就職することになっており、より軽量なDyna Voxを利用する練習をしている最中です。また、文字タイプは、Discover Switchを接続したMacintoshで行っており、メールアドレスも持っていました。

(4) 昼食 11:30〜12:45
 小中高校の生徒全員が、カフェテリアで昼食を食べます。もちろん他の学校と同様に、各自で食べたいものを選んで、レジでお金を払うシステムです。どの子どもも他の子どもと一緒にカフェテリアで昼食をとっていました。高校生たちは、午後の校外Job学習があるために早めに昼食をとっています。校長先生がカフェテリアをウロウロしながら、さかんに子どもたちと会話したりして関わっていました。子どもたちは自分のところに校長先生が来てくれるのを楽しみにしている様子でした。昼食の終わった子どもたちは、廊下を挟んで向かい側にある体育館でボール遊びをしたり、音楽に合わせて踊ったりして昼休みを楽しみます。

(5) Carolyn Takeshita先生によるグループでのSpeech授業
 小学の子どもたち5人(クラスはバラバラ)のグループで行われたSpeechの授業を見学しました。5人の子どもたちは、各自専用のコミュニケーションブックを持っています。コミュニケーションブックは、SLPが個々のレベルに応じて作っているとの説明でした。指導には、Carolyn先生とOT1人、近所のHelper高校生1人(彼女はボランティアで2回/W来校している)が関わっていました。
 まず、10個のPCS(具体物に関するもので、食事用フォーク・カメの人形・ヘアブラシ・バナナの模型・リンゴの模型・ミニカー・ベル・本・ボール・ローラースケート)
が描かれたシート(20分割に枠取りされている)が配られました。Carolyn先生は、PCSで描かれたものと同じ具体物を布製の袋の中に隠しておき、みんなに触らせて、何が隠れているかをPCS(表現は指さし)で答えさせます。触ったものをイメージする力、イメージした具体物とPCSのマッチング、PCSの理解、を促すことをねらいとした指導だそうです。次に、Talk Back。とPhonic Earという旧式のVOCAを利用して、予め録音しておいた自分の名前を出力させて、私に自己紹介してくれました。

(6) 高校 Gradeの子どもたちによる校外でのJob学習 13:45〜14:30  Colletta先生と一緒に、近くの連邦政府ビルで行われているJob学習を見学しました。5人の子どもたち(MR2人、車椅子を利用しているBlind&PD1人、車椅子を利用しているPD2人)は、スクールバスに乗って来ています。作業内容は、郵便物のテープ留め。ここでも、封筒の中に書類を入れる子ども、封筒に封をする子ども、封をした部分にテープを貼り付ける子ども、といったようにPartial Participationの考えで、協力しあいながら作業が行われていました。14:10には作業を終了し、ビル内のカフェテリアに行ってスナックタイム。各自、自宅から好きなお菓子や果物、飲み物を持ってきており、談笑しながら飲食。その後、迎えに来たスクールバスに乗って学校に戻りました。

■お知らせ

Closing The Gap大会
 世界一の規模を誇る障害児教育/リハビリテーションの大会であるClosing the Gap Conferenceが今年も開かれます。発表もできます。参加して決して悔やまない大会です。是非参加をお勧めしたい大会です。

 日時 1999年10月19-23日
 場所 ミネソタ州ブルーミントン市Radisson Hotel
 参加費 1999年9月10日まで$160
 出典企業 96社
 Closing the Gap Conference紹介のページ
  http://www.closingthegap.com

なお、1999年度のアクセシビリティ関連のハードウエア、ソフトウエア、制作企業、団体を網羅した印刷資料集もあります。以上の資料の検索はページ上でもできます。ご利用ください。

視覚障害者を対象としたパソコン利用支援プロジェクトの実証実験を開始
 日本アイ・ビー・エム(株)は、障害者がインターネットを利用できるようにすることを目的としたプロジェクト『音声認識ソフト使った視覚障 害者のパソコン利用支援―VRV(Voice Reco for Visually impaired)プロジェクト』の実証実験を13日から開始します。視覚障害を持つ2人〜4人のユーザーにシステムを一定期間利用してもらうことで、操作性、実用性、有効性などを検証する実験内容です。同社の音声認識ソフト『ViaVoice 98』や、HTMLファイル読み上げソフト『ホームページ・リーダー』、音声合成ソフト『ProTALKER 97』などをベースに構築したシステムを利用するようです。
 この実証実験は、通産省特別認可法人である情報処理振興事業協会が実施する『高齢者・障害者支援型情報システム開発事業』の対象となるプロジェクトの1つであり、福祉法人日本点字図書館の協力を得て実施されます。VRVは、23日から国立塩原視覚障害センター、5月8日から国立福岡視力障害センターでも順次実証実験が開始され、6月まで行なわれる予定です。
・日本IBM http://www.ibm.co.jp/
・日本IBM障害者向け製品情報『バリアフリーの扉』 http://www.ibm.co.jp/

障害者アート・ウェブギャラリー”を開設
 日本電気(株)は(財)日本チャリティ協会と共同で、同社が運営するホームページ“DEVAN”上に“障害者アート・ウェブギャラリー”を開設しました。“DEVAN”は、企業や自治体などがWeb上で主催する絵画展や写真展を集めたギャラリーモールです。主催者間でのコミュニティー形成に一役買っているようです。“障害者アート・ウェブギャラリー”は、日本チャリティ協会が'86年から開催している“障害者総合美術展”の入選作品など82作品を集めたサイトで、開設期間は8月末日までです。掲載されている作品の画像は有償でダウンロードが可能で、料金の一部は日本チャリティ協会を通じて、障害を持つ人の文化芸術活動に使われるということです。一度訪ねてみてください。
・障害者アート・ウェブギャラリー http://devan.ne.jp/a-art/

○制作 株式会社インフィニシスサポート部
〒982-0841 仙台市太白区向山4-25-13
(022)262-5230
support@infinisys.co.jp

■市販教材の紹介


「スヌーピーの英語大好き」
 この教材は英語をPEANUTSの仲間と英語や会話を学ぶものです。ベッドルームから裏庭へ、学校の教室へ、校庭へ、そしてまた家へとチャーリーブラウンたちの一日を一緒に過ごします。高等部の生徒に勧めます。
・クリックしてみられる150以上のギミックや隠されたアニメーション
・1000単語以上の図解入りの英和辞書
・PEANUTSのキャラクタが読み上げるセンテンスの例
・3段階の困難度に分かれた創作学習ゲーム
○制作 NECインターチャネル 03-5440-0762 4,000円

「虹のせかい」
 このCD-ROMはハイブリッド版でWindowsとMacintoshで使用できます。ねずみのマットがリーダーラビットのところへ遊びに行くと、たくさんのゲームの世界が広がっています。色ぬり、歌あそび、クイズ、パズル、シャボン玉などなど。どのゲームも動きがあり、マウスだけで操作できるようになっています。クリックの難しいお子さんも楽しめるようになっています。また、ゲーム中は中央部の任意のキーをたたくと、マウスと同じ様な操作ができるようになっています。指遊びや、歌の好きなお子さんにお勧めです。

「かずの森-マウスを持てたらポッケ編」
 このCD-ROMはWindowsで使用できます。マウスを動かすだけで、いろいろなゲームにチャレンジできます。各ゲームでは、でてくる動物やおばけの数を変えたりして、繰り返して楽しめます。また、登場する動物のスピードを変えられるゲームもあります。途中でゲームをそのままストップできる機能がついており、ゲーム直接子どもたちに質問できるようになっています。いずれのゲームもクリアすると、楽しい歌とアニメーションがでてきます。

「かずの森-クリックできたらピッケ編」
 このCD-ROMはWindowsで使用できます。マウスを何度もクリックしたり、ドラッグして、動物や時計を操作していくゲームが繰り広げられています。ただランダムにクリックするだけでなく、一定の場所をクリックしないと動かないゲームでは、クリック操作の確実性を養うことができるでしょう。さらに、時計のゲームでは大人が操作することによって子どもに答えてもらい、一緒に学習できるようになっています。

■新製品紹介

iMac用タッチスクリーンシステムBR>  吉田@神奈川県 yoshida.6384@pref.kanagawa.jp
 MACお宝鑑定団によれば、Troll Touch社が、iMac用のタッチスクリーンシステム
「TouchStar Universal iMac」を発表しています。
 ○Troll Touch社
   http://www.trolltouch.com/
 ○TouchStar Universal iMac
   http://www.trolltouch.com/imacintro.html

■皆さんからのお便り

36人の生徒を相手に
 曽根秀樹 仙台市立第一中学校 YQN03303@nifty.ne.jp
 ご無沙汰しています。今年から通常の学級の担任になりました。36人の生徒を相手に奮闘しています。ニフティに入りました。YQN03303@nifty.ne.jpです。家で見ています。結構、夜が遅いので、眠くなってきます。松下視聴覚財団で、63万円、いただきました。70万で申し込みましたが、1割りカットでした。内容は、兵教大での修論の続きです。iMAC2台と3CCDカメラを購入予定です。当然のことながら、学校に寄付です新学期は始まったばかりで、何から手をつけていいか、手探り状態です。現場はいつになく、忙しいです。ゆっくり研究にうちこみたいなぁと日々、思っています。

楽しかったです。
 永田和子 筑波大学付属大塚養護学校 knagata@hh.iij4u.or.jp
 本日は、桜冷えでしょうか?寒のもどりとなりました。この度のミニ研究会では滋賀大附属の方々に大変お世話になり、ありがとうございました。研修がてら、日吉大社、比叡山延暦寺等々の散策、楽しかったです。  私とずっとペアで仕事をしてきました正木先生は滋賀大附属養護学校の取り組みを今回はじめて知ったのですが、これから大塚養護学校できっと役立ててくれると思います。正木先生は、本日、米国デンバーへ出発し、4月8日に帰国の予定だそうです。また、「ミニ研究会」を知らないで当地を出発したのでしたが、皆さまにも久しぶりに会えましたし、定年退職を祝って戴くなど、本当にありがとうございました。まだまだ大塚養護学校やMESとはご縁がきれないようです。

「2001年未来基金」より
古屋和俊 京都市立桃陽養護学校 kf1160@mbox.kyoto-inet.or.jp  京都市立桃陽養護学校の古屋和俊と申します。平成9年度の特総研の教育工学の短研生で研修を受けた者です。
 さて、突然メールを差し上げたのは、お礼を申し上げたかったからです。メーリングリストedhand98にて、私も「2001年未来基金」を成田先生から教えていただき、応募させていただきましたところ、先日研究費を支給するとの連絡がありました。額は1,000,000円です。これも先生からメールで教えていただいたおかげです。ありがとうございました。桃陽養護校長の森川正善も大変喜んでおり、先生にお礼を申していたことをここに付け加えさせていただきます。
 研究のテーマは、「ノートパソコンを利用したインターネット利用学習およびテレビ会議システムを利用した遠隔補充授業の研究」です。平成9,10年度に文部省の調査研究費をいただき研究してきたのですが、今年度の研究費、主として通信費などのめどが立たず困っていたところでしたので、研究費をいただくことができて大変喜んでおります。これからどのように研究実践していくかが問題になりますが、この研究費を無駄にしないようにしていきたいと思っております。

ミニ研究会に参加して
 江田裕美子 高岡市立こまどり養護学校 eda@p1.tcnet.ne.jp
 先日、MESミニ研究会に行って来ました。暖かく受け入れてくださったみなさん、どうもありがとうございました。6年前からお世話になった方々にたくさんお会い出来て感動でした。鎌倉養護学校でのMES例会にお誘いいただかなかったら本校の今の施設がなかったと思います。ニフティで紹介してもらった年賀状コンクール(フジコピアン)も3年連続入賞し、プリンタ「や賞金も贈って」いただくこともできました。  たくさんの先生方の指導「も」たまものなのですがマックが扱いやすかったことも大きいです。おみやげもいただいてしまいました。子どもの教育に生かすのが使命ですね。養護学校が地域センター的相談活動の場になることとか、「VOCA用」とかビデ「VOCA(ボイスアウトプットコミュニケーションエイド)の活用実践例」オやカメラパソコンの紹介もよかったです。大石さんの発表も会場が盛り上がり内容もわかりやすかったです。実際の内容をわかりやすく書けなくてすみません。
 チャレンジの本も入手でき、読みながらわかりやすくまとめてあることに感動しました。私も4月から「も」頑張る気力をいただいてきました。また、よろしくお願いします。

「人間工学マウス」と一つの出来事
 山平喜一郎 明石市 k-yamahr@psn.ne.jp
 1週間程前に、娘の智美がまだ買って1週間程しか経っていない新しいマウスのコードをはさみで二箇所切断しました。このことをどのように判断しますか?人それぞれで、経験や立場によっていろんな見方ができます。まず、障害児・者とかかわることのほとんどない人ならば、「けしからんことである」と思って、しかるでしょう。このケースが一番多い、すなわち一般的な判断であると思います。
 次に、智美をロレンツォに置き換えて、オドーネ夫妻(ロレンツォの両親)ならばどうでしょうか?これはもう飛び上がって喜ぶでしょう、息子の手が動いたと。
 私の場合もそれに近いのです。以前はさみで紙を切る練習をよくさせたものです。はさみの二つの穴に親指と人さし指を入れ、開かせて、紙を刃と直角に入れて、指を閉じる。この一連の動作をマスターさせるのに苦労しました。ですから、「ついに智美もコードを切れるまでに成長したか」と感激した面があります。それからこの新しいマウス(TN製、\3,800)は、あまり調子がよくなかったのです。「人間工学マウス」と命名されて、形はかっこよかったのですが、ポインターの微妙な移動が出来なくて、最近Eメールを始めた長女や三女から苦情がでておりました。智美として抗議の意味もあったのであろうと思います。
 結局、古いマウスを取り出して、ローラーを掃除して使っております。このマウスは二年半位毎日智美が酷使しておりますが、一度もはさみで切ったことはありませんでした。そして今も役目を果たしています。  この件で「塞翁が馬」という中国の故事を思い出しました。ひとつの出来事であっても解釈の仕方や判断の仕方はいくらでもあるということを忘れてはいけないと思います。人はついつい一般論で判断しがちですが、一般論というのも時代や宗教・文化的背景等によって判断基準が異なっております。そういったものへのこだわりを戒めたものが上記の故事ではないでしょうか。

総合学習的な入り方
 飛田英昭 tobita@giganet.net
 私たちの教員間では,周辺校の学級崩壊につきうごかされた低教科学力児が教室にやってくるようになり,果たして彼らに「丁寧に教えれば」という常識を見直す時期にきているという議論がでています。ところがLDの子たちを教えていると周辺から入る情報は個別教育の話ばかりです。LDの子にはシンプルにという筋からすると,総合学習的な入り方は通用しないのだろうかと考えつつ,「子どもと歩く」という企画を続けています。路線図の見方や,看板の読み方,行き先の質問の仕方などを追っています。教室という背景から絵を描くとデスクワークと知識の伝達が,教員に偏る気がします。そんなわけで,出版される「アメリカの個別教育計画と情報活用の展開: 教育改革の視点から」も畑さんという方の論文も,そういう問題意識からですが,ぜひ読ませていただきます。しかし,小学校高学年,中学校の授業のすさみは,ただごとではありません。地域差があるのでしょうか。

では来月の会報をお楽しみに。