1997年4月の会報です。

障害者とコンピュータ利用教育研究会のホームページ




目次


第80回関西例会のお知らせ
2nd THE MAGICAL TOY BOXのお知らせ
第80回関東例会のお知らせ
1997年度自作教材集CD_ROMの製作と教材募集のお知らせ
香川丸亀養護学校からのお客さん
パソコンバンクが正式に発足しました。
自閉症児を連れてアメリカへ
市販教材の紹介
第79回関東例会報告です。
米国教育視察の感想の続きです。

673-14 兵庫県加東郡社町山国2007 兵庫教育大学 学校教育研究センター
0795-40-2205 phone
Email:成田 滋
Web上の会報URL:MES会報

第80回関西例会のお知らせ

 恒例の一泊の研修会です。初参加の方も大歓迎です。お気軽にいらして下さい。
◎日時: 1997年3月22-23日(土-日)1:00PM-?
◎会場: 滋賀大学附属養護学校 研修館「虹の家」 (大津市際川 3-9-1
     0775-22-6569)
◎お世話役: 滋賀大学附属養護学校 大杉、太田氏
◎交通:JR湖西線唐崎駅下車 徒歩6分
  ◎内容:
 MacExpoの報告
 「パソコンバンク」プロジェクト
 MES CD_ROM '97
 自作スタック紹介
 ネットワークの作り方、インターネットの接続の仕方
 Q & Aコーナー なんでも聞いて帰ってください。

2nd THE MAGICAL TOY BOXのお知らせ

今回のテーマは コミュニケーションで心の自立を
「障害が重くてもコミュニケーションをしているはず。
           なんとかそれを豊かにできないだろうか?」
   この思いを実現するために、見る聞く段階の遊びの工夫から始めて、障害に 合わせたスイッチを使用したテクノロジーの利用をご一緒に試みてみませんか。

主催:THE MAGICAL TOY BOX  吉澤千恵・三室秀雄・小松敬典・金森克浩
アドバイザー:中邑賢龍(香川大学教育学部助教授)
       松本廣(国立特殊教育総合研究所室長)
後援:東京都肢体不自由養護学校PTA連合会・福岡起風会
協賛:アップル、富士通、日立、キヤノン、オーエスプランニング、
   パシフィックサプライ・コスインターナショナル・昭和貿易、テクノツール
協力:おもちゃ図書館・埼玉の障碍児教育とコンピュータ利用を考える会

○期日:1997年3月29日(土)13:00〜16:30(AACセミナー)
                17:00〜20:00(イブニングセッション)
           30日(日) 9:30〜14:30(公開講座)
                13:00〜16:00(一般展示・実演)
○会場:(1日目)
      東京都府中市立府中グリーンプラザ6階
      東京都府中市府中町1-1-1 Tel 0423-60-3311
     (交通=新宿より京王線特急で20分。府中駅北口から徒歩1分。)
    (2日目)
     東京都立府中養護学校
     東京都府中市朝日町3-780-2 Tel 0423-67-2511
     (交通=新宿より京王線で約20分。飛田給駅から徒歩16分。)
○参加申込:直接いらしてください。
       ただし、公開講座については定員がありますので、事前にご確認ください。
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1日目(29日) 会場 府中市立府中グリーンプラザ
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<AACセミナー>    13:00〜16:30
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講演「AACの入門と基礎」
     講師 中邑賢龍氏(香川大学教育学部助教授)
   * 定員200名。 テキスト代3,000円
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<イブニングセッション> 17:00〜20:00
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参加者の方々からそれぞれの実践や工夫、翌30日の出品物などを話題として提供 していただきながら、AACアプローチを広げるネットワーク作りを探ります。
* 食事代2,000円(実費)
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2日目(30日)  会場 東京都府中養護学校
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<公開講座>        9:30〜14:30
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「1点入力スイッチでパソコンを自在に使うコミュニケーション技法」
   9:30〜11:30 「キネックス(Kenx)初心者講座」(満員です。)
   12:30〜14:30 「キネックス(Kenx)中級者講座」(3月17日現在あと5名)
※ 14:30よりMACプレイコーナーになります。
* 各講座 定員30名。 テキスト代2,000円
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<一般展示・実演>  13:00〜16:00
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・スイッチ遊びコーナー・・・・・・・MAGICAL PLAY BOX
見る聞く段階からの遊具を紹介します。
また、実際に子どもたちが遊べる物を用意します。
ボーリングゲーム、水鉄砲、ポラロイド写真、名刺作り、プリクラ等
・コミニュケーションエイドコーナーMAGICAL COMMUNICATION BOX
VOCA(※)からコンピュータまで機器の紹介をします。
・生活機器コーナー・・・・・・・・MAGICAL ABILITY BOX
電気製品の操作や電動車椅子など生活に関わる様々な機器を紹介します。
・コンピューターコーナー・・・・・MAGICAL COMPUTER BOX
コンピューターメーカーによる最新の機器の紹介をします。
※VOCA 人工音声を使って相手に意志を伝えるための装置。
* 展示と実演の資料代 2,000円(AACセミナー参加の方はいりません)
【特別企画】
・わが子の成長を育んだおもちゃ展&親のトーク
・おもちゃの改造とスイッチの制作(実演)

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THE MAGICAL TOY BOX  お問い合わせは
吉澤千恵 東京都狛江市東和泉2-20-5 Tel 03-5497-2140 Fax 03-5497-6766
金森克浩  NAH00531@niftyserve.or.jp
ホームページ http://www.asahi-net.or.jp/~YZ9K-KNMR/

第80回関東例会のお知らせ

家族連れの参加を特に歓迎しています。お越しください。
◎日時 1997年4月12日(土)2:00--5:00PM
◎会場 横浜国立大学附属養護学校
   232 横浜市南区大岡 2-31 045-742-2291
      お世話役 根立 博氏
◎交通 横浜市営地下鉄弘明寺駅下車
 横浜市営地下鉄弘明寺駅を出ると真ん前に横浜国大附属中学校があります。その正門に向かって右側(南警察署の脇)の外塀を2〜3分歩くと附属養護学校の門が左手に見えてきます。
◎内容
   横浜国立大学附属養護学校の特色ある活動の紹介-コンピュータ利用から
 自作教材スタックの紹介
 市販教材ソフトの紹介
 Kai'Power GOOの紹介
 Q&Aコーナーの紹介 その他

1997年度自作教材集CD_ROMの製作と教材募集のお知らせ

「障害者とコンピュータ利用教育研究会-Mac Education Society--MES」が結成されて7年が経ちますが、その間学習上に困難を示す子どもや大人がMacintoshを使って学習したり、余暇を楽しんだり、仕事に役立てたりすることを支援してまいりました。その活動の一環として教育教材の開発と普及に力を入れ、ワークショップやカンファレンスを開催し、これまで滋賀大学教育学部附属養護学校と協力して2種類の「MES自作教材集CD_ROM」制作してきました。
 幸いこのCD_ROMは好評で、いろいろな雑誌や新聞で取り上げられ、学校や家庭で使っていただいております。このたび97年版を製作することになりました。このたびのはハイブリッド版とし、MacintoshとWindowsのパソコンの両方で使えるものとします。今回の97年版は96年版と同様に教育目的のために非売品となりますが、送料などの実費はユーザーからいただき、これを基金とし増版や次作の教材制作に使いたいと考えております。教材を共有することに賛同される方は、どうか周りの方々にお声をかけてくださり、このCD_ROMに教材作品を収録さるれるようお勧めください。

●教材募集期間: 1996年9月1日-1997年4月28日
●刊行予定: 1997年7月
●開発環境: HyperCard2.0以上、Oracle Media Object、Expand Book、Action、Macromedia Directorその他
●教材の著作権: 教材開発者に帰属します。
●貯蔵媒体:128-230MO、リムーバルハードディスク、Zipなど
●媒体の送り先:
520 滋賀県大津市際川3丁目9-1
滋賀大学教育学部附属養護学校
 大杉成喜
 Email: osugi@sue.shiga-u.ac.jp
 NiftySERVE: HGA01651
●問い合わせ先:
673-14 兵庫県加東郡社町山国 2007
兵庫教育大学学校教育研究センター
 成田 滋
 直通 0795-40-2205
 Email: naritas@ceser.hyogo-u.ac.jp NiftySERVE: MGH00175
 障害者とコンピュータ利用教育研究会のホームページ:
 http://www.ceser.hyogo-u.ac.jp/narita/mes/mes.html

香川丸亀養護学校からのお客さん

ときどき兵教大にはお客さんがお見えになりますが、今月は四国は丸亀よりお二人の先生が訪ねてこられました。前多恵先生と酒井美和先生です。お二人とも学校では中学部の担当です。なんでも学校にPerformaが一台入ったようで、今後どのように活用するかで現在は構内研修中とのことです。兵教大では、教材の試行の他に、学校のweb上のページを作って帰られました。

パソコンバンクが正式に発足しました。

明石市の山平さんと竜野市の前田さんを中心に、このたびパソコンバンクが発足しました。なお、この運動に賛同される方はのメーリングリストでいろいろな連絡や意見の交換ができますので、お知らせください。

パソコンバンク設立のお知らせ
 山平 喜一郎  明石市地区手をつなぐ育成会

●はじめに
 1996年7月号の特集「知的障害のある人とコンピュータ」を覚えていますか。この特集記事を読んで、「是非わが家にもコンピュータを」と思って実行した一人です。結果は大成功でした.以下にその報告をさせていただきますとともに、コンピュータをひとりでも多くの方々に利用していただいて、障害児と共に暮らすご家族に喜んでいただくためのお知らせを述べさせていただきます。
●智美の紹介
 2女智美は療育手帳(A判定)の交付を受けている知的障害児(16才)です。言葉を話すことはできません。衣服の着脱・食事・トイレといった身の回りのことも十分にはできません。多動で興味の対象がすぐに変化し、一つのことに集中して取り組めないと思っていました。学校から帰って来ますと、自分で自分の能力を伸ばすような遊びを見つけることができず、結果的に「部屋をちらかす」とか「勉強のじゃまばかりする」と言って母親や姉妹から怒られておりました。また電気掃除機の音でパニックを起します。外に出て行っても、近所の子供達の遊びの中に入って共に楽しむというわけにはいきません。結果的にぶらぶらするか、大好きな車の中で時間を過ごしておりました。
 せめて休日は楽しい思いをさせてやろうと考え、大好きな車に乗せて近くは農業公園から遠くは鳥取砂丘、天橋立、関ヶ原あたりまで行きました。車や電車の中では何故か非常におとなしくしているのです。こうして車でのドライブが休日のひとつのパターンになったのですが、だんだんと日帰りで行ける行き先が無くなってきました。そして確かに楽しんで時間を過ごしているけれども、「何か成長に寄与しているのだろうか」という疑問が湧いてきました。もっと智美が楽しみながら、自然と成長を促すような時間の使い方はないものであろうかと考えるようになりました。
●きっかけ
 昨年の8月に「手をつなぐ」の記事を読んだのがきっかけとなり、「パソコンで取り組む早期療育」を投稿された兵庫教育大学の成田滋先生の研究室にお伺いして、智美が初めてキッドピクスというソフトを動かしました。その後、「障害者とコンピュータ利用教育研究会」の例会にも出席して、いろんなソフトを見せていただき、電気店、スーパー、パソコンショップ等で価格調査をして、11月にはパソコンを購入しました。
●熱中ぶりと家族の喜び
 それからの智美の熱中ぶりには驚かされました。お気に入りはキッドピクススタジオとタイニー・パークというソフトです。学校から帰ってくるとパソコンに向かって何時間でもやっています。食事やお風呂に呼んでもやめようとしないので逆に困ってしまう位です。休日は朝起きるとすぐにパソコンに向かいます。その真剣なまなざしはかっての智美からは想像できませんでした。特に自分の声や家族の声がスピーカーから聞こえてくると一生懸命聞き入っています。姉や妹も一緒になって絵を作ったり声を録音して楽しんでいます。また自分や家族の写真、大好きな新幹線の写真等が出てくるのも喜びます。智美が喜ぶと家族皆が幸せな気分になります。大学受験を控えていた姉も、受験勉強はそっちのけで、智美が喜ぶ多くの作品を作ってくれました。
●智美の成長
 こうしてパソコンを購入して4か月余が経ちました。この間の智美は次のような点で成長しました。
1.マウスをうまく使えるようになった。(初めはマウスを使いこなせないだろうと思っていた)
2.家庭内で誰の手も煩わせることなく、自分の意思で好きな時に好きなだけ遊びながら 学ぶことができるようになった。(動かなくなった時だけ、助けを求めて来ます)
3.「ごはん、ちょうだい」とか「あおい、くるま」のような2語の発音ができるようになった。
4.数の概念が分かりかけてきた。(完全な理解はまだできていない)
 このように多くの点で成果がありましたので、今後も成長のレベルに合った教育用ソフトを見つけて与えてやれば、もっともっといろんな能力を伸ばしてやれると確信しております。
●わが家にとっての福音
 また、上記の2項はわが家にとっては非常に大きな福音となりました。智美が親の手を煩わすことなく、自分の判断で自分ひとりで創造的な何かをやってくれる。その時間は親にとって安心して家事に費やせる時間であり、他の子供達のために働ける時間であり、束の間の休息時間でもあります。智美のように成長が極端に遅れている障害児は、常に親の愛情、支援、まなざし、語りかけ、評価等の親との関わりを求めて来るか、あるいは一見無意味な自分独自の世界に閉じこもりがちになってしまいます。したがって、親が障害児の成長を願えば願うほど、多くの時間をその子のために費やさざるを得なくなり、結果的に疲れ果ててしまいます。ところがこのような智美であっても、パソコンという道具が興味を引き出し、親や教師や友達の代りに成長に必要な刺激を与え、成長を促すことが判ったのです。
●ハード・ソフトの進歩と低価格化
 一昔前のパソコンであれば、ここまで智美の興味を呼び起こすことはできなかったでしょう。トトロやミッキーマウスのような大好きなキャラクターの絵と同時に、聞き慣れた家族や自分自身の声がマウスの操作だけでいくらでも出てきます。また何か操作すると必ず何らかの答えが返ってきます。智美がマウスだけで楽しめるソフトが何種類も市販されています。マウスが使えない子供達にはもっと簡単な入力装置がありますし、その子専用のソフトを作ることもできます。正直なところ、智美がマウスを使いこなせるとは思いませんでした。ですから成田先生のところへお伺いした時に、画面に直接手を触れて入力する装置を試させてもらったのです。実際はどうであったかというと、一週間もしないうちにマウスをじょうずに使いこなすようになりました。興味をもったことには持てる能力を発揮できるのです。
 パソコンのハードウェアが高機能化すると同時に、低価格になり、ソフトウェアもすばらしいものがいくつも開発され、障害者用の入力装置も手に入り易くなってきました。動かし方も非常に簡単になってきましたので、それぞれの家庭で障害を持った子供達の教育道具の一つとしてパソコンがあってもおかしくないと思いますし、確かにそれだけの成果もあります。
●パソコンで成果をあげる前提条件
 一方で、同じように昨年7月号の記事を読んでパソコンを買ったけれどうまく動かないという話しも聞きます。単にパソコンを購入すれば全てうまく行くというわけではありません。パソコンを用いた障害児教育で成果をあげるには、次の5つの前提条件を満たす必要があります。
 1.パソコンの有用性を認識する
 2.パソコンが家庭や学校にある
 3.トラブル時の対処も含めて、パソコンを使いこなす知識がある
 4.子供の成長過程に合ったソフトを選定する
 5.子供が気に入ったソフトをいつでも自由に使えるように環境を設定する
 パソコンを買ったけれど、うまく行かなかったという場合は3〜5のいずれかに問題があります。
●パソコンバンクの設立
 そこで、これらの前提条件を満たすための支援をすることを目的として「パソコンバンク」を設立しました。名前の由来はアイバンクにヒントを得たからです。上記の成田先生、記事の中に出てくる龍野市の前田さん、そして私の3名が発起人となり、全国各地でコンピュータを利用した障害児教育に取り組んでおられる先生方や父兄方々約10名に幹事になっていただいて、この3月にスタートいたしました。  上記の1に関しましては、昨年7月号の特集記事と合わせて、この文章が有用性認識のきっかけになればと思っております。
 2に関しましては、各ご家庭や学校で購入して下さい。年賀状の作成や自治会用の文書作り、あるいはインターネットで世界中の人とコミュニケーションが可能になります。しかしながら経済的な理由等で購入できないご家庭には無償で貸与し、ご希望があればインターネットにも接続します。この場合、電話代等の運用費用は自己負担となります。学校等で予算が付かずに困っている場合も同様の扱いを致します。
 3と5に関しましては、仕事でパソコンを使用している父親が、そのノウハウを家庭において展開することが基本です。しかし何らかの事情でそれが不可能である場合は、地理的に近いところに住んでいるボランティアが出向いて指導します。  4に関しましては、コンピュータ利用教育研究会が中心となって、これまでの研究成果をまとめ、それを基に最適と思われるソフトを推薦します。この場合、一人一人個性がありますので、対象となる子供さんの発達段階に関して、詳細に報告していただく必要があります。
●連絡方法
 すでにパソコンを購入しておられる方、これからパソコンを購入しようとお考えの方、パソコンは欲しいが事情があって購入できない方々で、パソコンバンクからの情報や支援を必要とされる方は下記に連絡して下さい。連絡方法は郵送、FAX、電子メールのいずれかです。電話での受付は行っておりません。
 また逆に、パソコンに対する知識をお持ちで、他の方のお役に立ちたいと考えておられる方、基金に協力したい、あるいはすでにお持ちのパソコンを譲りたいとお考えの方も下記に連絡して下さい。多くの方々の協力があって、はじめてこの運動が成り立ちます。
(パソコンバンク連絡先)
 住所 〒673-14 兵庫県加東郡社町山国2007
         兵庫教育大学 学校教育研究センター 成田研究室気付
                 パソコンバンク
  FAX 078-927-3693
  E-mai naritas-pcbank1@ceser.hyogo-u.ac.jp

自閉症児を連れてアメリカへ

佐藤 裕 ysato@execpc.com

--テピの将来
●テピの将来

 5年生の終わり頃から、担任のマットはテピの帰国を気にかけてくれている。 「本当に帰るのか? どうして? 帰国後テピはどうなるのだ? テピの将来は?・・」と日本の状況を知らない先生は私に何度も問いかけてくる。私は少しずつ日本の状況を告げたが、私自身予想できないテピの将来には言葉がよけいに少なくなってしまった。でも日本の障害者を取り巻く環境はどんどん良い方に変わってきているし、それに私も期待したいことを付け加えた。
●テピが一般就労?
 「アメリカの特殊教育は予算が削減されるなど、残念な部分もでてきているけれど、まだまだ世界に誇れるものだと思う。僕はテピをもっと小さい時から教えてきたかった。そうしたらテピと英語で会話ができただろうし、もっとたくさんの成果を出せたと思う。テピはたくさん可能性を持っていると信じている。寂しくなるよ。」 そう語るマットにテピがもしこのままマディソンに住んでいたら、どんなふうにおとなになるのか尋ねてみた。
 「21歳まで地域の中で一貫した教育を受けられるし、その後は僕らがテピの就労先を見つけてあげられるんだよ。」マットはここに残ることを勧めるような口ぶりで語った。「テピが一般就労できると思うんですか?」私は”就労”と言う言葉に捕らわれた。それはテピとは、とうてい結びつけて考えられなかったものである。「もちろん。テピは充分一般就労できる。シェルタッド・ワークショップはマディソンには一カ所しかなくて、そこを利用しているのは最重度の人だけなんだよ。」
●日本との違い
 マットの言う一般就労の中には、援助付きのものも含まれていると思うが、日本でテピよりもずっと障害が軽い人達が一般就労できないで苦労している様子を見てきている私には、その言葉は私の胸を熱くした。日本でなら生産性をある程度必要とする授産施設から、生活指導により重きをおいた更正施設の範囲がテピに当てはまるように思っていた私である。
 就労がテピの人生の最終目的だとは思っていないが、それはテピの障害の程度ではすでに諦めていたものである。そして、それはテピのような重い障害を持つ人に決して無理をさせるものではないことは、個別配慮の行き届いたこの一年間に体験した教育サービスからも十分予想がつく。ここに住んでいたら、それが手に入る。将来を気にかけ意気消沈する必要もない。もうすぐ離れてしまう所であっても、そういう場所があるというのが嬉しかった。

--ハロウィン
●イベントカラー

 アメリカでの数々の行事のうち、最も面白いと思ったもののひとつがハロウィンだ。この手の国民的行事がある時は、その1、2ヶ月前からあらゆる商店はそのお祭りのカラーに染まる。サンクスギビングは茶色をベースにした実りの色、クリスマスは赤や緑に加え金銀などきらびやかな色、バレンタインデーは赤と白、セントパトリックデーは緑、イースターはパステルカラー、独立記念日は星条旗の3色、そしてハロウィンはオレンジと黒。
 オレンジはかぼちゃ、黒は魔女や黒猫などを代表する闇の色なのだろう。店に並べられたお菓子からコスチュームまでのハロウィングッズの中には、おどろおどろしく趣味のいいとはいえないものもたくさんある。家々は窓辺にお化けや骸骨を飾ったり、玄関先に作り物のクモの巣を張ったり、かかしを置いたりと競いあうように工夫した飾り付けを始める。最もポピュラーなのがジャコウランタン。かぼちゃをくり貫いて作った提灯である。
●パンプキンパッチ
 我が家でも大中小の3個のかぼちゃを用意した。大きいかぼちゃをヨピが選んで彫り、パンプキン・パッチという学校で行われたコンテストに持って行ったら、「最も大きくて恐いで賞」という賞をもらえた。素晴らしい賞をもらったのは良かったが、大きいかぼちゃだったので運搬を請け負った親のほうは大変だった。ランタンにろうそくを灯すと幻想的でなかなかいいムード。私は故郷の灯篭流しを思い出してしまった。
●コスチュームパレード
 学校ではクラス毎のハロウィンパーティーと全校でのコスチュームパレードが行われた。ヨピは自ら希望したかぼちゃに扮した。かぼちゃの顔を描いたオレンジ色の提灯型の衣装を着用。よく猫の鳴き真似をするテピは猫がぴったりと思い、黒猫にすることにした。テピの猫コスチュームの正体は、耳を縫いつけた私のベロアの黒帽子、尻尾を縫いつけた私の黒のタートルネックセーター、私の黒コールテンズボン、私のフェイクファー付き黒手袋、それに黒のフェイスペインティングカラーで猫の鼻と髭を書いて出来上がり。
 パレードを見に行くと、アシスタントのリサが「エリコ、テッペイのコスチュームすごくいいわー。」と話しかけてきた。ポカンとしている黒猫のテピを見て、思わずアハハハ・・と笑わずにはいられなかった私に、リサはまた「ほんと、いいアイディアだわ。」と言いながら釣られるように一緒に笑っていた。校長先生を初めそれぞれ好みの仮装をした先生達も、自分の役になりきり得意げに行進していたユニークなパレード。その中にテピもニコニコと嬉しそうに加っていた。
●ハロウィンの夜
 「ユニバーシティーハウスとイーグルハイツは子供が多いから、お菓子をたくさん用意しておかないと大変よ。」と友人が忠告してくれた。トリック・オア・トリート(子供達が家々を訪ねてお菓子を貰う)のためである。
 辺りが薄暗くなる頃から、かわいいモンスター達が訪れ始めた。ドアをノックして「トリック・オア・トリート!」と言ってはお菓子をねだる。それぞれ持っている大きな袋やバケツにお菓子をひとつかみづつ入れてあげると嬉しそうに帰っていく。 訪れる子供達の姿を見ているだけでも楽しかった。時々付き添いのお父さんが、すごい扮装をしていてさらに私を楽しませてくれた。
●我が家のモンスター達
 さて、我が家の子供達はというと、やはり扮装した(というより私が半強制的にさせたことになるのかな)裕に付き添ってもらって近所を回ってきたのである。裕は太った骸骨になった。ハロウィン直前に安売りしていた骸骨のコスチュームは、厚着した服の上から着ると太った骸骨になってしまう。
 フェイスペインティングはPTO行事カーニバルの時、ペイントする係りをボランティアで引き受けて依頼味をしめていた私だった。友人は一番やりたくない種類の仕事だ、と言っていたが、私は一番面白そうと思って引き受けた。やはり面白かった私は、今回は裕の顔を骸骨にすることに決めていた。「一回きりのことだから、楽しんじゃいましょう!」と裕を励まし塗りたくる。 笑いが止まらないくらいグロテスクな顔ができあがった。子供達を連れてお菓子をもらいに出かけた裕。テピは何を思ったのかキャーキャーはしゃぎながら付いて行く。
●泣いた黒猫のテピ
 訪れる他の子供達のために家に残った私は、10分後にテピの泣き声に気付きドアを開けることになった。テピは訪ねた家のドアが開けられると、中に入りたがる衝動に駆られる癖がある。今回も例外ではなく、訪ねた家々、中に入りたがる事の繰り返しで、なかなか納得してくれず最後には泣いてしまったのだそうだ。テピを家に残し、また出かけていったふたりである。
●闇に吠える
 帰ってきたヨピはお菓子をたくさんもらえたと喜んでいた。裕は訪ねた家々の人達が、裕の顔を見ては恐怖におののくような表情をするのに、段々耐えられなくなってきたそうで元気をなくしていた。しかし、その直後にうちにやってきたゴリラに扮装した付き添いのお父さんと「あなたも!?」と突然意気投合し、お互い嬉しそうに肩を組んで写真までとったのだった。この時のカメラに向かって、ポーズをとりながら吠えていた2人の声までは記録できなかったのが残念。
 テピは黒猫のコスチュームが気に入ったようで、その後しばらく脱ごうとはしなかった。エキサイティングなハロウィンの夜は、お菓子の山を残してふけていった。

市販教材の紹介

●「トッポのまちがいさがし」
 この”トッポジョージ”の一緒に学ぼう12巻CD_ROMシリーズは、パソコンに触れたことのない子どもが、トッポジョージとでパソコンに慣れ親しむために作られたものです。「トッポのまちがいさがし」はそのうちの4巻目にあたり、簡単な絵を使って間違いを探したり、グループ分けなどのゲームを通じて物の種類や左右の相違点などへの観察力、注意力を養います。メニュはそれぞれ、「どこがちがうの」、「グループわけ」、「トッポとダンス」、「はたあげ」、「ちがうのだあれ?」からなります。
販売元 (株)ディザイン 078-857-8062 3,500円

第79回関東例会報告です。

宮下恵子 QZQ05767
 3月8日、東京都失明者更生館をお借りして、第79回関東例会が開かれました。 永田先生、林先生をはじめとして総勢12名の参加でした。初参加の方が4名もいらしてくださいました。みなさん、MacEXPOでMESのブースを訪れてくださった方です。顔合わせと近況報告を兼ねた恒例の自己紹介を約1時間半かけて行ったあと、千葉県立市川養護学校の佐原先生による「出来高スタック作業納会版」の紹介でした。
 このスタックは、何回か例会で紹介されてきていますが、作ったせっけん数を 生徒が入力し、石鹸の種類ごとに出来高が記録できるものです。今回は、年度末の作業納会にむけて意欲を高めさせるための改良点が報告されました。改良点は、作業納会の行われる「お好み焼き屋」を紹介するボタンと、生徒の作業量を評価するボタンをつけたことです。「お好み焼き屋」の紹介では、店内、材料、お好み焼きを焼く様子などをデジタルカメラで撮影しカードに貼り付けてあります。校内での使用機種がColorClassicのため、QTmovieにはしなかったとのことでした。また、作業量の評価では、個々に設定したノルマと生徒が入力した値との差で判定し、ノルマに達成しなかった場合、梅干しごはんの写真が出てきます。この判定は生徒に意外と好意的に受け入れられているとのことでした。
 次は、千葉県立野田養護学校の熊谷先生による「HYPER LINK MODELER ver1.1」の紹介でした。ブレゼンテーションに有効なプログラムレスのハイパーメディア開発ツールということで、一通りのデモを見せていただきました。ハイパーリンクがドラッグ&ドロップだけでできます。しかし、高機能すぎて全部の機能を使いこなすことは難しいとのことでした。卒業アルバムなどをテンプレートにしてあれば使いやすいとの声もありましたが、まだ全家庭にパソコンがあるわけではないことと、その程度ならGREENで十分との声もありました。
 その次は、かの有名な「金魚すくい」の作者であられ、本日初参加の中野さん によるUSRobotics社のPilotの紹介でした。サンフランシスコのMACWorldで購入されたそうですが、国内でもIショップで扱っているそうです。Pilotは68040のCPUですが、実演していただいたインベーダーゲームで、Newtonより速いことを実感しました。日本語OSは単漢字変換ですが、Macと接続させたり、モデムやNewtonのキーボードにつなげたりできます。Niftyのログも読むことができます。さらに、その軽さ160gは驚きものです。某先生の目つきが変わっていたことはいうまでもありません。
 最後に、深沢さんから館内のLANの様子を紹介していただきました。Performa6 260をサーバーとして、館長室を始めとして館内中にはりめぐらし、ケース記録をファイルメーカーproで作成しているそうです。これで各種証明書の発行もぐんと簡単になりました。深沢さんによると、福祉施設の中にLANを導入した例は少ないそうです。
   質議応答を含めたフリートークの時間には、障害者向けプログラムの開発に協 力を申し出てくれた中野さんや、キーボードを押した時に、どのキーを押したかMACにしゃべって欲しいアイデアをお持ちの深沢さんの熱心なお話がありました。  恒例の懇親会はウルグイ料理でした。すばらしい地図と適度な運動の後にいた だいたウルグイ料理は、とてもおいしかったです。ウルグイの話に盛り上がり、いつものような固い話は少なく珍しい会となりました。次回は横浜で開催の予定です。

●Expo97御礼
 佐原恒一郎 千葉県立市川養護学校 GEC02532

 Expoが終わり2週間がすぎました。間の抜けた時期の御礼です。卒業文集作りで連日午前様をしていて、この時期になってしまいました。m(_ _)m。段取りの悪い私をみなさまがフォローしていただいたおかげで無事終わることが出来ました。ありがとうございました!

米国教育視察の感想の続きです。

●アメリカ研修参加の皆様 吉利宗久 鳴門教育大学 障害児教育専攻
 皆様、いかがお過ごしでしょうか?月日がたつのははやいもので帰国から約一週間が過ぎようとしております。
 皆様それぞれ以前の生活リズムに戻り、忙しい毎日を送っていることと思います。 さて、今回の研修についての諸先生方の感想メールいただきました。そこで、私も自分なりの感想を簡単に述べたいと思います。今回の研修は、私にとって大変意義ある研修であったと思っております。約2年半ぶりの渡米ということで、緊張もありましたが、米国の教育の現場を目の当たりにできたことは、大きな刺激となりました。特に、(成田先生もおっしゃっていらっしゃるように僅かな訪問、見学で「アメリカでは、、、」ということは危険なことかも知れませんが)私にとっては、修士論文との関係において、全てが新しい発見で疲れながらも、学校訪問が楽しみでなりませんでした。(必ずしも十分とは言えないかも知れませんが)まさに、「百聞は一見に、、」で文献だけでは伝わってこないこともあったように思います。不可能なことかも知れませんが、まだまだ多くの見学をし、自分なりに一つでも多くの発見、疑問を得ることができればと思いました。しかし、残念なこともありました。それは、皆様も感じていらっしゃるように語学力の未熟さでした。自分の意思を正確に伝えることができればより意義のある研修になったかも知れません。今回の経験を機会により積極的に語学に取り組み次の機会に生かせることができればと思っております。
 最後になりましたが、他大学であることに加え、世間知らずの私を快く受け入れてくださいました成田先生をはじめ、諸先生方に心より感謝致します。これからも、末永いお付き合いよろしくお願い申し上げます。
 不十分な感想でしたが、今回はこれぐらいにさせていただきます。有り難うございました。
○コンピュータで製図をしています。

●お礼のメッセージ 栢木 隆太郎 大阪市教育センター
 1週間を振り返ってみますと、あっという間に過ぎてしまいました。こんなに時間の経過が早く感じられたことはありません。大変有意義な時間であったと思います。私なりの印象と感想を少し述べて見たいと思います。
 今回の研修では、米国での障害児教育の現状を自分の目で見ることを目的にしていました。IEPが作成されるプロセスについては、知っていましたので、具体的な指導場面を参観できることに、また、インクルージョンがどのようにおこなわれているのかが最大の関心事でありました。
 ガーデンゲート小学校では、IEPに即した指導が行われていることに感心いたしましたが、スピーチセラピストの指導では、対象児のレベルに最適かどうかは疑問を感じました。IEPに記述されている以外の指導法があるように思われましたが、契約された指導内容と異なる指導が難しい側面が伺われました。しかし、指導者の指導態度には多いに学ぶべき点があったように思います。専門職としてのプライドが感じられました。日本の教師(もちろん全てでありません)が学ぶべき点だと思います。
 インクルージョンについては子どもの評価をどのようにしているのかを尋ねることができませんでしたので、印象しか述べられませんが、大阪の現状と大きく異なるという感じはしませんでした。しかし、保護者や本人の意志が反映されている点では基本的に異なっているように思います。保護者や本人の意見表明に基づいている点に国状の違いが出ていると思います。
 いずれにしても、個の責任がいかにあるべきかが問われる国であることを強く感じました。その意味では、自分が日本の文化で育ったことを強烈に感じ、日人であることの良い点と学ぶべき点が少しは理解できたような気がします。 先生のご指摘のように、もっと対話能力があればより大きな収穫があったように思います。米国はより興味ぶかい国となりました。これを機に対話能力が少しでもみにつくようにがんばってみたいと思います。
○アップル本社前で記念撮影

●村上万里 兵庫教育大学 生徒指導講座
 今回、アメリカの学校教育の現状の見学から得た印象、感想、収穫を述べて、成田先生への感謝の気持ちを表わしたいのですが、あまりに多すぎてうまくまとまりません。思いつくままに列挙してみたいと思います。

1)アメリカにおける現在の学校教育の根本理念となっている、包括的な統合の雰囲気を実感できたこと。アメリカは日本のように文部省による上意下達の一局支配によって教育が行われている(最近それではいけない、もっと地方が主体的にやれ、と文部省自身が言っていますが)のではないので、州により、また学校区により、また学校それぞれよって、教育の具体的な表われ方は、まったく個別的なので、たった1回の経験で”アメリカでは、、、”などと一般化することはできませんが、その”半端ではない”決心といったものを目のあたりにした思いです。

2)教師の専門性と役割分担の在り方を考えさせられたこと。給与の問題や雇用の保証の問題など、厳しさはわれわれの想像以上だと思いますが、それにもかかわらず、今回お会いした先生方の口から出た言葉、たとえば ”この子供たちのprogressから、私の方がhopeをもらっている”とか、西洋古典文字の筆写のクラスで子供たちが「この授業はとても楽しいと」言ったので、先生に”生徒たちはとても授業を楽しんでいるように見える”と私が言うと ”私も楽しんでいる。子供たちは、だんだん複雑な文字を練習して行くが、他のレポ-トの表紙をその文字で飾って提出することができる。古典を楽しむこともできるようになるかもしれない。教科の最後は、子供たちが気に入った文字で私に手紙を書くんだ。動物みたいな文字もあるけどね”と答えた。なんのために練習するのか、などと質問した私は恥ずかしくなりました。

3)とにかく、主役は生徒。「、、、のように指導する」というのではなくて、「私たちは何でもって子供の成長に貢献できるか」と言う態度がはっきりしていて素敵だなと感じました。見習いたいと思います。このような学校に、アメリカの学校が変化した歴史的社会的な背景については少し、勉強しましたが、アメリカの学校の”今”を知ることができたことは幸せです。

 私たちを案内してくれた生徒たち、お茶とお菓子で歓迎してくれた学校、一生懸命仕事をし、夫を尊敬しているハイデイさんやロ-ラさん。素敵なスク-ルサイコロジストの先生。出会った方たちの顔が浮かんできて、これからちゃんと手紙を書かなければ、と思っています。
 以上、ほんの少し感想をお伝えします。

●米国教育視察研修に参加して 筱 更治 兵庫教育大学 生徒指導講座
 今回は、前回ニューメキシコ・テキサスに引き続いての参加をさせていただくことができて大変喜んでいます。成田先生、ご同行の皆様、ありがとうございました。
 成田先生には、昨年の夏過ぎから何かと準備が大変であったことと思います。ホテルの予約・航空券の手配・訪問学校区や学校の担当者との通信、また行き先の地図の入手から参加者への10数回にわたるニューズレター、訪問中は言葉の不慣れな私をはじめ参加者の便宜をはかってずっと通訳も続けていただきましたことなどなど。
 さらに、2月14日のご自身の学会発表も相まって実に多忙なスケジュールをこなしていかれたものと思います。本当にお疲れさまでした。また、ありがとうございました。
 私の関心の中心は、学校カウンセリングでありましたが、教育機器を利用した特殊教育の一端や米国でのinternetの教育への利用・教員の自主的な教育に関する研修の様子、教員生活の長きにわたって自然から学ぼうとされていた取り組み、高等学校でのresourceroomを通した指導、多文化を象徴するかのような言語教育(English, Spanish, German class)重視の傾向、中学校レベルでも想定できる学校でのgun problem、そして一つの学校に母国語が何十か国語もあると思われるそれぞれの家庭から通ってくる生徒たちに、ここは、United States of Americaだなぁと実感した次第です。でも、直訳するとアメリカ合州国と考えられまが、日本語ではアメリカ合衆国でしたね。まさにアメリカ合衆国を実感した思いでした。  学校カウンセリングの実情の一端ですが、高等学校でのカウンセラーは、3人いました。うち一人は、パートタイムでの勤務ということでした。30分近くゆっくりと話をして説明をいただいたのですが、言葉が不十分で聞き取りの力が不足していることを痛感しました。
 感じとしては修学や進路や問題が中心ではないかと思われます。カウンセラーの資格としては教員の資格の上に大学院での単位取得が必要とのことです。もちろん日本の進路指導担当教員のような授業の兼務は無いとのことです。また、二人カウンセラーの一人は、無線のハンドトーキーをもっておいででして、他の教員から急な連絡が入る可能性を示唆していました。
 また、他の学校でうかがったことですが、以前カウンセラーを雇用していたが、数年前に予算削減で引き払ったということがあったそうですが、また、次年度の9月からは入ることになっている、という中学校の先生がおられました。人件費にかかわる問題はどこでも厳しいものがあるのでしょうね。
 学校の訪問を通じて全般的に感じられたことの一つは、指導のニュアンスから支援へと傾いているような受け止めです。肌の色が違い、英語が中心ですが家庭での言葉がそれぞれに違っていたり、もちろん様々な生活様式の違いもあるなか、合衆国市民を育てる役割を模索するアメリカがそこに感じられました。
 Internetの利用については、そんなに進んでいるということではありませんでしたし、教員がすべてemailのアカウントをもっている、というような全員が使っている状況というのは、まだ先のように感じました。しかし、能力のあるボランティアが様々に学校に関与していて、地域になじんだ学校の姿を感じました。カリフォルニアでは、家庭から無制限にInternetに接続して月に20$程度という話もあり、やや日本に比べると割安感がありました。NTTのOCNがこの春ごろから全国展開をすると、日本でも使いやすい環境に近づくのでしょうか。
 車社会のアメリカはまさにさのとおりでしたが、右側通行でずっと安全運転には、気をつけました。STOPの標識のあるところでは、先に一旦止まったものが交差点に入るということや、赤信号でも右折は自分で安全を確認して進むこと、またFree wayでは、65mileで4, 5車線もあってうっかり右端を走行していると外に出てしまったこと、San Joseで地図がなくPoliceに道を聞いたら、丁寧に教えてくれたこと、道を間違えて一方通行を逆走していたら、子どもが大きな声で'One way!'と叫んで、笑っていたこと、ナビゲータをしていただき、大変走りやすかったこと、Stanford大学まで頼まれた図書を探しに走ったこと、最後の午後は、モントレーやカーメルへドライブし、金曜日・バレンタインデーと重なってレストランを探しにテクテク歩いたことなどなどすてきな体験をさせていただきました。
 同行いただいた方々、ほんとうにありがとうございました。
 そして、カリフォルニアの学校区の子どもたち、先生方、ボランティアのみなさんにも感謝の気持ちを申し述べます。ありがとう。
○学校のサーバーを管理する頼もしい高校生



では来月の会報をお楽しみに。

●制作:成田 滋

●編集:曽根秀樹