2000年アメリカ合衆国個別障害者教育法(IDEA)第21回議会報告書


目次に戻る

報告書の要約

第一部 

背景と状況

 第一部では、障害児教育サービスが子どもや若者に提供される背景となるさまざまな情報をいくつかのモジュールに分けて記述している。最初のモジュールでは障害児教育における親の参加と、親の参加についての提案に関するものである。第2のモジュールでは、障害のある生徒に対するカリキュラムの享受--アクセスについて記してある。この享受については、教育立法措置の内容にかかわっている。すなわち、通常教育を受ける権利、その権利を遂行するための困難さ、普通教育を受けるに必要な方略や工夫などである。最後のモジュールでは、障害児教育に携わる者の資質の向上に関わる研修や訓練である。「連邦教育省」(U.S. Department of Education)と「教育省省障害児教育局」(Office of Special Education Programs-OSEP)の役割について述べ、そこで資質や専門性の向上のためにどのような研修や訓練プログラムをおこなってきたかなど、研修の歴史と経緯について述べている。

親の参加と障害児教育

(1) これまでの研究は、障害のある子どもの親の大半は教師との対話、学校でのボランティア活動、宿題の手伝い、そのた学校や家庭での支援について関わっていることを示している。
(2) 教育省はこれまで、76の「親訓練プログラム情報センター」、10の「コミュニティセンター」を財政的に支援してきた。こうしたセンターの目標は、障害児の親が効果的な教育者としての推進役を果たせるようにすることである。
(3) OSEPの財政支援は、親の参加に関わるモデルとなるプロジェクトやそれに関連する研究所に対して向けられている。こうしたプロジェクトは、コミュニティ主導、家族主導による障害児の教育ニーズに対応したものに向けられている。
(4) 研究報告書は親の参加の重要性を強調しているが、なかには親の参加が表面的で、実質的ではないという指摘もなされている。そうした参加態度は、親と学校の効果的な連携を妨げているという報告がある。

障害児の普通教育カリキュラムの享受

(1) 修正個別障害者教育法(Individuals with Disabilities Education ActAmendments of 1997-IDEA)は、障害児が普通教育カリキュラムを享受するための指針や、その実施のための広範囲な教育計画の必要性を強調している。
(2) 障害児の普通教育カリキュラムの享受では、熟練された教師、教材教具、指導上の方略などが必要であることが謳われる。
(3) 普通教育と障害児教育の間で不可欠な連携とリーダーシップとは、カリキュラム開発、習熟度の設定、専門性の育成、教育資源の活用、実際の指導スキルなどを含む。
(4) 生徒の発達や習熟度が具体的に指導の成果としてどのように現れているか、についてはさまざまな期待がある。とりわけ高次の思考過程や問題解決行動に必要なスキルの発揮についての測定と評価の重要性が問われている。

熟練した教師の養成

(1) 教育省は、議会、様々な研究者、専門機関や団体、財団、親、生徒、コミュニティの賛同と支援を得て、アメリカの障害児に従事する教師の専門性や資質の向上のためにいろいろな施策を講じている。
(2) OSEPは、今後も教師の専門性や資質の向上のために各州や地方自治団体の積極的な関与を支援し続け、資質向上のための訓練や養成に努力を行っていく。
(3) 教育省とOSEPの役割は、教師の専門性や資質の向上のために、今後10年間で200万人の教師を養成し、学校に送り込むことである。この背景には、現在の教師数で#ヘ多様なニーズを有する生徒に対応しきれていないことや、とみに重要視されている教師の成果の報告責任--アカウンタビリティの高まりがある。
(4) 以上のようなさまざまな挑戦や課題に対応するためには、意欲に富んだ人材の発掘、教師養成と教師教育の充実、学校現場への有能な初任者教師の採用などがある。